【3分でわかる】勤務医・開業医が優秀な税理士を選ぶ3つのポイント
はじめに
医院・クリニックを開業すると、勤務医時代と異なり、毎年決算等の会計処理、申告作業をする必要があります。
あとで追徴課税を支払わないといけなくなったり、必要以上に税金を支払ったりすることを避けなければいけません。
このような適正な税務処理を、すべて先生ご自身でやることはほぼ不可能です。
そこで、ほとんどの開業医の先生は、税理士を利用しているかと思いますが、実は税理士によって力量は大きく違います。
医院経営が順調に発展するかどうかは、税理士など優秀なパートナーに恵まれているかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
そこで今回は、優秀な税理士の選び方について解説していきます。
【税理士の探し方】紹介とインターネット検索によるメリット・デメリット
開業医の先生の多くは、先に開業した先輩医師や医師会による紹介、もしくはインターネット検索で税理士を探すと思います。
そこで、まずは紹介で税理士を探す場合と、インターネット検索で税理士を探す場合のメリット・デメリットについてお伝えします。
紹介で税理士を探すメリット・デメリット
まずは、先輩医師や医師会など、紹介によって税理士を探すメリット・デメリットをお伝えします。
紹介のメリット
紹介のメリットは、何と言っても、ある程度信頼できる方からの紹介という安心感です。
リアルな体験談を通して、インターネットでは調べきれないリアルな情報を得ることができるのも大きいでしょう。
なかには、SNSやブログ、ホームページでほとんど発信することなく、紹介でしか出会えないような税理士もいます。
そのため、相談しやすい仲の良い開業医が身近にいる先生などは、優秀な税理士を紹介してもらいやすいでしょう。
また紹介は、医師からの紹介に頼る必要はありません。
異業種の交流のなかの出会いに頼っても、先生にぴったりの税理士が見つかるかもしれません。
紹介のデメリット
ただし、紹介で税理士を探す際に気をつけなければならないのは、一度紹介を受けると断りづらくなる点です。
また、実は紹介だからといって、先生にぴったりの優秀な税理士とは限りません。
にも関わらず、「この人の紹介だから」という理由で、安易に判断して税理士をすぐに決めてしまいがちという欠点もあります。
そのため、税理士を紹介された際は、必ず後述するポイントをおさえておくことが必要です。
インターネット検索で税理士を探すメリット・デメリット
次にインターネット検索で税理士を探すメリットとデメリットについてお伝えします。
インターネット検索のメリット
インターネット検索のメリットは、「開業医 税理士」「クリニック 税理士」「医院 税理士」などのキーワードで、医業を専門とする税理士探しができることです。
実際に検索してみると、医業に特化している税理士事務所のホームページが出てきます。
詳しくは後述しますが、医院・クリニックの税務を扱うのであれば、やはり医業が得意な税理士に依頼するのが一番です。
インターネット検索は、検索するユーザーが知りたい情報が優先して上位表示されますので、先生の求めている税理士事務所を探しやすいでしょう。
インターネット検索の際は、これから後述するポイントを重点的にチェックするようにしましょう。
とはいえ、Web集客にあまり力を入れていない税理士も多く、必要な情報を網羅しているとは限りません。
不明な点があれば、直接問い合わせてみても良いでしょう。
もし「馬が合わないな」「実力的に不安だな」と思えば、断って良いでしょう。
インターネット検索で税理士を探す場合、紹介よりは比較的断りやすいのもメリットの1つです。
インターネット検索のデメリット
インターネット検索は、どうしても紹介に比べて安心感や信頼感に欠けます。
また、インターネットの情報では、リアルな口コミなど調べきれない部分も出てきます。
特に自分で良し悪しを判断する自信がない場合は、不安で誰を選んだら良いかわからないこともあるでしょう。
そのため、実際に会ってみることがとても大切です。
会ってみるのが難しければ、zoomなどを用いてオンライン上で話してみても良いでしょう。
「仕事ができるかどうか」「馬が合うかどうか」と言ったことは、オンラインでも確かめることができます。
新型コロナウィルスの影響で、オンライン対応を強化している税理士も多いはずです。
無料相談に申し込む、税理士事務所が主催するセミナーに参加するなど、まずは実際に話を聞いてみましょう。
開業医が優秀な税理士を判断する7つの重要ポイント
紹介によって出会った場合も、インターネットの検索で出会った場合も、欠かせないのは、優秀な税理士を判断するポイントを押さえることです。
そこで、開業医の先生が優秀な税理士を見つける際に、重要なポイントをお伝えしていきます。
個人開業のクリニックや医療法人に長く関わった実績があるか?
開業医の先生に相性の良い税理士は、言うまでもなく医業経験の多い税理士です。
そのため、医院・クリニックの顧問実績、相談件数、医業に関わってきた年数などの実績を確認しましょう。
もちろん、実績と評判は別の話ですが、少なくとも医業経験の多い税理士は、医業案件に関する経験やノウハウを蓄積しているのは確かです。
医院やクリニックの税務となると、医療法など医療関連の法律も関わってくるため、クリニックの顧問経験が少ないと、税金対策の提案は難しくなります。
診療科目上の留意点がわからないので、アドバイスを十分に受けられない場面も多くなるでしょう。
税務調査についても、知見が浅いと受け答えがしどろもどろになりがちです。
医業経験が豊富かどうかは、必ずチェックするようにしましょう。
医業経験豊富なスタッフが多数在籍しているか?
個人の税理士事務所と、スタッフが多数在籍している税理士法人には一長一短があります。
個人の税理士事務所の場合、基本的に同じ税理士がずっと関わる一方で、所長が忙しくなるとレスポンスが悪くなったり、訪問が滞りがちになったりすることがあります。
スタッフが多数在籍している税理士法人であれば、個人の税理士事務所のように、突然レスポンスが悪くなったりするリスクは低減できるでしょう。
一方で、特に大手税理士法人の場合は担当者が1~3年で入れ替わることも多いですし、スキルも担当者によってばらつきがあります。
一番の理想は、両者の欠点を潰せる税理士法人であること。
つまり、担当者によるばらつきも少なく、経験豊富なスタッフが多数在籍している税理士法人を選ぶのが良いでしょう。
医業案件で培ったノウハウを所内で情報共有し、常にスタッフのレベルアップに全社的に取り組んでいる税理士法人は信用できる確率が高いと言えます。
税金対策だけでなく、医院経営をトータルでサポートできるか?
インターネットで検索してみると、意外と医業に特化した税理士事務所や法人が存在することに気付くでしょう。
しかし、「税理士は税務処理が仕事」と割り切っているのか、医業が得意と謳いながら、対応がマニュアル通り、機械的なことも少なくありません。
これでは、労務・法務・不動産対策・リスクマネジメント・相続対策など、あらゆることを考慮した税金対策を提案できません。
それだけでなく、税務処理にだけフォーカスしているため、医院経営の改善などのコンサルティングができません。
日々の税務処理だけでなく、税金対策や医院経営の改善、各々のライフステージに合った提案ができる税理士を選ぶようにしましょう。
医業に特化した社労士や行政書士、弁護士などと連携が取れるかどうか?
開業医の先生の悩みで意外と多いのが、税務・労務・法務が各々別々の組織体が担っており、連携がうまくいかないという点です。
各所の連携がうまくいかないと、先生の負担が増えてしまったり、不安にさせたりしてしまいます。実際に医院経営に支障が出たケースもあります。
なぜ別々の組織体で連携がうまくいかないのかというと、各々で守秘義務があり、情報共有ができないためです。
そのため、税理士を選ぶ際は、所内の組織体制や、他の士業やコンサルタントとの繋がりも確認しておきましょう。
もちろん、連携先の士業や組織にも医業経験があった方が良いのは言うまでもありません。
国税局OBの税理士が在籍しているかどうか?
特に開業して数年程度の先生にとって、税務調査は大きな不安要素の1つでしょう。
税務調査は何か税務処理上の疑いがあるからという理由で入ってくるものではありません。
「まだ1回も税務調査していない」「最後の税務調査してから何年も経っている」「売上が上がっている」という理由で税務調査対象になり得ます。
つまり、長くクリニックを経営するのであれば、数年に1回は税務調査があるものと思って間違いありません。
税務調査の対象になった場合に心強いのは、先に書いたように医業案件が得意な税理士。
もう1つは、税務調査のあらゆるケースや調査官の思考パターンが分かっている税理士。
後者の場合は、やはり国税局OBの税理士の方が有利となります。
税理士事務所によっては、国税局OBの税理士が在籍していたり、連携を取ったりしている税理士事務所もあります。そういった税理士事務所は心強い味方になってくれるでしょう。
サポート内容や料金が明確かどうか?
サポート内容や料金を明確に提示しているかどうかは、契約後のトラブルを回避するためには重要なポイントです。
サポート内容や料金が不明瞭だと、契約範囲がわからず、後になって追加料金や成功報酬を請求されることがあります。
また、「これはサポート範囲外です」と後から言われることもあります。
どちらにしろ、トラブルを招く元となるので、あらかじめサポート内容や料金はしっかりと確認しておきましょう。
「一緒に飲みに行きたい」と思えるか?
最終的には、自分の直感を信じることも大切です。
依頼に値するほど経験豊富であったとしても、直感で「この人は馬が合わなさそう」「一緒に飲みに行きたいとは思えないなあ」と思ったら、消極的に考えたほうが良いでしょう。
なぜかというと、税理士は開業医の先生にとって最終的な相談役でありサポーターである存在だからです。
税務のことはもちろん、スタッフのことや、ひいては相続や家族のことまで、医療経営に関する相談は多岐にわたります。
一度依頼したら、その後は長く付き合える信頼できる税理士を選ぶことが大切です。
「仲良くなれそうだ」「一緒に飲みに行きたいな」と思ったら、その直感も重要な判断基準としてください。
ただし、その他6つの重要ポイントと照らし合わせ、論理的な判断、直感的な判断を両方総合して税理士を選ぶようにしましょう。
【まとめ】紹介でもインターネット検索でも、税理士を選ぶ基準を明確に
以上、自分にぴったりで優秀な税理士を判断するポイントについてお伝えしました。
重要なことは、先輩医師などからの紹介でも、インターネットの検索でも、税理士を選ぶ基準を明確にすることです。
これから医院を開業しようとしている先生、すでに医院経営をなさっている先生にとって、最高の税理士を探す参考にしていただければと思います。
監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。