失敗しない内科開業とは?専門領域ごとの開業ポイントも|開業支援実績が多い税理士が詳細解説

公開日:2024年12月16日
更新日:2024年12月16日

内科は、医院・クリニックの開業で最も多い診療科目です。

厚生労働省 の「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 」によると、全国の診療所で働く内科医の人数は38,907名です。

この人数は、診療所全体の36.2%を占めており、いかに内科を標榜する医院・クリニックが多いかがわかります。

実際、当社の開業実績を見ても、内科の開業ケースはかなり多いです。

また、内科は、他の診療科目と併せて標榜することが多い診療科目でもあります(内科・消化器内科、内科・循環器内科、内科・小児科など)。

これは、内科領域の専門性を持つことが求められ、一般内科だけを掲げて開業して軌道に乗せることが厳しくなっていることを示しています。

一般内科のみを開業する場合は、物件選定など、より戦略的に開業計画を立てる必要があるでしょう。

その点を踏まえて、内科の開業で失敗しないためのポイントについて解説します。

一般内科だけか、専門領域も標榜するかで計画が大きく変わる

内科に限らず、どの診療科目でも開業物件を探す前にコンセプトを明確にすることが重要です。

内科の開業コンセプトの一番大きなポイントは、一般内科だけで開業するのか、専門領域も標榜するかです。

冒頭でお伝えしたように、専門領域を持っている先生であれば、内科の他にも標榜して開業するといいでしょう。

特に、都市部では一般内科だけで開業すると、競合が多くて苦戦しやすくなります。

実際に、当社の開業支援実績を見ても、一般内科の他に専門領域を標榜する先生の方が多いです。

一般内科だけで開業する場合は、患者さんの属性や地域間連携の強化などの観点で、立地の選定を慎重に行う必要があります。

専門領域を持つ場合も一般内科も標榜しておく

内科の開業では、「内科・内視鏡内科」「内科・脳神経内科」など、一般内科と専門領域の両方を標榜することが多いです。

開業コンセプトにもよりますが、内科の標榜があることで、風邪やインフルエンザ、コロナなどの患者さんの来院があります。

専門領域で他院との差別化を図りつつ、様々な患者さんの来院を想定しておくのです。

一般内科で受診した患者さんが、実は専門領域で診た方がいいということもあり得ます。

特に開業直後は、間口を広げておくことで、安定的に集患できるでしょう。

一般内科だけなら都市部だけではなく郊外の開業も検討する

一般内科だけなのか、専門領域も標榜するのかによって、適切な開業物件は変わってきます。

一般内科だけでの医院・クリニックは、都心部では競合に埋もれやすくなります。

患者さんの属性にもよりますが、子どもや高齢者などを対象とする場合は、むしろ郊外の住宅街に開業した方が集患しやすいでしょう。

競合を避けるという意味では、医師の高齢化が進んでいるような地域に開業するのも1つの手です。

医師の高齢化が進んでいる場合は、承継したいと考えている医師も多いため、承継開業も視野に入れておいてもいいでしょう。

医師の高齢化が進んでいる地域では患者さんの高齢化も進んでいるので、訪問診療(在宅医療)のニーズが大きい可能性がありますが、医師の高齢化が進んでいる地域は、すなわち患者さんの人口減少も著しい地域でもある可能性があるので注意しましょう。

もし、訪問診療に力を入れたいならば検討の余地はあるでしょう。

訪問診療の開業については、以下の記事をご覧ください。

一般内科に加えて、専門領域を標榜する場合は、比較的都心部、郊外ともに選択肢が広がります。

ただ、開業物件に、ご自身の専門領域の需要があるかどうかはよく検討しなければいけません。

わかりやすい例で言えば、候補地の周囲に小児科がない場合、ファミリー層の多い住宅街などであれば需要が見込めます。

逆に、子どもが少ない地域の場合は需要がない可能性があるので、開業場所としてはむしろ適切とは言えません。 患者さんの属性を明確にして診療圏調査を行い、適切な開業場所を選定しましょう。

専門領域の有無や導入設備によって開業資金は大きく変わる

内科といっても、開業コンセプトによって診察内容は様々なので、どんな専門領域で、どんな設備を導入するかで開業資金は大きく変わります。

例えば、MRIやCTなどの高度や医療機器を導入するかどうかで、開業資金が大きく変わりますし、物件の条件も変わってきます。

後述するように、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科など開業のポイントが各々違ってきます。

地域間連携が重要になってくることも多いので、物件と開業資金については慎重に検討しましょう。

専門領域を標榜する場合は患者さんに診察内容が伝わるようにする

専門領域を標榜する内科というと、消化器内科、呼吸器内科、循環器内科、脳神経内科などがあります。

ただ、どの専門領域でも、患者さんはどんな病気に対応しているのかわからないことが多いです。

チラシやホームページで集患する際は、診察する病名・症状名などがわかるようにしておきましょう。

また、SEO対策、MEO対策でも、診療科目だけでなく、病名・症状名でも検索上位に表示される対策をしておくことが理想です。

専門領域を標榜しても一般内科の診療をしていることを患者さんに伝える

専門領域だけでなく、一般内科としても診察している旨を伝えるようにすることも大切です。

例えば、インフルエンザになった際、「消化器内科」としか看板やホームページに記載されていないと、患者さんは診察してくれるかどうかわかりません。

実際、それでわざわざ遠いクリニックを受診してしまうということは珍しくないのです。

専門領域を強く打ち出しつつ、一般内科としての認知も図るようにして、看板やチラシ、ホームページなどを作るといいでしょう。

内科開業で共通する3つの失敗しない開業ポイント

一般内科だけの場合でも、専門領域も標榜する場合でも共通する、失敗しない内科開業のポイントや注意点について解説します。

患者さんの属性やプライバシー、感染対策を考慮して広めの内装にしておく

一般内科を含めて診療する場合の多くは、内装はかなり広めに設計しておく必要があります。

内科の場合、採尿や内視鏡検査など、プライバシーに配慮した設計が必要になることが多いためです。

採尿用トイレを設置する必要もあるでしょうし、男女別にしておく必要もあるでしょう。

また、風邪やインフルエンザ、コロナなどを診察することになるので、感染症対策は必須となります。

インフルエンザに罹患した患者さんと、そうでない患者さんとの動線を分けておく必要があります。

新型コロナウィルスの脅威は過ぎ去っているものの、特に子どもや高齢者は感染症には敏感です。

その他、高齢者が多い地域であれば、車椅子が必要な患者さんも多くなりますし、小児科も標榜するならベビーカーのスペースが必要です。

可能な限り、バリアフリーも整えておく必要があります。

患者さんの属性にもよっては、待合室や受付、廊下幅についても広めにしておく必要があるでしょう。

休日診療を検討する

開業場所によっては、休日診療の検討も必要です。

特に郊外のクリニックは、土日祝日も診療して、平日を休診とする場合が少なくありません。

競合の内科クリニックの休診日に診療するのもいいでしょう。

集患しやすくなりますし、いつでも診てもらえるという安心感で患者満足度向上にも繋がります。

患者満足度の向上は、かかりつけの内科医として継続して来院してもらえるかどうか重要なポイントになります。

ただ、都心のオフィス街に立地しているような場合は平日のみ診療とした方がいいでしょう。

その代わり、会社員が来院しやすいように、早朝、深夜診療を行うといったことも検討が必要です。

専門とする病名、症状など開業コンセプトと照らし合わせて、診療時間はよく検討しましょう。

地域連携を強化する

物件選びの段階では、競合調査だけでなく、地域連携ができるかどうかも重要なポイントです。

特に一般内科など、複数の疾患を総合的に診療するような場合は、地域連携は欠かせません。

例えば、物件の面積や開業資金の問題でCTやMRIを導入できない場合は、他の病院やクリニックと連携する必要があるでしょう。

地域連携をすることで、自分が患者さんを紹介するだけでなく、紹介してもらえることもできます。

開業直後から集患に困らないようにするには、地域間の連携はかなり重要になってきます。

自院に高額な設備がなくても、地域連携を強化することで、「とりあえずこのクリニックに行けば大丈夫」と地域の患者さんに信頼されるようになっていきます。

各専門領域の開業のポイントを簡単に解説

先ほどお伝えしたように、内科の場合、各専門領域も一緒に標榜するケースが多いです。

そこで、各専門領域の内科開業のポイントも簡単に解説します。

消化器内科

消化器内科は、内科の専門領域のなかでも競合の医院・クリニックの数が多いです。

厚生労働省 の「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 」によると、全国の診療所で働く消化器内科医の人数は3,734名です。

診療所全体の3.5%を占めており、呼吸器内科や循環器内科、腎臓内科、脳神経内科よりも多い数値になります。

そのため、上部内視鏡だけでなく下部内視鏡にも力を入れることはもちろん、他院とどう差別化していくかがポイントとなります。

消化器内科は、内視鏡検査の設備を有するので、一般内科以上に広い物件の選定が必要です。

特に、近年需要のある下部内視鏡検査を行う場合は、回復室やトイレなどが複数必要になります。

消化器内科や内視鏡クリニックの開業事例については、次のインタビュー記事をご覧ください。

医院開業インタビュー | vol.21 | 成城スカイファミリークリニック | 石曽根 浩明先生 | 税理士法人テラス

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循環器内科

循環器内科を訪問する患者さんは、言うまでもなく高血圧症、不整脈、心筋梗塞、動脈硬化、息切れといった心臓や血管の病気が対象となります。

ただ、消化器内科に比べると、循環器内科がどんな症状を診察するか知らない患者さんは少なくありません。

特に今まで循環器系の病気にかかったことのない患者さんはよくわからないでしょう。

そこで、先ほどお伝えしたようにホームページなどで、どんな疾患に対応しているかを周知しておく必要があります。

また、腹痛や息切れなどの症状や、CT検査などで循環器系の病気と判明することがあるので、地域間の連携を強化しておくことも必要です。

呼吸器内科

呼吸器内科は、喘息や息切れなどの症状で悩む患者さんが多く来院します。

開業コンセプトにもよりますが、多くの場合、患者さんは「喘息」や「息切れ」に関連するキーワードで検索します。

喘息や息切れに悩む患者さんが来院できるように、ホームページを作成してSEO対策やMEO対策を実施するといいでしょう。

消化器内科や循環器内科に比べると、競合が少ない分、認知度のない専門領域なので、チラシや看板、ホームページなどで認知を高める工夫も必要です。

なお、息切れの場合は、循環器系の病気であることもあるので、地域連携の強化をしておくことも重要です。

脳神経内科・神経内科

内科系の専門領域で、もう一つ認知度があまり高くないのが脳神経内科や神経内科です。

実際、精神科や心療内科に似たような症状を診察するイメージを持つ患者さんも少なくありません。

そのため、ホームページでどのような疾患を扱うのか明確に示しておく必要があります。

また、CTやMRIなど、大がかりな設備が必要になることもあるので、地域間の連携の重要性はかなり高いです。介護施設との連携も必要でしょう。

リハビリ施設を導入する際は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の採用も重要な課題となります。

リハビリ職はなかなか一般的な求人応募では募集がないので、PT-OT-ST.NET などリハビリ職に特化した求人サイトを利用するといいでしょう。

内科・脳神経内科開業事例については、以下のインタビュー記事を参考にしてください。

糖尿病内科・内分泌内科

糖尿病内科、内分泌内科の場合は、現在勤務先の病院から外来患者を連れ出して集患するケースが多いです。

実際に病院勤務されている先生なら実感されているかもしれませんが、糖尿病内科や内分泌内科は、病院の外来数は一度増えると、さらに増加する傾向にあります。

何も相談もなく患者さんを引き抜くことは避けた方がいいですが、勤務先の病院にとっても都合が良くなることが多いです。

また、開業地域に近い医院・クリニックに挨拶に行くことで、糖尿病疾患を抱える患者さんを紹介してもらえる可能性があります。

人工透析内科

透析内科の開業の場合は、開業周辺地域の透析患者数を想定しておくことが重要です。

透析内科の患者さんの少ない地域で開業すると、当然ながら集患に苦労することになります。

そのうえ、透析内科はどうしても通院回数が多くなるので、通院に便利な場所に開業することがポイントです。

ただ、駅前の物件では賃料が高くなることと、近隣病院からの紹介による集患を考慮すると、大通りで目立つ場所に開業する必要はありません。

透析内科の内装は、透析用ベッドなどの設備を考慮すると、広めのスペースを確保しておく必要があります。

また、透析時間が長いので、待合室などは居心地の良い雰囲気のクリニックにして、精神的な負担を緩和するといいでしょう。

人工透析内科、腎臓内科開業事例については、以下のインタビュー記事を参考にしてください。

【まとめ】内科の開業コンセプトを明確にしてから開業準備をする

内科の医院・クリニック開業の失敗しないポイントについて解説しました。

内科は、一般内科だけにするのか、専門領域も標榜するのかによって、開業物件や開業資金が大きく変わってきます。

ご自身の開業コンセプトを明確にして、診療内容に合った医院・クリニックを開業しましょう。

場合によっては訪問診療や地域間の連携も重要なポイントとなります。

なお、内科の開業医・勤務医の年収や働き方については、以下の記事で詳しく解説しています。

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笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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