はじめに

現在の社会においては地域社会の医療の確保と向上及び地域住民の福祉の増進を図ることを要請されています。自治医大の教育の原点はそこにあります。社会の要請に応えるためには地域医療に進んで挺身していくという気持ちと高度な医療能力を身に着けた医師を養成していきます。自治医科大学はそのような目的で設立されました。開学以来4300名余の卒業生を輩出しています。

住所

自治医科大学医学部の本社所在地は栃木県下野市薬師寺3311-1にあります。東北本線自治医大駅東口から徒歩10分ほどです。自治医科大学駅は小山駅と宇都宮駅の間くらいにあります。東京都心から在来線でも2時間弱程度で行くことができますのでアクセス的にもまずまずといえます。

入学金・学費

自治医科大学の入学金や初年度の学費などは入学時に払う必要はありません。自治医科大学は入学者の全員に対して入学金や授業料などの学費を貸与していく修学資金貸与制度がかかります。大学の教育に必要な学費などを大学側がまず貸し出しますよという制度です。

この修学資金貸与制度は「自治医科大学医学部修学資金貸与規程」に基づき、入学者全員に必ず学生納付金相当額及び入学時の学費準備金を貸与していきます。入学手続きの際に「修学資金貸与契約書」を提出。大学側との貸与契約をしていきます。よって入学時の入学金や授業料は不要になります。

この資金は大学を卒業後直ちに当大学の第1次試験地に所属する地域の都道府県知事の意見を聴取。その指定する病院に医師として勤務します。その期間が貸与期間の1.5倍(6年間貸与受けた場合は9年間)に達した時には返還義務が免除されます。ただこの条件をクリアできなかった場合は貸与金に所定の利率を乗じた額を一括で返還することになります。

自治医科大学の修学資金は以下のようになります。この総額が事実上の学費になります。

入学金

1,000,000円

授業料

1年次から6年次まで各1,800,000円。1,800,000円×6年間=10,800,000円

実験実習費用

1年次から6年次まで各500,000円。500,000円×6年=3,000,000円

施設設備費

1年次から6年次まで各1,300,000円。1,300,000円×6年=7,800,000円

入学時の教材費等

1年次に400,000円

6年間学費総額

23,000,000円

出典:自治医科大学HP

偏差値

67.5程度。大学受験で最も実績と信頼のある河合塾の偏差値から算出しました。

実は自治医科大学医学部と獨協医科大学医学部は距離にして10キロ程度のところにあります。ただ学力的には少し差があります。県内の大半・茨城西部・埼玉北部・群馬東部などに在住している方はどちらの大学も通学できそうです。東京圏から通うことも新幹線などを使うことで不可能ではないです。まず獨協医科大学を確実に入学できるようにしておいて自治医科大学を勝負することも可能といえます。また自治医科大学であれば学費を抑えることができるという面でも親孝行ができる点でアドバンテージがあります。

出典:河合塾医進塾HP

医師国家試験合格率

毎年99%もしくは100%。2016年度からは100人超が受験して全員合格もしくは1名しか落ちていません。既卒・全体は全国ほぼ1位。新卒も全国トップ3の座を守っています。

出典:医学部受験ラボHP

歴史

自治医科大学の歴史を紹介します。

昭和45年7月:医学高等専門学校設立構想を表明。

昭和46年1月:医科大学設立発起人会が発足。

昭和46年5月:名称を自治医科大学に決定。

昭和47年2月:学校法人自治医科大学の設置を認可

昭和47年4月:自治医科大学の開学

昭和47年12月:僻地振興財団の設立を認可

昭和49年1月:付属病院の開設を許可

昭和49年4月:附属高等看護学校の設置を認可

昭和49年4月:付属病院の開院を行う

昭和52年3月:付属高等専門学校を付属看護学校に名称変更

昭和53年3月:大学院医学研究科博士課程の設置を認可

昭和55年4月:付属看護学校に3年課程の設置を認可

昭和59年2月:付属看護学校に助産科の設置を認可

昭和61年12月:看護短期大学の設置を認可

昭和62年5月:看護短期大学の開学式を行う

昭和63年1月:付属大宮センターの開設の許可が下りる

平成元年4月:僻地振興財団を地域社会振興財団に名称変更

平成元年11月:付属大宮医療センターの開院式を行う

平成2年3月:看護短期大学専攻科の設置を認可

平成13年12月:看護学部の設置を認可

平成14年12月:大学院医学研究科修士課程設置承認

平成17年12月:大学院看護学研究科修士課程設置認可

平成18年9月:とちぎ子ども医療センターを開院

平成19年7月:自治医科大学附属大宮医療センターから自治医科大学附属さいたま医療センターに名称を変更

平成23年12月:自治医科大学大学院看護学研究科看護学専攻課程の変更を認可。修士課程を博士前期課程に・博士課程を博士後期課程に区分する。

特徴

自治医科大学医学部は学びの質の向上を考えています。低学年から必須科目では臨床医学との関連を重視して医学部生としての自覚を高めていきます。授業は網羅的な講義はあまり多くありません。どちらかといえば学生の自主的な動機付けを植え付けていきます。臨床実習を充実させていきます。また総合教育選択科目及び選択セミナーを選択科目として学生の希望による選択を重視しています。

また基礎医学課程前理科教育(生命科学に近い科目)の履修を平成29年度から開始しました。講義では基礎・臨床医学科目の習得に必要になる一般科学について学んでいきます。演習では講義で学んでいく事柄が医療現場で用いられる具体例を知っていくことそして出題される課題にグループで取り組んでいく協働学習を取り入れています。自らすすんで学ぶことそして助け合って学ぶ習慣を身に着けていきます。実験では学んだ事柄を深く理解していきます。実験の重要性と進め方を学べるようにしていきます。

カリキュラム

自治医科大学医学部のカリキュラムは学生が卒業の時点で臨床医学についてのより高度な知識を身に着けていくことを目標にしていきます。この目標を達成していくために6年間のカリキュラムがあります。また授業は常に臨床医学を意識した科目になっています。低学年から問題提示による学習の動機づけを目的にしています。それぞれの科目を授業時間内で回すことはとても難しいです。そこで学生の自主的な学習でカバーをしてもらうしかありません。学生は講義や実習で直接に触れられた事項だけでなくそこで示された課題や動機を原点にして進んで自ら問題を発見してこれを解決しつつ自ら学習を展開していくことが求められます。

そこをカバーするためには授業に出席をすることはもちろんのこと図書館などを上手く活用することが大事になります。1年次は特に自然科学・人文科学・社会科学・外国語などを必須科目として履修します。また1年から6年までで学生の選択によるセミナーにも選択科目履修としての単位を付与します。

1年次

1年次は入学直後から専門教育として医学概論を履修します。医学部生に必要な生活態度や医学教育修得となるスキルを身に着けていきます。また早期体験実習としての院内での患者付き添い実習があります。医療の原点となる患者や医療スタッフの立場を学んでいきます。また総合教育必須科目では社会科学・人文科学・自然科学・地域医療などを通して医師に必要な素養をつけていきます。また総合教育選択科目では少人数形式の学習で大学における学習法・学びの態度・人間関係の構築を体得します。また生命医学1・2、解剖学、生化学などの基礎医学科目も学びます。医学生としての自覚をつけてほしいので1年次からこれらの科目も履修していきます。

2年次

2年次は臨床医学の土台となる基礎医学科目を履修します。生理学・病態生化学・薬理学などを中心にして人体の機能やその調節的を正常なのか・病的なのかを深く理解していきます。また細菌学・ウイルス学・動物医学などでは生体に外界から入り込んでくる生物との関わりを学んでいきます。後期は対人援助の知識と実践そして地域医療学各論1を学びます。地域医療・家庭医療・対人援助の基礎を身に着けていきます。3学期の地域福祉実習では専門職の方と共に働きながら経験を積んでいきます。また3学期からは臨床医学講義もスタートします。

3年次

3年次は基礎臨床医学講義が中心になります。臓器別に臨床的な観点から基礎医学の学習をさらに深めていきます。各臓器の疾患について症状・診断及び治療を理解していきます。また総合診断学では症候学・臨床推論・チュートリアルなどの多様な学習法で総合的な診断能力を上げていきます。そこから自発的な学習を身に着けていきます。臨床的事項についての系統的に整理された講義は6年間のうちでこの時期に行われます。4年次に始まる全日制臨床実習を意義あるものにしていく上での必須事項を多く理解していきます。また診断学実習が始まります。その後共用試験に合格することで臨床実習に参加することができます。

4・5年次

4年次からは臨床実習が始まります。4年次で内科・5年次でその他を回ります。臨床実習では患者ごとの多くの臨床問題やそこから派生していく問題について主体的に学んでいくことが大切になります。病棟での学習は多くの示唆と動機づけを学生に与えていきます。ある病気の限定された診断や治療法だけでなく様々な検査を通して多くの症候を考えていきます。このような疑問を持った学習が臨床実習を意義あるものにしていきます。さらに5年次の2学期からはユニークな総合医療に関する総まとめと卒業後の地域医療実践を兼ねて2週間程度故郷の地域での実習を行います。5年次の3学期では4週間の選択必須臨床実習が行われます。患者を長期的にかつ大きな責任を持って診ることができます。より深い臨床実習を経験することができます。

6年次

6年次:1学期には学生の選択で臨床1科で4週間ほど・故郷の拠点病院で4週間の臨床実習を経験します。個々では教員の指導の下で許される範囲で学生主体の診療活動を行います。臨床実習を4年次からお行うことで数多くの症例を経験することができます。これが自治医科大学の臨床重視の教育方針です。その後は臨床系科目の総括講義が行われます。それぞれの科目の領域全体を広く学びます。特に重要な事項については症例の提示や特論形式で講義を行っていきます。学生は6年間の医学教育課程を総括して理解を深めていきます。これで6年間の履修をすべて終了します。

研修制度

自治医科大学医学部では平成16年度からの新臨床研修制度の施行で2年間の臨床研修期間の一環とした研修プログラムと実施そしてその管理と評価を行っていくことを目的に卒後臨床研修センターが設立されました。

さらに平成21年度の臨床研修制度の改正で研修プログラムの見直しを図っていきます。既存の基本プログラムに加えて小児科そして参加プログラムを設定しました。以降研修医のニーズに合わせたローテーションの管理や初期研修後の対応などに努めていきます。

また研修医確保の強化策の一環として全国の医学部生を対象にした春季及び夏季セミナーを行います。採用後のスキルアップを目的にした各種セミナーの開催及び居住環境の整備さらに指導医の処遇改善などに取り組んでいきます。

初期研修では平成頭ぐらいからローテート研修を行っています。また自治医科大学附属病院卒後臨床研修プログラムでは各研修医の希望に応じて多くのローテーションパターンがあります。総合的な臨床能力の習得を目指していきます。新専門医の習得に必要な経験を積むことができます。さらに研修医向けのセミナーもあります。多くの研修医から好評な意見が出ています。

後期研修では19領域で研修プログラムを行っています。専門医制度では基本領域とサブスペシャリティーの領域での二段階があります。初期研修終了後に基本領域の専門医を習得していきます。その後サブスペシャリティーの専門医を取得する仕組みになっています。

部活動

自治医科大学の部活動を紹介します。運動部・文化部・サークルなど様々な団体があります。クラブの数が多いのも自治医科大学の特徴です。様々な経験と思い出を共有して仲間とのつながりを深めていただきたいと考えています。

運動部

準硬式野球部・バレーボール部・バスケットボール部・バトミントン部・ハンドボール部・水泳部・ラグビー部・サッカー部・ワンダーフォーゲル部・剣道部・空手部・スキー部・卓球部・ソフトテニス部・硬式テニス部・陸上競技部・柔道部・弓道部・ボート部・少林寺拳法部・ゴルフ部・合気道部・ソフトボール部があります。

文化部

美術部・演劇部・合唱団・囲碁部・茶道部・軽音楽部・管弦楽団・フォークソング部・ピアノ同好会・ピアノ同好会・ピアサークル・陶芸部があります。

自治会サークルではフットサルサークル・東洋医学研究会・写真サークル・地域及び家庭医療サークル・アーチェリーサークル・お笑いサークル・アカペラサークル・謎解きサークル・日本文化研究会・米文化研究会・バレエ同好会・グラフィックデザイナーサークル・ワイン同好会があります。

地域医療サークルでは国際医療文化研究会・ボランティアサークルがあります。

連携病院

自治医科大学医学部のの連携病院を紹介します。県内を中心に茨城西部・埼玉北部・群馬東部などとの医療機関の提携があります。

  • 宇都宮中央病院(栃木県宇都宮市)
  • 足利中央病院(栃木県足利市)
  • とちぎメディカルセンターとちのき(栃木県栃木市)
  • 佐野市民病院(栃木県佐野市)
  • 小山厚生病院(栃木県小山市)
  • 日光市民病院(栃木県日光市)
  • 鹿沼病院(栃木県鹿沼市)
  • 芳賀赤十字病院(栃木県真岡市)
  • 氏家病院(栃木県さくら市)
  • 那須南病院(栃木県那須烏山市)
  • 小金井中央病院(栃木県下野市)
  • 那須脳神経外科病院(栃木県那須塩原市)
  • 多島外科胃腸科(栃木県壬生町)
  • 古河総合病院(茨城県古河市)
  • 結城病院(茨城県結城市)
  • 茨城県西部メディカルセンター(茨城県筑西市)
  • 菊山胃腸科外科医院(茨城県下妻市)
  • よしば診療所(埼玉県久喜市)
  • むさしのメディカルクリニック(埼玉県幸手市)
  • 伊勢崎佐波医師会病院(群馬県伊勢崎市)

著名な卒業生

自治医科大学医学部卒業のOBを紹介します。

菅野武氏(丸森町国民健康保険丸森病院内科医長・自治医科大学卒業後に東北大学大学院医学研究科博士課程に入学)
舘有紀氏(大学卒業後福井県立病院を経て茨城東海病院・石岡第一病院などの茨城県内で勤務医を続ける)

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プロフィール
笠浪 真

税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

                       

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