美容外科の開業医・勤務医の年収が高いのは本当か? 気になる開業資金も解説

公開日:2018年9月2日
更新日:2024年10月21日

美容外科で開業しようと考えている先生に向けて、開業医・勤務医との比較、開業資金の目安について解説します。

保険適用の治療がほとんどない美容外科は、開業医・勤務医ともに他科より年収が高いと言われています。

また、高年収と言われる美容外科医ですが、美容外科クリニックの開業資金は比較的高額と言われています。

美容外科医の年収やクリニックの開業資金については、実際のところはどうなのでしょうか?

※開業医の年収や開業資金は個人差がかなり大きく、特に美容外科は人によってバラツキが大きいので、あくまで参考までにご覧ください。

美容外科の勤務医の求人サイトを見ると年収は……

美容外科の年収については、勤務医の年収からお伝えします。

美容外科の勤務医の年収については、厚生労働省などの公的データ(医療経済実態調査等)はないのですが、求人サイトを調べてみると、かなり高年収であることが推測されます。

様々な求人サイトを確認してみると、大手の美容外科・美容皮膚科クリニックでは勤務医の年収でも1,800~2,500万円程度がほとんどです。

実績次第では、勤務医であっても年収4,000~5,000万円を超えることも珍しくないようです。

実際に某大手美容外科クリニックの求人を見てみると、勤務1年目で年収4,000万円超えした例もあるようです。

  1. 第22回医療経済実態調査から算出される全開業医の平均年収は2,763万円
  2. 独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(2012年)の全勤務医の平均年収は1,261,1万円

つまり、美容外科医になれば勤務医でも他科の2倍前後の年収、他科の開業医と同じくらいの年収を実現できるのです。

美容外科医がここまで恵まれているのは、美容外科の大半は自由診療であることが大きいでしょう。

施術・カウンセリング・アフターフォローなども含めて院自身が価格を決めることができ、コントロールしやすくなります。

自由診療なので、診療報酬点数で比較することはできませんが、美容外科は1人あたりの手術時間が、一般の外科よりも短いことが多いです。

そのため、患者さんの回転率も良く、それでいて患者さんには何回か来院してもらうことが前提になるので、高い収益を実現しやすくなります。

美容外科の開業医の年収は?

美容外科は、医師のなかでも異色の分野であるためか、開業医の年収についても厚生労働省等の公的調査データは確認できません。

ただ、勤務医でも年収が2,000万円前後、実力次第で4,000~5,000万円ということは、開業医の先生となれば、より高い年収が見込めます。

場合によっては、年収億越えを実現する先生もいるという話をよく聞きますが、あながち嘘ではないと考えられます。

ただ、年収だけの話をすると、勤務医でも他科の開業医に匹敵する年収なので、年収だけで開業医に魅力を感じる先生は、比較的少ないかもしれません。

むしろ、美容外科の勤務医として経験を積む過程で、「もっと自分の理想の美容医療を追求したい」という気持ちで開業するケースが多いです。

美容外科医の年収以外のメリット

勤務医・開業医に関わらず、美容外科医の年収以外のメリットについてお伝えします。

ワークライフバランスを維持しやすい

医師というと、「高年収=激務」というイメージがあります。特に勤務医の場合は、年収に比例して緊急の対応や時間外労働が発生しやすいイメージです。

しかし、美容外科は勤務医のケースで言っても、急患対応や時間外、当直といった時間・体力的な負担の少ない診療科目です。

年収の割には、ワークライフバランスを維持しやすい科と言えるでしょう。

病気を治すこととは違う喜びがあること

医師という仕事は、患者さんから感謝される仕事であることには変わりないですが、他科においては「病気を治すこと」に意義があります。

その点、美容外科は病気を治す科ではない点が異色ではあります。

「きれいになりたい」「若返りたい」という女性(今は男性の美容外科も多いですが)の希望を叶える仕事です。

美容外科というと、一般的な外科や形成外科で経験を積んでいる先生が多いのですが、病気の治療とは違う喜びを与えることにやりがいを感じられる職業です。

美しさを提供して、患者さんに喜んで頂くことで、心も満足してもらうことにやりがいを感じる先生が多いです。

逆に言うと、先生の使命や大義が何なのかによって、興味の分かれる分野ではあります。

美容外科医になるには?

内科や外科など一般的な診療科目と違って、美容外科は大学病院など、大規模な病院ではなく、ほとんどがクリニック単位で存在します。

美容外科医は、一般的な外科や形成外科などで経験を積んでから美容外科に進むケースが比較的多いように思えます。

日本形成外科学会でも、「美容外科医になるにはどうしたらいいですか?」という問いに対して、形成外科の専門医を取得してから、サブスペシャルティとして美容外科診療を行うことを推奨しています。

このように、特に資格などがあるわけではないですが、美容外科医は美容面を重視した形成外科的な熟練した手技が必要です。

病気の治療を目的としているわけではないですが、当然技術力がなければクレームに繋がります。

見た目の印象を左右し、理想通りになっているか目視で判断されやすい美容外科は、比較的クレームになりやすい科と考えられます。

勤務医でも場合によっては4,000~5,000万円の年収を得られると先ほどお伝えしましたが、これは美容外科クリニックで十分実力が認められた場合に限ります。

美容外科医は、そういう意味では実力主義といえる部分があり、並大抵ではない相当の研鑽が求められます。

美容外科クリニックの開業資金とその理由は?

美容外科の場合、大手クリニックの雇われ院長(分院長)としてある程度成功していた先生が独立開業を目指すケースも少なくありません。

しかし、院長と分院長ではまったく立場が変わります。分院長の場合は、まだ大手の美容外科クリニックの看板がありますが、開業すればそれがなくなります。

また、分院長は開業を経験したわけではありません。使命・ミッションのもと開業コンセプトを明確にして慎重に物件選び、資金調達をしなければいけません。

というのも、以下の観点で開業資金が他科よりかかる傾向があり、少なくとも5,000万円、通常7,000~8,000万円程度の見込みです。

場合によっては1億円を超えることもあるので、無事に資金調達できたとしても、開業後に資金繰りに苦しむ可能性があります。

  1. 一等地の駅近くの賃料の高い物件が選ばれるケースが多く、しかも激戦区であること
  2. 高級感を演出しようとすると、内装費がかかるので見せ方は要検討
  3. 医療機器が集患に直結することが多く、最新の医療機器にかかる費用も大きい
  4. 患者さんが「近いから選ぶ」とは限らず、医療広告ガイドラインに気を付けながらWebマーケティングにも力を入れる必要がある
  5. 他の大手美容外科クリニックだけでなくエステサロンも競合となる

開業資金が大きく、競合も多い美容外科は、ただ「自由診療だから儲かる」という気持ちだけでは美容外科の開業は厳しいことがうかがえます。

逆に言えば、たしかな技術力に加え、競合との差別化や明確なミッション・ビジョンがあれば成功しやすい科と言うこともできます。

また、必ずしも都内の一等地を選ぶ必要はなく、クリニックのコンセプトやWebマーケティング次第では、郊外でも十分成功が見込めます。

物件や医療機器など、「本当にこれが必要なのか」という視点で、明確な資金計画を作るようにしましょう。

【まとめ】美容外科は開業医も勤務医も高年収だが開業資金も高い

以上、美容外科の開業医の年収、勤務医との比較、開業資金の目安についてお伝えしました。

美容外科は、形成外科技術をもとにしたたしかな技術力を武器として、高年収を目指せる科です。

しかし、賃料の高い物件が合っているケースが多く、医療機器も集患を左右するため、開業資金は高くなる傾向にあります。

開業する場合は、現実的な医業収入を見込んだうえで、明確な資金計画を作るようにして、無駄のない開業を行うようにしましょう。

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笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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