【2022年最新】歯科の開業医・勤務医の年収は?開業事例や必要資金も解説

公開日:2018年9月1日
更新日:2024年3月18日

歯科で開業しようと考えている先生に向けて、歯科開業医の年収や、勤務医との比較、開業資金の目安、開業事例について解説します。

コンビニより数の多い歯科医院は、やはり競争が激しく、それだけに医科に比べると自費診療の集患対策、Webマーケティングなどが発達している印象があります。

しかし、歯科医院の開業は二極化が進んでおり、確定申告したら所得税がかからないくらい収入が低かったという話も聞きます。

もちろん、開業するのであれば、このようなことは避けないといけません。

本記事では、公的データから見えてくる歯科業界の実態や、事例から見えてくる開業の重要ポイントについても詳しくお伝えします。

※開業医の年収や開業資金は個人差がかなり大きく、バラツキがあるので、あくまで参考までにご覧ください。

医療経済実態調査から見る歯科の開業医と勤務医の年収

日本歯科新聞社では、2021年11月に公表された厚生労働省の第23回医療経済実態調査をもとにして個人歯科診療所の損益差額と勤務医の年収を算出しています。

 年収・損益差額
個人立歯科診療所(青色申告者含む)の損益差額1,182.4万円
(コロナ関連補助金を含めて1,266万円)
勤務医の年収645万円
医療法人の損益差額658.3万円
(コロナ関連補助金を含めて738.7万円)

つまり、個人の診療所の院長の年収は、コロナ関連の補助金を除くと1,182.4万円になるということです。

ただ、この年収はあくまでも、税金はもちろん、開業時の借入金の返済など経費にならない額は考慮されていないので、手取りはもう少し低くなると思われます。

ただ、歯科勤務医の平均年収が645万円であることを考えると、開業医の方が年収は高いと考えることができます。

しかし、歯科だけでなく医科でも同じことが言えるのですが、これはあくまで平均値であるため、年収の高い歯科医もいれば、年収の低い歯科医もいます。

特に歯科業界は以前から二極化が進んでいるとも言われています。

少し古いデータにはなりますが、4人に1人は年収200万円以下、100人中5人は所得税ゼロとも言われています。

古いデータなので信憑性はともかく、開業して年収200万円以下ということは、集患対策に苦しみ、借入金の返済などでキャッシュフローを圧迫している状態です。

例え歯科医院を開業したとしても、このような状態になる可能性はあるのです。

一方で何千万円~1億という年収を得ている歯科の院長先生も、数は少ないながらも存在しています。

歯科医の年収層の正確かつ最近の統計データは今のところありませんが、上記のように大きな差があるのは肌感覚としては実感します。

全国の歯科医院はコンビニより12,000件多い

厚生労働省の医療施設動態調査(令和3年9月末概数)によると、2021年9月現在の全国の歯科診療所の数は68,041件であることがわかっています。

なお、JFAコンビニエンスストア統計調査月報によれば、2021年11月現在のコンビニの数は55,928件です。

つまり、歯科医院の数はコンビニよりも12,000件ほど多い計算になるので、「歯科医院はコンビニより多い」は本当の話と言えます。

なお、医療施設動態調査によれば、一般的な医科の病院数は8,205件、一般診療所は104,621件です。

ただ、一般診療所については、内科、外科、眼科、産婦人科、皮膚科、精神科などの全診療科目の合計です。

そう考えると、いかに歯科医院の数が多いかがわかります。

なお、医療施設動態調査を年間統計で見てみると、2018年10月~2019年9月の1年間で、歯科医院は1,451件開設され、1,477件廃止されています。

廃業の理由は経営難だけでなく、後継者不在など他の理由も考えられるので、これだけで歯科医院の廃業リスクが高いとは言い切れません。

しかし、廃業件数と同じくらいの歯科医院が毎年開業されているので、歯科医院の数としては大幅な増減は見られません。

そのため、今後も歯科医院の激しい競争は続いていくと思われます。

歯科の開業資金の目安

勤務医を辞めて歯科医院を開業するとなると、少なくとも4,500~5,000万円くらいの開業資金は用意しておきたいところです。

これは、内科や一般皮膚科、小児科などの医科クリニックの開業資金とあまり変わらない数字です。

矯正歯科や審美歯科の場合など、必要な医療機器も変わってくるので、場合によっては6,000~7,000万円程度の開業資金が必要かもしれません。

基本的には内科や小児科などの医科クリニックと開業資金に関する考え方は一緒で、歯科医院開業の場合は次の資金を用意しておく必要があります。

・賃借費用(テナント開業の場合)
・土地や建物(戸建て物件の場合)
・内装、外装費用
・チェアユニット
・デジタルレントゲン機器
・その他歯科器材
・電子カルテ
・歯科医師会入会金(歯科医師会に入会する方のみ)
・広告宣伝費
・開業1~2年の運転資金(歯科医、歯科衛生士などの人件費含む)

開業時に、これだけの用意しておきたいことを考えれば、やはり上記のような開業資金は用意したいところです。

コロナ禍の歯科医院開業はむしろ有利

コロナ禍での歯科医院の開業は、以下の観点でむしろチャンスと言えます。

  1. コロナ禍で撤退した店舗が多く、優良な空き物件が多くなっている
  2. 他の歯科医院が採用を抑えているので優秀な人材が集まりやすい
  3. 融資や補助金が通りやすくなっている

これは歯科に限った話ではなく、一般的な医科クリニックでも同じことが言えるのですが、コロナ以降、開業や分院展開に対してはむしろ追い風なのです。

ただ、今後もコロナの懸念が続くとは限らないので、この状態がいつまで続くかはわかりません。

ただ、開業を検討されている先生にとっては、今は比較的良いタイミングであることは言えます。

この件については、拙著「開業医の教科書Q&A」(2022年1月出版)でも詳しくお伝えします。

なお、コロナに関する融資措置については、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】【コロナで売上減】医院・クリニックが使える融資措置や給付金クリニック コロナ 融資

歯科の開業事例

競争の激しい歯科医院は、様々な開業ノウハウや集患ノウハウがありますが、診療方針や開業物件などによって、適切な方法が違ってきます。

他の歯科医院の成功事例が、先生が開業している歯科医院にあてはまるとは限りません。

しかし次のような、歯科医院開業に共通して重要なこともあります。

  1. 治療方針やコンセプトを明確にすること
  2. 経営理念やビジョンがあり、勤務医や歯科衛生士にも共有できること
  3. 必要な設備投資はするが無駄を削り、最初からお金をかけすぎないこと
  4. スタッフ間の人間関係が良好で、労使間トラブルを防いでいること
  5. 医療広告ガイドラインに注意しながらWebマーケティングに力を入れること

その点については、以下の記事で詳しく解説しています。

【関連記事】年間1,600件も…歯科医院が廃業に追い込まれる6つの理由とは?

これらを踏まえて、弊社の開業支援を受けた歯科医院の事例についてお伝えします。

【最新の術を用いた矯正歯科開業】日本橋はやし矯正歯科 林 一夫先生

「3Dデジタル矯正を普及させたい」と、自分のやりたい医療を実践するために開業した林先生。

もともと北海道の大学では最新のデジタル技術を用いた矯正治療の研究をしていましたが、これを日本でもっと普及させたいと考えて東京で開業することにします。

開業場所で日本橋を選んだのは、次の理由でした。

  1. 競合が少なかったこと
  2. アクセスがしやすいこと
  3. 1Fの物件だったこと
  4. 規模感が思い描いていた物件と一致していた

矯正治療は、審美治療などと同様に、ネットで事前に検索してから来院する患者さんが多いため、名称については、ネットでの検索を意識して地名を入れています。

開業後の医院経営には、歯科に限らずスタッフ採用が重要ですが、良い人材を採用できたと満足されていました。

今は分院もオープンされ、自己実現のために向かっていらっしゃいます。

【関連記事】日本橋はやし矯正歯科 林 一夫先生

【承継開業した事例】上板橋歯科クリニック 圓谷 俊博 先生

もともと勤務医の頃から開業を考えていた圓谷先生は、結婚して子供を授かり、人生設計について真剣に考えるようになって開業を決意します。

圓谷先生が選んだのは、開業資金を抑えられ、患者さんやスタッフさんも引き継げる居抜き物件での承継開業でした。

ただ、承継開業の場合、不安なところは、引き継いだ患者さんやスタッフさんが合うかどうかです。

特に承継で問題になりやすいのがスタッフさんとの相性なのですが、圓谷先生の場合は、承継後もスタッフさんが長く働いています。

また、圓谷先生は承継の1~2か月前から前院長先生と一緒に働いたので、患者さんの引継ぎもスムーズでした。

承継開業の成功事例と言えます。

【関連記事】上板橋歯科クリニック 圓谷 俊博 先生

【承継開業した事例】和光市歯科 山崎 新 先生

もう1つ承継開業した例が、和光市歯科の山崎先生です。

山崎先生も、ローコストな承継開業に魅力を感じた1人ですが、非常に理想的な居抜き物件を見つけます。

ただ、売主の最初の提示価格が想定していたよりも高額だったので、しっかりと資金計画書を作成しようとして弊社の開業支援に申し込まれました。

当初は、法人としての引継ぎを希望していたのですが、それでシミュレーションすると、かなり開業後の資金繰りが厳しいことがわかります。

そこで、法人を引き継がずに譲渡資金を抑えたうえで、個人として開業する道を選びました。

正直簡単な売主との交渉は簡単ではなかったのですが、何とかお互い歩み寄って、承継について合意に達することができました。

【関連記事】和光市歯科 山崎 新 先生

【医療モールで開業】ふたまたがわ歯科口腔外科 中谷 逸希先生

お父さんが開業歯科医だったため、自分も開業しようと思っていた中谷先生。

相鉄線二俣川駅直結のワンフロアすべてが医療機関という医療モールという、絶好の立地条件で開業されました。

医療モールは、集患力が非常に高い分、競争が激しいと言われていますが、医療モール内の他のクリニックとの連携を期待できるということが評価され、入ることができました。

物件が決まったら、あとは融資の話になりますが、無事に歯科開業では考えられないような大型の融資を手にすることができています。

【関連記事】ふたまたがわ歯科口腔外科 中谷 逸希先生

【まとめ】激戦区でも差別化に成功することは十分可能

以上、歯科開業医の年収、勤務医の年収、開業資金の目安、開業事例についてお伝えしました。

歯科業界といえば競争が激しいイメージが強いですが、それだけにWebマーケティング、保険外診療での集患対策のノウハウがたくさんあります。

もちろん、小手先のテクニックに頼って集患してもうまくいきませんが、自分の理想の治療方針を明確にすれば、必要な情報が手に入りやすいところがあります。

もし、理想の歯科医院を実現したいという志があれば、開業して成功する確率は高いでしょう。

弊社には、上記に紹介した歯科医院以外でも、多くの歯科医院開業の成功事例があります。

もし、歯科医院開業を検討中の先生は、ぜひご相談ください。

笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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