医療事務の人手不足で悩む医院・クリニックの解決策8選

公開日:2026年1月29日
更新日:2026年1月29日

勤務医、看護師、理学療法士など、医療スタッフの人手不足が医療業界で大きな課題になっています。

そのなかで、医療事務は特に人材採用が厳しく、離職率が高い傾向にあります。

以前は1回の募集で100人ほど集まっていたクリニックもありますが、最近は10人未満のケースが多くなっています。

そこで、今回は医院・クリニックの医療事務が人手不足に陥る理由や、人手不足を解消するための対策をお伝えします。

医療事務の採用や定着率に課題がある先生は、ぜひ最後までご覧ください。

医療事務が人手不足になる5つの大きな理由

まずは、医療事務が人手不足になる理由についてお伝えします。

医療事務の人手不足の原因は、医師、看護師など他の医療スタッフとは違うところもあります。

医療業界以外にも選択肢がある

医師や看護師、理学療法士などと違い、医療事務スタッフにとっては、医療業界以外の一般企業の事務職も就職の選択肢になります。

求職者が就職先を選ぶ際、医師や看護師であれば、医療業界のなかで給与や待遇面などを比較検討します。

しかし、医療事務スタッフの場合は、一般企業の事務職と比較検討して好条件でやりがいのある職場を選びます。

医療事務スタッフにとって、医療業界は、あくまで選択肢の1つでしかありません。

労働環境や働きやすさについて改善が遅れると、一般企業と比較検討された際に医院・クリニックが見劣りしてしまいます。

また、実際に働き出してから理想と現実にギャップがあれば、転職先の選択肢が多いので、すぐに離職する傾向にあります。

医療ニーズが増加しているのに人材確保が追いつかない

高齢化に伴い、医療ニーズが爆発的に増加している一方で、働き手となる15~64歳の生産年齢人口は減少の一途をたどっています。

今でも医療業界は売り手市場ですが、今後ますます医療業界の人手不足は深刻化するのではないかと言われています。

もちろん、採用では一般企業が競合となる医療事務についても同様です。

「患者さんは増えるが、スタッフが減る」という状況で、優秀な人材を確保できるクリニックと、そうでないクリニックで二極化が進むと考えられます。

2040年までの医療需要予測については、以下の記事をご覧ください。

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現場の業務効率が悪い

国が医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進しているのに、IT活用が浸透せず、アナログな業務を続けたままでは、医療スタッフの負担が減りません。

・手書きの問診票を転記している
・予約システムを導入しておらず受付で混雑している
・会計が現金払いのみ

といった医院・クリニックは今でも少なくありません。

スタッフの人手不足に対処するため、採用やスタッフの定着に力を入れることはもちろん重要です。

同時に、デジタル化を進めることで、業務生産性を向上させることも欠かせません。

業務生産性を向上させることで、人手不足問題に対応しやすくなりますし、人件費の負担も軽減されます。

医療事務スタッフに求められるスキルが高度化している

医療技術が高度化、複雑化していることで、医師や看護師だけでなく医療事務スタッフにも高度なスキルが欠かせません。

電子カルテや予約システムの操作、オンライン資格確認やマイナ保険証の対応といったDX化、複雑化する診療報酬制度などが一例です。

ITツールの導入などは業務生産性の向上には欠かせませんが、導入初期の医療事務スタッフの負担が大きくなります。

思った以上に覚えることが多く、仕事がうまくいかないことは大きなストレス要因になり、最悪離職につながります。

業務マニュアルやオペレーションの見直しを図り、スタッフが安心して仕事できるように整備していくことが大切です。

患者さん対応など業務内容に悩むスタッフが多い

医療事務スタッフは、患者さんからのクレームを直接受けることが多く、ストレスを抱えやすいです。

少人数で受付・会計業務を回している場合は、仕事に追われているうえにクレーム対応も必要で、精神的な負担は相当なものです。

患者さんからのクレームがもとで、心身に不調をきたし、離職や休職につながるケースも多いです。

患者さんのクレームは、真摯に受け止め業務改善につなげることは必要ですが、同時にスタッフのケアやペイハラ対策も欠かせません。

医療事務の人手不足問題を解消する8つの対策

医療事務が人手不足に陥っている理由を踏まえて、医院・クリニックが人手不足を解消するための対策についてお伝えします。

医療DX化を進めて生産性向上を図る

医療事務の人数を増やすだけでなく、生産性を向上して今の人数で仕事を回す仕組みを作ることも大切です。

先ほどお伝えしたように、導入時は医療事務スタッフの負担は増えるかもしれません。

しかし、中長期的に考えて、自院に必要な医療DXを取り入れるようにしましょう。

例えば、Web予約・問診システムの導入では電話予約や転記作業が、自動精算機の導入では会計業務の負担を削減できます。

今まで「人が足りない」状態だったのが、「今の人数で十分だ」と思えるようになれば理想です。

医療DXは、他にも待ち時間の短縮による患者満足度の向上、迅速で質の高い医療の提供などのメリットがあります。

詳細は、以下の記事をご覧ください。

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業務のマニュアルやオペレーションの見直しを図る

医療DXだけでなく、業務のマニュアルやオペレーションの見直しなどでも業務生産性の向上を図りましょう。

・業務マニュアルの作成(文章だけでなく動画の作成も検討する)
・誰がやっても同じ結果になる業務フローの構築
・新人教育プログラムの整備

これらを整えることで、未経験者でも早期に戦力化できるようになります。

また、医療DXなど新しい取り組みをする際も、なるべくマニュアルや業務フローを整備して、スタッフの導入初期の負担を軽減しましょう。

業務生産性が良い医院・クリニックは、ストレスが減り職場の風通しもよくなり、スタッフが定着する好循環を生みます。

業務の一部について外部委託サービスを利用する

医療事務のスタッフの業務の一部を、外注して効率化を図るのも1つの手です。

正確に業務をこなす外注に任せることで、業務生産性は向上しますし、ミスが減り、患者さんからのクレーム防止につながります。

一方で、外注費がどれくらいかかるのかは検討しなければいけません。

ただ、スタッフを雇用することを考えれば、業務委託の方が安価になります。

医療事務スタッフの業務をすべて洗い出して、外注できるところがないか検討しましょう。

患者さんのクレーム対応を見直す

医療事務スタッフは、会計や受付の窓口だけでなく、患者さんのクレームの窓口にもなりがちです。

そのため、患者さんのクレームについては、対応マニュアルを作成して冷静に対処できるようにしておくといいでしょう。

クレームは誰でもストレスになるので、医療事務に集中しないようにする工夫も必要なことがあります。

特に問題なのは、ペイハラとも言える理不尽なクレームです。

ペイハラまがいの行為については、録音設備を導入するなど、院長先生や他のスタッフも毅然とした態度で対応できるようにしましょう。

スタッフを理不尽なクレームから守り、安心して働ける仕組みができると、定着率が向上する可能性があります。

医療事務スタッフの業務範囲を明確にする

スタッフの業務範囲を曖昧にしておくと、特定の人にだけ業務が集中して、業務生産性が低下します。

優秀なスタッフほど業務が集中しがちですが、不満を持ったら離職する可能性があります。

医療事務スタッフの業務を洗い出して、役割を明確にして一人ひとりが本来の業務に専念できるようにしましょう

労働環境や待遇の改善を図る

給与や福利厚生など、待遇だけで就職先を判断する求職者は離職率が高いため、基本的には採用を見送るのが賢明です。

一方で労働環境や待遇が、他の医院・クリニックより劣っているようでは、求職者は応募しません。

しかも、医療事務の場合は一般企業の労働環境や待遇とも比較検討します。

そのため、給与や福利厚生をはじめとした待遇面の改善は検討すべき重要な課題です。

しかし、一度改善した待遇は、元に戻すと不利益変更になるため、顧問の社労士と相談して慎重に検討しましょう。

並行して、有給休暇を取得しやすくする、スタッフルームを快適にするといった労働環境も改善しましょう。

待遇面のように人件費に直接関わらないことを改善しても、スタッフは「長く働きたい」という意欲につながります。

医療事務スタッフに限ったことではないですが、面談などで業務上の不満なども吸い上げて改善するようにしましょう。

良好な人間関係とチームワークを築くように努める

当然ながら、待遇面だけでなく人間関係もスタッフの定着率に直結します。

医療事務スタッフに限らず、職場の雰囲気を良くすることは人件費を上げずに定着率を上げる極めて有効な方法の一つです。

クリニックの人間関係やスタッフマネジメントについては、以下の記事をご覧ください。

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SNSを活用した採用戦略をたてる

人手不足を解消するために採用戦略を再検討する重要性は言うまでもないのですが、1つ有効な方法がSNSの活用です。

求職者は、FacebookやInstagram、TikTokなどのSNSもチェックしています。

SNSの発信内容で、スタッフの働く姿や日常を知り、「自分に合いそうか」を判断する傾向にあるからです。

スタッフの仕事や日常を発信することで、価値観の合う人材からの応募が増え、採用後の早期離職を防ぐことが期待できます。

求人広告と違って、コストがかからない方法なので、ぜひ試してみるといいでしょう。

詳細は、以下の記事をご覧ください。

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【まとめ】業務生産性や労働環境、人間関係の改善で人手不足問題を解消する

医療事務は、一般企業の事務職とも比較検討されるため、医療業界のなかでも採用難易度の高い職種です。

医療事務の人手不足問題を解消することは簡単ではありません。

しかし、次の視点で改善することで、医療事務スタッフの採用や人材の定着にプラスになる可能性があります。

・少ない人数でも回る仕組みづくり:医療DX、マニュアル整備などで生産性向上を図る
・選ばれる職場づくり:労働環境、待遇、人間関係の改善
・職場に興味を持ってもらう情報発信:SNSを活用した採用戦略など

顧問社労士や、採用、スタッフマネジメントの専門家と相談しながら、末永く働きたいと思える職場を目指しましょう。

最後までご覧いただきありがとうございました。

亀井 隆弘

広島大学法学部卒業。大手旅行代理店で16年勤務した後、社労士事務所に勤務しながら2013年紛争解決手続代理業務が可能な特定社会保険労務士となる。
笠浪代表と出会い、医療業界の今後の将来性を感じて入社。2017年より参画。関連会社である社会保険労務士法人テラス東京所長を務める。
以後、医科歯科クリニックに特化してスタッフ採用、就業規則の作成、労使間の問題対応、雇用関係の助成金申請などに従事。直接クリニックに訪問し、多くの院長が悩む労務問題の解決に努め、スタッフの満足度の向上を図っている。
「スタッフとのトラブル解決にはなくてはならない存在」として、クライアントから絶大な信頼を得る。
今後は働き方改革も踏まえ、クリニックが理想の医療を実現するために、より働きやすい職場となる仕組みを作っていくことを使命としている。

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