歯科医院に効果的な集患対策|開業前後に分けて余すところなく詳細解説
厚生労働省の医療施設動態調査によると、2024年5月現在、歯科医院の数は66,736件 と、コンビニの55,684件 を上回っています。
【参考】
・【厚生労働省】医療施設動態調査(令和6年5月末概数)
・【一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会】コンビニエンスストア統計データ
歯科医院は、ここ数年廃院数が新規開業数を上回り、減少傾向にあるとはいえ、しばらく競争が激しい状況は続くと考えていいでしょう。
また、少子高齢化に加え、健康意識の高い高齢者層の増加や、小児歯科の自費率の増加など、歯科医院のニーズは変化しつつあります。
この現状で、歯科医院が生き残るためには、確実に起こる時流の流れに従いながら、効果的な集患対策を行うことが大切です。
そこで、歯科医院の集患対策で必要なポイントを、開業前、開業後に行う施策に分けて解説します。
歯科医院の開業準備で行う3つの集患対策
歯科医院の開業準備では、物件選定、資金調達、内外装の設計、人材採用、看板デザイン、ホームページ制作、開業に関する行政手続きなど様々なタスクがあります。
集患に大きく関わるタスクも多く、しかも物件の選定など、後からやり直しができない場合もあります。
開業後の集患を意識して、開業準備を進めていきましょう。
歯科医院のコンセプトに合った立地・物件選定を行う
開業準備で最初の方に行うことが、歯科医院の立地・物件選定です。
大切なことは、歯科医院のコンセプトを明確にして、ターゲットの属性に合った立地・物件選定を行うことです。
多くの先生は、地元など自分が慣れ親しんだ場所や人通りの多い駅前、商業施設に歯科医院を開業しようと考えがちです。
その立地が結果的にご自身のコンセプトやターゲット層に合っていればいいのですが、そうでなければ集患に苦労する可能性が高いです。
例えば、小児歯科を開業するなら、オフィス街よりファミリー層の多い住宅街を選んだ方がいいでしょう。
立地・物件はやり直しができないので、次の観点で慎重に検討する必要があります。
・地域患者さんの属性
・開業する地域の人口特性、世帯特性
・開業売る地域の治療の需要
・来院するまでの動線
・競合する歯科医院の数
・今後の周辺地域の大幅な開発予定etc・・・・・・
また、歯科医院のコンセプトによって、テナントか、戸建てか、承継開業か選択肢が変わることもあります。
少なくとも、歯科医院のコンセプトや診療方針、理念・ビジョンを明確にしてから物件を探した方がいいでしょう。
医療広告ガイドラインに注意しながら看板、チラシ、ホームページを作成する
集患するには看板、チラシ、ホームページを作成することが必要で、開業前にはいずれも用意しておく必要があります。
医科歯科クリニックで注意しないといけないのが医療広告ガイドラインです。
一般的な商品・サービスに比べると、医療行為に関する広告は、医療法による厳しい広告規制があります。
医療広告規制について定めたものが、医療広告ガイドラインです。
医療広告は、体験談の記載がNG、特典やキャンペーンがNGなど、他の商品・サービスにはない規制が多いので、十分注意しましょう。
そのうえで、患者さんの属性に合った看板やチラシ、ホームページを作成する必要があります。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
開業前に内覧会を開催する
開業直前になったら、内覧会を行い、オープン前の歯科医院の認知拡大を図りましょう。
内覧会で歯科医院を見てもらい、見込み客が院長先生やスタッフと交流できるので、来院のハードルが一気に下がります。
開業後の予約を獲得することもできますし、評判の良い内覧会であれば、口コミで歯科医院のことが拡散されます。
しかも、内覧会を機に来院した患者さんはリピート率が高い傾向にあるので、力を入れて取り組みましょう。
内覧会については、歯科専門のコンサルタントなど、最寄りの専門家に相談してください。
歯科医院開業後に行う7つの集患対策
次に、歯科医院開業後に行う集患対策についてお伝えします。
開業後は、集患だけでなく、患者満足度を上げてリピート率を増やしていくことが大切なポイントです。
新規の患者さん依存から、徐々に継続する患者さんを増やしていくようにしましょう。
患者さんの属性に合った診療時間にする
歯科医院の診療時間については、患者さんの属性に合わせましょう。
所定労働時間(通常は週40時間)の範囲内という制限はありますが、変形労働時間制を適用することで柔軟な対応ができます。
例えば、サラリーマンやOLをターゲットとしたオフィス街の歯科医院であれば、早朝や夜間診療ニーズは強いでしょう。
1日の所定労働時間が長くなるようでしたら、休日を週2.5~3日にするなど調整が必要です。
一方、ファミリー層をターゲットとした住宅街の歯科医院であれば、休日診療のニーズが高いです。
その代わり、平日に休診としたり、1日の診療時間を短くしたりする必要があります。
その他、競合医院の診療時間も考慮する必要がある場合があります。
自分が診療したい時間ではなく、患者さんが来院しやすい診療時間を設定しましょう。
SNSを活用する
ホームページやチラシだけでなく、SNSも活用して集患していくことも考えましょう。
SNSであれば、無料で歯科医院の認知拡大を図ることができます。
主なSNSは、Facebook、X(旧Twitter)、Instagram、LINEですが、画像と相性の良い歯科医院はInstagramがおすすめです。
また、患者さんのリピート率を上げたいのであれば、LINE公式も検討の余地があります。
クローズドなSNSなので炎上が起きにくいが、拡散力が弱い。患者さんの属性によるが、歯科医院の集患との相性はあまり良くない。 | |
X(旧Twitter) | 拡散力はあるが、炎上リスクが高い。誹謗中傷してくるユーザーも少なくない。最近は中高年の利用者も多いが、特に若年層ターゲットの歯科医院であれば利用する余地はあり。 |
画像の投稿が中心となり、歯科医院との相性は良い。特に審美歯科、矯正歯科など自費診療の歯科医院と相性が良い。 | |
LINE公式 | 主に見込み客や来院した患者さんとの関係構築に利用しやすい。患者さんが気軽に診察を予約できるシステムを導入することも可能である。 |
なお、SNSは集患だけでなく、人材採用でも活用でき、実際、SNSを活用して優秀なスタッフを採用できた例もあります。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
患者満足度を上げて離脱を防ぐ
歯科医院を開業して、経を安定させるには、新規集患だけでなく、リピート率を意識した施策が必要です。
先ほどお伝えしたように、LINEで関係構築したり、内覧会を開いたりすることも、離脱を防ぐためには大切です。
ただ、患者さんに長く来院してもらうためには、次のように患者満足度を高めていくことが何より重要です。
・スタッフに対する接遇教育
・歯科医院内の清潔感
・予約システムの改善
・待ち時間の短縮や有効活用
院長先生の治療の腕ももちろん大切ですが、上記のようなことも、患者さんのリピートに大きく関わります。
患者満足度を上げる方法については、以下の記事をご覧ください。
良い口コミを集める仕組みを持つ
患者さんから、良い口コミを集める仕組みを作ると、評判を見た患者さんの来院を増やすことができます。
・患者さんにGoogle Mapsやポータルサイトの存在を周知する
・Google Mapsなどの口コミに誠実に返信する
など、口コミが集まる仕組みを作っていきましょう。
しかし、場合によっては、歯科医院に恨みを持つ患者さんや怨恨退職したスタッフから悪い評判が書き込まれることもあります。
この場合は、誠実に返信対応をしつつ、損害賠償の請求に備えて書き込まれた悪評をスクリーンショットなどで保存しておきましょう。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
患者さんにアンケートに回答してもらう
患者満足度を上げるには、アンケートなどで患者さんのリアルな声を聞いて、歯科医院の運営に活かしていきましょう。
Googleの口コミなどで良い評判を集めることも重要ですが、改善点も指摘してもらうことも大切です。
リアルな要望をうまく反映することができれば、患者さんの歯科医院への信頼は高まり、離脱率の軽減に繋がります。
クレーマーの意見など、内容は取捨選択する必要はありますが、なるべくアンケートに回答してもらい、目を通すようにはしましょう。
ブランディングを意識する
歯科医院の集患率、リピート率を上げるのであれば、ブランディングも意識するようにしましょう。
ブランディングとは、患者さんに「○○と言えば、あの歯科医院」「あの院長先生は○○」と認識してもらうことです。
つまり、「先生のクリニックの正しい価値をブランドとして明確にし、そのうえでその価値が正しく患者さんに伝わるようにする」ということです。
患者さんからアンケートを取ったり、Google Mapsなどの口コミ投稿を促したりしながら、どういう声が多いか傾向を見てみましょう。
「先生はとても感じがいい」
「先生に診てもらうと、歯が痛くなくなる」
「先生はとても親切だ」
こういった些細な声でも、積み重なるとブランドとして確立していきます。
また、患者さんに良いブランドイメージが浸透するには、口コミの力が大きくなるので、日頃から患者満足度を上げていくようにしましょう。
スタッフが働きやすい環境を整える
一見すると集患と関係ないように見えますが、スタッフが働きやすい環境を整えることが大切です。
スタッフの離職率が高いと、知識と経験のないスタッフが多くなり、患者さんの要望にすぐに対応できず、不信感が募ることになりがちです。
逆に、スタッフの定着率は、患者さんの安心感に繋がるのです。
また、やりがいを持ってストレスなく働くスタッフほど、患者満足度を上げようと努力する傾向にあります。
その結果、スタッフと仲良くなって、話すことが楽しみで歯科医院に通う患者さんも増えるでしょう。
歯科医院で働くスタッフの労務関係の改善については、以下の記事を参考にしてください。
【まとめ】患者満足度の向上が長期的な集患とリピートに繋がる
以上、開業前、開業後の歯科医院の集患方法についてお伝えしました。
立地・物件やホームページや看板などはかなり重要ですが、長期的に患者さんが来院し続けるには、日頃の患者満足度の向上が不可欠です。
高い治療技術と患者満足度の向上、適切な広告などで勝手に良い評判が口コミで広がる仕組みを作りましょう。
歯科医院の集患については、以下の記事も参考にしてください。
監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。