AGAオンライン診療のメリット・デメリットと導入のポイントとは?

公開日:2022年9月16日
更新日:2024年4月8日

欧米に比べると、日本ではオンライン診療の普及に時間がかかっていますが、相性のいい症状を中心に徐々に導入が増えています。

AGA(男性型脱毛症)は、基本的に薬の処方が中心の疾患のため、オンライン診療と相性のいい症状の1つです。そのため、オンライン診療を導入する皮膚科のクリニックが増えてきています。

実際に日本オンライン診療研究会の「オンライン診療に関するアンケート集計結果」によると、オンライン診療を行っている主な対象疾患で、AGAは第2位です。

そこで、AGA治療のメリット・デメリットと導入のポイントについてお伝えします。

AGA治療のオンライン診療のメリット

AGA治療が比較的オンライン診療の導入が進んでいる背景としては、以下のようなAGA治療のオンライン診療のメリットがあるためです。

精神科、避妊治療と同様に、患者側のオンライン診療のメリットが強いため、比較的導入が進んでいると考えられます。

AGA治療の皮膚科が近くにない患者さんが受診する

オンライン診療の大きなメリットは、外出することなく遠隔で診療を受けられる点にあります。

現状、AGA治療を行っているクリニックは都市部には多いものの、地方では数が少ない地域も少なくありません。

もちろん、今後は地方でもAGA治療を行うクリニックは増えると考えられます。

しかし、今のところはAGA治療を行う皮膚科が近くにない場所にお住まいの患者さんが、気軽に遠方で受診できます。

そのため、移動時間と交通費の節約に繋がり、クリニックとしては患者さんの来院を促すことができます。

クリニックの事務の手間を減らすことができる

これは、AGA治療に限らない話ですが、オンライン診療では、受付、会計、次回予約などの業務を短縮できます。

アプリなどを導入すれば、クリニックの窓口を介さずとも、受付、会計や次回予約がすべてアプリ内で完結します。

そのため、クリニック側の事務作業の手間を減らすことができるので、受付業務の生産性向上に繋がります。

最初はシステムの導入に戸惑うこともありますが、最近はAmazonや楽天で買い物できるくらいのパソコンスキルで、すぐに使いこなせるシステムが増えています。

もちろん、これは患者さんにとってもメリットが大きく、アプリなどの操作ですべて完結できるので、受付で待たされる煩わしさがありません。

待ち時間ゼロで診療を受けられる

オンライン診療であれば、待ち時間ゼロです。

AGAの場合、薬の処方だけを目的として来院する患者さんも多く、その場合診察時間は短いので、長い待ち時間は不満の元です。

場合によってはクレームに繋がり、患者満足度の低下に繋がります。

しかし、オンライン診療を導入することで、待ち時間の不満がなくなりますし、クリニック側は診療できる患者さんが増えます。

定期的に診療に来る患者さんだけでもオンライン診療にするだけで、患者満足度と集患数の向上が見込めます。

定期的な治療の必要性があるAGA治療であれば、このメリットは大きいでしょう。

来院に抵抗がある人でも受診しやすい

AGAはデリケートな悩みで、自分の悩みを知られたくない、来院しているところにばったり人に会いたくないという患者さんもいます。

オンライン診療を導入することで、来院に抵抗のある患者さんの心理的ハードルを下げることが可能です。

この点は、精神疾患や避妊治療と同様の特徴と言えます。

患者さんが来院に抵抗を持つ疾患ほど、オンライン診療の可能性は大きいでしょう。

AGA治療のオンライン診療のデメリット

次にAGA治療のオンライン診療のデメリットについてお伝えします。

他の疾患と同様に、初診などしっかりした触診を必要とする診察の場合は、対面診療を行い、両方のメリットを活かすことが必要でしょう。

触診による頭皮や髪の毛の確認ができない

当然のことながら、オンライン診療は触診ができません。

また、視診でもオンライン診療では診察が難しい場合があり、医師のオンライン診療に対する経験値も問われます。

特にマイクロスコープ等で頭皮の状態や髪の毛の太さ、密集度を診察する必要がある場合は、対面診療が必要となります。

初診はどうしても対面診療が必要になります。

薬の処方以外の治療が不可能な場合がある

AGAがオンライン診療との相性がいい理由は、薬の処方を中心とする患者さんが多いからですが、逆にそれ以外の治療はオンライン診療が難しくなることがあります。

例えば投薬治療で大きな効果が期待できない注入療法や、自毛植毛などが必要な場合は対面診療が必須です。

症状の進行具合によっては、オンライン診療が難しいのが難点ですが、これはどの疾患に対しても共通しているところです。

薬の処方はオンライン診療、薬が難しければ対面診療と、メリハリを付けた治療方針が必要でしょう。

オンライン診療の方が治療費は安い傾向にある

AGAは自由診療になるため、治療費はクリニックによって違い、対面診療もオンライン診療も同様です。

ただ、対面診療よりもオンライン診療を安くしているクリニックが多く、相場観ではオンライン診療の治療費は安くなりがちです。

ただ、オンライン診療にすることで、診察時間を短縮することもできますから、分単価という観点では、決して悪くない場合も多いです。

また、患者さんにとっては治療費が安い方がメリットですから、集患はしやすくなります。

クリニックにとって単価アップが図れて、患者さんにとっては安価であれば、デメリットどころか、大きなメリットです。

AGA治療のオンライン診療導入のポイント

上記のメリット・デメリットを背景に、もともとコロナ前からオンライン診療でAGA治療を行うクリニックは一定数ありました。

比較的AGA治療は、他の疾患に比べてオンライン診療が進んでいましたが、コロナ禍によってさらに非接触の治療のニーズが拡大しました。

そこで、AGA治療のオンライン診療の導入のポイントをお伝えします。

対面診療に近いオンライン診療を実現する

メリット・デメリットでお話したように、AGA治療でも対面診療が必須の場合があります。

そこは割り切って対面診療とオンライン診療を組み合わせた治療を行う必要はあるのですが、オンライン診療の技量を上げることはできると考えられます。

触診は不可能でも、視診の場合は、極力対面診療に近いオンライン診療をすることが可能です。

AGAはオンライン診療が比較的浸透していることと自由診療であることから、競争が激しくなることも想定されます。

オンライン診療の技量を上げることで、他のAGAオンライン診療との差別化に繋がります。

オンライン診療ですべて完結させずに対面診療と併用

対面診療に近いオンライン診療を行うことは、技術的に今後どんどん可能になっていくと思われます。

しかし、だからといって、オンライン診療ですべて完結させることはほぼ不可能と考えられます。

触診が必要な場合、薬の処方で治療が難しい場合は対面診療が必要です。

薬の処方で治療効果のある再診の患者さんはオンライン診療、初診と薬の処方が難しい場合は対面診療など、メリハリを付けるようにしましょう。

また、患者さんによっては、自宅や職場の近くなどの理由で対面診療を好むこともあり得ます。

また、オンライン診療もいいけど、不安だから対面診療もしたいという患者さんもいるでしょう。

重要な悩み、理解してほしい症状などは対面で相談したいと考える患者さんは少なくありません。

患者さんの要望によっても、対面とオンラインを分けることも検討しましょう。

患者さんの本当の悩みを解決する

AGA治療は、身体の調子が悪いから治療する保険診療と異なり、「昔の髪の毛を戻したい」と考える患者さんが治療を希望します。

自由診療の美容外科や歯科にも同じことが言えますが、患者さんのニーズが保険診療よりも色濃く出ている治療です。

そのため、患者さんの本当の悩みを把握することが必要です。

「昔の髪型を戻したい」

と言っても本当にそうなのか? ということです。

昔の髪型を取り戻すのは実際に不可能でも、年相応の髪型にするくらいで満足できるかもしれません。

まったく治療効果がないのもだめですが、患者さんの求めていること以上の治療をしようとしても患者さんは満足しません。

患者さんにとって余計に治療費がかかるからです。

患者さんの本当のニーズは、オンライン診療でも十分聞き出すことができます。

患者さんの本当の悩みは何かということを、診療の都度意識することが大切です。

費用を明確にする

医療広告ガイドラインでは、ホームページなどで各治療の費用を記載しなければいけませんが、患者さんの立場で考えても料金体系は明確に示しましょう。

AGA治療は自由診療なので、決して安い金額ではありません。

患者さんは、初診料、再診の治療費、処方される薬の費用などを気にします。

対面診療とオンライン診療の価格が違うのであれば、その旨も記載しておくといいでしょう。

そうすることで、対面の必要がない患者さんについては、オンライン診療を促すことができます。

患者さんが使いやすい予約システムの導入

オンライン診療では、対面の診療ができないので予約システムの導入が必須です。

クリニックにとって使いやすいのはもちろん、患者さんが予約しやすいかどうかも確認しておきましょう。

自由診療の場合は特に、予約しづらいというだけで離脱の可能性があります。

【まとめ】対面診療に近いオンライン診療を実現しつつも併用する

以上、AGAオンライン診療のメリット・デメリットと導入のポイントについて解説しました。

日本のオンライン診療の普及は欧米より遅れていると言われていますが、AGA治療については比較的オンライン診療が導入されています。

薬の処方だけでいい患者さんも多いので、今後もAGA治療のオンライン診療を導入する皮膚科は増えると考えられます。

とはいえ、AGA治療でもどうしても対面診療が必要な場合も出てきます。

対面診療に負けないくらいのオンライン診療を実現しつつも、対面診療とうまく併用することが、AGA治療成功の秘訣と言えるでしょう。

オンライン診療については、以下の記事もご覧ください。

【関連記事】「オンライン診療の適切な実施に関する指針」2022年改訂版の重要ポイント

笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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