医師が借りられる住宅ローンはどれくらい? 借りる際の注意点は?


勤務医や開業医の先生は、高年収なうえに金融機関の職業的信用が高く、比較的住宅ローンが借りやすいと言われています。
しかし、医師だからといって、必ずしも住宅ローンの審査が有利になるわけではありません。
なかには、住宅ローンの審査が厳しいような方もいるので注意が必要です。
特に開業検討中の先生は、開業資金の調達もあるので、自宅の購入タイミングは慎重に検討しなければいけません。
そこで、今回は医師の先生が借りられる住宅ローンの目安や、借りる際の注意点について解説します。
自宅購入を検討している勤務医、開業医の先生は最後までご覧ください。
医師が借りられる住宅ローンの目安はどれくらい?

まずは、医師が借りられる住宅ローンの目安についてお伝えします。
借りられる住宅ローンの目安については、現在の年収や他のローン(開業資金、教育ローンなど)の有無にも影響します。
住宅ローンは約1億円が限度

医師が借りられる住宅ローンの目安は、勤務医の先生の場合は7,000万~1億円が目安になってくると考えられます。
住宅金融支援機構の「2023年度フラット35利用者調査 」によると、年収比率(物件の購入価格と購入者の年収の比率を表す指標)が、約5~7倍となっています。
住宅種別 | 年収倍率 |
土地付注文住宅 | 7.6倍 |
注文住宅 | 7.0倍 |
建売住宅 | 6.6倍 |
中古戸建 | 5.3倍 |
マンション | 7.2倍 |
中古マンション | 5.6倍 |
一方、厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査 」によれば、勤務医の平均年収は1,436万円です。
勤務医の場合は、フラット35を利用して7,000~1億円程度の住宅やマンションは購入できる計算になります。
開業医の場合は、先生によって年収が違ってくるので、借りられる住宅ローンの目安は一概に言えません。
ただ、年収2,000~3,000万円の開業医の先生でも、1億円以上の住宅ローンは厳しいと考えられます。
多くの金融機関は、ローンの限度額を1億円以内に設定していることが多いためです。
銀行などから借り入れする場合は、住宅ローンの限度は1億円程度と考えるといいでしょう。
開業資金など他のローンの有無によっても融資限度額が変わる
住宅ローンを借りる際は、他のローンについて注意が必要です。
自動車ローンや教育ローンはもちろんのこと、開業医の先生や開業検討中の先生は、開業資金の融資に注意しなければいけません。
住宅ローンのもう1つの目安に、返済比率というものがあります。
返済比率とは、ローンなどの年間返済額が年収や家賃収入などに対して、何割かを占める割合を指します。
一般的には、返済比率は年収の25~35%が目安で、35%を超えたローンは厳しいとされています。
年収1,436万円の勤務医の先生であれば、年間359万~502万円程度であれば借りられる計算になります。
しかし、返済比率については住宅ローン以外の返済額も考慮しなければいけません。
つまり、他のローンが含まれると、借りられる住宅ローンの額が減ることになります。
特に開業したばかりの先生や、開業検討中の先生は、住宅ローンの可能額には注意する必要があります。
医師信用組合で2億円程度の住宅ローンが可能になる

医師信用組合とは、各都道府県の医師会に所属している医師の先生が加入できる住宅ローンです。
一般的な金融機関では住宅ローンの上限は1億円程度ですが、医師信用組合では、場合によっては上限額が2億円程度のプランがあります。
医師会に加入していて、欲しいと思っている自宅の物件価格が1億円を超えている場合は十分検討の余地があります。
また、特別優遇金利が適用されていることもあるので、気になる先生は加入している医師信用組合に問い合わせてみるといいでしょう。
しかし、医師信用組合によっては団体信用生命保険の有無が異なりますし、連帯保証人が求められることがある点は注意が必要です。
医師が住宅ローンを借りる際の5つの注意点

医師の先生は、比較的高年収という点と、金融機関の職業的信用が高いので、住宅ローンでは優遇されることが少なくありません。
ただ、必ずしも住宅ローンで優遇されるというわけではなく、場合よっては審査落ちしてしまうこともあります。
医師の先生が、住宅ローンを借りる際の注意点についてお伝えします。
非常勤医師など審査落ちしやすいケースがある

医師の先生は、金融機関の職業的信用が高く、住宅ローンでは優遇されると思われがちです。
ただ、一般的な金融機関の住宅ローンでは、職業的地位や現在の収入だけでなく、収入の安定性や勤続年数もチェックされます。
そのため、医師の先生であっても、次のようなケースは住宅ローンの審査に通らない可能性があります。
非常勤医師 | 常勤医師と比べて収入が低く、安定性がない傾向にあるため審査で不利になりがち。 |
フリーランス医師 | 複数の病院やクリニックで雇用契約を結んで働くフリーランス医師は、収入が不安定な印象を持たれる。 |
転職直後の医師 | 転職直後は職場での勤続年数が少なく、将来的な安定性を低く評価される傾向がある。 |
転勤直後の医師 | 勤め先の転勤により診療科目などが変わったり、大きく年収が変わったりすると、実質的に転職扱いされることがある。 |
開業直後の医師 | 開業直後は、開業資金の借り入れが残っている状態であり、住宅ローンを借りづらい。 |
ただ、あくまで上記は一般的な傾向であり金融機関によって審査の基準が違います。
ある銀行では住宅ローンがNGだったのに、別の銀行に行ったらあっさりと審査に通ったということもあり得ます。
また、非常勤、フリーランス医師などの先生は、過去数年間の収入額を金融機関に提示しておくと、安定収入をPRしやすくなります。
開業検討中の先生で金銭的に余裕があれば、開業前に住宅ローンを借りるのも1つの手です。 ただ、この場合は後述するように、開業資金を調達する際に不利になりやすいので注意しなければいけません。
医院開業予定の先生は自宅購入のタイミングに注意する

自宅を購入するうえで、一番気を付けないといけないのが開業予定の先生や、開業直後の先生です。
実際、「医院開業前に家やマンションを購入しても問題ないか?」という相談は少なくありません。
できれば、医院開業と、自宅の購入のタイミングは、重ならないようにすることがおすすめです。
住宅ローンがあると開業資金の借入れが十分にできなかったり、金利が高くなったりするなど、不利になることが多いためです。
また、開業直後で借入金が多く残っている場合は、住宅ローンの審査で不利になりますし、通ったとしても、二重のローンで資金繰りが苦しくなります。
開業後に設備投資のために融資を受けようとしても不利になってしまうことがあります。
開業する場合は、ご自身のライフプランとキャリアプランの両方を見据えて、計画的に自宅購入のタイミングを考える必要があります。
できれば、開業して軌道に乗ってから、自宅の購入を考えた方がいいでしょう。
目安として、3期程度黒字が続いたくらいです。 黒字が3年程度続くと、収入的にも安定してきますし、住宅ローンの審査で不利になることが少なくなります。
自己資金をなるべく貯めておく

医院開業資金でも同じことが言えますが、住宅ローンにおいても、なるべく預貯金を多く貯めておくことがおすすめです。
金融機関によっては、預貯金も確認され、あまり少ないと審査で不利になってしまうこともあるためです。
医院開業、自宅購入、お子さんの教育費・・・・・・、人生には大きなお金がかかるタイミングがいくつかあります。
なるべく散財することなく、将来に備えてお金を貯めておくことは言うまでもありません。
信用情報に注意する

社会保険料や税金、クレジットカードや各種ローンの滞納があると、住宅ローンの審査が非常に通りにくくなります。
例えうっかりミスだとしても、住宅ローンを借りられることはほとんどなくなるので注意してください。
なお、自己破産した経験がある方は、おおよそ5~10年くらいはローンを借りることができません。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
物件の担保価値も住宅ローンの審査対象となる
購入予定の物件の担保価値も、住宅ローンの審査対象となります。
担保価値とは、担保として設定された不動産を売却した際に得られる価値で、お金を貸す側から見た際の不動産価格です。
金融機関は、万が一債務者が住宅ローンを支払えなくなった場合、担保でローンの残額を補填できるかどうかをチェックします。
特に築年数が古い中古住宅、マンションの場合は担保価値が低い傾向にあるので注意が必要です。
【まとめ】計画的で無理のない範囲で住宅ローンを組む
医師がどれくらい住宅ローンを借りられるかについてお伝えしました。
一般の金融機関では1億円、医師信用組合では2億円を限度と考えていいでしょう。
ただ、年収や、開業資金など他のローンの有無によっても、融資可能額が変わってくる点は注意が必要です。
また、医師だからといって必ずしも住宅ローンで有利になるとは限りません。
非常勤の医師、フリーランス医師、転職・開業直後の医師などは、住宅ローンの審査で不利になることもあるので注意が必要です。
特に開業検討中の先生は、自宅購入のタイミングをよく検討しておく必要があります。
なお、相続税対策で高層階はタワマン購入を検討している先生は、以下の記事もご覧ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。


監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。