矯正歯科の開業医・勤務医の年収はどれくらいか? 開業にかかる資金や注意点は?

公開日:2019年6月2日
更新日:2024年10月21日

矯正歯科で開業しようとしている先生に向けて、一般歯科と比較しながら開業医・勤務医との比較、開業資金の目安などについて解説します。

矯正歯科については、一般歯科や審美歯科と一緒に標榜している歯科医院も多いですが、矯正歯科専門としているケースもあります。

一部は保険適用の治療を除けば、矯正歯科は基本的には自費診療ですが、実際に年収や開業資金はどれくらいなのでしょうか?

矯正歯科医院の開業に興味のある先生は、ぜひ最後までご覧ください。

矯正歯科の開業医・勤務医の年収は?

歯科の年収・開業記事でもお伝えしたように、歯科の勤務医の平均年収は約645万円、開業医の年収は約1,182.4万円となっています。

矯正歯科については、一般歯科のように開業医と勤務医の年収に関する参考データは今のところありません。

ただし、矯正歯科を有する歯科医院の求人情報を確認すると、年収1,000万円を超える歯科勤務医の募集も少なくありません。

そのため、勤務医でも1,000万円を超えることは、そこまで難しくないと考えられます。

ただ、これは矯正歯科だけでなく、一般歯科や審美歯科なども標榜している歯科医院全般に言えることで、矯正歯科に限った話ではないと思われます。

また、一般歯科と一緒に標榜している歯科医院が多いように、一般歯科から矯正歯科の進出は難しいことではありません。

そのため、矯正歯科においても年々競合が増えており、自費診療の価格競争が激しくなってきています。

矯正歯科医はどれくらいいるのか?

歯科医院・クリニックがコンビニより多いというのは有名な話で、2021年現在、全国の歯科医院の数は68,041件、コンビニの数は55,928件です。

※歯科クリニック数は医療施設動態調査、コンビニの数はJFAコンビニエンスストア統計調査月報参照

では、矯正歯科がどれくらいの数があるか、矯正歯科医がどれくらいいるのでしょうか?

厚生労働省の「令和元(2019)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によれば、病院の診療科目別にみた施設数では、歯科が1,100に対し矯正歯科は144です。

あくまで一般病院のなかの話ですが、一般歯科の13%程度の数字です。

また、日本矯正歯科学会の認定医は約3,000人程度、認定医よりレベルが高い専門医は500人程度とされています。

日本の歯科医師の数は10万人を超えていると言われていますから、これだけ見ると矯正歯科医の数はごく一部の印象があります。

ただし、日本矯正歯科学会の認定医は、矯正歯科医として5年以上学会に所属していること、専門医は12年とされています。

そもそも上記の認定医、専門医でなくても矯正歯科を標榜することは可能ですから、実際にはもっと多いと思われます。

特に都市部の場合、実際に街を歩いていると、矯正歯科を標榜する歯科医院の看板は多く目にします。

先ほどもお伝えしたように、一般歯科のみならず矯正歯科の競争は激しくなっているのが現状です。

矯正歯科専門と一般歯科の経営上の違い

矯正歯科の開業には、以下のいずれのパターンがあります。

①矯正歯科専門の歯科医院を開業する
②一般歯科と一緒に矯正歯科を標榜した歯科医院を開業する

前者の矯正歯科専門の歯科は、矯正治療に特化した専門性の高い治療を行える点が、一般歯科と違っています。

②のタイプは、一般歯科と矯正歯科、審美歯科など様々な患者さんを受け付けています。ただ、歯科医院内で矯正歯科に対応できる歯科医や診療日が限られるデメリットがあります。

そのため、矯正を求めている患者さんから見れば、矯正歯科専門の歯科医院の方がいいと考えるでしょう。

これは、風邪を引いたときに内科と一緒に標榜している皮膚科や小児科よりは、一般内科に通おうと考えるのと一緒です。

その代わり、矯正歯科に特化しているため、患者さんの属性が矯正のニーズに限られてしまう欠点があります。

また、矯正歯科と一般歯科の大きな違いは、矯正歯科では自費診療が中心になるという点です。

自費診療が中心の歯科医院となると、保険が中心の一般歯科に比べると集患対策が変わってきます。

矯正歯科に特化するか、一般歯科と兼ねるかは、一長一短あり単純に良し悪しを判断できませんが、どちらに舵を切るかは明確にした方がいいでしょう。

矯正歯科に特化した先生の開業、医療法人化の事例があるので、詳しくはそちらをご覧ください。

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矯正歯科の開業資金の目安は?

矯正歯科の開業資金については、大まかには一般歯科と大きな差はありません。

だいたい4,000~5,000万円程度の開業資金を目安に考えるといいでしょう。

ただし、導入する医療機器や内装費用によっては、さらに開業資金がかかってしまうことは十分考えられます。

例えば審美治療のように高級で清潔感のある演出をしようとしたら、開業資金はさらに多額となるでしょう。

医療機器や内装費用ほどのインパクトにはなりませんが、ターゲットが絞られるので広告宣伝費もある程度見越しておいた方がいいです。

一般歯科と違ってニーズが広くないので、開業後に集患が安定するまでは時間がかかると言われています。

そのため、上記の開業資金に加えて、運転資金を十分に用意しておいた方が余裕ある開業ができるでしょう。

一般歯科と比べた場合の矯正歯科開業の注意点

医科歯科クリニック全般に言えることですが、コロナ禍以降、ヒト・モノ・カネの観点では開業はむしろチャンスと言える状況になっています。

具体的には空いている物件の増加、優秀な人材を集めやすい点、融資や補助金が通りやすいなど、様々な要因があります。

もちろん、これがいつまで続くかはわかりませんが、矯正歯科においてもこのような傾向があります。

矯正歯科の開業は、基本的には一般歯科と大きな違いがありませんが、以下の点において、一般歯科と注意する点が違います。

検索して来院する患者さんが比較的多い

自費治療を中心とする医科歯科クリニックに共通することなのですが、自費治療の患者さんの来院理由は近いだけではありません。

インターネットで検索して、他の矯正歯科や歯科医院と比較して来院する場合も多いです。

そのため医院名を考える段階で、地名を付けるなど、ネットで検索して来院してくる患者さんを意識するといいでしょう。

このような患者さんの属性を考えると、ホームページなどのWebマーケティングに力を入れた方がいいのは何となく想像できます。

しかし、ネットで検索する患者さんが多いからといって物件選定がどこでもいいわけではなく、比較的競合の少ない場所である方が理想です。

さらに矯正歯科専門の場合は、ネットで検索して電車に乗って来院する患者さんが多いので、できれば駅から近い方が望ましいです。

矯正歯科専門の歯科医院は、いろんな診療を標榜する歯科医院に比べると競合が少ないので、その点では有利かもしれません。

患者さんに長く通ってもらう集患対策が必要

矯正歯科は、一時的な歯痛の場合でも来院する一般歯科と違い、計画的に継続して長く通う患者さんが多いです。

開業直後の集患は一般歯科よりは時間がかかりますが、長く通ってくれる患者さんが増えてくれば経営が軌道に乗ってきます。

長く通ってくれる患者さんからは口コミも生まれやすくなります。

そのため、Webマーケティングだけでなく、口コミによる力も案外重要になってきます。

患者満足度を高めるように、日頃からスタッフの接遇力を高めることや、居心地がよくて通いやすい雰囲気づくりが重要になります。

子どもを対象とするか、成人を対象にするか?

矯正歯科の患者さんの属性は、大きく分けて小児矯正か、成人を対象とする矯正歯科に分けることができます。

どちらを専門にするのか、子どもも大人も対象とするのか、一般歯科と一緒に標榜するのかで戦略が大きく違います。

小児矯正の場合は、需要が高く成人の矯正治療よりは安定した集患が見込めますが、報酬が安い特徴があります。

また、親御さんの口コミによる影響力が大きいなど、小児科と同様の集患対策が必要になってきます。

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一方で成人の場合は報酬を高く設定できる分、特に開業直後は患者さんが安定しにくいという特徴があります。

矯正歯科自体、かなり専門性の高い領域に思えますが、治療方針や想定する患者さんなどを明確に決めてから開業準備しないと戦略がブレる可能性があります。

どんな治療を提供していきたいかというコンセプトを必ず明確にしましょう。

【まとめ】治療方針を明確にして開業準備をする

以上、矯正歯科の開業医・勤務医の年収の目安、開業資金の目安についてお伝えしました。

矯正歯科に特化した年収の目安については、はっきりした公的データはありません。

しかし、一部を除けば自費診療が中心なので一般歯科以上に年収のバラツキが大きいことが考えられます。

また、患者さんの属性が一般歯科と違うので、一般歯科と違った戦略を持って開業準備を進める必要があります。

小児矯正か、成人を対象とするかでも集患対策は大きく違ってきます。

なお、矯正歯科だけでなく、一般的な歯科医院の勤務医・開業医の年収、開業資金については、以下の記事に詳しくお伝えしています。

歯科・矯正歯科の開業事例も載せていますので、併せてご覧ください。

【2022年最新】歯科の開業医・勤務医の年収は?開業事例や必要資金も解説

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笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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