海外の医学部は入りやすい?メリット・デメリットや今おすすめの国を解説


「医学部に入りたいけど、偏差値が高くて合格できる自信がない」
「私立の医学部は学費が高い」
将来は医師になりたいと思っても、入試難易度や学費の高さから諦めかけている受験生は少なくありません。
しかし、近年は東欧諸国など海外医学部への留学という選択肢を取る人も増えています。
たしかに、海外の医学部は入試難易度が日本より低く、学費も日本の私大医学部より安価な傾向があり、入りやすい特徴があります。
特に医師としてグローバルに活躍したいと考えている人であれば、検討の余地はあります。
一方で、海外の医学部には様々なデメリットがある点も注意して、進路は慎重に考える必要があります。
そこで、今回は海外医学部のメリット・デメリット、おすすめの留学先、日本の医師国家試験までの流れなどをお伝えします。
海外の医学部は日本より入りやすいのは本当か?

結論としては、入学の難易度だけで見れば、日本の医学部よりも入りやすい国は確かに存在します。
その代わり、海外の医学部は進級や卒業が難しい、日本の医師国家試験の合格率が低いという特徴がある点には注意してください。
海外の医学部入試の難易度は日本より低い
海外の医学部と、日本の医学部の入試には制度の違いがあり、特に日本人留学生に人気の東欧諸国などは難易度が低い傾向にあります。
以下に、一般的な日本の私立医学部と、東欧諸国の医学部の入試傾向の比較を示します。
| 日本の私立医学部 | 東欧の医学部 | |
| 合格偏差値 | 62~75 | 50~59 |
| 試験科目 | 英語、数学、理科2科目、小論文、面接 | 英語、理科3科目 |
| 求められる能力 | 英語、数学、理科、小論文などの高い学力 | 基礎科学の知識、英語力、コミュニケーション能力 |
日本の医学部では考えられないことですが、東欧諸国の医学部は偏差値が50台でも十分合格を目指せる大学があります。
受験科目も英語と理科3科目(物理、化学、生物)だけであることが多く、数学が苦手な人でも合格ラインに届きやすい傾向があります。
しかし、日本にも得意科目に絞った受験ができる大学があります。
日本の医学部は偏差値が高いとはいえ、一概に「海外の医学部の方が簡単に入れる」とは言い切れません。
自分の医師としてのビジョン(世界で活躍したいなど)や、受験科目などを総合的に考えて判断することが賢明です。
近年の医学部の受験事情については、以下の記事を参考にしてください。
入試は易しいが卒業難易度が高い
日本の大学は「入るのが難しいが卒業は簡単」と言われますが、海外は逆で、「入るのが簡単で卒業が難しい」と言われます。
医学部でも同じような傾向があり、勉強についていけないと留年する可能性は十分高いです。
たとえば、ハンガリーの医学部は入学のハードルの低さで知られていますが、入学してから一度でも留年や退学を経験する割合は7割程度と言われています。
また、最終的に卒業できる生徒は全体の6割程度と言われ、退学を余儀なくされる生徒も少なくありません。
公的なデータは存在せず、あくまで目安ですが、少なくとも日本の大学よりは厳しいのが現実です。
後述するように、留学先の環境に馴染めるかどうかも、間接的に進級に関わってくるので慎重な検討が必要です。
しかし、最近医学部の留学先として人気のイタリアは、東欧とは逆の傾向で、後述するように「入るのが難しいが卒業は簡単」という特徴があります。
日本の医師国家試験合格率が低い
無事に海外の医学部を卒業した後、日本に戻って医師として働くためには日本の医師国家試験に合格しなければいけません。
日本の医学部を卒業した方の国家試験合格率は、国公立、私立いずれも平均して90%以上です。
厚生労働省「第119回医師国家試験の合格発表について」によれば、2025年は、全体の合格率は92.3%、新卒では95.0%が合格しています。
一方で、海外医学部を卒業した人の合格率は、平均すると約40~50%程度であり、やや低い水準となっています。
少し古いデータですが、厚生労働省「外国医学部卒業者の医師国家試験受験資格認定等について」によれば、2017年の海外医学部卒業生の医師国家試験合格率は44.4%に留まっています。
比較的合格率が高いとされている、ハンガリーの医学部卒業生の国家試験合格率ですら、60~70%程度と言われています。
海外医学部の卒業生は、日本だけでなく世界各国でグローバルに活躍するという選択肢があります。
一方で、日本で医師として働くには一定の障壁があります。
特にアジア、東南アジア圏の医学部に留学する際は注意してください。

※厚生労働省が公表した「海外医学部を卒業した医師の動向 」より抜粋
しかし、厚生労働省「海外医学部を卒業した医師の動向」によれば、海外医学部卒業の医師数は増加傾向にあります。
現在は海外医学部の認知が徐々に広がっているので、今後は、海外医学部卒業生の医師国家試験合格者数は増えていくと考えられます。
海外医学部留学のメリット

上記のことを踏まえて、海外の医学部に留学するメリットについてお伝えします。
入試難易度や学費の障壁が低い傾向にあるので、グローバルに活躍する医師になりたい方にはおすすめと言えます。
偏差値が低くても合格しやすい大学が多い
先ほどお伝えした通り、海外の医学部は偏差値が50台でも合格を目指せます。
また、国や大学によっては、いきなり医学部本コースに入るのが難しい場合は、半年〜1年程度の予備コース(Pre-med)から始められることがあります。
予備コースで理科科目や英語を学習してから入学試験を受験できるため、学力に不安がある場合でも安心です。
予備コースを好成績で修了した場合は、医学部の入学試験で筆記試験が免除されるケースもあります。
日本の私立大学より学費が安い国が多い
国にもよりますが、海外医学部は学費の安さも魅力的です。
日本の私立医学部の学費は、6年間で2,000万円〜4,000万円以上かかることが多いです。
一方、ハンガリーやチェコなどの東欧諸国では、学費は年間200万円前後、6年で1,200万円程度のケースも珍しくありません。
それでも負担になる場合は、留学先の国や、大学独自の奨学金が利用できないか検討してみるといいでしょう。
奨学金制度は、もちろん日本の大学でもありますが、一部奨学金の返済が免除されるケースがあります。
卒業後に、指定の医療機関で勤務するなど条件はありますが、人によっては十分検討の余地があり、海外医学部を選ぶ必要はないかもしれません。
医学部のお金のことについては、以下の記事を参考にしてください。
語学力が身に付く
英語で医学を学ぶことは、将来医師になった際に強力な武器となります。
最新の医学論文は英語で書かれていますし、国際学会での発表などにおいて、翻訳に頼る必要がなくなります。
また、日々のコミュニケーションを通じて語学力が身に付くので、グローバルに活躍したい学生には良い環境と思われます。
日本だけでなく世界各国で働く選択肢もある
海外の医学部を卒業すれば、世界各国で医師として働くことができます。
また、後述するように厚生労働省の審査や国家試験を通過できれば、日本でも医師として勤務できます。
医師としてキャリアの選択肢が広がるので、世界各国で活躍したいなら海外医学部は十分検討の余地があります。
社会人や他学部卒業後でも入学しやすい
社会人として、いったん別の道に進んだ人が、医師の夢を諦めきれずに医学部に挑戦するケースは珍しくありません。
社会人や別の学部に所属する学生が受験に再挑戦するのは、医学部特有の特徴ですが、これは海外医学部でも同様です。
例えば日本人の留学先に人気の東欧などは、年齢や経歴に関係なく医学部の入学が認められています。
実際、社会人や別の学部を卒業してから留学する学生も少なくありません。
社会人や他学部卒業生で医学部に挑戦したくて、日本に限らず活躍したい場合は海外医学部も検討の余地があります。
海外医学部留学のデメリット

次に、海外の医学部の留学のデメリットについてお伝えします。
海外医学部の留学は魅力的で、しかも入りやすい傾向にありますが、次のデメリットを踏まえて慎重に検討する必要があります。
進級・卒業のハードルが高く留年・退学リスクがある
先ほどもお伝えしたように、海外の医学部はストレートに卒業することが難しく、留年や退学のケースが少なくありません。
海外の大学の多くは、入学のハードルは低いものの、入学後の進級に厳しい条件を課しています。
日本の自由な大学生活を想像したまま入学すると、学習の厳しさに戸惑うかもしれません。
語学が苦手だったり、環境に馴染めなかったりしてコミュニケーションがうまく取れないと、勉強についていけずに留年してしまう可能性があります。
また、あまりグローバルに活躍する意思がなく入学すると、モチベーションを維持できずに留年してしまうことも考えられます。
とはいえ、極端に厳しいわけではないので、入学後も継続して学習する覚悟があれば、卒業は十分できると考えられます。
日本の医師国家試験の合格率が低い
先ほどもお伝えしたように、日本の医師国家試験の合格率は低い傾向にあります。
これは、海外医学部で習う内容と、日本の医師国家試験の学習範囲に違いがあることが要因と考えられます。
海外医学部在学中から日本の医師国家試験の傾向をつかんで、学習することが求められます。
留学生活がストレスになりやすい
日本から遠く離れて、異文化の海外で生活することになるため、環境に馴染めずにストレスを抱えてしまうケースがあります。
住む国が違えば、文化や慣習、価値観、食事なども違ってきます。
これらを受け入れることができなければ、大きなストレスとなり、学習に支障が出てきてしまうかもしれません。
生活力や語学力は鍛えられますが、メンタル面のケアを忘れないようにすることが大切です。
英語が苦手では難しい
すべて英語で学ばなければならない環境は、海外医学部のメリットでもあり、デメリットでもあります。
海外医学部の勉強についていったり、コミュニケーションを取ったりするには、ある程度の語学力は欠かせません。
英語が苦手で海外医学部に入学すると、言葉の壁に苦労することが多くなります。
医学は専門用語も多いので、入学までに最低限の語学力は身に付けておく必要があります。
国や学校によっては日本で医師になれない可能性がある
国や学校によっては、医学部を卒業しても日本で医師になれない可能性があるので、注意しなければいけません。
詳しくは後述しますが、日本で医師になるには、まずは厚生労働省の審査を受けなければいけません。
審査で「受験資格なし」と判定されてしまうと、日本の医師国家試験を受験することができなくなります。
日本で医師として働く選択肢を残したい場合は、必ず認定基準を満たした大学を選ぶようにしてください。
海外医学部の留学先としておすすめの国と特徴

海外の医学部といっても、どの国の、どんな大学に留学するかで、特徴は大きく変わってきます。
| 国・地域 | 入試難易度 | 卒業難易度 | 年間学費 | 日本の国試 |
| 東欧諸国 | 易 | 難 | 200~300万円 | 合格率が高い |
| イタリア | 難 | 易 | 20~300万円 | 合格率が高い |
| アメリカ | 超難 | 難 | 500~800万円 | 合格率が高い |
| 中国・韓国 | 中~難 | 中 | 50~100万円 | 合格率が低い |
上記の主な医学部の留学先について、詳しくお伝えします。
ハンガリー・チェコなど東欧諸国
現在、日本人留学生の主流となっているのがハンガリー、チェコなどの東欧諸国です。
東欧諸国は、外国人留学生の受け入れを強化しており、日本人向けのサポート体制も比較的整っています。
| おすすめ度 | ★★★★ |
| 特徴 | ・英語での医学教育プログラムが整備されている。 ・偏差値より適性重視の入試で、偏差値が50台でも合格が狙える ・医学部予備コースが充実している ・入学後の学習が厳しく、留年、退学リスクがある ・日本の医師国家試験における厚生労働省の審査実績が豊富 |
| 費用 | ・学費は年間200~300万円程度(6年で1,200~1,800万円) ・西欧より物価が安く、生活コストを抑えやすい |
※情報は掲載時のものです。詳細は各大学に確認ください。
「入りやすさ」「費用の安さ」、「日本での医師免許取得の実績」という観点では、東欧はおすすめの留学先の1つです。
イタリア
近年、東欧に次ぐ医学部留学の選択肢として、学費の圧倒的な安さと卒業しやすさで急速に注目を集めているのがイタリアです。
| おすすめ度 | ★★★★ |
| 特徴 | ・日本の共通テストと似て対策しやすいが入試難易度は高い ・平均卒業率が90%以上と卒業しやすい ・ドイツやフランスなどのEU諸国で医師として働ける ・日本の医師国家試験受験資格の実績も増えている |
| 費用 | ・イタリアの国公立大学であれば年間20~60万円程度 ・イタリア私立大学で年間300万円程度 |
※情報は掲載時のものです。詳細は各大学に確認ください。
ミラノ大学やボローニャ大学といった歴史ある名門校で学べるブランド力もありながら、コストパフォーマンスは世界最高水準です。
英語力に自信があり、費用を極限まで抑えたい場合には有力な選択肢となります。
アメリカ
世界最高峰の教育レベルを誇るアメリカですが、「入りやすさ」という観点では、非常に難易度が高いです。
| おすすめ度 | ★★ |
| 特徴 | ・入試難易度が極めて高い ・入学後の進級も厳しい ・教育レベルは世界最高峰 ・他学部を卒業した後にメディカルスクールに通うのが一般的 ・一部の州立大学では留学生が制限されている |
| 費用 | ・学費だけで年間500~800万円程度 ・生活費を含めると年間1,000万円程度 |
※情報は掲載時のものです。詳細は各大学に確認ください。
上記のように、学費もかなり高額で、日本の私立大学と同等のレベルです。
留学生の枠が制限されていることもあり、日本人が進学するケースは稀ですが、世界トップレベルの研究がしたい優秀な受験生であれば、検討の余地はあります。
学費については、日本学生支援機構の「海外留学支援制度」やアメリカの留学に特化した「グルー・バンクロフト基金」をを活用する方法もあります。
中国・韓国などアジア圏
地理的な近さと学費の安さから、中国・韓国などのアジア圏の医学部に進学を検討している受験生も多いでしょう。
しかし、言語の壁や入試事情、中国であれば政治的な外的要因といった、欧米とは異なる注意点が存在します。
| おすすめ度 | ★★ |
| 特徴 | ・日本から近くて時差が少ない ・基本的に現地語を話すが、中国の一部の大学では英語コースがある ・韓国の医学部は日本同様に超難関 ・厚生労働省の審査において、語学力や教育の整合性が厳しく問われる |
| 費用 | ・学費だけで年間50~100万円程度 ・生活費を含めると年間1,000万円程度 |
※情報は掲載時のものです。詳細は各大学に確認ください。
特に注意しないといけない点は、日本の医師国家試験を受ける際、厚生労働省の審査で受験資格が認められない傾向がある点です。
日本の医師国家試験の合格も難しく、中国の大学卒業者の場合、合格率は30%程度と言われています。
日本で医師を目指す場合は、必ず事前に調査して、慎重に留学を検討しなければいけません。
海外医学部卒業後から日本の医師免許取得までの流れ

※厚生労働省「外国医学部卒業者の医師国家試験受験資格認定等について」より
海外の医学部を卒業後、日本で医師として働くための、具体的なフローは上図の通りです。
海外医学部の卒業生は、医師国家試験を受けるまでに次の段階を経ることになります。
①厚生労働省による申請・提出書類の審査(医師国家試験受験資格認定)
↓
②本試験認定もしくは予備試験認定
↓
③医師国家試験
以下、①②について詳しく解説します。
厚生労働省による申請・提出書類の審査(医師国家試験受験資格認定)
まず、厚生労働省へ医師国家試験受験資格認定の申請を行い、書類審査を受けます。
審査では、卒業した海外の大学のカリキュラムが、日本の医学部教育と同等以上であるかどうかを判断します。
具体的には次の判断基準で、本試験認定に進むか、予備試験認定に進むかに分かれます。

※厚生労働省「外国医学部卒業者の医師国家試験受験資格認定等について」より抜粋
上記の基準を満たしていない場合は、この時点で「医師国家試験の受験資格はなし」と判断されてしまいます。
海外の医学部を受験する前に、上記の基準を満たす教育カリキュラムになっているかどうかは確認が必要です。
本試験認定(日本語診療能力調査)
日本の医師国家試験を受験するためには、日本語で診療を行う能力があることを証明する必要があります。
そのため、必要に応じて日本語の能力や診療能力に関する調査が行われます。
ただ、中学・高校を日本で卒業している場合はスムーズに進むことが多く、実質的にはそのまま医師国家試験を受験することが可能になります。
予備試験認定
予備試験は、本試験認定の基準を一部満たしていないが、予備試験認定の基準を満たしている場合に行われます。
具体的には筆記試験と実地試験が行われますが、2017年度は37人受験して、3人しか通過していません。
予備試験は狭き門であるため、なるべく直接本試験認定に進める大学を選ぶようにしましょう。
【まとめ】グローバルな活躍をしたいなら海外医学部は魅力的
以上、海外の医学部への留学についてお伝えしました。
東欧の医学部など、偏差値が50台でも合格を目指せる海外の医学部があるのは事実です。
学費も安い国が多く、海外医学部は魅力的に見えます。
一方で、入学後の進級、卒業のハードルが高かったり、医師国家試験の合格率が低かったりすることがあります。
また、異文化の環境に馴染めるかどうかも重要なので、単に「入りやすい」という理由で海外医学部を目指すのではなく、慎重な検討が必要です。
ただ、日本に限らず、世界各国で医師として活躍したいなら、海外の医学部は有効な選択肢となると考えられます。
最後までご覧いただきありがとうございました。


監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。


