眼科の開業医の年収はなぜ高い?勤務医との比較や開業資金についても解説

公開日:2018年9月3日
更新日:2024年10月15日

眼科で開業しようと考えている先生に向けて、開業医の年収や、勤務医との比較、開業資金の目安について解説します。

眼科の開業医というと、「他の診療科目より年収が高い」と言われることがあります。今回は、その理由についても考えられることをお伝えします。

なお、開業医の年収は個人差がかなりあり、開業資金は物件や内装、導入する医療機器などの規模感によって大きく変わってきます。

特に眼科の場合は、開業医の年収のバラつきが大きいとも言われています。

そのため、あくまで参考までにご覧ください。

医療経済実態調査から見る眼科開業医の年収と内訳

眼科の開業医の年収については、第22回医療経済実態調査のP351一般診療所(個人・青色申告を含む)で、医業・介護収益から費用を引いた損益差額を年収とすると、3,377.9万円と算出できます。

眼科の開業医の年収は高いのは本当か?

健康保険組合連合会の健保ニュースによれば、同じく第22回医療経済実態調査での全開業医の平均年収は2,763万円と算出されています。

このデータと比較すると、全診療科目平均の開業医の年収に比べると、眼科の開業医の平均年収は600万円ほど大きいことになります。

また、第22回医療経済実態調査P350~352から、他の診療科目の年収を算出しても、やはり眼科の年収は大きいと考えられます。

 医院・クリニックの利益
眼科3377.9万円
内科2582.4万円
小児科2827.3万円
精神科2455.8万円
外科2020.8万円
整形外科2998.4万円
産婦人科4551.9万円
耳鼻咽喉科2597.2万円
皮膚科2792.6万円

医院・クリニックによるバラつきはあるとは考えられますが、公的データから推測すると「眼科開業医の年収は高い」というのは、一定の信憑性はあると言えるでしょう。

収益の内訳

次に、眼科開業医の収益の内訳について、他の診療科目の代表として一般内科と比較しながらみてみましょう。

第22回医療経済実態調査を元に眼科開業医の年間収益の内訳を示すと、介護収益はなく、医業収益が100%を占めています。

その額は9,358.8万円で、内科の8,020.1万円より1,300万円程度上回っています。

ただ、その構成を見てみると、保険外診療の割合はほとんどなく、この点は内科と同様です。

また、入院診療の額は150.1万円、外来診療の額は9,101.7万円となっており、入院診療の割合が少ないのも内科とほとんど変わりません。

あくまで公的データの分析にはなりますが、眼科に関しては一般内科の医業収益の構成比とは大きな違いがありません。

違う点というと、全体の収益が眼科の方が大きいという点です。

経費の内訳

経費についても一般内科と比較してみてみましょう。

一方で、眼科開業医の年間経費は5,980.9万円となっていますが、これは内科開業医の年間経費の5,471.9万円より500万円ほど大きな数字です。

さらに細かく分析するために、眼科開業医と内科開業医の年間経費の内訳を以下の表にまとめます。

 眼科開業医内科開業医
経費5,980.9万円(63.9%)5,471.9万円(67.9%)
給与費2,400万円(25.6%)2,041.7万円(25.3%)
医薬品費896.3万円(9.6%)1,377.1万円(17.1%)
材料費416.7万円(4.5%)202.9万円(2.5%)
給食用材料費0.6万円(0.0%)2.3万円(0.0%)
委託費252.7万円(2.7%)271.1万円(3.4%)
減価償却費515.8万円(5.5%)347.0万円(4.3%)
その他1,499万円(16.0%)1,230.0万円(15.3%)

経費の内訳を比較すると、眼科開業医の方が給与費や材料費、減価償却費の割合が大きく、医薬品費の割合が少ない傾向はあります。

ただ、構成比を見ると、医薬品費以外は目立って大きな差は見られません。

眼科と内科では、診療が全然違うので必要設備などが大きく変わってきますが、経費の構成という点では、大きな違いはないと言えるでしょう。

眼科勤務医の年収

では、眼科の勤務医の年収については、どうかというと、独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(2012年)によれば1,078.7万円です。

眼科開業医の年収の話をした後では意外かもしれませんが、内科勤務医(1,247.4万円)、小児科(1,220.5万円)、外科(1,374.2万円)、整形外科(1,289.9万円)、精神科(1,230.2万円)など他の診療科目よりも低い水準です。

ただ、眼科勤務医の年収については、耳鼻咽喉科、皮膚科を加えた3診療科目の平均値となっており、精度には疑問があります。

とはいえ、眼科は、他の診療科目に比べても、勤務医と開業医では年収の開きが大きいと考えられます。

内科開業医と勤務医の年収の差は2倍程度ですが、眼科の開業医と勤務医は3倍程度の開きになっています。

なぜ眼科開業医の年収は高いのか?

では、なぜ眼科開業医の年収は高いのでしょうか?

上記の医療経済実態調査で、一般内科と比較してみると、眼科の方が経費はかかっているが、収益も多く、その分プラスになっています。

また、眼科開業医は他の診療科目に比べて保険外診療の割合が大きいということはありません。

つまり、ほとんど保険診療ながら、医業収入が内科を上回っていることになります。

なぜ、眼科の収益が大きくなるかというと、以下の2点によるものが大きいとされています。

  1. 眼科の手術は短時間で終わる
  2. コンタクトレンズ装用者の人口

詳しく解説すると、次の通りと考えられます。

手術時間が短い

眼科の代表的な疾患の手術時間は以下の通りです。

病気手術時間
白内障15~45分程度
緑内障30~1時間程度
閉塞隅角緑内障15分以内
強膜内陥術1~2時間
硝子体手術1~3時間
レーザー光凝固術15分以内
レーシック手術15分以内

と、ほとんど疾患が1時間以内で終えられるので、回転率が大きいのです。

他の外科手術の場合は数時間かかることもありますが、眼科ではそのような手術はほとんどありません。

ここ数年希望者が多いレーシック手術も15分程度です。

それで診療点数が大差ないのであれば、回転率がいいので、1日に何人もの患者さんを手術できます。

1,500~1,800万人がコンタクトレンズを付けている

もうひとつ、眼科開業医の年収が高い理由として考えられるのが、コンタクトレンズの装用者の数です。

ここ最近ではっきりした統計データはありませんが、日本ではおよそ1,500~1,800万人前後がコンタクトレンズを付けていると言われています。

基本的には、コンタクトレンズは眼科医の処方箋が必要ですし、しかも使い捨てのコンタクトレンズを使用している人の割合が圧倒的に多いです。

他の診療科目では体の調子が悪くないとなかなか通いませんが、眼科はコンタクトレンズがあるので定期的に通ってもらい、安定的な収益源となっていると思われます。

内科の勤務医が開業医を志す理由

眼科の開業医は、他の診療科目の開業医よりも年収が高く、眼科勤務医と3倍もの開きがあります。

眼科は勤務医のなかでは年収が若干低く、開業医の年収は逆に高いので、経済的な魅力が他の診療科目よりも高いように思えます。

とはいっても、眼科勤務医の年収も決して低いとは言えません。

また、眼科の開業医の年収は比較的バラつきが大きいとも言われ、1,500~5,000万円と幅が広いと言われています。

それでも勤務医以上の年収は見込めるように思えますが、他の起業家と同様に開業するわけなので、リスクがないとは言えません。

開業のリスクについては、他の診療科目と同様です。後述するように開業資金も安くありません。

ただ、眼科の先生も年収だけをモチベーションにして開業しているわけではありません。

「じっくりと患者さんと向き合いたい」
「自分が裁量で診療がしたい」
「もっと地域医療に貢献したい」

眼科でも、このような思いで開業されている先生が多いようです。

弊社のホームページでは、眼科で開業された先生の声も掲載していますので、併せてご覧ください。

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開業資金の考え方は、内科など他の診療科目と大きな違いはありません。

戸建て物件での開業の場合は土地、建物だけで3,000万円以上はかかると思っていいでしょう。

テナント物件としても考え方は一緒で、内装費用を見込む必要があり、坪単価40万~とした場合、25坪で1,000万円程度かかります。

さらに顕微鏡、視野計、眼底検査機器、視力検査機器など、眼科特有の医療機器の導入費用が2,000~4,000万円程度かかります。

しかも、どんな診療をするかによって大きく違ってきます。

眼科であれば、白内障や緑内障などの手術やレーシックなどの視力回復手術を行うかどうか。

先ほどもお伝えしたように、眼科の手術は短い手術時間で大きな収益源になり得ます。

ただ、手術を行うとすれば、手術室のスペースや大型の医療機器を揃えることが必要になります。

これを考慮すると、プラス2,000~3,000万円程度の費用は見込んだ方がいいでしょう。

つまり、眼科の開業費用は安くて3,000~5,000万円程度、手術も行うのであれば、5,000~8,000万円程度の開業資金を見込んでおいてください。

眼科の場合はコンセプトで大きく開業資金が変わってきますが、必要以上に開業資金をかけないように注意しましょう。

医業収入が大きい眼科とはいえ、開業資金が大きいと借入金の返済が大きくなり、資金繰りを悪化させることになります。

【まとめ】眼科開業医の年収はたしかに高い

以上、眼科開業医の年収と勤務医の年収との比較、さらに眼科開業医の年収はなぜ高いかについてお伝えしました。

たしかに公的データを見ても、眼科開業医の年収は高いと考えられます。それは一般内科のプラス800万円程度の3,300万円程度です。

手術時間が短い、コンタクトレンズの安定需要など、高収入を裏付ける根拠もあります。

ただ、眼科での開業は、必要設備によって開業資金が多くかかりますし、開業後の人件費の割合も、比較的競合も多い診療科目です。

開業コンセプトや差別化ポイントをしっかり決めて、綿密な資金計画を立てて開業しましょう。

笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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