杏林大学医学部の歴史と特徴・カリキュラム、著名な卒業生まとめ
はじめに
杏林大学医学部の教育理念は豊かな人間性の涵養と医学の発展に対応できる基礎的及び専門的な知識の習得と臨床的な技能の修練を通して良き医師を養成していくことにあります。この理念の意味するところは心理への謙虚な探求心・善なる社会人の育成・美しい専門的な技量への研磨というところにあります。
また、卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、新入生受け入れの方針を3つのポリシーとして実践をしていきます。
住所
杏林大学医学部の所在地は東京都三鷹市新川6-20-2にあります。三鷹駅・調布駅・仙川駅・吉祥寺駅からバスで15分から25分ほど。どの駅からも徒歩だと40・50分程度かかりそうなので少し難しいかもしれません。また北に徒歩10分ほどのところに井の頭キャンパスがあります。学生間の移動も含めて近隣にキャンパスを置くという方針を採っています。
特徴
杏林大学医学部は1970年4月に三鷹キャンパスが設立。合わせて附属病院を開設しました。1975年には付属看護学校・1976年には大学院の医学研究科が開校になりました。この三鷹キャンパスでは6年間の一貫教育がされます。
医学部の基礎医学研究棟と臨床医学研究棟・講義棟があります。基礎および臨床医学研究棟では日々の最先端の医学・生命科学の研究が行われます。講義棟ではその研究成果に基づいて、医学・生命科学の教育が行われています。
この三鷹キャンパスでは6年間の一貫教育がなされます。入学直後から臨床医学総論と医療科学という医学に関する講義を開講します。1年時の自然科学から医学と密接に関係している基礎生命科学を講義・実習という形で学んでいきます。
1年次後半から3年次前半までで基礎医学・社会医学を学んでいきます。医師としての基本的な知識を習得していくとともに医師に求められる姿勢や態度を学んでいきます。また3年次から4年次前半では臨床医学の講義で最新の医学知識を学んでいきます。さらに4年次後半からは付属病院で臨床参加型の実習を行っていきます。基本的な臨床技能を学んでいくとともに臨床医学の講義で学んだ知識を実地での診療に応用していく能力を養っていきます。
最後の6年次は臨床総合演習や学外での臨床参加型の実習などの医学部での6年間の総まとめを行います。その後医師国家試験の合格を経て卒業。さらに2年間の臨床医としての研修を行っていきます。その後基礎医学・臨床医学の大学院に進学するという途も用意しています。
これらの施設に隣接して医学部の付属病院があります。この医学部付属病院は救命救急センターに24時間体制で救急車が出入りします。また1日に2500名余の外来患者が訪れます。西東京地区の基幹病院の一つとなっています。
医学部には各学年120名・6学年で720名前後の学生が在籍しています。また大学院医学研究科では70名近い生徒が学んでいます。合計で800名近い生徒を専任講師の400名ほどで指導しています。その他にも200名近い客員教授と非常勤講師がいます。生徒の数に比べて教員の数が多いのが特徴といえます。
入学金・学費
入学金
1,500,000円
初年度学費総額
10,090,700円
2年目以降学費総額(年間)
5,500,000円
6年間学費総額
37,590,700円
出典:杏林大学医学部HP
偏差値
65杏林大学医学部は帝京大学医学部・東海大学医学部・北里大学医学部あたりと同等レベルの難易度と考えられます。
出典:河合塾 医進塾HP
医師国家試験合格率
94.1%
※全体の医師国家試験合格率
出典:杏林大学医学部HP
歴史
杏林大学医学部の歴史は比較的新しいです。創立してちょうど50年です。杏林大学では専門的な知識や技術だけでなく立派な人格を持った良き医師になること・そして社会に貢献していくことのできる医師を育成していくことです。以下で杏林大学医学部の歴史を紹介します。
1970年4月:杏林大学医学部が開設
1970年8月:医学部の附属病院が開院
1972年4月:杏林大学付属高等看護学校が開校
1976年4月:杏林大学大学院医学研究科博士課程が開設
1977年9月:杏林大学付属高等看護学校から杏林大学付属看護専門学校に名称を変更
1979年4月:保健学部を開設。また杏林大学付属看護専門学校を杏林大学医学部付属看護専門学校に名称を変更
1984年4月:大学院保健学研究科修士課程・大学院保健学研究科博士後期課程を開設
1994年4月:保健学部看護学科を開設
2006年4月:保健学部臨床工学科を開設
2007年4月:保健学部保健学科を健康福祉学科に名称変更、また保健学部救急救命学科を開設
2009年4月:保健学部理学療法学科を開設
2010年4月:大学院保健学研究科看護学専攻博士後期課程の開設
2011年4月:保健学部作業療法学科を開設
2012年4月:保健学部看護学科に看護学専攻・看護養護教育学専攻を開設
2013年4月:保健学部診療放射線技術学科を開設
2016年4月:井の頭キャンパスが開設
2018年4月:保健学部臨床心理学科を開設。
2020年3月:医学部付属看護専門学校が閉校。
カリキュラム
出典:杏林大学医学部HP
1年次
高校時代の生物や化学などの知識を発展させていきます。また医学物理学・代謝生化学・生体化学・医学統計学などの医学に関わる科目を学んでいきます。また医師に求められている基本的な姿勢や知識を学んでいきます。行動科学・生命倫理と医療安全などの講義や早期体験学習を通して社会が医師に求める姿勢・態度さらに患者から期待されている医師のあり方を学びます。今後は分子生物学と肉眼解剖学も1年次に履修します。人体の構造の理解と生命の起源にせまっていく分子生物学を学んでいきます。
2年次
基礎医学を学んでいく重要な学年です。解剖学ではすべての医学の基礎となっている人体の構造を学んでいきます。統合生理学・病態生理学・細胞生物学・感染症・免疫学などの基礎医学科目を学んでいきます。これらは人体の構造と機能を理解していく上で重要になります。臨床医学を学ぶ上で基礎医学の知識が改めて重要になります。医師になる上ではとても重要なのでこの学年で医者になるための土台を作っておくことが大事です。
3年次
薬理学や病理学などの基礎医学を学びます。これらは人体の構造と機能に病態の要素が加わります。患者の病態や薬剤の作用などを考えていくための基礎になります。また社会と医学を結ぶ衛生学を学びます。そして臨床系科目の履修も始まります。前期は臨床医学総論・臨床検査医学・輸血学・消化器科内科・外科学・循環器学を学びます。後期は呼吸器内科学・内分泌代謝内科学・神経内科学・脳卒中医学・血液内科学・腎臓内科学・呼吸器・甲状腺・乳腺外科学・循環器病学・産婦人科学・小児科学・精神神経科学・循環器科学・泌尿器科学などを学びます。
4年次
3年時の臨床医学講義を継続して行います。和漢医学概論・法医学・高齢医学・リウマチ膠原病学・小児外科学・救急医学・脳神経外科学・脳卒中医学・整形外科・リハビリテーション医学・眼科学・耳鼻咽喉科学・放射線医学・放射線腫瘍学・麻酔科学・腫瘍学・感染症学・生活習慣病学などを学びます。また臨床実習に備えての診断能力と基本的な臨床技能をつけていくための臨床診断学講義・実習が行われます。また医学英語や英文医学論文の購読なども行っていくことで英語の向上にも力を入れていきます
5年次
臨床実習が主体です。実習は学生の診療参加型実習という形で行われます。自らが患者の担当医になったという仮定で患者の病歴をヒアリング、その後治療に向けての解決を勉強していきます。これまでの知識を応用していきます。この臨床実習で今までの勉強量・質・方法などの差が大きく出ます。臨床実習で多くの疑問と収穫を得ることがここでの目的になります。ただ実際には上位の学生と下位の学生で大きな差が出ています。また身だしなみ・言葉遣い・時間・守秘義務などを十分に注意していく必要があります。また英語にも引き続き力を入れていきます。
6年次
卒業に向けての総仕上げと卒業後の臨床研修への円滑な導入への準備になります。医学部での勉強は膨大です。卒業試験と医師国家試験を短期間の勉強でクリアすることは困難です。日々の積み重ねで知識を整理していくことが大事になります。また診療参加型実習も引き続き行っていきます。また最終的な医学のまとめとなる臨床総合演習が行われます。また公衆衛生学も学びます。医学集団への適応や医学知識の整理なども行う必要があります。6年間で学んだ医学知識・技能・態度を含めた医師としての確認を最後に行って卒業認定をします。
研修制度
杏林大学医学部の研修は医学部付属病院一般コースと周産期重点コースがあります。
医学部付属病院一般コースは呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、糖尿病内分泌、代謝内科、血液内科、腎臓リウマチ膠原病内科、神経内科、脳卒中科から6科目以上を学びます。その他救急科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神神経科、外科、地域医療などを学びます。また消化器外科・呼吸器甲状腺外科・心臓血管外科から1科目を選択して学びます。
また1年次と2年次で1か月ずつ救急総合診療科の研修で救急外来を担当します。大学病院で研修医自体が患者の初期診断を行うこともあります。現場対応と診療の基礎をつけていきます。また2年次では高度救命救急センターで三次救急の研修を行います。また慢性疾患の継続外来診療についても地域の医療研修で行っていきます。気管挿管・救急・全身管理による知識もつけていきます。
一方周産期重点コースは小児科もしくは産婦人科に進みたい方のための特別研修です。この2科は全体として医師のなり手が多いとはいえません。ただあくまで一般コースが中心で必須科目も一般コースと同じになります。なた産婦人科や小児科とかかわりの深い耳鼻咽喉科・眼科・整形外科・小児外科などを学ぶこともできます。またこのプログラムを学ぶことで必ずしも小児科や産婦人科に行かなければならないというわけではありません。特に今後結婚や出産などを考えている女性医師には適したコースともいえます。
部活動
杏林大学医学部の部活動を紹介します。順大・日大・東海大のようにスポーツの強い大学ではありませんので運動部が盛んとまではいえません。それでも勉強と部活動を両立して日々を全力で頑張る生徒も少なくありません。
運動部
柔道部・ボウリング部・空手部・卓球部・バレーボール部・サッカー部・バスケットボール部・ラグビー部・陸上部・ハンドボール部・アーチェリー部・スキー部・ウエイトトレーニング部・硬式テニス部・軟式テニス部・ゴルフ部・硬式野球部・剣道部・少林寺拳法部・バトミントン部・アイスホッケー部・ボート部・水泳部・フットサル部などがあります。
文化部
統合医療研究部・ESS・管弦楽団・軽音楽部・ぬいぐるみ病院部などがあります。
医学部生も大半の部活動に入ることができますが、練習と授業の関係上などもあってすべての部活動で門戸が開いているわけではないようです。
連携病院
杏林大学医学部の提携病院・医院を紹介します。主に多摩地区の病院や医院との提携が多くなっています。
松川内科クリニック(三鷹市井の頭) 天文台クリニック(三鷹市大沢) 三鷹中央病院(三鷹市上連雀) ムラタ胃腸内視鏡クリニック(三鷹市下連雀) くりはら耳鼻咽喉科(三鷹市牟礼) もとはし内科(武蔵野市吉祥寺北町) 吉祥寺あさひ病院(武蔵野市吉祥寺本町) 吉祥寺駅前クリニック(武蔵野市吉祥寺南町) むさしのレディースクリニック(武蔵野市境南町) 小森病院(武蔵野市関前) 青木病院(調布市上石原) はすだ内科・循環器内科クリニック(調布市国領町) 調布脳神経外科(調布市小島町) 吉祥寺病院(調布市深大寺北町) 介護老人保健施設いなほ(調布市染地) 東小金井駅前こどもクリニック(小金井市梶野町) 小島内科消化器科医院(世田谷区祖師谷) いしざき内科(練馬区石神井町) 医療法人社団浩央会・国立さくら病院(国立市東) 立川内科クリニック(立川市柴崎町)
著名な卒業生
- 木下博勝氏(医師でタレント業もこなす。ジャガー横田さんのご主人といった方がわかる方は多いと思います)
監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。