医院開業で自己資金はいくら必要? 0円では開業できない?

公開日:2026年11月6日
更新日:2026年11月6日

診療科目にもよりますが、医院開業に必要な資金は5,000万~1億円ほどです。

そのため、「いくらくらい自己資金を用意しておけばいいのか」気になっている開業検討中の先生は少なくありません。

実際、資金調達には融資を中心に、補助金・助成金など様々な方法があります。

しかし、ある程度自己資金を持っておいた方がいいのは間違いありません。

一方で、「自己資金が少ないと開業できないか」と言われれば、それも違います。

そこで、今回は医院開業で必要な自己資金について詳しくお伝えします。

医院開業を検討中の先生は、最後までご覧ください。

開業資金の10~20%を目安に自己資金を用意する

一般的に、医院開業で必要な自己資金は、開業資金の10~20%と言われています。

・開業資金が5,000万円であれば、必要な自己資金は500~1,000万円
・開業資金が1億円であれば、必要な自己資金は1,000~2,000万円

ということになります。

ある程度の自己資金を用意した方が、金融機関から融資を受ける際には有利になります。

医院開業に限らず、一般的に金融機関は、自己資金をどれくらい持っているかで返済能力や計画性を測ります。

特に医院開業の融資では、開業後と違って医業収入を判断することができないので、自己資金の重要性は高くなります。

あくまで、自己資金は判断材料の1つなので、後述するように貯蓄が少ないという理由だけで融資を受けられないことはありません。

しかし、金融機関によっては、ある程度の自己資金が融資の条件になっていることもあります。

少なくとも、ある程度の自己資金を持っていた方が、金利などの借入条件が良くなる傾向があります。

また、自己資金が多いほど、融資額を抑えられるので、毎月の返済負担が軽減されたり、返済期間を短縮できたりします。

そのため、開業後の資金繰りに余裕が生まれやすくなります。

とはいえ、自己資金を充てすぎて手元にお金がなくなることで、個人の生活費や予備資金が不足する事態は避けなければいけません。

そのため、医院開業の自己資金の目安は、開業資金の10~20%となります。

ただ、承継開業などで開業資金を抑えることができれば、自己資金の割合を上げて融資を少なくすることも可能です。

開業資金を抑える方法については、以下の記事をご覧ください。

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自己資金の主な4つの集め方

医院開業に向けた自己資金の集め方には、主に以下の方法があります。

先生の状況に合わせて、最適な方法を検討してください。

なお、自己資金や融資以外には、補助金・助成金を利用するという方法もあります。

詳細は、以下の記事をご覧ください。

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勤務医時代の給与を貯蓄

勤務医時代の給与を貯蓄している先生は、融資の際、金融機関からの評価が高くなります。

融資の審査では多くの場合、預金通帳の提示が求められます。

貯蓄額が多ければ、金融機関から「計画性がある」「資金管理能力が高い」と評価されやすくなります。

親族からの資金援助

ご両親や親族から資金援助を受けるケースも、医院開業においては少なくありません。

ただし、年間110万円を超える援助が贈与とみなされた場合には贈与税が発生する点には注意が必要です。

そのため、親族からの借入として、贈与と明確に区別するといった対策が必要です。

具体的には、金銭消費貸借契約書を作成し、市場金利に沿った利息を設定し、実際の返済実績を残す必要があります。

曖昧な場合は、税務調査で贈与とみなされ、多額の贈与税が課される可能性があります。

しかし、相続時精算課税制度などを活用することで、累計2,500万円まで特別控除が受けられる特例もあります。

2024年の税改正により、相続時精算課税制度にも年間110万円の基礎控除が設けられ、利用しやすくなりました。

一方、一度選択すると暦年課税制度に戻れない、小規模宅地等の特例が使えないなどのデメリットもあります。

そのため、贈与税の対策については最寄りの税理士に相談するようにしてください。

勤務先の退職金

現在の勤務先から支給される退職金を自己資金に充てる方法もあります。

ただ、金融機関への融資申請時にまだ退職金が振り込まれていないケースは十分想定されます。

この場合は、退職金見込額証明書を発行してもらい、金融機関に自己資金の裏付け資料として提出する方法もあります。

しかし、退職金の予定額の提示で、金融機関が自己資金と認めるかどうかはケースバイケースです。

保険の解約返戻金や有価証券の売却

積立型の生命保険の解約返戻金や、保有している投資信託などの有価証券を売却して現金化するのも検討の余地があります。

ただ、出口戦略次第で選択肢は変わってきますし、場合によっては解約できないこともあります。

例えばiDeCoは、60歳未満は引き出しができない点に注意しましょう。

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自己資金ゼロでも融資を受けて医院開業はできる

自己資金ゼロ(フルローン)での医院開業は決して不可能ではありません。

実際、自己資金をあまり使わず、ほとんど融資で医院開業を成功させている先生も多いです。

一般企業と比較した場合、次の理由で金融機関は医療機関に対して高い評価を与える傾向にあります。

事業安定性が高い医療機関は需要が底堅い特徴があり、一般の中小企業に比べて休廃業や倒産事例が少なめである。
社会的信用力が高い医師は一般的に社会的に信用されやすい。
閉院しても勤務医に戻れる万が一、医院経営が傾いて閉院しても、医師免許があれば勤務医に戻ることができるため、個人の返済能力が担保されやすい。

また、保険診療の場合、開業直後は診療報酬の入金が約2ヶ月後になるというタイムラグが発生します。

※社会保険診療報酬支払基金「令和8年度年間日程 」より抜粋

通常であれば、無収入の期間を乗り切るための自己資金が必要となります。

しかし、医療機関の診療報酬は公的機関(支払基金や国保連など)から支払われるため貸し倒れリスクが実質ゼロです。

そのため金融機関は、「2ヶ月待てば確実に入金される」と判断し、設備資金だけでなく、数ヶ月間の運転資金も含めて融資してくれる傾向にあります。

結果として、手元の自己資金を抑えて、借入金を中心に開業することが可能になります。

ただ、金融機関が納得する現実的な事業計画書が作成できるかどうかで、融資をどれだけ得られるかは大きく変わります。

特にフルローンを引き出すためには、緻密な事業計画と融資交渉の経験が欠かせません。

医院開業を検討中の先生は、最寄りの税理士へ早めに相談することをおすすめします。

事業計画書の作成については、以下の記事をご覧ください。

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注意点としては、フルローンになると自己資金を用意することに比べて開業後の資金繰りは苦しくなる傾向にあります。

単に融資の審査が通るかどうかだけでなく、開業後の資金繰りも考慮して、自己資金の額を検討しましょう。

【まとめ】医院開業の資金調達は税理士などの専門家へ相談する

以上、医院開業の資金調達のうち、自己資金に焦点を当ててお伝えしました。

医院開業に必要な自己資金の目安は、開業資金全体の10~20%とされています。

一方で、社会的信用力の高い医師の開業は、自己資金が少なくても比較的融資が通りやすい傾向にあります。

しかし、有利な借入条件で融資を引き出すには、金融機関が納得できる現実的な事業計画書が欠かせません。

また、自己資金と融資だけでなく、補助金・助成金なども資金調達の手段として検討するようにしましょう。

医院開業の資金調達全般については、以下の記事をご覧ください。

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笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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