理学療法士や作業療法士などの人手不足を解消する方法7選


「求人を出しても理学療法士からの応募が全くない」
「理学療法士や作業療法士がすぐ辞める」
医療業界の人手不足は、多くの医院・クリニックの大きな課題になっています。
整形外科やリハビリテーション科を標榜する医院・クリニックであれば、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などリハビリ職の人手不足も大きな課題です。
そこで、今回は理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などが人手不足に陥っている理由や、解決策についてお伝えします。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(PT-OT-ST)が人手不足に陥る2つの理由

まずは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリ職が人手不足に陥っている大きな理由についてお伝えします。
人が増えている以上に需要が拡大している
理学療法士などのリハビリ職は、高齢化社会で需要が高く、現在も医療業界で引く手あまたです。
たしかに、超高齢社会の到来に対応するため、リハビリ職の養成校が大幅に増加したことで、理学療法士や作業療法士の人数は増えています。

※日本理学療法士協会「統計情報」をもとに作成
上図は、1966~2024年までの日本理学療法士協会の会員数の推移を示したグラフです。
2020年頃までは、右肩上がりで推移しており、2020年以降のグラフはなだらかであるものの、依然として理学療法士の数が増えていることがわかります。
作業療法士についても、理学療法士と同様に増加傾向にあります。
【参考】日本作業療法士協会「統計情報」
しかし、整形外科やリハビリテーション科でのリハビリ職の不足感は、依然として高いままです。
リハビリ職の増加以上に、地域医療や在宅医療、訪問リハビリテーションなど、需要が拡大しているためです。
かつてとは異なり、理学療法士の就職の選択肢も増えており、採用難易度が増したことも一因となっています。
そのため、たとえ理学療法士や作業療法士を採用できたとしても、他に条件が良い職場や自分に合う職場が見つかれば、すぐに離職される傾向があります。
都市部に養成校(大学・専門学校)があり地方偏在が起きやすい
リハビリ職の養成校(大学・専門学校)は、都市部に集中している傾向があります。
養成校を卒業した学生は、そのまま学校の近くにある都市部の医療機関へ就職するケースが比較的多く見られます。
特に都市部の大病院などは、自前の専門学校や養成校の紹介などで採用するケースが多いです。
しかし、中小規模の医療法人や、遠方にある地方の医院・クリニックには、養成校の紹介はなかなか回ってきません。
人材紹介会社を利用して理学療法士や作業療法士を採用するにしても、年収の20~25%程度の成功報酬を請求されます。
そのため、特に地方にある小さな医院・クリニックのリハビリ職の採用難易度はかなり高くなっています。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(PT-OT-ST)の人手不足を解消する方法7選

理学療法士などリハビリ職の採用難易度や定着率の現状を踏まえて、人手不足を解消する方法をお伝えします。
リハビリ職に特化した求人サイトで募集する
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、専門性が高い職種であるため、一般的な求人サイトよりも専門サイトを利用して仕事を探す傾向があります。

そのため、上図のPT-OT-ST.NETなどのリハビリ職に特化した求人サイトを利用するのがおすすめです。
SNSを活用して求人募集する
若手の理学療法士や作業療法士は、就職先選びにInstagramやTikTokなどのSNSをチェックする傾向があります。
求人サイトでは伝わらない院内の雰囲気や人間関係といった職場の雰囲気を、なるべく知りたいと考えているためです。
・スタッフの日常:休憩中の談笑風景、勉強会の様子、懇親会や社内行事の一場面など
・リハビリ風景:最新機器を使ったリハビリの様子や、先輩が後輩に指導している動画
・院長やスタッフの人柄:院長やスタッフへのインタビュー動画
実際に、SNS経由で「ここの雰囲気が良さそうだったから」という理由で応募に至るケースが増えています。
特に中小規模の医院・クリニックの場合は、採用コストを抑える意味でも、SNSを活用した採用戦略は欠かせません。
コストをかけずに院内の様子を伝えることができるので、積極的に活用するようにしましょう。
採用後のミスマッチも起こりにくく、リハビリ職のスタッフの定着率向上も期待できます。
SNSを活用した採用戦略については、以下の記事をご覧ください。
多様なキャリアを描ける環境を整える
「このクリニックにいても将来が見えない」という不安は、離職の大きな原因となります。
優秀なリハビリ職に末永く働いてもらうには、多様なキャリアパスを用意する必要があります。
リハビリのスペシャリストを目指すといったことはもちろん、教育や管理職など様々なキャリア形成を視野に入れられるようにしましょう。
「ここでなら自分の望むキャリアが実現できる」と感じてもらうことが、優秀なスタッフの定着に直結します。
新人育成や研修制度の充実を図る
新卒や経験の浅い理学療法士や作業療法士にとって、最大の不安は「自分の技術で患者さんに対応できるか」といったものです。
そのため、新人育成の場や研修体制の整備をおろそかにしてしまうことは、離職の原因になりかねません。
特にリハビリ職は売り手市場なので、研修制度が充実しており、自分を育ててくれる職場に転職することは十分あり得ます。
有資格者は、自分の技術やスキルを磨きたいという気持ちが強い傾向にあります。
「ここなら安心して技術を磨ける」と思うくらいの新人育成や研修制度の充実を図ることで、特に新人が定着しやすくなります。
ただ、スタッフが育つまでは現場の負担が大きくなるので、スタッフ間のチームワークの強化や業務プロセスの見直しが必要になることがあります。
研修制度の充実を図る場合は、人材開発支援助成金の活用も視野に入れるといいでしょう。
【参考】厚生労働省「人材開発支援助成金」
オンラインリハビリなどで地理的な制約をなくす
一部のリハビリ指導や患者さんへのフォローアップに、地理的な制約がないオンラインリハビリを活用することも検討の余地があります。
実際、「通院の負担は減らしたいが、自宅でも専門家の指導のもと効果的にリハビリをしたい」と考えている患者さんは少なくありません。
理学療法士や作業療法士が、より多くの患者さんをケアすることができますし、遠方からの通勤者や育児中のスタッフも働きやすくなります。
特に人口が少ない地方の医院・クリニックの場合は、人手不足がある程度解消されることが期待されます。
医療DXの導入や業務プロセスの見直しで業務効率化を図る
採用や定着率の向上で人手不足を解消する努力も欠かせませんが、同時に必要最低限の人数で仕事を回せるように業務効率化を図ることも大切です。
たとえば、リハビリ職の業務プロセスを洗い出して、無駄な業務がないかどうかを見直す必要があるかもしれません。
事務作業は医療事務スタッフに任せるといったことが必要なケースもあります。
特に残業が常態化しているようであれば、業務内容を見直す必要があるでしょう。
一方で、アナログな業務が効率化を妨げているようであれば、医療DXの推進も要検討です。
電子カルテとリハビリシステムを連携して、実施記録から計画書や算定データへ情報を自動転記できるようになれば、かなり業務が効率化します。
今では、ロボット技術を用いたリハビリを行っている医療機関もあり、リハビリの質を担保しながら理学療法士などの身体的負担を軽減することに繋がっています。
医療DXを導入する際は、IT導入補助金など、補助金の活用も視野に入れると、初期コストの削減になります。
医療DXの詳細については、以下の記事をご覧ください。
待遇や人間関係など労働環境を改善する
待遇や人間関係など、職場の労働環境を改善することは、採用を強化する点においても、定着率を向上する点においても重要です。
もちろん、給与や福利厚生がすべてではなく、条件だけで就職先を選ぶ求職者の採用は見送るべきです。
一方で、給与水準が地域相場より低ければ、引く手あまたの理学療法士や作業療法士から応募が来ることはありません。
人手不足を解消するには、適正な給与設定をすることは必要です。
賃上げ促進税制や、ベースアップ評価料についても把握しておきましょう。
また、スタッフの退職理由の本音で多いのは人間関係や職場の風通しです。
職場の雰囲気が良くなるだけで、人件費を上げることなく離職率を下げることができるでしょう。
さらに、コミュニケーションが円滑になることで、業務がスムーズに進むようになるため、結果的に効率化を図ることができます。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
【まとめ】需要が高い理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の人手不足を解消する
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリ職は、医療業界で需要が高く、人手不足が長年の課題となっています。
近年、リハビリ職の人数は徐々に増えてきているものの、それでも高い需要に追いつくことができない状態が続いています。
しかし、上記の対策のいずれかを行うことで、人手不足を解消したり、業務効率化が進んだりすることが期待できます。
・PT-OT-ST専門の求人サイトや自院のSNSを活用して、求人応募を増やす
・医療DXや業務プロセスの見直しで生産性を向上して働きやすさを追求する
・研修制度の充実、適正な待遇やスタッフマネジメントで長く働きたくなる医院作りをする
最後までご覧いただきありがとうございました。





監修者
亀井 隆弘
社労士法人テラス代表 社会保険労務士
広島大学法学部卒業。大手旅行代理店で16年勤務した後、社労士事務所に勤務しながら2013年紛争解決手続代理業務が可能な特定社会保険労務士となる。
笠浪代表と出会い、医療業界の今後の将来性を感じて入社。2017年より参画。関連会社である社会保険労務士法人テラス東京所長を務める。
以後、医科歯科クリニックに特化してスタッフ採用、就業規則の作成、労使間の問題対応、雇用関係の助成金申請などに従事。直接クリニックに訪問し、多くの院長が悩む労務問題の解決に努め、スタッフの満足度の向上を図っている。
「スタッフとのトラブル解決にはなくてはならない存在」として、クライアントから絶大な信頼を得る。
今後は働き方改革も踏まえ、クリニックが理想の医療を実現するために、より働きやすい職場となる仕組みを作っていくことを使命としている。


