勤務医と開業医の5つの違い|働き方や年収など気になることを詳細解説


「このまま勤務医を続けるべきか、それとも開業医として独立するか?」
「勤務医と開業医ではどれくらい働き方や年収、立場が違うのか?」
医師としてキャリアを積み重ねると、勤務医を続けるか、開業するかといった、今後のプランを考える時期がやってきます。
勤務医と開業医では、日々の業務内容から年収、働き方、そして背負う責任まで、あらゆる面で大きな違いがあります。
どちらの働き方が適しているかは、先生ご自身の目指す医療や、人生において何を重視するかによって異なります。
本記事では、勤務医と開業医の5つの違いや、開業するメリット・デメリットなどについてお伝えします。
医院開業を検討中の先生は最後までご覧ください。
勤務医と開業医の5つの違い

勤務医と開業医の違いについては、主に次表の通りです。
| 項目 | 勤務医 | 開業医 |
| 年収 | 毎月安定しているが天井がある | 平均年収は勤務医より高いが経営リスクを伴う |
| 診療方針 | 勤務先の方針に従い、用意された医療機器や薬を使う | 自分で方針を決めて医療機器や薬なども自由に決められる |
| 労働時間 | 有給休暇や福利厚生があるが大病院の場合長時間労働になりがち | 自分で決められるが労働基準法の対象外となる |
| 業務内容 | 診療に専念しやすい | 診療に加えて経営者としての業務も担う |
| 人間関係 | 医局など組織特有のしがらみがある | スタッフマネジメント能力が必要となる |
以下、勤務医と開業医の違いについて詳しくお伝えします。
年収の違い
多くの場合、勤務医よりも開業医の方が額面上の年収は高くなる傾向にあります。
厚生労働省の「第25回医療経済実態調査(令和7年実施)」によると、勤務医と開業医の平均年収は次の通りです。
| 勤務医(一般病院の医師の平均年収額) | 1,485万円 |
| 開業医(有床の一般診療所) | 3,272万円 |
| 開業医(無床の一般診療所) | 2,872万円 |
※健康保険組合連合会「第25回医療経済実態調査の結果に対する見解」をもとに作成
つまり、開業医の平均年収は、勤務医の1.9~2.2倍程度という算出結果になります。
しかし、注意すべきなのは、上記の開業医の平均年収が、あくまで医業収益であるという点です。
勤務医の場合は、年収から税金や保険料を支払った分が手取りになりますが、開業医の場合はそうではありません。
上記の医業収益から、家賃などの各種経費、借入金の返済額などを差し引くことになります。
つまり、開業医の場合、額面は高くても、資金繰りによっては手元に現金が残りにくいケースもある点に注意が必要です。
特に開業直後は集患が安定しないので、あまり手元にお金が残らないことも想定して、ある程度自己資金に余裕を持っておくことがおすすめです。
その分、勤務医の場合は資金繰りに悩むことがなく、年収も安定しています。
そのため、「失敗したくない」という気持ちが強い先生は、勤務医を続けるケースも少なくありません。
診療方針
勤務医は、基本的に勤め先である病院の方針に従って診療を行います。
使用できる最新の医療機器や、処方できる薬剤のラインナップなども、勤め先が用意したものに限定されます。
そのため、勤務医の場合は自分で診療方針を決めることができません。
開業医の場合は、「どのような医療を患者さんに提供するか」ということを、すべて自分で決めることができます。
先生の理想の治療を実現する医療機器を導入し、こだわりの治療法を自由に選定することができます。
そのため、医院開業を検討中の先生には、「地域の患者さんに理想の医療を提供したい」と考えている方が多い傾向にあります。
労働時間
勤務医の場合、特に急性期病院や大病院などに勤務する場合、当直やオンコール、長時間の残業など過酷な労働環境になりがちです。
ただ、2024年4月からの「医師の働き方改革」により労働時間の上限規制が設けられるなど、労務環境の改善が徐々に進んでいます。
また、勤務医の場合は有給休暇の取得や各種福利厚生など、労働基準法に守られた労働者としての権利があります。
一方、開業医は労働基準法が適用されません。
そのため、有給休暇という概念はなくなりますが、「診療時間をどうするか」「週に何日休むか」といった働く時間をすべて自分で決めることができます。
業務内容
勤務医は、比較的目の前の患者さんの診療に専念しやすいです。
一部、後進の育成や研究などが含まれることはありますが、基本的には医師としての専門業務が中心です。
開業医の場合は、医師としての業務に加えて経営者としての役割が生じます。
資金繰りの管理、スタッフ採用やマネジメント、集患対策など、診療以外の業務内容が大幅に増加します。
人間関係
勤務医は、医局内の上下関係、他科の医師との連携、スタッフとの関わりなど、組織特有の複雑な人間関係の中で働く必要があります。
大病院などになると、派閥や人事異動などに悩まされることも少なくありません。
開業医になると、病院における勤務医のような、大きな組織のしがらみからは解放されます。
しかし、人間関係の悩みがゼロになるわけではありません。
医院・クリニックの雇用主として、自院のスタッフとの人間関係を構築して、マネジメントする責任が生じます。
また、スタッフの採用難や離職といった問題も、開業医の先生ならではの悩みです。
勤務医であっても開業医であっても、人間関係の悩みがなくなることはなく、悩みの種類が違うと考えるといいでしょう。
開業医になる5つのメリット

勤務医と開業医の違いを踏まえて、開業医になるメリットは次のようになります。
・自分の理想とする医療を提供できる
・収入が大幅に上がる可能性がある
・地域医療に直接貢献できる
・働く時間や業務量を自分で決められる
・勤務医ならではの人間関係の煩わしさから解放される
以下、詳しくお伝えします。
自分の理想とする医療を提供できる
開業医になると、医院・クリニックのコンセプトや治療方針を自分で決めることができます。
勤務医時代に感じていた「もっとこうすれば患者さんのためになるのに」というジレンマを解消することができます。
内装の雰囲気から、導入する設備、スタッフの接遇、診療のコンセプトに至るまで、勤務先の制約を受けることはありません。
特に戸建て開業の場合は、自分の理想とするクリニックを作りやすくなります。
ただ、最初から自分の理想を追求して資金をかけすぎて、開業後に資金繰りに苦しむケースもあるので注意してください。
収入が大幅に上がる可能性がある
勤務医の給与は病院の給与テーブルに依存するため、どれだけ多くの患者さんを診ても収入には上限があります。
しかし開業医であれば、経営努力によって集患して、クリニックの売上を伸ばすほど自身の収入を大幅に引き上げることが可能です。
特に自由診療の割合が多い診療科目の先生は、収入が青天井になるケースもあります。
地域医療に直接貢献できる
開業医の先生は、地域のかかりつけ医として、住民の日常的な健康管理から治療まで幅広く担います。
患者さんとの距離が近く、地域に根ざした医療を提供することで、大きなやりがいを感じやすくなります。
働く時間や業務量を自分で決められる
勤務医の先生のように、当直や急なオンコール、意に沿わない異動を強制されることはありません。
先生ご自身のライフステージや体力に合わせて、「週休2.5日にする」「午後の診療時間を短くする」など、働く時間や業務量を自由に決めることができます。
働く時間や業務量を自分自身でコントロールできる自由度の高さは、開業医の大きなメリットです。
勤務医ならではの人間関係の煩わしさから解放される
開業医になると、上司の顔色をうかがったり、医局の人事に振り回されたりといった、組織特有の人間関係のストレスから解放されます。
先生ご自身の理念に共感できるスタッフを採用できれば、風通しの良い職場環境を作ることができるでしょう。
ただ、先ほどお伝えした通り、スタッフマネジメントや離職問題など、開業医ならではの悩みも発生します。
開業医になる5つのデメリットと対策

勤務医と開業医の違いを踏まえて、開業医になるデメリットは次のようになります。
・収入が不安定になる可能性がある
・資金繰りの悩みが多くなる
・経営者の役割があり診療に専念しづらい
・トラブルに対する責任が重い
・求人採用やスタッフとの関係で悩みが多くなる
以下、開業医になるデメリットへの対策とともに詳しくお伝えします。
収入が不安定になる可能性がある
開業すれば必ず大きな収入が得られるわけではありません。
競合が多かったり、マーケティングが不十分だったりして集患できなければ、当然ながら収入は落ち込みます。
また、勤務医であれば病気やケガで休んでも有給休暇が使えますし、入院しても傷病手当金が出ます。
しかし、開業医の場合、病気やケガで休業すれば、その間の医業収入はゼロになってしまいます。
そのため、勤務医の先生と違って、開業医の先生は休業リスクに対する備えが必要となります。
例えば所得補償保険の加入を検討する必要がありますし、火災保険についても休業損害補償を付けた方がいいでしょう。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
資金繰りの悩みが多くなる
ヒト・モノ・カネという言葉があるように、勤務医と違って、開業医になると資金繰りの悩みが多くなります。
医院・クリニックの開業には、数千万円~億単位の開業費用が必要になることが一般的です。
多額の借入金を抱えてスタートするため、毎月の返済に追われることになります。
万が一、経営が軌道に乗らず資金がショートすれば、最悪の場合、閉院に追い込まれるリスクもゼロではありません。
医院・クリニックの開業資金や資金調達については、以下の記事をご覧ください。
一方で、居抜き物件での開業や承継開業となると、開業資金は大幅に抑えることができます。
ただ、メリットだけでなく、場所や物件の制約が大きいなど、自由度がどうしても失われるデメリットもあります。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
経営者の役割があり診療に専念しづらい
勤務医の先生は診療に専念できますが、経営者の役割も持つ開業医の先生はそうはいきません。
日々の診療に加えて、資金繰りやスタッフ問題、集患対策など様々なことを考えていく必要があります。
経営業務に忙殺され、「純粋に医療だけをやりたい」という先生にとっては強いストレスになるかもしれません。
開業医の先生が日々の診療に専念するには、医療機関のサポート経験が豊富な税理士や社労士に依頼したり、事務長を設置したりすることがポイントとなります。
集患対策についても、医療業界に精通した制作会社に依頼した方が、医療広告ガイドラインなどを把握しているので一任しやすいです。
士業や業者を選ぶ際は、医業に強いかどうかを必ず確認するようにしてください。
トラブルに対する責任が重い
勤務医の場合、医療事故や患者さんとのトラブルが起きた際、最終的には勤務先の病院が守ってくれます。
しかし開業医の場合、すべての責任は院長である先生ご自身が負うことになります。
自分自身のミスだけでなく、スタッフが起こしたミスやトラブルであっても、使用者として責任を負わなければなりません。
このように、勤務医と開業医では、責任の所在が大きく異なります。
医師賠償責任保険については、勤務医は先生ご自身が医療事故を起こした際の賠償責任に備えれば十分です。
しかし、開業医になれば、開設者・管理者としての賠償責任にも備えた方がいいでしょう。
医療法人であれば、役員賠償責任保険の加入も検討の余地があります。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
求人採用やスタッフとの関係で悩みが多くなる
多くの開業医の先生が資金繰りと並んで頭を悩ませるのが、スタッフ問題です。
スタッフの採用活動、離職、人間関係のトラブル、マネジメントなど、勤務医時代には経験しなかった業務が絶えず発生します。
特に昭和・平成では主流だったトップダウン型の組織では、スタッフの離職率はどうしても高い傾向にあります。
また、トップダウンは意思決定が速く、方向性を示しやすい一方で、現場の主体性が育ちにくいデメリットがあります。
指示や強制ではなく、スタッフの内発的な意欲を尊重することで主体性を育てることができますし、離職率の低減につながります。
スタッフとの人間関係やマネジメントについては、以下の記事を参考にしてください。
開業医に向いている先生・勤務医に向いている先生の特徴

以上の点を踏まえて、開業医に向いている先生と、勤務医に向いている先生の特徴をお伝えします。
開業医に向いている先生
「自身の理想とする医療を地域に提供したい」などの明確な理念やビジョンを持っている先生は、開業医に向いています。
開業には資金面でのリスクが伴うのは否めないので、いかに失敗しない経営ができるか、慎重な判断力が欠かせません。
ただ、資金面のリスクを取ってでも大幅な収入アップや、自身の裁量で働く自由を求める先生には、医院開業は非常に適した働き方です。
何より、最終的な責任を自分自身で背負う覚悟を持てる先生が、開業医として成功しやすいと言えるでしょう。
勤務医に向いている先生
勤務医に向いているのは、純粋に目の前の臨床や医学研究、あるいは最新医療の提供に専念したいと考える先生です。
数千万円から一億円規模の開業資金を用意することに抵抗がある先生には、勤務医の働き方が適している傾向があります。
また、毎月決まった給与が確実に支払われる経済的な安定を重視する場合も、やはり勤務医が向いています。
【まとめ】勤務医と開業医の違いを理解し、自分に合ったキャリアを選択する
勤務医と開業医は、求められる役割やライフスタイルが大きく異なります。
どちらの選択が正解ということはなく、先生ご自身の価値観や将来設計と照らし合わせて慎重に判断することが大切です。
医院開業を検討中で、スケジュールや手順に関心がある先生は、以下の記事も併せてご覧ください。
税理士法人テラス、テラスグループでは、経験豊富な税理士、社労士、行政書士、ファイナンシャルプランナー、事業用物件の専門家などが結集してワンストップで医院開業支援を行っています。
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監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。


