医師に適した6つの投資と、投資に成功する医師の5つの特長

公開日:2025年2月6日
更新日:2025年2月6日

NISAやiDeCoなど、国が投資を推奨する政策を進めていることもあり、投資に関心を寄せる医師の先生が増えてきています。実際、何もしないままではインフレリスクで現金の価値が目減りすることも考えられるので、必要なお金を貯めるには、預貯金だけでなく投資の検討の余地はあります。

医師に比較的おすすめの投資6選

投資にはリスクがあることが前提となりますが、医師の先生におすすめの投資をいくつか紹介します。

ご自身のライフプランや資産状況からよく検討して、詳細は最寄りのFPなどに相談してください。

新NISA

新NISAは、非課税限度額が上がるなど国が推奨していることもあり、医師の先生でも始めた方も多いでしょう。

具体的には、旧NISAから新NISAになることで、次のような大幅拡充がありました。

旧NISA新NISA
年間投資額つみたてNISA:40万円
一般NISA:120万円
併用不可
つみたて投資枠:120万円
成長投資枠:240万円
併用可(最大360万円)
非課税限度額つみたてNISA:800万円
一般NISA:600万円
合計1,800万円
(成長投資枠は1,200万円まで)
非課税枠の再利用不可

通常の投資信託や上場株式への投資であれば、20.315%の譲渡所得課税がかかることに対して、新NISAの場合は1,800万円まで非課税です。

通常、100万円の利益に対して20万円の税金を納めないといけないところ、それがなくなるのはかなり大きいです。

特に積立投資で着実に資産を形成していきたいと考える医師の先生は、検討の余地があるでしょう。

詳細は、以下の記事をご覧ください。

確定拠出年金(企業型DCやiDeCo)

確定拠出年金は、企業型DC(企業型確定拠出年金)とiDeCo(個人型確定拠出年金)があります。

どちらも、国民年金や厚生年金のような公的年金制度とは別に、私的に年金を形成する制度です。

運用成果は60歳以降に年金、もしくは一時金として受け取ることができます。

新NISAが教育資金や住宅購入など様々なライフイベントに合わせることができることに対して、確定拠出年金は老後資金のみが目的となります。

老後資金の形成を確定拠出年金で、教育資金や住宅購入などの資金を新NISAで資産形成するというのも1つの方法です。

確定拠出年金は、掛金が全額所得控除となり、受取時に退職所得控除が適用されるため、所得税や住民税の軽減効果があります。

確定拠出年金は、途中で解約できないなど制約はありますが、特に勤務医の先生や個人開業医の先生は、税金対策も兼ねて活用してもいいでしょう。

なお、企業型DCとiDeCoは令和7年度の税制改正で、次のように掛金額が大幅に増加しています。

・第1号被保険者(医師であれば開業医)の拠出限度額を月額6.8万円から7.5万円に引き上げ

・第2号被保険者(医師であれば勤務医)のiDeCoと企業型DCの合計額を6.2万円に引き上げ

・iDeCoの加入条件を65歳未満⇒70歳未満に

拠出限度額の変更については、以下の図の通り、大幅な引き上げであることがわかります。

※金融庁「令和7(2025)年度税制改正について 」より抜粋

ただし、企業型DCとiDeCoの税制改正については、「5年ルール」が「10年ルール」になった点は注意が必要です。

退職金や企業型DC・iDeCoの一時金は、大幅に所得税や住民税を減らせる「退職所得控除」が適用されますが、合算した金額に適用され、どちらか長い方の勤続年数で計算され、課税額が増えてしまいます。

ただ、先に企業型DCやiDeCoの一時金でもらい、5年後に退職金を受け取れば、各々の退職所得控除が適用されるので、課税額が増えません。

これが「5年ルール」で、例えば60歳で企業型DCやiDeCoを一時金で受け取り、65歳で会社の退職金を受け取れば、節税効果が大きくなります。

しかし、「10年ルール」に変更したことで、企業型DCやiDeCoと、退職金の受け取りの間隔を10年空けないといけません。

60歳でiDeCoの一時金を受け取り、70歳で退職金を受け取るということができる人は多くはないかもしれません。

勤務医の先生は注意してください。

なお、企業型DCとiDeCoの詳細は、以下の記事をご覧ください。

貯蓄型の生命保険

資産運用に関心を持ったら、生命保険の見直しも検討の余地があります。

現在、定期保険のような掛け捨て型の保険のみ加入しているなら、貯蓄性の高い終身保険や養老保険は検討の余地があります。

なお、保険への加入も一定の節税効果があり、所得税の最大控除額が12万円、住民税の最大控除額が70,000円あります。

※国税庁「生命保険料控除 」より抜粋

特に勤務医から開業医になった先生は、貯蓄型の保険に加えて、様々な見直しが必要な保険があるので、検討し直すといいでしょう。

開業医が加入・見直ししたい7つの保険|リスクに備える

勤務医時代から生命保険や火災保険に加入している先生は多いですが、開業医になると見直しが必要になることが多いです。 開業医になると、勤務医時代にはなかった様々なリ…

なお、医療法人の理事長先生は、法人の資産運用の方法が限定されていることから、変額保険の加入を考えてみるのも1つの手です。

個人向け国債

財務省ホームページ より抜粋

預貯金以上に資産を増やしたいが、リスクを取りたくないなら、元本保証されている個人向け国債も検討の余地があります。

0.05%の元本保証があり、運用期間は3年(固定3)、5年(固定5)、10年(変動10)から選択でき、購入後1年経過で10,000円から中途換金できます。

ただ、年利(クーポンレート)が0.62~0.77%程度なので、決してインフレリスクに強い金融商品ではありません。

また、日本国債の格付けは先進国でも低い方で、対GDP比の債務残高はG7諸国のなかでは最悪基準です。

この状況を考えると、必ずしも日本国債は安全資産とは言えないかもしれません。

不動産投資

日本の不動産投資は、他人の部屋を貸し出して、賃料を得るインカムゲインが一般的です。

入居者がいる限り安定した家賃収入が得られ、複数の収入源になります。

不動産投資は大きな節税効果も期待できるため、高収入の方には人気が高い方法です。

しかも医師の先生であれば職業的信用力が高いので、物件購入時のローンの審査に通りやすいメリットがあります。

しかし、当然ながら空室リスクや自然災害のリスクもあります。

物件に入居者が入らず、ローンの返済のみ続くこともあります。

入居してもらいやすい立地条件や設備を把握して、災害用保険の加入なども検討することが必要です。

不動産投資は流動性リスクが大きく、大きなお金が動くので慎重に検討しなければいけません。

税金対策面では、不動産投資は購入代金を経費にすることで課税所得を抑えられます。

勤務医の先生でも給与所得と不動産所得の損益通算が可能で、節税が可能です。

不動産投資は、やや複雑で収益面でも節税面でも検討事項が多いです。

不動産投資に強い専門家や、不動産に強い税理士に相談して取り組むといいでしょう。

オフショア投資

オフショア投資は、海外の金融商品に直接投資する方法の1つです。

オフショアは、タックスヘイブン(租税回避地)に近い意味があり、非居住者に対して非課税もしくは低税率で税制が優遇されている国や地域です。

税制で優遇して外貨を集める戦略で、代表的なところが香港、シンガポール、ドバイなどがあります。

これらの国に共通している点が、世界的な金融機関、金融商品が集まっている点です。

経済成長が鈍化している日本で大きな利回りは期待できませんが、経済発展が著しい国であれば投資の利回りが高い傾向にあります。

そのため、昔からオフショアで世界中の金融商品を購入する人が少なくありません。一時期日本でもブームになりました。

一見すると魅力的ですが、世界市場の変動リスクに加えて、為替リスクや、投資対象の国が抱えるカントリーリスクを抱えることになります。

また、基本的にすべて英語のやり取りになる点も注意が必要です(一部日本語対応してくれる場合もあり)。

医師の先生であれば英語には抵抗がないかもしれませんが、海外投資特有のリスクには注意して、あくまで選択肢の1つとして考えておくといいでしょう。

投資で成功する医師の5つの共通点

最後に、投資で成功する医師の共通点についてお伝えします。

なお、投資の基本的な考え方については、以下の記事も参考にしてください。

医師が失敗しない資産運用をするために必要な8つのお金の考え方

資産運用の必要性は感じていても、いざ投資となると怖かったり、多忙でお金のことまで頭が回らない開業医の先生は多いでしょう。たしかに安易に投資案件に飛びつくと失敗…

ライフプランを立てて必要なお金を把握する

投資を始める際は、何となく始めるのではなく、住宅の購入資金や教育資金、引退後の生活資金などの目的をはっきりさせます。

特に住宅資金、教育資金、引退後の生活費といった人生三大支出については、最大でどれくらいかかりそうか見積もっておくといいでしょう。

特に開業医の先生は、将来の年金が手薄になる可能性があるので、より老後の資金について考えておく必要があるかもしれません。

どうしても投資にはハイリターンを狙うほどハイリスクになりますし、リスクを避けるほどリターンも得られません。

「いつまでにいくら用意するか」という目標額を定めることで、どれくらいリスクを取ればいいかがわかってきます。

新NISAやiDeCoでもややリスクのある金融商品がありますが、もしかしたら、わざわざハイリスク・ハイリターンな投資が必要ないかもしれません。

自分が「いつまでにいくら用意するか」という試算ができている人は多くありません。

一度最寄りのFPなどに相談してライフプランを立てることもおすすめです。

低リスクで高い利回りが期待できても大金を投じない

どんなに低リスクで高い利回りが出そうな金融商品でも、一極集中的に投資をするのは大きなリスクです。

その投資が成功すれば大きな利益になりますが、失敗した際は取り返しのつかないことになりかねません。

「卵は1つのカゴに盛るな」という言葉があるように、普通預金、有価証券、不動産など複数の資産クラスに分散することが理想です。

日本円だけでなく、米ドル建て資産やゴールドも保有するのも1つの手です。

また、先ほどもお伝えしたように、リスクとリターンは比例します。

そのため、「低リスクで高い利回りが出る金融商品」は基本的に存在しないと思い、話が持ちかけられたら詐欺を疑った方がいいでしょう。

投資の必要性が浸透してきた今だからこそ、投資詐欺には気を付けないといけません。

現在の保有資産を把握して必要に応じて整理する

投資を始める際に、現在の保有資産を把握して一覧を作っておくことも大切です。

預貯金だけの場合でも、複数の銀行口座があれば、各々どれくらい資産があるのか把握しておきます。

有価証券や不動産などを保有している場合も、現在どれくらいの価値があるのか把握しておくことが大切です。

そうすれば、今後どれくらいのお金をプラスで用意しなければいけないかを認識できます。

もしかしたら、個人向け国債のような低リスクの金融商品だけでいいかもしれませんし、ある程度許容リスク範囲内で投資をした方がいいかもしれません。

また、先ほどもお伝えしたように、投資は分散投資が基本です。

預貯金含めて(インフレリスクがあるので)、1つの資産に一極集中することはリスクです。

現時点での資産を把握しておけば、リスク分散の観点でも、今の自分には、どんな投資が必要かを把握できます。

長期的な視点で投資をする

人間誰しも、一夜にして大きな利益を得ることを夢見がちですが、投資では不可能です。

短期的な大きな利益を目指すのは、投資ではなくギャンブルや投機と言われるものです。

一過性の市場の変動に左右されることなく、長期的な目線を持って、ライフプランに沿った出口戦略を立てることが大切です。

長期的な投資をするなら、積立投資もおすすめです。

積立投資であれば、市場の価格変動リスクを軽減できて、時間的なリスク分散になります。

一度投資したらなるべくほったらかしにする

日々の診療で忙しい医師の先生が、日々チャートをチェックして売買を繰り返すタイプの投資を行うことは現実的ではありません。

また、短期的に売買を繰り返すような投資のやり方は、基本的にはハイリスク・ハイリターンで熟練したスキルが求められます。

投資にあまり詳しくない方が行うことはおすすめしません。

基本的には、積立投資など、毎月運用成績を確認するくらいでほったらかしにした方が、長期的にはうまくいく傾向があります。

その代わり、世界経済の情勢や、政治的な情報など、市場に影響がありそうな情報は収集しておいた方がいいでしょう。

政治経済の動向次第で、ポートフォリオを見直した方がいいことも出てくるためです。 投資の勉強をするというよりは、政治経済に関心を向けるという意識で投資に取り組むといいでしょう。

【まとめ】ライフプランと現状の資産を把握してから投資する

以上、医師の先生に合った投資の種類や、成功するポイントについてお伝えしました。

金融商品の投資は、基本的に長期的な視点で堅実的に増やすことが理想です。

許容リスクを超えたハイリスク・ハイリターンの投資や投資詐欺は避けて、必要な資産を形成できるような投資をしましょう。

新しい投資に着手する前に、ライフプランを立てて、現状の資産を把握したうえで計画的に行った方が失敗しにくくなります。

最後までご覧いただきありがとうございました。

笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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