ストレスフリーを目指す!院長と看護師の関係を良好にする3つのポイント

公開日:2019年5月30日
更新日:2024年10月21日
院長と看護師の関係性のイメージ

医院・クリニックの院長先生にとって、看護師などスタッフとの関係は、大きな課題であり、ストレス要因の1つです。

クリニック全体の人間関係には、主に次のように分けることができます。

①院長先生と看護師などのスタッフとの関係
②看護師同士などスタッフ間の関係

もちろん、どちらも良好である必要がありますが、今回は院長先生ご自身が、看護師との関係を良好にする重要なポイントについてお伝えします。

【事例と原因】徐々に院長との関係が悪化して退職してしまう看護師

院長と看護師の関係性のイメージ

最初に、院長先生と看護師との関係が徐々に悪化し、退職に至った看護師の典型例と原因をお話します。

今から紹介するケースは、とても多い事例なので、院長先生自身、何が原因なのか考えながら読み進めてみてください。

看護師が退職に至った事例詳細

とあるクリニックで看護師との関係に悩んでいるというA先生が、ふとこんな話を始めました。

・・・・・・・・・

「どうしてこんなことを間違えるんだ!」

ある日私は雇っていた看護師を、患者さんやスタッフの見えるところで怒鳴ってしまった。

彼女は採用面接の時、「真面目」「仕事が好き」「長く働きたい」と言っていて、私が望んでいた人物像と一致していた。

だから、すぐに採用を決めたのだ。

しかし最初はきちんと働いてくれていたものの、徐々に今までなかったようなミスが増えてきた。

私とのコミュニケーションも取らなくなり、モチベーションが下がっているのが明らかで、しまいには勝手にクリニックを休みだすこともあった。

彼女がどうしてそんな態度をとるのか、私には今でもさっぱりわからない。

しばらくして、彼女が私のクリニックを辞めることになった。

「本当は、もっと子育てと両立できる職場かと思っていたのに、違っていた。院長との相性もあまりよくない。だから、違うクリニックに移ろうと思った」

退職理由を聞くと、彼女は私に対して不満を言いながら去っていった。

なぜ看護師はやる気をなくして退職したのか?

この話を読んで、院長先生はどのように感じましたか?

この話から、看護師が辞めた原因には大まかに3つあります。

1つ目は、看護師の求めている働き方を把握していなかったこと。

看護師本人が求めている働き方と、クリニックが求めている働き方がマッチしていないといけません。

2つ目は、院長先生がきちんと看護師との関係に気を配っていなかったこと。

先生は採用したあと、看護師と良好な関係を保つために、何か気を付けていることはありますか?

そもそも、後述するように、患者さんや他のスタッフが見える前で怒鳴りつけるというのは論外です。

しかし頭でわかっていても感情に流され、思わず怒鳴るなど人間関係を破壊してしまったケースは多いのです。

3つ目は、院長先生が看護師の業務上の目標設定を把握していなかったこと。

院長先生は、看護師がクリニックに働くことによって、どのようになりたいか面談などで確認していくことが必要です。

目標から乖離した働き方では、やる気を失くして、ミスが多くなったり生産性が下がってしまったりするのは当然のことです。

今回は、この事例のようにならず、院長と看護師の関係を良好にして、ストレスフリーなクリニックを実現する重要な3つのポイントをお伝えします。

【ポイント①】採用面接時に相性を必ずチェックする

院長と看護師の関係性のイメージ

「院長先生と看護師の関係が良好にするには?」というお話をしていますが、そもそもこれは採用活動のときから始まっています。

院長先生と看護師の良好な関係のためには、そもそも院長先生と信頼関係を築けそうな、相性の合う看護師を採用することが大切です。

先生のクリニックと相性の悪い看護師を採用してしまえば、すぐに離職されるのは避けられません。

いくら熱心に指導したり、コミュニケーションを取ったり仲良くなろうと努めても、相性については合わないものは合わないのです。

そのため、院長先生は採用面接時に必ず、看護師との相性を確認しなければなりません。

クリニックとの相性を確認する

院長と看護師の関係性のイメージ

まず、クリニックとの相性を確認します。

子育てと両立できる範囲で仕事をしたいのか、どんどんキャリアアップしたいのか、看護師さんによって求める働き方は様々です。

先生のクリニックは、看護師にとってどのような環境でしょうか?

また、先生は看護師に、どのような働き方を求めますか?

先生やクリニックの環境が求める看護師の働き方と、看護師自身が求めている働き方がマッチしている方が好ましいことは言うまでもありません。

そのため、採用面接時には、院長先生の口からクリニックの理念や方針、どのような人材を求めているかをしっかり伝えることが必要です。

ここで共感しないスタッフは、実際に働いてから歪みが生じやすくなりますから、採用を見送るのが無難です。

院長や医師との相性を確認する

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クリニックとの相性を確認したら、今度は院長や、働く医師との相性を確認します。

大きな病院ならば、部署異動などもあるでしょうが、個人医院・クリニックや小中規模の医療法人ではそうはいきません。

そのため、院長や医師との相性は看護師を採用する際、重要な要素となってきます。

医師と看護師の連携がうまくできていないと、患者さんに「ちゃんと連携が取れているのかな」と不安にさせるなど、患者満足度にも影響します。

そのような積み重ねはクリニックの収益にも影響するので、院長や医師と相性の良い看護師を採用することが大切です。

面接時に相性の良い看護師を見抜くには、院長先生自身が、役割ごとに求める人物像を明確にしておくことが必要です。

先の事例のように、「真面目」「仕事が好き」「長く働きたい」だけでは足りません。

性別、年齢、実務経験、前職での経験や役職、性格や価値観、成長意欲や向上心、話し方、身なり、雰囲気など具体的に言語化しましょう。

他の看護師との相性を確認する

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もう1つは、看護師など働くスタッフとの相性を確認します。

特に看護師を募集する際は、自院で既に働いている看護師と相性が合うかどうかもチェックしましょう。

院長先生との相性は良くても、他のスタッフとの関係がギスギスしていては、すぐ辞めるでしょうし、雰囲気も悪くなります。

また、人間関係の悪化によりスタッフによるパワハラやマタハラに発展した際、院長先生も使用者責任に問われることがあります。

他の看護師との相性を図るためにも、先に書いたように、先生ご自身が求める人物像を具体的に言語化しておくことが大切です。

面接時に相性を図る質問

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では、実際に面接に来た人との相性を図るにはどうするか?

具体的には、次のような質問をすることで、相性をある程度把握できるでしょう。

相性を把握するための質問リスト
  • ・当院の理念についてはご覧になりましたか? 共感できたところはどこですか?
  • ・これまでの業務でどんな業務が好きでしたか?
  • ・あなたは個人プレーヤー向きですか? チームプレーヤー向きですか?
  • ・当院で何を実現し,どのように成長していきたいですか?
  • ・これまでの仕事で,自分が成長したと実感したことは何ですか?
  • ・将来設計を教えて下さい。
  • ・当院で働いて5年後,もしくは10年後どのようなポジションにいたいですか?
  • ・あなたにとって仕事をするということは,人生の中でどのような位置づけですか?
  • ・前職の退職理由を教えて下さい。
  • ・月に◯時間くらい残業がありますが,大丈夫ですか?
  • ・趣味はありますか?休日はどう過ごしていますか?
  • ・他に不明な点や疑問点はありますか?

その他、面接で大切なポイントについては、以下の記事も参考になるので、併せてご覧ください。

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【ポイント②】看護師への接し方に気を配る

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せっかく相性の良い看護師を採用したと思っても、、その後辞めてしまうケースは多くあります。

当然相性の良い看護師を採用すれば万全というわけではなく、ストレスなくモチベーションを維持できる接し方が必須です。

では、看護師さんとの関係を良好に保つためには、どのような点に注意すればいいのでしょうか?

看護師が“もやもや”していることを聞く

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看護師は、患者さんと接する中で「あの対応方法でよかったのかな」とひとりで考えて“もやもや”してしまうことがあります。

院長が看護師の心の“もやもや”を聞いてあげるようにすると、看護師は自信を取り戻し、安心して仕事に取り組むことができます。

とある病院が、看護師の離職率がとても低いと話題になっていました。

この病院が取り組んでいることのひとつに、「仕事中にもやもやした事例」を持ち寄って、1日かけて討論するというものがあります。

この取り組みをすることで、ひとりで“もやもや”を抱え込まずに、話し合うことができるようになったと言います。

さらに「あの対応は悪くなかったんだ」とか、「また頑張ろう」と自信にもつながっているそうです。

看護師は心の“もやもや”を聞いてもらうだけで精神面が落ちつき、話を聞いてくれる環境のある職場だと感じ、長く勤めたいと思えます。

院長先生の「ほめる」「笑顔を見せる」が大切

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よく言われることですが、やはり院長自身が看護師を「ほめる」、スタッフに「笑顔を見せる」のは重要なことです。

ほめることで人は良い行動を習慣的に行おうとします。

特に結果だけをほめるのではなく、それまでに看護師が行ってきた努力や考え方もほめるようにしましょう。

そうすれば、「院長は私の努力を見てくれている」と受け止め、作業に不安があったとしても作業に感じていた不安が取り除かれ、自信を持って仕事を進められるようになります。

また看護師が努力して達成した結果について、具体的にほめることも大切です。

「しっかり話しかけてくれたおかげで患者さんが安心して帰ったよ」
「仕事をまとめてくれたからみんな助かったよ」
「患者さんの変化に気付いたから、治療の方針がわかったよ」

などとほめることで、「次回もまたやってみよう」と良い行動が習慣化されていきます。

さらに看護師をほめる際は、なるべく笑顔を見せて感謝の気持ちを伝えましょう。

そうすることでスタッフも笑顔を見せるようになり、患者満足度の向上にもつながります。

誰かが見ている前で怒鳴るのは人間関係破壊の元凶

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反対に絶対にやってはいけないのは、先の事例のように感情的に怒ること、特に患者さんやスタッフが見ている前で怒鳴り散らすことです。

人の見えないところで怒るならまだしも、患者さんや他のスタッフの目の前で怒るのは見せしめのようなもので、相手に耐え難い屈辱を与えることになります。

このような不適切な看護師への接し方によって、看護師がどんどん辞めてしまい、クリニックの経営が成り立たなくなるケースはかなり多いのです。

もちろん医師が感情的に怒っているところを見せられた患者さんも不愉快な思いをするので、患者満足度も大きく下がるでしょう。

【ポイント③】理念を共有し、院長と一緒に目標設定を行う

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看護師の目指すべき目標を設定してあげることで、仕事に対するモチベーションを維持できます。

同じ方向を向いて仕事をすることで、院長先生と看護師の関係が悪化することもなくなります。ただし、目標の設定方法についてもポイントがあるので、詳しくお話しいたします。

クリニック全体の理念を共有する

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先生のクリニックでは、何を一番大切にしていますか?

「患者さんの体調を思いやる」「患者さんの不調を治す」などあるかと思います。

重要なことは、ただ院内掲示したり、クリニックで使用するPCで閲覧できたりするだけでは浸透しません。

院内の研修などの機会に、理念を振り返って話し合う機会を設けましょう。

理念を共有することで、院長先生だけでなく、看護師やスタッフ全員が考えや行動がブレなくなります。

その結果、自分で判断しなくてはいけない局面に立ったとき、自分で考え、行動できるようになります。

逆に土台が揺らいでしまっては、いくら目標設定してもブレ続けるため、モチベーションを維持するのは難しくなります。

看護師全員に自律型人材に育ってほしいのであれば、必ず理念は共有するようにしましょう。

共有した理念をもとに目標設定する

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院長先生は、看護師一人ひとりの目標設定はしていますか?

もし、目標設定をしていなかったら、共有した理念をもとに看護師と一緒に立ててみてください。

目標を設定することで、具体的に何を目指せばいいのかわかるようになり、看護師の成長速度が高まります。

目標を立てるときは「達成可能」であり、「クリニックの経営理念に沿っているもの」である必要があります。

達成可能なものでないと、現状と非常に乖離しているため、逆にモチベーションを維持できません。

新人看護師に対して、1対1で指導を行っている、ある病院の例を紹介します。

そこでは毎月の目標を黒板に書いて、それが達成されているかを、みんなで話し合う機会を設けています。

その機会にわからないことを先輩に聞いたり、達成できていなかったら何が足りないのか話し合ったりしているのです。

決して叱らず、“話し合う”体制をとることで、看護師のやる気を維持したまま、目標の再確認が可能です。

院長先生やクリニックの押しつけの目標ではなく、看護師本人が心から望んでおり、かつ理念に沿った目標を設定するのがポイントです。

また、この病院のように看護師同士で協力し合いながら各々の目標を達成できるような雰囲気を作り上げるようにすることが大切です。

一見難しいようですが、経営理念を浸透させ、院長先生が日常的に看護師の接し方に配慮していれば、自ずと可能になるでしょう。

【まとめ】まずは院長先生自身が看護師との関係が良好になるように努める

今回は、院長と看護師の関係を良好にするためのポイントについてお話しました。

  1. 看護師を採用する際には、看護師が求めている「環境」と、院長との「相性」を必ず見極める
  2. 「”もやもや”を聞く」「褒める」「笑顔」を心がけ、良好なコミュニケーションに努める
  3. 看護師の目標を設定し、何か問題があったとしてもみんなで解決していく姿勢をとることで、やる気を引き出し、維持することができる

理想としては、長年クリニックに勤めてもらい、院長先生の右腕になるような存在になってもらうこと。

そのためには、まずは院長先生自身が看護師との関係が良好になるように努めることです。

なお院長先生と看護師の関係だけでなく、看護師同士、スタッフ同士の関係を良好にするポイントについては、以下の記事をご覧ください。

医院・クリニックのスタッフ間の人間関係5つの注意点

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亀井 隆弘

広島大学法学部卒業。大手旅行代理店で16年勤務した後、社労士事務所に勤務しながら2013年紛争解決手続代理業務が可能な特定社会保険労務士となる。
笠浪代表と出会い、医療業界の今後の将来性を感じて入社。2017年より参画。関連会社である社会保険労務士法人テラス東京所長を務める。
以後、医科歯科クリニックに特化してスタッフ採用、就業規則の作成、労使間の問題対応、雇用関係の助成金申請などに従事。直接クリニックに訪問し、多くの院長が悩む労務問題の解決に努め、スタッフの満足度の向上を図っている。
「スタッフとのトラブル解決にはなくてはならない存在」として、クライアントから絶大な信頼を得る。
今後は働き方改革も踏まえ、クリニックが理想の医療を実現するために、より働きやすい職場となる仕組みを作っていくことを使命としている。

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