看護師のバーンアウト(燃え尽き症候群)が起きる原因と予防策4選


「今まで活躍してくれていた看護師が、突然退職してしまった」
「優秀でまじめな看護師が、最近元気がなく仕事に意欲がなくなっている」
今まで医院・クリニックの戦力として精力的に仕事をしていた看護師が、突然やる気を失い、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥ることがあります。
人手不足が続く医院・クリニックにおいて、看護師のバーンアウトは決して無視できない問題です。
本記事では、看護師がバーンアウトに陥った際に見られる特徴やその原因、そして組織として取り組むべき予防策をお伝えします。
看護師がバーンアウトに陥った場合に見られる大きな3つの特徴

バーンアウトは、アメリカの心理学者クリスティーナ・マスラック(1946~)などが提唱した概念です。
マスラックらが開発したMBI(Maslach Burnout Inventory)という測定尺度では、バーンアウトを次の3つの症状として定義しています。
日々の現場で働く看護師に以下のサインが出ているようであれば、バーンアウトの兆候があるかもしれません。
いずれにしても、何らかの対策をしないと、業務の生産性や質、接遇面、職場の人間関係に悪影響を及ぼすことになります。
【情緒的消耗感】仕事に対するエネルギーが枯渇してしている
情緒的消耗感とは、仕事を通じて精神的にエネルギーを出し尽くし、枯渇してしまった状態を指します。
「情緒的」と呼ばれるのは、消耗しているのが肉体や頭脳ではなく、感情的な部分であるためです。
・朝、出勤するのが辛そうに見える
・以前に比べて表情が暗く、常に疲弊している
・仕事に対する心理的なゆとり(キャパシティ)が完全になくなっている
情緒的消耗感はバーンアウトの主症状にあたるとされています。
今まで難なくこなしていた業務に対しても、精神的な余裕がなくなっている場合はバーンアウトの可能性があります。
【脱人格化】患者さんやスタッフに対して無関心になる
脱人格化とは、患者さんに対する思いやりや関心が薄れ、冷淡で非人間的な態度をとるようになることです。
・患者さんや他の看護師からの呼びかけに対して、無愛想になったり事務的な冷たい対応をとったりする
・周囲への配慮や共感が失われ、クレームの引き金になることもある
脱人格化は、自分を守るための防衛反応とされています。
「最近、看護師の接遇態度が悪くなった」と感じる場合、性格の変化ではなく、バーンアウトによるものである可能性が高いです。
【個人的達成感の低下】仕事に対する有能感や達成感を失っている
個人的達成感の低下とは、仕事の成果に対する喜びや自信、達成感を失ってしまう状態のことを言います。
・仕事をやり遂げても「これくらいできて当たり前」「自分は何をやってもダメだ」と過小評価する
・「私は患者さんの役に立っていないのではないか」と思い込む
・「自分がいてもいなくても一緒だ」と仕事に価値を見出せなくなり、急激にモチベーションが低下する
仕事に意義が見出せなくなるため、出勤できず休職に至ったり、突然退職してしまったりする可能性が高くなります。
看護師がバーンアウトに陥る4つの要因

看護師がバーンアウトに陥る要因についてお伝えします。
看護師がバーンアウトに至る背景には、本人の性格と、クリニック特有の職場環境が複雑に絡み合っています。
本人の性格的要因
バーンアウトに陥りやすいのは、サボり癖がある人やメンタルが弱い人ではありません。
院長先生から見て「優秀で信頼できる」と思えるような看護師ほど、バーンアウトに陥る傾向にあります。
・真面目で責任感が強い:与えられた仕事を完璧にこなそうと1人で抱え込んでしまう
・使命感が強く仕事熱心:自分のキャパシティを超えてがんばりすぎてしまう
・優しくて断れない:患者さんや周囲からの無理な要求を断れず、自己犠牲を厭わない
・完璧主義:些細なミスも許せず、過度に自分を責めてしまう
今まで戦力として活躍していたのに、突然やる気を失ったり、退職してしまったりするといったケースも少なくありません。
優秀な看護師ほど、業務が集中したり、院長が過度に期待をかけてしまったりしがちなので、十分注意が必要です。
職場環境の要因①長時間労働・過重労働
クリニックにおける物理的な業務負荷は、バーンアウトの最も直接的な原因となります。
特に人手不足が深刻化しているほど、特定の優秀な看護師に業務が集中しがちです。
残業が常態化するほど、負担の重い業務を偏らせてしまうと、その看護師の仕事に対するエネルギーは急速に枯渇します。
多くの業務を抱えていた看護師やスタッフが、突然退職したというトラブルは珍しくありません。
労働基準法の遵守はもちろん、業務量に極端な偏りがないようにすることが大切です。
職場環境の要因②患者さんとの関係のストレス
一般企業でカスハラの問題があるように、医療現場でも患者さんが理不尽な要求や暴言を吐くペイハラがあります。
こうした患者さんへの対応が、医師や看護師にとって精神的負担になることは言うまでもありません。
ペイハラに対しては、クリニックとして毅然とした対策が不可欠です。
ペイハラがなくても、季節の変わり目などによる患者さんの症状やニーズの変化は、看護師のストレス要因になります。
例えば、季節性疾患の流行期には患者数が急増し、患者さんへの臨機応変な対応が求められます。
いつも以上に患者さん対応の業務負担が多くなるので、キャパオーバーに陥りやすくなります。
職場環境の要因③職場の人間関係のストレス
医院・クリニックの職場は閉鎖的な空間になりがちです。
限られた人間関係の中で、一度コミュニケーションの不和や派閥が生じると、逃げ場がなくなります。
日常的な陰口、業務上の協力体制の欠如といった険悪な雰囲気は、心理的安全性を著しく損ない、看護師のバーンアウトを加速させます。
クリニック全体で行うことができるバーンアウト予防策4選

看護師のバーンアウト予防策は、本人に「ストレスを溜めないように」と伝えるだけでは解決しません。
組織全体の仕組みづくりの一環として、バーンアウト予防策を講じる必要があります。
個人のセルフケアを促す
まずは、スタッフ自身が自分の疲弊に気づき、ケアできる環境を整えます。
例えば、ストレス管理や生活習慣改善など、個人のセルフケアを積極的に促すことなどが挙げられます。
また、有給休暇の取得義務を守ることは当然として、クリニック全体で積極的に休暇を取得できるような労働環境を整備することも、検討の余地があります。
まじめで仕事熱心な看護師ほど、自ら有給休暇を取得しない傾向にあり、そもそもスタッフが少ない医院・クリニックでは難しいかもしれません。
しかし、定期的に有給休暇を取れるようにすることで、看護師のバーンアウトのリスクを減らすことができます。
低すぎず高すぎない目標設定をする
良かれと思って「もっとスキルアップしてほしい」などと、看護師に高すぎる目標を課すことは、かえってバーンアウトを招く恐れがあります。
最初は情熱を持って取り組んでいても、目標が現実とかけ離れていると、精神的に息切れして疲れやすくなり、やがてやる気を失ってしまいます。
バーンアウトまでいかなくても、高すぎる目標設定によってモチベーションを下げてしまうケースも多々見受けられます。
しかし、低すぎる目標では達成感が得られず、成長スピードも遅くなってしまいます。
個人のスキルや現状の業務量に見合った「がんばれば達成可能な、やや高いレベル」の目標を設定することが理想です。
そして、達成した際には院長先生がしっかりと言葉で評価することが、看護師の達成感や大きな自信につながります。
相談しやすい職場の雰囲気を作る
院長先生が、日頃から看護師に「何かあったら相談してね」と声をかけることは重要ではあります。
しかし、バーンアウトの特徴が見られる看護師ほど、忙しそうな院長を前にして自分から相談することはあまりありません。
必要なのは、院長先生側から「相談する機会」を意図的に作ることです。
例えば定期面談を行うようにして、「他に何かある?」ではなく、「何か仕事で負担に感じていることはないか?」と、感情を吐き出しやすい聞き方をします。
そうすることで、看護師が心を開いて悩みを打ち明ける可能性が高くなります。
バーンアウトに陥る看護師は、直前まで感情を押し殺す傾向があるので、相談できるような仕組みにしていくことが大切です。
患者さんとの距離感を意識させる
看護師が患者さんの気持ちに寄り添うことは重要ですが、過度に尽くしすぎるとバーンアウトを起こしやすくなります。
優しくて献身的な看護師ほど、寄り添いすぎる傾向にあるので、ある程度の距離感を取るように促すことも大切です。
適度な距離感を意識させることで、特定の患者さんにサポートが偏ることがなくなり生産性も上がります。
【まとめ】組織全体でバーンアウトを未然に防ぐ
看護師のバーンアウトは、本人の性格によるものだけでなく、職場環境が要因になっているケースが多いため、組織全体でバーンアウトを予防していく意識が不可欠です。
バーンアウトに陥る看護師は、優秀で仕事熱心である傾向にあります。
バーンアウトを防ぐ仕組みができれば、優秀なスタッフが末永く働いてくれるようになり、離職を防ぐことにつながるでしょう。
看護師がバーンアウトに陥った際の対応は、以下の記事をご覧ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。





監修者
亀井 隆弘
社労士法人テラス代表 社会保険労務士
広島大学法学部卒業。大手旅行代理店で16年勤務した後、社労士事務所に勤務しながら2013年紛争解決手続代理業務が可能な特定社会保険労務士となる。
笠浪代表と出会い、医療業界の今後の将来性を感じて入社。2017年より参画。関連会社である社会保険労務士法人テラス東京所長を務める。
以後、医科歯科クリニックに特化してスタッフ採用、就業規則の作成、労使間の問題対応、雇用関係の助成金申請などに従事。直接クリニックに訪問し、多くの院長が悩む労務問題の解決に努め、スタッフの満足度の向上を図っている。
「スタッフとのトラブル解決にはなくてはならない存在」として、クライアントから絶大な信頼を得る。
今後は働き方改革も踏まえ、クリニックが理想の医療を実現するために、より働きやすい職場となる仕組みを作っていくことを使命としている。


