医療モールの開業で失敗しない5つのコツ|メリット・デメリットを踏まえて詳細解説

公開日:2025年6月20日
更新日:2025年6月20日

医療モールとは、一か所に複数の様々な診療科目のクリニックが集まっている施設を指します。

具体的には、商業施設の「医療モール」の他、テナントすべてが医院・クリニックになっている「医療ビル」、戸建てクリニックが集まっている「医療ビレッジ」があります。

医療モールは様々な診療科目のクリニックが集まっているため、集患や他クリニックとの連携という点で様々なメリットがあります。

一方で、医療モールには他の物件にはないようなデメリットがあり、開業失敗事例も少なくありません。

そこで、今回は医療モールの概要やメリット・デメリットを踏まえて、開業で失敗しないコツについてお伝えします。

医療モールでの開業を検討している先生は、ぜひ最後までご覧ください。

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医療モールの種類と主なメリット・デメリット

冒頭でお伝えしたように、医院・クリニックが集中している施設には、商業施設の医療モールの他、医療ビルや医療ビレッジがあります。

各々の特徴やメリット・デメリットには、似たようなところばかりではなく、違いもあります。

そこで、まずは各々の医療モールの種類と、メリット・デメリットをお伝えします。

※医療ビル、医療モールの開業を検討中の先生は、こちらの動画も併せて参考にしてください。

医療モール|商業施設に併設されている

医療モールとは、駅ビルやショッピングモールなどの商業施設に、併設してクリニックが集合するエリアを言います。

垂直的な構造となっている医療ビルに比べて、医療モールは同一フロアまたは隣接した区画に配置される水平的な構造となっています。

医院・クリニック以外の施設も集合しているため、地域のランドマークとして親しまれており、地域の認知度が高いです。

医療ビルや医療ビレッジに比べると、ショッピングも兼ねて来院する患者さんも見込めるので、集患力がとても高くなります。

そんな医療モールのメリット・デメリットは次の通りです。

医療モールのメリット医療モールのデメリット
・医療機関が集まっていることがわかりやすくて認知度が高い
・他の商業施設と併設されていることで集客力が高い
・待合室、キッズスペース、駐車場などが共有で利用できる
・医療モール内のクリニックとイベントを共催しやすい
・医療モール内のクリニックと連携できる
・医療モール内のルールに縛られやすく、内外装、標榜科目や診療科目などが自由に決められない可能性がある
・医療モール内のクリニック同士の人間関係が診療の足かせになることがある
・相性の悪い業種が入居するとセキュリティや感染症対策などでクレームが発生する可能性がある
・医療モール全体の評判に集患が左右される
・比較的テナントの賃料が高い

医療モールで最も気を付けたいのが、他の併設クリニックや商業施設との相性です。

医療モールは、他クリニックと連携が取りやすい反面、クリニック同士の人間関係が悪いと連携の足かせになりかねません。

医療モール内のルールや取り決めに縛られるなど、村社会のようなやりづらさを感じる先生もいらっしゃるかもしれません。

また、他の商業施設との相性も注意しなければいけません。

医療機関は、一般的には保育園やスポーツジムとの相性が良いと言われています。

しかし、24時間営業のスポーツジムの場合は、セキュリティの問題が発生します。

また、インフルエンザの患者さんが、保育園の親子と同じ通路やエレベーターを通ることになれば、クレームが発生しやすくなります。

感染症対策として、エレベーターや入口を分けたりする工夫は必要になるでしょう。

医療ビル|テナントすべてが医院・クリニックになっている

医療ビルは、テナントすべてが医院・クリニックや調剤薬局になっているビルです。

商業施設の医療モールと違って、垂直的な構造になっていることが特徴です。

住宅街に作られる医療モールに対して、医療ビルの場合は都市部や駅近の立地が多くなります。

また、最初から医院・クリニックが入居することをコンセプトに建てられたビルであるため、必要なインフラが整っていることが多いです。

バリアフリーの設備は整っていますし、電力容量も大きめです。

医療ビルのメリット・デメリットをまとめると、次の通りです。

医療ビルのメリット医療ビルのデメリット
・駅近で医療機関が集まっているので集患しやすい
・必要なバリアフリーやインフラが整っていることが多い
・医療モールほどルールや取り決めが少なく、各々が独立している
・医療機関だけのビルなので、他店舗との相性を気にしなくていい
・他の医療機関と診療内容が重なり、患者さんの取り合いになることがある
・他の医療機関と患者さんの取り合いや治療方針でトラブルになることがある
・ビルの規約で、クリニックの内外装、看板、診療時間、休診日の制限が発生する
・契約期間次第では短期で移転しないといけないことがある
・比較的テナントの賃料が高い

医療モールでも同じことが言えるのですが、他の医療機関と診療内容が重なると、患者さんの取り合いになる点は注意が必要です。

違う診療科目でも、子どもの風邪であれば、内科、小児科、耳鼻科、花粉症であれば内科、耳鼻科、眼科と重なることがあります。

その他、ビルの規約や契約期間など、テナント開業特有の注意点にも気を付ける必要があります。

テナント開業する際の注意点は、以下の記事を参考にしてください。

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医療ビレッジ|戸建てクリニックが集まっている

医療ビレッジは、医療モールや医療ビルのようなテナントではなく、戸建てのクリニックが1ヶ所に集まっているタイプです。

医療機関が集まっているとはいえ、戸建て物件で、各々のクリニックは独立しているため、先生のコンセプト通りに自由に設計できる利点があります。

ただ、駐車場などは共有になることがあります。

医療ビレッジのメリット・デメリットは次の通りです。

医療ビレッジのメリット医療ビレッジのデメリット
・先生のコンセプト通りの医院・クリニックを作りやすい
・患者さんがワンストップで治療を受けやすい
・医療機関が集まっており認知度が高い
・戸建て物件だが薬局を誘致しやすい
・共同利用する設備があればコスト削減に繋がる
・戸建てなので開業資金やランニングコストが多額になる
・駐車場など共同利用になる場合がある
・周辺地域に競合の医療ビレッジができると集患しづらくなる
・長期間の契約の場合は契約解除しづらい
・人口密度が低く集患に苦戦する可能性がある

医療ビレッジは戸建て物件なので、開業資金やランニングコストが、医療モールや医療ビルより多額になります。

また、医療ビレッジでは、15年程度の長期間の賃貸借契約となることが一般的です。

そのため、いったん入居してしまうと契約を解除しづらく、移転もできないなど柔軟な対応が難しくなるデメリットがあります。

医療モールの開業で失敗しないための5つのコツ

医療モールには、主に商業施設の医療モール、医療ビル、医療ビレッジがあり、各々メリット・デメリットがあります。

以上の点を踏まえて、医療モールの開業で失敗しないためのコツをお伝えします。

商業施設と併設になる場合は他のテナントとの相性をよく見極める

特に商業施設と併設される医療モールの場合は、他のテナントとの相性をよく見極めないといけません。

他の飲食店やサービス業、小売店などのテナント構成が、先生のクリニックの患者さん層に合っているか確認しましょう。

クリニックにふさわしくない店子があると、集患力の低下や店舗間のトラブルに発展する可能性があります。

先ほどの保育園やスポーツジムのように、一見相性が良いような場合でも注意が必要になることがあります。

将来、開業するクリニックにふさわしくない店子が入ってくる可能性もあるので、契約内容などもよく確認する必要があります。

他の併設する医療機関との相性を見極める

通常のテナント開業の場合は、基本的には併設する商業施設との相性を考えれば良いですが、医療モールでは他クリニックとの相性も重要です。

治療方針の合わない医師がいると、先生の診療に支障をきたすこともあり得ます。

医療モール内で派閥ができていないかどうかも、よく確認した方がいいでしょう。

後述するように、医療モールでは他の併設するクリニックとの良好な連携体制がカギとなります。

他のクリニックの情報を集めて、協力体制が築きやすいか、競合が多くないか確認するようにしましょう。

なるべく専門性の高いクリニックが集まる医療モールを選ぶようにすれば、診療内容が競合するリスクは低くなります。

他の併設する医療機関と良好な連携体制を構築する

医療モールには様々ありますが、共通点は、医療機関が集約して集客しやすいが、他クリニックと診療内容などでトラブルが起きやすいことです。

医療モールやビル内の他クリニックとの良好なコミュニケーションを築き、円滑な連携体制を築けるかはかなり重要になります。

医療モール内の先生同士が人間関係を築くことができず、うまく連携が取れないという失敗例は少なくありません。

患者さんの紹介、合同イベントの企画、災害時の連携など、協力体制を構築することで、先生のクリニック経営がスムーズになり、集患しやすくなります。

また、医療モール全体の価値向上に貢献できる点も大きいでしょう。

医療モール全体の評判は、先生のクリニックの集患にも大きく影響してきます。

物件選定時に契約内容をよく確認する

医療モールや医療ビルなどでは、建物のルールや取り決めに縛られやすいデメリットがあります。

そのため、物件選定時に契約内容をよく確認しなければいけません。

例えば契約期間、賃貸借契約の更新条件、解約条件、内装の制限、看板設置場所の制限などです。

医療モールは、複数のクリニックが共用で使用するために、標榜科目や診療時間など、細かい部分で制約を受ける可能性もあります。

開業後にトラブルにならないように、不明点があれば、医院開業に詳しい専門家に必ず確認してください。

医療モールのコンセプトをよく確認する

医療モールは医院・クリニックが密集しているので地域の認知度が高く、集患しやすい傾向にあります。

しかし、だからといって、医療モールのコンセプトに合わない医院・クリニックを開業して良いわけではありません。

例えば、高齢者やファミリー層ターゲットの医療モールで、サラリーマン対象のクリニックは相性が良くありません。

実際に、医療モールでは、患者さんの想定を間違えて失敗してしまうケースは少なくありません。

医療モールの運営会社によっては、テナントが埋まらないという理由で、コンセプトに合わない医院・クリニックを誘致することもあります。

他の医院開業と同様に、診療圏調査を行い、できれば実際に足を運んで周辺の環境を確認するようにしましょう

開業検討中の医療モールですでに開業している先生に直接話を聞いてみるのも1つの手です。

診療兼調査については、以下の記事を参考にしてください。

【まとめ】医療モールの開業は他のクリニックや施設との相性やコンセプトを確認する

以上、医療モールの主な種類とメリット・デメリット、医院開業で失敗しないコツについてお伝えしました。

集患力の高さに魅力を感じて、医療モールで開業を考えている先生も多いでしょう。

しかし、医療モールの場合は、施設のルールや取り決めなどに注意して、他のクリニックや施設との相性を十分確認する必要があります。

コンセプトが自院と合わない医療モールで開業しても失敗しやすくなります。

医院開業に詳しい専門家に確認して、失敗しない開業をするようにしてください。

なお、クリニックの開業物件選びで知っておくべきポイントは、以下の記事をご覧ください。

都市部?郊外?テナント?建設? 医院・クリニックの開業物件選びで知っておくべきポイントとは?

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笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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