皮膚科勤務医から美容皮膚科で開業しようと考えている先生に向けて、開業医・勤務医との比較、開業資金の目安について解説します。

保険適用の治療がほとんどなく、自由診療中心の美容皮膚科は、美容外科とともに開業医・勤務医ともに他科より年収が高いと言われています。

一方で美容皮膚科となると、他院との差別化を図るために高額の最新医療機器を導入するケースが多く、開業資金が他科より高くなる傾向にあります。

この点も美容外科と共通する特徴です。

美容皮膚科医の年収やクリニックの開業資金については、実際のところはどうなのでしょうか?

美容皮膚科での開業を検討されている先生はぜひご覧ください。

美容皮膚科の勤務医の年収は? 求人サイトを見ると……

美容皮膚科の勤務医の年収については、厚生労働省などが調査した公的なデータはありません。

ただし、医師の求人を見てみると、多くの美容皮膚科の勤務医の先生の年収は1,500~3,000万円程度で医師の応募があることがわかります。

経験の多い美容皮膚科の先生であれば、5,000万円を超えるような求人もあります。

また、分院長クラスの求人となるとだいたいは年収3,000万円で応募しているような印象です。

第22回医療経済実態調査から算出される全開業医の平均年収は2,763万円ですから、美容皮膚科の勤務医は他科の開業医より年収の高い人も多いことになります。

しかも医療経済実態調査から算出されている開業医の年収は、借入金の返済など経費にならない支出が含まれていません。

そう考えると、美容皮膚科の勤務医の先生がいかに高年収であるかがわかります。

この特徴は、美容皮膚科と同様に自由診療がメインとなっている美容外科と同じような傾向です。

ただ、これは必ずしも好条件とは限らず、多くの美容皮膚科クリニックは、実績のある医師に報酬を多く支払うインセンティブ制度となっていることが多いです。

そのため、勤務医でも実績を積み上げていく医師と、そうでない医師では雲泥の差になることも考えられます。

逆に言えば、実績を上げていくにつれ年収が上がっていくというのは、経験豊富な医師にとっては夢のある話と言えます。

美容皮膚科の開業医の年収は?

美容皮膚科は、医師のなかでも異色の分野であるためか、開業医の年収についても厚生労働省等の公的調査データは確認できません。

ただ、勤務医でも年収が1,500~3,000万円、実力次第で5,000万円到達ということは、開業医の先生となれば、より高い年収が見込めます。

場合によっては、年収億越えを実現している先生もいるでしょう。

ただ、後述するように、美容皮膚科は高額の医療機器を揃えるケースが多く、開業資金が高額になりがちです。

美容外科と美容皮膚科を一緒に標榜するクリニックも多いですが、美容外科も同じような理由で開業資金が高くなる傾向にあります。

女性医師の割合が高い美容皮膚科

美容皮膚科は、比較的女性医師の割合が高い印象があります。

美容皮膚科の男性医師と女性医師の割合は正確なデータは出ていませんが、美容皮膚科は、皮膚科を経験してきた先生が大半です。

その皮膚科ですが、2018年医師・歯科医師・薬剤師統計によれば、女性医師の割合は病院が54.8%、診療所が44.3%であることがわかっています。

皮膚科に女性医師の割合が高いのであれば、当然美容皮膚科も女性医師の割合が高いことが考えられます。

美容皮膚科に通う層は男性美容を除けほぼ女性なので、女性医師に診てもらえるのは、女性患者さんにとっては安心材料になるでしょう。

美容皮膚科も美容外科も、比較的女性医師の需要が高い診療科目と言えます。

また、美容皮膚科は、美容外科と同様に実力主義な一面はあるものの、ワークライフバランスを比較的維持しやすい診療科目です。

皮膚科もそうですが結婚・出産しても仕事を続けやすいところがあり、女性医師にとっては働きやすい科目であると言えるでしょう。

美容皮膚科クリニックの開業資金と開業の注意点は?

美容皮膚科クリニックの開業の考え方については、皮膚科開業よりも美容外科にかなり近いものになってきます。

美容皮膚科を一から開業すると、7,000~8,000万円程度の開業資金が必要となり、場合によっては1億円を超えるケースも少なくありません。

美容皮膚科の開業資金がかかることは金融機関もある程度理解しているので、他科より資金調達に苦労することはないかもしれません。

しかし、無事に資金調達できたとしても、思うように医業収入が上がらなければ開業後に資金繰りに苦しむことになります。

以下にお伝えするように、もしかしたら「そこに資金をかける必要はない」ということも出てくるかもしれません。

開業後のコンセプトを明確にして慎重に検討するようにしましょう。

開業物件の選定

美容皮膚科や美容外科の物件については、やはり一等地の駅近くの激戦区が選ばれるケースが多くなります。

歯科と同様、SEO・MEO対策を含めたWebマーケティングに力を入れているクリニックも少なくありません。

美容皮膚科は、今後の需要が期待されると同時に、競争もますます激しくなることが予想されます。

また、一等地の駅近くとなると、賃料が高額のテナント物件が多くなりますし、ゆったりしたスペースが確保されないことも多いので注意が必要です。

ただし、後述する開業事例のように、郊外で開業したケースもあります。

つまり、必ずしも都心部に開業しないといけないわけではありません。

今後は、美容皮膚科も美容外科についても幅広い世代で需要が高まっているので郊外の美容皮膚科も増えてくると考えられます。

内装費用

美容系のクリニックは、どうしても高級感を演出しようと、内装費をかけて、高級エステのような内装にするケースが多いです。

もちろん、高級感の演出は否定しないのですが、高級感を演出すれば、当然内装費用は高く付く傾向にあります。

ただ、これも必ずしも高級感を演出しないといけないわけでなく、ブランディング次第では、他の保険診療のクリニックと同様の内装でいい場合もあります。

内装費を不必要にかけることを防ぐのはもちろんとして、他のクリニックとの差別化を考慮して内装を検討する必要があると考えます。

医療機器

美容皮膚科や美容外科といえば、どうしても他のクリニックと差別化を図るために最新の医療機器を導入するところが多くなります。

ただ、これでは当然開業資金は膨れ上がりますから、どうしても必要かどうかを十分検討することは当然必要になります。

開業後の治療方針を十分検討してから導入する医療機器を決めるようにしましょう。

開業後、経営が安定してから導入した方がいいような医療機器もあります。

美容皮膚科開業事例

美容皮膚科の開業事例として、「AYA CLINIC鎌倉」を紹介します。

AYA CLINIC鎌倉は、その名の通り鎌倉市内にある美容皮膚科です。

先にお伝えした通り、美容皮膚科は都心に開業するケースが多いのですが、やはり激戦区で乱立しています。

また、スペースがゆったりと取れない物件が多く、院長の繁冨先生はコンセプトに合わないと感じ、鎌倉に開業されました。

広々とした密にならないプライベート空間を作ったことで、患者さんが相談しやすい雰囲気を作り出しています。

そんなAYA CLINIC鎌倉の繁冨先生のインタビューですが、詳しくは以下の記事をご覧ください。

開業準備から開業後の課題をどのように乗り越えてきたかについて、詳しくお話いただいています。

【関連記事】「AYA CLINIC 鎌倉」 繁冨 綾 先生

【まとめ】美容皮膚科は需要があれば都心の開業にこだわる必要もない

以上、美容皮膚科の開業医・勤務医の年収の目安、開業資金の目安についてお伝えしました。

美容皮膚科も美容外科も、今後の需要が伸びてくる一方で、都心部の競争が激しさを増しています。

美容医療が一般的になりつつある今、今後は幅広い需要が見込めるので、郊外の開業も検討してみてもいいかもしれません。

これは美容外科でも同じことが言えます。

開業資金を抑えればいいというわけではないですが、治療方針とコンセプトを明確にすれば適切な投資が可能になります。

開業資金が高額になりがちだからこそ、慎重に検討し、納得のいく開業をするようにしてください。

なお、美容皮膚科とよく比較される美容外科や皮膚科の年収、開業資金についてお伝えした記事もありますので、併せてご覧ください。

【関連記事】皮膚科の開業医・勤務医の年収は? 気になる開業資金も詳しく解説

【関連記事】美容外科の開業医・勤務医の年収が高いのは本当か? 気になる開業資金も解説

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プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

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