歯科の開業医・勤務医の年収は?開業事例や必要資金も解説

公開日:2018年9月1日
更新日:2026年2月27日

歯科で開業しようと考えている先生に向けて、歯科開業医の年収や、勤務医との比較、開業資金の目安、開業事例について解説します。
コンビニより数が多いといわれている歯科医院は、競争が激しく、それだけに医科に比べると自費診療の集患対策、Webマーケティングなどが発達している印象があります。

歯科医院の開業は二極化が進んでおり、確定申告したら所得税がかからないくらい収入が低かったという話も聞きます。もちろん、開業するのであれば、このようなことは避けないといけません。

本記事では、公的データから見えてくる歯科業界の実態や、事例から見えてくる開業の重要ポイントについても詳しくお伝えします。

※開業医の年収や開業資金は個人差がかなり大きく、バラツキがあるので、あくまで参考までにご覧ください。

医療経済実態調査から見る歯科の開業医と勤務医の年収

日本歯科新聞社では、2021年11月に公表された厚生労働省の第23回医療経済実態調査をもとにして個人歯科診療所の損益差額と勤務医の年収を算出しています。

 年収・損益差額
個人立歯科診療所(青色申告者含む)の損益差額1,182.4万円
(コロナ関連補助金を含めて1,266万円)
勤務医の年収645万円
医療法人の損益差額658.3万円
(コロナ関連補助金を含めて738.7万円)

この資料からもわかる通り、個人の診療所の院長の年収は、コロナ関連の補助金を除くと1,182.4万円になるということです。

この年収には税金はもちろん、開業時の借入金の返済など経費にならない額は考慮されていないので、手取りはもう少し低くなると思われます。歯科勤務医の平均年収が645万円であることを考えると、開業医の方が年収は高いと考えることができます。しかし、歯科だけでなく医科でも同じことが言えるのですが、これはあくまで平均値であるため、年収の高い歯科医もいれば、年収の低い歯科医もいるということです。

特に歯科業界は以前から二極化が進んでいるとも言われています。少し古いデータにはなりますが、4人に1人は年収200万円以下、100人中5人は所得税ゼロとも言われています。古いデータなので信憑性はともかく、開業して年収200万円以下ということは、集患対策に苦しみ、借入金の返済などでキャッシュフローを圧迫している状態です。例え歯科医院を開業したとしても、このような状態になる可能性はあるのです。一方で何千万円~1億という年収を得ている歯科の院長先生も、数は少ないながらも存在しています。

全国の歯科医院はコンビニより12,000件多い

厚生労働省の医療施設動態調査(令和3年9月末概数)によると、2021年9月時点での全国の歯科診療所の数は68,041件であることがわかっています。JFAコンビニエンスストア統計調査月報によれば、2021年11月現在のコンビニの数は55,928件です。つまり、歯科医院の数はコンビニよりも12,000件ほど多い計算になるので、「歯科医院はコンビニより多い」は本当です。

医療施設動態調査によれば、一般的な医科の病院数は8,205件、一般診療所は104,621件です。一般診療所というのは、内科、外科、眼科、産婦人科、皮膚科、精神科などの全診療科目の合計です。そう考えると、いかに歯科医院の数が多いかがわかります。

医療施設動態調査を年間統計で見てみると、2018年10月~2019年9月の1年間で、歯科医院は1,451件開設され、1,477件廃止されています。廃業の理由は経営難だけでなく、後継者不在など他の理由も考えられるので、これだけで歯科医院の廃業リスクが高いとは言い切れません。しかし、廃業件数と同じくらいの歯科医院が毎年開業されているので、歯科医院の数としては大幅な増減は見られません。そのため、コンビニよりも多いという件数のまま、歯科医院の激しい競争は維持されていくと思われます。

歯科の開業資金の目安

歯科医院の勤務医を辞めて歯科医院を開業するとなると、少なくとも4,500~5,000万円くらいの開業資金は用意しておきたいところです。これは、内科や一般皮膚科、小児科などの医科クリニックの開業資金とあまり変わらない数字です。矯正歯科や審美歯科の場合ですと、必要な医療機器も変わってくるので、場合によっては6,000~7,000万円程度の開業資金が必要になることも想定しておきましょう。

基本的には内科や小児科などの医科クリニックと開業資金に関する考え方は一緒で、歯科医院開業の場合は次の資金を用意しておく必要があります。

・賃借費用(テナント開業の場合)
・土地や建物(戸建て物件の場合)
・内装、外装費用
・チェアユニット
・デジタルレントゲン機器
・その他歯科器材
・電子カルテ
・歯科医師会入会金(歯科医師会に入会する方のみ)
・広告宣伝費
・開業1~2年の運転資金(歯科医、歯科衛生士などの人件費含む)

コロナ禍の歯科医院開業はむしろ有利

コロナ禍での歯科医院の開業は、以下の観点でむしろチャンスと言えます。

  1. コロナ禍で撤退した店舗が多く、優良な空き物件が多くなっている
  2. 他の歯科医院が採用を抑えているので優秀な人材が集まりやすい
  3. 融資や補助金が通りやすくなっている

これは歯科に限った話ではなく、一般的な医科クリニックでも同じことが言えるのですが、コロナ以降、開業や分院展開に対してはむしろ追い風なのです。ただ、今後もコロナの懸念が続くとは限らないので、この状態がいつまで続くかはわかりません。開業を検討されている先生にとっては、今は比較的良いタイミングであることは言えます。

コロナに関する融資措置については、以下の記事をご覧ください。

【コロナで売上減】医院・クリニックが使える融資措置や給付金クリニック コロナ 融資

はじめに 新型コロナウイルス感染拡大によって、医療機関は厳しい状況に追い込まれています。 しかし、厳しい状況と言っても医療機関の場合は大きく分けて2つのパターンが…

歯科医院の開業事例

競争の激しい歯科医院は、様々な開業ノウハウや集患ノウハウがありますが、診療方針や開業物件などによって、適切な方法が違ってきます。他の歯科医院の成功事例が、先生が開業している歯科医院にあてはまるとは限りません。
しかし次のような、歯科医院開業に共通して重要なこともあります。

  1. 治療方針やコンセプトを明確にすること
  2. 経営理念やビジョンがあり、勤務医や歯科衛生士にも共有できること
  3. 必要な設備投資はするが無駄を削り、最初からお金をかけすぎないこと
  4. スタッフ間の人間関係が良好で、労使間トラブルを防いでいること
  5. 医療広告ガイドラインに注意しながらWebマーケティングに力を入れること

その点については、以下の記事で詳しく解説しています。

年間1,700件も…歯科医院が廃業に追い込まれる5つの理由とは?

歯科医院はコンビニより多いとはよく聞きますが、では実際には、コンビニが全国で55,887件に対し、歯科医院は68,041件です。 ※コンビニ店舗数:一般社団法人日本フランチ…

これらを踏まえて、弊社の開業支援を受けた歯科医院の事例についてお伝えします。

【最新の技術を用いた矯正歯科開業】日本橋はやし矯正歯科 林 一夫先生

「3Dデジタル矯正を普及させたい」と、自分のやりたい医療を実践するために開業した林先生。もともと北海道の大学では最新のデジタル技術を用いた矯正治療の研究をしていましたが、これを日本でもっと普及させたいと考えて開業を決定。発信力と立地を重視し、開業の地は東京の中心地・日本橋を選定。競合の少なさやアクセス性、規模感の合う物件条件も後押しとなりました。開業準備では、物件選定、スタッフ採用、行政手続きなど多くの不安がありましたが、テラスグループの専門家の一括支援により精神的負担を軽減。費用面の不安も結果的に払拭され、「費用以上の価値ある支援」を受けながら準備を進め、平成27年8月に日本橋はやし矯正歯科を開院されました。

医院開業インタビュー | vol.11 | 日本橋はやし矯正歯科 | 林 一夫先生 税理士法人テラス

丸投げしたらすごく高いんじゃないかと不安だったのですが、費用以上のお仕事をしてくれたと感謝しています。|テラスグループには募集から面接、採用まで、全体を通して…

【承継開業した事例】上板橋歯科クリニック 圓谷 俊博 先生

圓谷俊博先生は、ご実家が医科・歯科医院を営んでいた環境から、勤務医時代より将来の開業を意識していました。研鑽を積む中で、自身の理想とする診療方針やスタッフ育成の方向性が明確になり、さらに結婚・出産を機に人生設計を真剣に考えた結果、開業をご決断。開業形態は、過度なリスクを避けるため、居抜き物件での承継開業を選択。物件探しの早い段階で理想的な医院と出会いましたが、前院長との承継時期調整という課題を経て、信頼関係の構築により実現しました。スタッフと患者を引き継ぐ不安も、事前の非常勤勤務による挨拶と丁寧な関係づくりで解消。こうして平成30年10月、上板橋歯科クリニックを承継開業し、地域に根ざした医院づくりをスタートさせました。

医院開業インタビュー | vol.09 | 上板橋歯科クリニック | 圓谷 俊博先生 | 税理士法人テラス

開業を決意したのは、結婚して子供を授かり、人生設計について真剣に考えるようになったことも大きいですね。|スタッフと患者さんを引き継ぐ形で承継開業された圓谷先生…

【承継開業した事例】和光市歯科 山崎 新 先生

山崎新先生は勤務医として大規模医院やインプラント専門院で経験を積む中で、必要な診療技術を一通り身につけたと感じ、開業をご決断。開業形態は、コストと準備負担を抑えられる承継開業に魅力を感じ、仲介業者を通じて物件探しを開始。駅前立地で歯科用CTが完備された理想的な物件と出会い、交渉へと進みましたが、当初提示された条件は医療法人承継を前提とする高額な譲渡内容でした。そこで専門家の助言を受けながら資金計画を再構築し、最終的に「医療法人を引き継がず、個人開業として承継する」という現実的な方法をご選択。交渉を重ねて合意に至り、短期間かつ低リスクで平成30年2月、和光市歯科をご開院。承継開業により準備負担とコストを抑えつつ、自身の理想とする診療を実現する第一歩を踏み出した事例です。

医院開業インタビュー | vol.05 | 和光市歯科 | 山崎 新先生 | 税理士法人テラス

開業するにあたり、プロの方にしっかり資金計画書を作成してもらいアドバイスをいただくべきだなと思いテラスグループに依頼。|医院の承継開業は、機器選び、コスト、業者…

【医療モールで開業】ふたまたがわ歯科口腔外科 中谷 逸希先生

中谷逸希先生は、お父様が開業歯科医であった影響もあり、学生時代から将来の開業を意識されていました。大学卒業後は大学病院・総合病院で12年間にわたり研鑽を積み、歯科口腔外科医としての専門性を確立。生まれ育った二俣川で地域医療に貢献したいという思いから、駅直結の医療モールでの開業を目指しました。しかし、人気物件ゆえ入居交渉は難航し、「この場所でなければ開業しない」と覚悟するほどの強い思いで交渉を継続。無事入居が決まった後は資金面に不安を抱えますが、専門家の支援により大型融資の確保が実現し、開業計画が一気に現実化しました。迅速で的確な資金提案と一元的な税務・労務サポート体制への信頼を背景に準備を進め、平成30年7月、ふたまたがわ歯科口腔外科をご開院。地域に根ざした口腔外科医療の実現に向け、活躍されています。

医院開業インタビュー | vol.07 | ふたまたがわ歯科口腔外科 | 中谷 逸希先生 | 税理士法人テラス

テラスグループは歯科開業では考えられないほどの融資を確保してくださったので、ぜひお願いしたいと思いました。|テラスグループはとにかく仕事が早く、二度目にお会い…

【まとめ】歯科医院激戦区でも差別化に成功することは十分可能

以上、歯科開業医の年収、勤務医の年収、開業資金の目安、開業事例についてお伝えしました。

歯科業界といえば競争が激しいイメージが強いですが、それだけにWebマーケティング、保険外診療での集患対策のノウハウがたくさんあります。小手先のテクニックに頼って集患してもうまくいきませんが、自分の理想の治療方針を明確にすれば、必要な情報が手に入りやすいところがあります。

税理士法人テラス、テラスグループでは、経験豊富な税理士、社労士、行政書士、ファイナンシャルプランナー、事業用物件の専門家などが結集してワンストップで医院開業支援を行っています。
医院開業準備における税務・労務・法務業務のすべてをワンストップで進めることができますので、ぜひご相談ください。

笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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