泌尿器科開業で失敗しない9つのポイント|開業支援実績が多い税理士が詳細解説

公開日:2024年12月27日
更新日:2024年12月27日

泌尿器科の開業医の先生は比較的少なく、他の診療科目に比べると競合が少ないことで知られています。

令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 」によると、全国の診療所で働く泌尿器科医の人数は2,045名で、全体の1.9%程度です。

診療所で働く内科医が38,907名いることを考えると、泌尿器科医はかなり少ないと考えていいでしょう。

そのため、開業後は比較的競合が少なく、安定した収益が見込めると言われています。

しかし、専門性の高い診療科目であるため、患者さんのニーズを見極めて開業することが大切です。

また、患者さんのプライバシーや高齢者のバリアフリーに配慮した物件の選定、外装・内装の設計が求められます。

そこで、泌尿器科開業で失敗しないポイントについて解説します。

【ポイント①】需要が見込める地域で開業する

比較的競合が少なく、他の診療科目に比べると泌尿器科は開業物件に悩まないと言われています。

ただ、ご自身の開業コンセプトと、患者さんの属性はよく検討しなければいけません。

泌尿器の疾患は、男女ともに中高年から増える傾向にあります。

高齢者を対象とする場合は、高齢者の多い住宅街の開業とした方がいいでしょう。

実際、高齢者が多い地域で泌尿器科の需要が高まっています。

一方、メンズヘルスなどED治療・男性不妊などを中心とする場合は、比較的都心部でも需要はあるでしょう。

ED治療や男性不妊などを専門とする場合は、比較的広範囲な集患が可能になるので、SEOやMEO対策で認知を高めることも重要です。

治療内容によって、適切な開業物件は大きく変わるので、競合が少ないとはいえ慎重に検討しましょう。

【ポイント②】目立つ場所での開業や看板設置を避ける

泌尿器科は、「尿」というイメージがあるので、来院することが恥ずかしいと思われがちです。

そのため、あまり目立つ場所に開業して看板を設置すると避けられる傾向にあります。

他の診療科目であれば、テナントビルの1Fや、ロードサイドで大きな看板を設置する戦略がありますが、泌尿器科の場合は逆効果になりかねません。

医療モールや雑居ビルの2F以上など、あまり目立たないようにして、看板もそんなに大きくない方が集患しやすくなります。

ただ、高齢者の割合が多い泌尿器科では、駅からあまり遠い、駐車場がないなど通いづらくなることは避けた方がいいです。

また、目立たないような物件や外観を選ぶと、場所がわかりづらくなり、集患上はデメリットにもなります。

そこで、チラシやホームページなどで、地図を入れるなど、場所がどこにあるかわかりやすく示すといいでしょう。

写真付きで、最寄り駅からの道案内を詳細に示すこともおすすめです。

目立ちすぎず、でも場所はわかりやすいということが立地のポイントとなるでしょう。

【ポイント③】プライバシーに配慮した内装設計とする

泌尿器科の患者さんの「恥ずかしい」という気持ちを考えると、内装設計もプライバシーへの配慮は欠かせません。

泌尿器科というと、ED治療などを含めて男性の患者さんが多い印象ですが、最近は女性の患者さんも増えています。

女性専門の泌尿器科クリニックが増えてきているくらいです。

しかし、特に女性の患者さんは泌尿器科の来院へのハードルは高いです。

恥ずかしいという気持ちを取り払うためにも、プライバシーに配慮した内装の設計が必要です。

少なくとも、男性と女性で待合室を分けたり、動線を分けたりすることは必要でしょう。

実際に女性の待合専用スペースを作って、女性の患者さんが来院しやすくなったという例もあります。

待合室は十分なスペースを取り、患者さん同士が対面になり、顔が見られるようになっていたり、密になったりする配置は避けましょう。

診察室は防音効果を施す必要があるでしょう。防音用のBGMを流すのもおすすめです。

患者さんの声が筒抜けになると、離脱に繋がることと、悪い口コミに進展することがあるので注意してください。

プライバシーに配慮した設計の工夫は様々あり、後述するように看板など外観でも考慮が必要です。

泌尿器科クリニック開業の経験が豊富な施工会社に必ず相談するようにしましょう。

【ポイント④】プライバシーに配慮した予約システムと受付にする

患者さんのプライバシーに考慮するという意味では、受付など患者さんへの接遇、予約システムでも配慮が必要です。

例えば、氏名の呼び出しを避けて、受付番号で患者さんを呼ぶといったものです。

また、患者さんは自分の症状は話したくないので、なるべく受付で「今日はいかがしましたか?」と聞くことがないようにすることも必要です。

オンライン問診システムを導入しておくと、患者さんのプライバシーに配慮できますし、受付の省力化にも繋がります。

【ポイント⑤】口コミが期待できず新規集患対策の重要度が高い

泌尿器科は、小児科や歯科医院など他の診療科目に比べると口コミの拡散が期待できません。

男性の患者さんは、もともと口コミが期待できませんし、ED治療などはますます期待できないでしょう。

一方、女性の患者さんも、泌尿器科について話すことは恥ずかしいと抵抗を感じるので、口コミは期待できません。

そのため、ホームページによる集患や、チラシ、パンフレットなどの集患の必要性が増します。

泌尿器科では、ED、包茎、前立腺の疾患、性感染症、女性になれば頻尿、尿漏れ、女性特有の泌尿器疾患など診察内容が幅広いです。

そのため、ホームページでは、対応する症状についてわかりやすく案内できるようにしておくことが必要です。

先ほどお伝えしたように、症状で検索してヒットするように、SEO対策やMEO対策の工夫も必要でしょう。

【ポイント⑥】訪問診療(在宅医療)のニーズがないか検討する

泌尿器科はもともと高齢の患者さんが多い診療科目です。

地域によっては、訪問診療のニーズもあるので、検討の余地があるでしょう。

自宅でのケアが必要であれば、ケアマネジャーとの連携も欠かせません。

訪問診療をする医院・クリニックの開業については、以下の記事をご覧ください。

【ポイント⑦】他の診療科目と地域連携する

泌尿器科の場合、患者さんは内科など他の診療科目に受診する可能性があります。

男性であれば、男性更年期障害によるうつ症状などの診察で心療内科や精神科に通っているケースもあります。

女性であれば、尿漏れなどの症状で婦人科を受診していることがあります。

泌尿器科は、数が少ないだけに認知度があまり高くないので、症状によっては、最初は泌尿器科になかなか行き着かないかもしれません。

そこで、内科、婦人科、心療内科、精神科など他の診療科目と連携すると、泌尿器疾患の専門的な医師として紹介してもらえることがあります。

逆に、診察した結果、他の内科疾患が見つかったり、疑われたりするようなことがあれば、他の医院・クリニックに紹介ができます。

高齢者が多いのであれば、介護施設と連携するのもいいでしょう。 開業物件を選定する場合は、地域間の連携という観点でも十分検討が必要です。

【ポイント⑧】高齢者が多く来院する場合はバリアフリーを意識した内装とする

尿路結石症 · 尿失禁 · 過活動膀胱 · 間質性膀胱炎 · 前立腺がん、前立腺肥大症などを診察する泌尿器科は、比較高齢者の来院が多くなります。

転倒のリスクを考慮した設計が必要となりますし、車椅子で来院する患者さんも多くなります。

バリアフリーを整えて、スペースや動線を考える必要があるでしょう。

また、高齢者は免疫力が低下しているので、衛生面の配慮も必要になります。

一方、一部のメンズヘルス専門のクリニックの場合など、高齢者の割合が少なくなる場合あ、バリアフリーを整える必要性はなくなります。

あくまで、ターゲットの属性に合わせた内装の設計が必要となります。

【ポイント⑨】トイレ設備は広めに確保する

言うまでもなく、泌尿器科で採尿は欠かせません。

そのため、トイレ設備は広く確保して、採尿から提出までスムーズにできるような動線で内装を設計しましょう。

内科でも採尿は必要なので、内科と一緒に標榜する際も同様です。

患者さんが精神的負担を感じることなく、検査を受けられるようにしましょう。

【まとめ】泌尿器科では患者さんのプライバシーに配慮することが重要

泌尿器科の医院・クリニック開業の失敗しないポイントについて解説しました。

本記事でお伝えした通り、泌尿器科では、患者さんのプライバシーに配慮して開業することが必要です。

・来院の利便性を確保しながら目立ちすぎない外観のデザインとする

・診察室を別室にして防音効果を施すなどプライバシーに配慮した内装とする

・男性と女性を分けた動線とする

・待合室は広いスペースを取って、対面にならないようにするなど配慮する

・問診予約システムなどを導入して、なるべく患者さんが受付で話さなくていいようにする

それに加えて、高齢者が多い場合は、バリアフリーにも配慮した設計にしておく必要があるでしょう。

最近では、女性専門の泌尿器科も多く、今後は女性医師の需要も高くなると考えられます。

泌尿器科の開業医・勤務医の年収や働き方については、以下の記事で詳しく解説しています。

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笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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