耳鼻咽喉科の開業で失敗しない8つのポイント|開業支援実績が多い税理士が詳細解説


耳鼻咽喉科は子どもから高齢者まで幅広い患者さんの来院が期待できますし、診療の幅も広く、治療方針に様々な選択肢があります。
それだけに、耳鼻咽喉科はターゲットを絞ることが難しく、どんな医院を開業しようか迷いやすいところがあります。
厚生労働省の「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 」によると、全国の診療所で働く耳鼻咽喉科の医師の人数は5,224名、全体の4.9%です。
これは、皮膚科(5.7%)、精神科(4.2%)とほぼ同水準であり、歯科医院や内科ほどでなくとも、決して競合が少ないとは言えません。
コンセプトが迷いやすいとはいえ他院との差別化は必要で、どういう治療方針で、どういう患者さんにアプローチするか明確にした方が良いでしょう。
また、診療単価が低い診療科目の1つなので、いかに限られた時間の中で、患者満足度を上げながら効率化を図っていくかも重要です。
この点を踏まえて、耳鼻咽喉科の開業で失敗しないポイントについてお伝えします。
【耳鼻咽喉科開業ポイント①】開業コンセプトや医院の方向性を明確にする
冒頭でお伝えした通り、耳鼻咽喉科は集患のターゲティングや治療方針に様々な選択肢があり、迷いが生じやすいです。

一般内科でも同じことが言えますが、開業コンセプトを考えにくい診療科目です。
ただ、どんな患者さんにどんな治療をするかによって、開業物件や選定する医療機器、内装設計が変わってきます。
特に後述する開業物件については、一度決めたら変えることが難しいので、慎重に経営理念と開業コンセプトから検討する必要があります。
ただ、患者さんのターゲットを絞ることが難しければ、子どもから高齢者まで幅広く来院する耳鼻咽喉科を目指すのも悪くありません。
その場合は、ファミリー層や高齢者ともに多い住宅街の最寄り駅前の立地が適しているでしょう。
例えば、浦和駅ユーカリ耳鼻咽喉科の千原先生は、「自分自身や自分の家族に受けてほしい医療を、全ての患者さんに提供すること」をミッションとして開業されています。
首都圏のベッドタウンである浦和駅直結の利便性の高いエリアで、子どもから大人、高齢者まで幅広い層の患者さんが来院しています。

<浦和駅ユーカリ耳鼻咽喉科>
駅直結なので、浦和駅が最寄り駅の人だけでなく、近隣の最寄り駅からも来院する患者さんが多いのが特徴です。
また、ご自身がオーストラリアに留学中にめまいを専門に研究していたこともあり、めまいの治療にも力を入れています。
耳や鼻の日帰り手術、レーザー治療などご自身の専門性を活かして、特色のある耳鼻咽喉科を開業している先生は多いです。
千原先生のインタビューは、以下の記事をご覧ください。
あくまで一例ですが、経営理念やミッション、コンセプトが明確になると、その後の開業準備にブレがなくなります。
一度、ご自身の専門性や強み、経営理念などを棚卸ししてみると良いでしょう。
ご自身の専門性によっても、患者さんの属性は変わってきますし、適切な物件は変わってきます。
【耳鼻科の新規開業ポイント②】物件の選定場所は様々な選択肢がある

耳鼻咽喉科の患者さんの属性は幅広いので、物件の選定場所に様々な選択肢があります。
先ほどの浦和駅ユーカリ耳鼻咽喉科の千原先生は、同じエリアだけでなく、最寄り駅が違う患者さんにも来院してほしいという思いがありました。
そのため、浦和駅直結の立地での開業となりました。
駅近の好条件の立地ほど賃料は高くなりますが、幅広い患者さんに広い範囲で来院してほしいなら、検討の余地は十分あります。
一方、子どもの診療経験が豊富な方であれば、ファミリー層が多く住む住宅街や、幼稚園・小学校の近くに小児耳鼻咽喉科を開業する手もあります。
このような地域は、大人や高齢の患者さんも多く住んでいるので、結果的には子どもを中心に幅広い属性の患者さんの来院が期待できます。
その他、視認性の高い場所での物件や、医療モールや医療ビルの開業も検討の余地があります。
耳鼻咽喉科に限らず、地元や出身大学の近くのエリアを開業物件に選ぶケースが多いですが、あまりこだわらないことがおすすめです。
地元や出身大学の近くで、先生のコンセプトに合った開業場所があるとは限らないからです。
患者さんの属性や、希望開業場所によって適切な立地は変わってくるので、クリニックの物件に詳しい専門家によく相談するようにしてください。
【耳鼻咽喉科医開業ポイント③】視認性が良い低層階で開業する

耳鼻咽喉科は、基本的には視認性が良く低層階に開業するようにすると良いでしょう。
特にテナント開業の場合は、内科や眼科などと同様に、2階以上の物件はおすすめしません。
耳鼻咽喉科は、来院する姿を見られたくないという診療科目ではないからです。
コストには注意したいところですが、大きな看板を設置して視認性を良くすることも検討の余地があります。
【耳鼻咽喉科の開業ポイント④】診療の効率化が図れる内装設計とする
耳鼻咽喉科は診療単価が低いので、短時間で多くの患者さんを診察する必要があります。

時間がかかる疾患は少ないものの、それでも効率的に診療を進める工夫が必要です。
ただ、診察が流れ作業のようになってしまい、患者さん一人ひとりと向き合わないと、患者離れの元になりかねません。
患者さんやスタッフの導線を考えた内装設計にして、無駄な動きを省きつつ、短い時間のなかで患者さんと向き合えるようにしましょう。
【耳鼻咽喉科の開業ポイント⑤】広めのスペースを取ってバリアフリーを意識する

耳鼻咽喉科では、特に住宅街の開業では小さな子どもや高齢の患者さんの来院が想定できます。
ベビーカーで来院する親子や、足の不自由な高齢者など、様々な患者さんが想定できます。
そのため、なるべく患者さん目線で通路や待合室、駐車場などは広めに確保することが理想です。
特に高齢化が進む地域では、開業時からバリアフリー設計にするのも良いでしょう。
【耳鼻咽喉科の開業ポイント⑥】予約システムの導入などで待ち時間を減らす工夫をする

耳鼻咽喉科は、たくさんの患者さんと対応しなければいけないので、待ち時間対策は必須です。
特に、花粉症などの混雑する時期は、患者さんの待ち時間には気を付けないといけません。
あまり長く待たせてしまうと、クレームの元になりますし、どんなに医療技術があっても患者満足度が低下します。
患者さんは、診療内容だけではなく、待ち時間もかなり気にします。
Googleの口コミなどで「待ち時間が長い」という悪評が書かれれば、来院を敬遠される恐れもあります。
そのため、予約システムの導入などで、待ち時間を少なくするような仕組みは必須となります。
医院・クリニックによっては完全予約制を導入している耳鼻咽喉科も多いです。
予約システムとは、具体的に次のようなものです。
・オンライン予約システム
・Web問診制、問診アプリの導入
・電子マネーや自動精算機の導入
予約システムを導入すると、受付から診察、会計までの流れがスムーズになって、待合室のスペースも必要最低限で良くなります。
結果的に開業資金を抑えたり、ゆったりしたスペースを作ったりすることができます。
待ち時間を短縮しつつも、一人あたりの診療時間を確保できる仕組みで、混雑を避けるようにしましょう。
【耳鼻咽喉科の開業ポイント⑦】内科や小児科との競合に注意しながらうまく連携を取る

耳鼻咽喉科は、診療内容によっては内科や小児科とも競合します。
特に医療モールや医業ビルで開業する際は、診療内容や予防接種などのすり合わせが必要となります。
逆に、内科や小児科などとうまく連携を取ることも要検討です。
患者さんの疾患のなかには、ご自身のクリニックより専門の内科や小児科を紹介した方がいいことがあります。
一方で、近隣の内科や小児科では対応できない疾患を持つ患者さんを、自院に紹介してもらうと良いでしょう。
内科、小児科、耳鼻咽喉科などは、先生の専門性によって、得意、不得意な分野があります。
より適切な医療機関を紹介し合うようにすることで、集患対策になることはもちろん、患者さんからの信頼を得られるようになります。
【耳鼻咽喉科の開業ポイント⑧】予算の許す範囲で様々な媒体で集患する

耳鼻咽喉科は、様々な患者さんの来院が想定できますが、診療単価が低いので、来院患者数を確保する必要があります。
患者さんの幅が広い耳鼻咽喉科では、「この集患方法がおすすめ」「この広告で集患できる」といったものはなく、どれも有効です。
具体的には、次の方法で予算の許す範囲で集患していくと良いでしょう。
・ホームページ作成
・SEO、MEO対策
・SNS活用
・チラシ、パンフレット作成
・他の病院、クリニックとの連携
・患者さんの口コミ
・看板
もし、広告費を使うような場合は、集患が軌道に乗ってきたら減らすようにしましょう。
耳鼻咽喉科の場合、患者さんに認知されて患者満足度を上げていけば、広告費不要で集患できることが多いです。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
【まとめ】地域の患者さんに長く愛される耳鼻咽喉科クリニックを開業する
耳鼻咽喉科の開業についてお伝えしました。
耳鼻咽喉科については、経営が軌道に乗ってくれ、広告費をかけなくても小さな子どもから高齢者まで継続的に来院してくれます。
ご自身の専門性で差別化を図りつつ、地域の患者さんに長く愛される耳鼻咽喉科を目指しましょう。
なお、耳鼻咽喉科の開業医の年収や開業資金については、以下の記事で詳しく解説しています。


税理士法人テラス、テラスグループでは、経験豊富な税理士、社労士、行政書士、ファイナンシャルプランナー、事業用物件の専門家などが結集してワンストップで医院開業支援を行っています。
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監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。