精神科・心療内科開業で失敗しないための10個の重要ポイント|医院開業支援実績が多い税理士が詳細解説

公開日:2024年11月15日
更新日:2024年11月15日

精神科や心療内科は、導入する医療機器・機材や必要スペースが少なく、開業資金を抑えられる診療科目の1つです。

開業資金という観点では、他の診療科目に比べて精神科・心療内科の開業へのハードルが低いと言っていいでしょう。

ただ、精神科・心療内科の場合、患者さんは「通院していることを他人に知られたくない」という強い顕在ニーズがある点は注意しなければいけません。

他の医科歯科クリニックのように目立つ外観では、「通いづらいメンタルクリニック」となり、かえって集患が難しくなってしまいます。

そこで、今回は精神科・心療内科の開業で失敗しないための重要ポイントを解説します。

【ポイント①】物件選びは利便性があるが目立たない場所が基本

どの医科歯科クリニックでも、開業準備をする際は、必ず経営理念や開業コンセプトから考えて、物件探しを始めます。

それは精神科・心療内科でも同様なのですが、患者さんの「通院していることを知られたくない」というニーズは物件選びで重要ポイントとなります。

例えば、他の医科歯科クリニックをテナント開業する際、おすすめは1Fになります。

2F以上では、外からの視認性は悪くなりますし、「ビルの入口⇒エレベーター⇒クリニックの入口」と3つの関門があり、来院しづらくなります。

しかし、精神科や心療内科は、この「見つけにくい」「入りにくい」という点が逆にメリットとなります。

通院しているところを他人に見られたくないので、ビルの1Fなど目立つ位置では、かえって来院のハードルが上がってしまうのです。

そのため、駅前のテナントビルのような人通りの多い場所の場合は、2F以上で開業する方が集患上効果的なことがあります。

当然、看板などで目立たないようにした方がいいでしょう。

精神科や心療内科は急患もおらず、予約制としているクリニックが大半なので、立地や看板で目立つ必要はありません。

例えばロードサイドで開業する場合は、国道沿いではなく、少し道を曲がった人通りのない場所で、大きな看板を出さずに開業するケースが多いです。

むしろ、看板で目立たない方が、患者さんが安心してこっそりと来院することができます。

ただ、駅から徒歩5分以内など、利便性は求められます。

「駅から遠くて車でも通えない場所でいいだろう」とはなりません。

電車や自動車で行きやすいけれど、人の目を気にせず来院できる物件を探し、看板作りをしましょう。

【ポイント②】診療圏調査などで競合のクリニックを調べる

精神科や心療内科は、比較的開業の参入障壁が低いこともあり、開業件数は上昇傾向にあります。

それでも、予約が取れないメンタルクリニックは多いですが、ライバルは増加傾向です。

「利便性はあるが目立たない場所」ということを基本にして物件探しを行い、診療圏調査はしっかりと行った方がいいでしょう。

また、開業件数が増加したことに伴い、金融機関の融資の審査も以前より厳しくなってきています。

開業資金を抑えられるとはいえ、事業計画書をしっかり作って、融資の審査に臨みましょう。

【ポイント③】大きな看板などで目立たないようにする

精神科や心療内科の患者さんは、こっそりと来院したいので、目立つ外観に抵抗を覚えます。

・視認性を妨げないところで遠くからでもわかるように大きなポールサインを作る

・クリニックの駐車場周りに大きな看板を設置する

・メンタルクリニックであることが一目でわかるような大きな看板のある外観

といったことが、かえってデメリットになりかねない点は注意しなければいけません。

【ポイント④】患者さんのプライバシーに配慮した内装にする

精神科や心療内科では、内装にも気を遣う必要があります。

例えば、待合室で仕切りを設けて、患者さんのプライバシーに配慮するといったことも必要でしょう。

患者さんが気軽に相談しやすいように、落ち着いた安心感のある内装デザインに加えて、診察室では声が漏れないような配慮が必要です。

「周りの人に声を聞かれたくない」「誰かに見られたくない」という患者さんに寄り添った内装を心がけましょう。

できれば、メンタルクリニックの内装経験のある施工会社に相談することがおすすめです。

【ポイント⑤】患者さんの大半はインターネットでメンタルクリニックを探す

精神科や心療内科の患者さんの大半は、少し自宅や職場が遠いところでも、インターネットでメンタルクリニックを探します。

むしろ、「知り合いとばったり会いたくない」という気持ちから、敢えて自宅や職場が遠いメンタルクリニックを探す患者さんも少なくありません。

そのため、ホームページによる集患の重要性が増します。

医療広告ガイドラインには注意しなければいけませんが、相談したいと思わせてくれるホームページ作りを心がけましょう。

児童精神科の場合は、親御さんの立場でホームページ作りをすることが大切です。

詳細は、以下の記事をご覧ください。

医院・クリニック開業時のホームページ制作で気をつけたい9つの対策

医院・クリニック開業時の重要な集患・増患対策のひとつにホームページ制作があります。 特に今では若い世代だけでなく、シニア世代の患者さんもスマートフォンでホームペ…

【ポイント⑥】クチコミによる評判の拡散が期待できない

精神科や心療内科の患者さんは、自身が来院していることを周りに話したがらないので、クチコミによる拡散が期待できません。

小児科や小児歯科のように、親御さんがクリニックの評判を広めてくれるようなことがないのです。

児童精神科でも、クチコミによる拡散は期待できないでしょう。

もちろん、患者さんに信頼されて来院し続けてもらうことは重要ですが、クチコミ以外の集患施策を行うことが重要になります。

他の診療科目のように外観で目立つようにすることもできないので、やはりインターネットからの集患が大切になります。

MEO対策やリスティング広告などの対策は欠かすことができないので、十分検討が必要でしょう。

【ポイント⑦】患者さんが予約しやすいようにする

精神科や心療内科では、予約制とする院長先生が多いです。

特にホームページでは、なるべく予約がしやすいように配慮するようにしましょう。

精神科や心療内科の場合、患者さんは気持ちを振り絞り、勇気を持って予約します。

スムーズに予約できないと、予約を躊躇する気持ちが上回ってしまい、離脱に繋がりかねません。

完全予約制としているメンタルクリニックで、予約のしづらさは致命的になりかねません。

予約システムの導入を含めて、Web制作会社とよく相談するようにしましょう。

申込みフォームだけでなく、電話で受け付けてもいいのですが、電話対応の良し悪しで患者さんの印象は大きく変わります。

あまりにそっけないなど、精神疾患を持つ患者さんに配慮のない対応をすると、来院してもらえなくなる可能性があります。 開業前のスタッフ研修などで、電話対応についても十分教育をした方がいいでしょう。

【ポイント⑧】スタッフは近所より少し遠い人を優先して採用する

多くの医院・クリニックのスタッフ採用では、近所から通勤できる範囲の人の応募が多くなりがちです。

しかし、あまり近所のスタッフを採用すると、かえって患者さんが通院しづらくなることがあるので注意が必要です。

近所から通う患者さんとスタッフが知り合いだった場合、患者さんの抵抗感が強くなってしまうためです。

そのため、開業エリアによっては近所の人の採用を避けた方がいいかもしれません。

とはいえ、電車や自動車で2時間かかるほどの遠距離の求職者は応募してこないので、「近すぎず遠すぎず」がちょうどいいでしょう。

【ポイント⑨】近隣薬局と連携して患者さんのプライバシーに配慮する

精神科や診療内科の先生が近隣薬局と連携する際は、患者さんのプライバシーに配慮することが大切です。

メンタルクリニックの患者さんは、薬局でも人の目を気にします。

通院している診療科目が精神科や心療内科であることが周りに知られないような配慮をしましょう。

【ポイント⑩】オンライン診療を導入する

カウンセリングや投薬中心の診療で、しかも通院を躊躇しやすい精神科や心療内科は、オンライン診療との相性がいい診療科目の1つです。

診療点数の低さなどで、そこまでオンライン診療の導入は進んでいないものの、今後浸透していくでしょう。

希死念慮が強く自傷行為の危険がある場合や、薬物等の影響が強い場合は対面診療が望ましいですが、オンライン診療の導入は検討の余地があります。

通院を躊躇してしまう患者さんや、遠方や外出困難な患者さんにも対応しやすくなります。

詳細は、以下の記事をご覧ください。

精神科のオンライン診療の重要ポイントとメリット・デメリットや注意点を解説

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【まとめ】患者さんのプライバシーに配慮した相談しやすい精神科・心療内科を開業する

精神科・心療内科の医院・クリニック開業のポイントについて解説しました。

精神科や心療内科は、「通院していることを人に知られたくない」という患者さんが多いので、プライバシーへの配慮が必須です。

他の診療科目と同じような戦略で開業すると失敗する可能性があるので注意してください。

なお、精神科・心療内科の開業医・勤務医の年収や働き方については、以下の記事で詳しく解説しています。

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笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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