【医師の医院開業成功ガイド】資金調達から開業まで、開業時の不安はこうやって解消しよう!実践Q&A

公開日:2022年2月5日
更新日:2024年11月15日

はじめに

難関の医学部入試の合格・大学での6年間の授業及び実習さらに研究・医師国家試験突破・そして研修医としての経験を経て、まずは勤務医として医師のスタートを切ります。

ただそこから長期間勤務医で働く方もいれば、数年間の実務を経て開業する医師の方も多くいます。

開業する理由は様々で、「病院の激務でかつ不規則な勤務」「研究医をめざそうとするも大学の派閥競争で上手く行かなかった」「薬局や病院関係者からのオファーがあった」「親からの医院引継ぎ」「地域医療に携わりたかった」などが多くあるようです。また「一国一城の主になりたかった」「自分の理想とする医療をしたい」などの様々な理由があるようです。

医者が「病院を開業したい」ということをいうと様々な方が支援をしたいと名乗り出てきます。一例を挙げると銀行・税理士・中小企業診断士・社会保険労務士・行政書士・様々なコンサルタントなどです。

その中には開業のために真剣になってしまって「お金を多く借りて欲しい」「医療機器を最大限揃えて欲しい」などのような方も多くいます。

開業の段階であれば本当にこれでいいのか・自分がそこからフィーをたくさんもらいたいだけではないかなどの疑問が大いに残ります。そのような方につかまると面倒なことになります。

そうならないようにするためにここでは開業医としてまず行ってほしいことをQ&A形式にまとめてみました。開業する際の参考になれば幸いです。

Q:開業する際にどこから手を付けたらいいのか?

A:開業をする際には不安は尽きません。開業をする場所・立地をどうしようか。どの設備・施設をまずそろえようか。借り入れをどの程度しようか。親や奥さんなど家族の理解をどう得ようかなどの不安が付きまといます。

まずは開業をしたいという医師の先生の方には開業後のイメージを持っていただきたいです。そしてそのイメージを事業計画書に盛り込むことで資金面も含めて開業のイメージがついてきます。

理想的には開業前よりも開業後に多くの利益が残ること。そして税金面で「どうしよう」と悩むことができたら開業医としてひとまず成功を収めたと言っても過言ではありません。

まずはそこをめざしていただきたいです。

Q:開業する場所をどうしようか?

A:どの場所に病院やクリニックを開院するかは重要になります。大きなポイントとしては立地・人の流れ・アクセスなどの潜在的な「人の数」がどれだけいるかにかかるでしょう。

まずは人通りの多いところ・交通アクセスのいいところ・住宅地やその近くで家の多いところ・競合の院の少ないところなどの開院候補地をいくつか決めていただきたいです。

次にその中で自分の院の強み・自信のある部分と弱み・脅威になる要素をできるだけ挙げます。

例えば強みや自信になる要素では、内科以外に皮膚科も行っている。医院近くにニュータウンなどの団地ができる予定。待合室などが広いなど

一方弱み・脅威になる要素では、近くのクリニックが午後8時まで行っている。ライバル院が開業する可能性がある。駅近くも裏路地の分かりにくいところにあるなど

この中でできるだけ強みや自信になる要素の多いところでかつ弱みや脅威になる要素の少ないところを選び出すようにします。そうすれば成功できる可能性が高くなります。

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Q:医院の開業資金をどうしようか?

A:まずは事業計画書の作成をすることをオススメします。事業計画書は通常5年単位で書いていくことが理想的です。主に収益と損失の2つのバランスが重要になります。

事業計画を自分で書くことができれば理想的ですが忙しい・よく分からないなどの理由で書くことが難しいという方は税理士・金融機関の担当者・医療関連に携わる方などであれば代行することも可能です。その際に売上目標・雇用をどうするか・医療機器をどこまで準備するかなどの数値目標は決めていただくことになります。

次に資金をどう集めるかです。自己資金で賄うか・借りるなどの他人資本を利用するかということになります。多くの方は自己資金と他人資本の両方を活用することになると思われます。

自己資金を多くすると開業には有利です。返済の負担も減ります。ただ現在の目先の生活を切り詰める必要なども出てくると思われます。

他人資本を多くすると逆に今の生活をあまり下げなくても良い面はプラスといえます。ただ返済が多くなる・さらに早く患者を集めないといけないなどのプレッシャーが多くなります。

ただ医師の方の場合は金融機関も協力的なところが多いです。また自己資金が0もしくは0に近いところから開業されてそれなりに成功された方も多くいます。

自己資金を出せるに越したことはありませんが、自己資金を用意できなくてもあまり悲観することはありません。

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Q:資金調達の面で不安がある

A:開院当初に資金調達の点で悩まされる医師の方も多くいます。開業資金をどう確保するかはとても重要になってきます。

まず借り入れを銀行から行うかもしくはノンバンクで行うのか。また医師個人の名義で借りるのかもしくは医院などの法人名義で借りるかなども重要になってきます。

何の目的を大事にしてお金を借りるか・どの程度を借りるか・金利と返済計画をどうするかなども考えておく必要があります。

また最近の低金利というものを生かして借り換えを行う・利息を小さくすることができるなどのメリットも出てきますのでこのようなところを活用してみても悪くはないでしょう。

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Q:医療機器を用意するのに購入するか・それともリースで賄うか?

A:医療機器を用意するのに器具を買うか・借りるかで悩む方も出てきます。

一般的には自己資金を多く用意できる方・親族などに建物を持っている方など比較的開業するための条件に恵まれている方は購入型・そうでない方はリース型というケースが多くなっているようです。

リース型の場合はいきなり多くのお金を用意しなくても良いというメリットがあります。ただ総額で行くと購入するよりも多くのお金がかかってしまうことが多くなります。

また物品をリースする場合はお金を借りる時のような面倒な審査はありません。また融資以外の枠でリースを利用することも可能です。ただリースには大半のケースで期間があります。その期間内は原則解約できません。

解約するには違約金が相当額かかります。またリースの契約期間が終了してしまうと再リース契約を結ぶもしくは買取を行う必要があります。

また税制上では支払ったリース料が経費扱いになりますが、購入の際には得られるべき特別償却や税額控除などの税制上の優遇はありません。

こうしてみると可能な限り医療機器は「購入」をしてしまった方がいいのかもしれません。

Q:どうやって売り込みをしようか?

A:開業する際の広告戦略も重要になってきます。広告はできるだけ多くの方法でおこなった方がいいのではないかと考えられます。

一例としては、知人・勤務医時代の患者さん・老人会・地元の自治会・小中学校などにチラシやパンフレット制作をして配る。ホームページなどによりWEBマーケティングを行うのも一つの手かなと思われます。ただホームページのばあいは医療法の制約を受けることがありますので注意が必要になってきます。

開業する際にはターゲットが重要になってきます。どの患者さんの層を取っていくかということです。年代・性別・開業する時期・場所・診療科目・施設などを上記の方に知ってもらう必要があります。

広告をする際にはコンサルタントなどに任せるケースが多くなっています。ただこのコンサルタントは玉石混交で本当に素晴らしい方からお金だけを吸い取ってしまう方も多くいます。誰を選ぶかは本当に注意が必要です。

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Q:患者さんが来てくれるかが不安

A:すべての準備がそろっていざ開業となります。ここからが病院経営の本当の勝負が始まります。

開院1年目は親の地盤を譲り受けたなどの特別なケースを除いて患者さんはほとんど来ないことが多いです。まだその時期は患者さんが医院やクリニックの存在を知らないことが多いです。ただそれも2・3年目になると来ていただいた患者さんが口コミを通して患者さんが増えるというケースが多々あります。ただその際にこの2つだけはどうしても行っていただきたいと考えています。

1つ目はしっかりとした患者さんへの対応をすること。地域でも有名な大病院の有名な先生の中には病院や自身の知名度などを利用して高飛車になる・横柄な診療をしてしまう先生がいます。決してそのような先生にならないこと。患者さんのために親身な診療と的確な治療を行うことです。風邪やアトピーなどの基本的な病気の治療も丁寧に行うことです。そうすればいい口コミが広がって患者さんが来るようになります。

2つ目は最低でも1年から1年半分くらいの家族でかかる生活費を確保しておくことです。できれば自己資金で賄っていただきたいです。医師のご家族は何かとお金もかかります。ただ開業当時の最初の資金を甘く見積もってしまったがために貯金が底をついて閉院してしまうケースも多くあります。少なくてもその程度の期間の生活費の確保だけはぜひ行っていただきたいです。

ただ1年近くたっても患者さんがさっぱり来ないもしくはあまり来ないという場合には次のようなケースを考え直していただきたいです。

患者さんが1日平均でどの程度来ているのか

患者さん1人当たりの単価がどうなのか

広告宣伝が上手く行っているのか

季節的・時期的要因が絡んでいるのか

患者さんへの待遇がしっかりとしているのか

スタッフの入れ替わりの際の引き継ぎなどができているか

診療報酬改定の影響などが出ているのか

施設基準の加算の漏れはないか

このようなところを改善していくと数か月後に患者さんが来て数字が良くなって経営面での改善をすることもよくあります。

開業にはどうしても不安はつきまとう

医院を開業するとなると集客面・資金面・人材面なども含めてどうしても不安は付きまといます。

今勤めている院の人間関係が合わないなどといった安易な開業をしてしまうのは賛成できませんが、以前から開院を考えていてどこで開業するか・立地をどうするか・どのような診療科で行うか・現在の貯金がどの程度あるか・資金をどう確保するかなどの考えをしっかりと持って開業をしていけば大きな問題はないといえます。

開業を意識する・開業の準備を終える・いざ開業となって経営をしていく。その時々で試行錯誤・トライアンドエラーをしていきながらベストな方法を探していくことが重要になります。

医院開業をしていくことは決して簡単なことではありません。ただどうしても開業したいという気持ちが強いのであれば開業してもいいのではないかと考えています。

「開業」というのは大きな人生の選択にはなってくると思われますが、人生において悔いのない選択をすることが最も大事になってくるのではないかと思われます。

ぜひ最善の選択をしていただきたいと考えています。

笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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