クリニックの家賃相場は?医業収入の何%が適正?安すぎる物件の盲点もプロが解説

公開日:2026年6月4日
更新日:2026年6月4日

賃貸物件でクリニックを開業する際、家賃は固定費の大きな割合を占めます。

「自院のコンセプトに合った物件を探して、良いところを何件か見つけたけど家賃が妥当なのか分からない」

という開業準備中の先生もいらっしゃるでしょう。

物件選びは、開業後のクリニック経営の成否を分ける重要な要素です。

家賃が高すぎれば資金繰りを圧迫する一方で、安すぎる物件には集患面などで思わぬ落とし穴が潜んでいることが少なくありません。

本記事では、医院・クリニック専門の税理士法人として数多くの開業支援を行ってきた経験に基づき、物件の家賃相場や適正な家賃の目安などを解説します。

また、家賃が相場より安すぎる物件でありがちな落とし穴についてもお伝えしますので、開業準備中の先生は最後までご覧ください。

クリニックの家賃相場はどれくらい?

クリニックの家賃相場は、エリア(都心、郊外、地方)や物件の形態(ビル、ロードサイド、医療モールなど)によって大きく変動します。

そのため、エリアや物件の形態などで分けて、一般的な月額の坪単価(1坪あたりの賃料)の目安をお伝えします。

家賃相場が坪単価15,000円であれば、30坪の内科クリニックを開業する際の家賃の目安は月額45万円ということになります。

後述するように、診療科目や開業コンセプトによっても、適正な坪数や坪単価が変わってくるので、あくまで参考値としてください。

都市部の駅前物件

都市部のターミナル駅や主要駅の駅前物件は、圧倒的な交通アクセスと認知度の高さから、家賃相場が高い傾向にあります。

都心部(東京23区の駅前物件)坪単価 20,000〜35,000円程度
一都三県の主要駅坪単価 15,000〜25,000円程度
地方都市の主要駅坪単価 10,000〜18,000円程度

いずれの場合も、ビルの1階など条件がいい場合は、もう少し坪単価が上がる可能性があります。

駅前物件は集患しやすい反面、家賃が高くなるため、高い医業収入を見込める事業計画が欠かせません。

また、都心部においては、十分な広さを確保できる物件が少なくなる点にも注意が必要です。

郊外の住宅街

地域密着型の医院・クリニックを開業する場合、住宅街の中にある物件が有力な候補となります。

東京郊外(東京23区外や一都三県)坪単価 8,000〜12,000円程度
地方の住宅街坪単価 4,000〜8,000円程度

家賃は比較的抑えられますが、患者さんが近隣住民になるので、周辺の人口動態や競合クリニックの状況を診療圏調査などで調べることが大切です。

郊外のロードサイド

幹線道路沿いなどのロードサイド物件は視認性が高く、駐車場を含めて広いスペースを確保できることがメリットです。

東京郊外(東京23区外や一都三県)坪単価 8,000〜12,000円程度
地方のロードサイド坪単価 4,000〜8,000円程度

このように、ロードサイドの物件は坪数が多くなる傾向はあるものの、坪単価自体は、一般的に駅前物件よりも安価です。

ただ、ロードサイドの場合、建物を新築するリースバック方式になることもあるなど、契約内容によって家賃相場が変動する点に注意してください。

大型の商業施設

クリニック開業では、ショッピングモールや大型スーパーなどの商業施設に入居するケースも少なくありません。

商業施設の利用者に自然と認知され、駐車場も完備されているので高い集患力が期待できますが、家賃相場は坪単価15,000~30,000円と高めです。

また、共益費・管理費が高めだったり、売上に応じた歩合賃料が発生したりするケースがあるので、固定費をよく確認しましょう。

固定費以外でも、営業時間や内装設計の制限が設けられることもあるので、魅力的な形態ではありますが慎重な検討が必要です。

医療モール・医療ビル

複数のクリニックと調剤薬局が集まる医療モールや医療ビルは、認知度の向上や、他科からのついで受診という相乗効果が見込めます。

集客力が期待できるうえに、一般のテナントビルより医療機関向きの設備(電気・水回りなど)が整っているメリットがありますが、次のように家賃相場は若干高めです。

都心部・一都三県坪単価 15,000〜25,000円程度
地方都市坪単価 10,000〜15,000円程度

医療モールや医療ビルも魅力的な形態ですが、ルールや規約による制約を受けやすいなどのデメリットもあります。

メリット・デメリットを踏まえながら、失敗しないコツをつかんで開業することがポイントです。

詳細は、以下の記事をご覧ください。

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医業収入に対する適正家賃の目安はどれくらい?

詳しくは後述しますが、クリニックの物件は家賃が安ければいいということではありません。

しかし、家賃は毎月必ず発生する大きな固定費であることも事実です。

どれほど素晴らしい立地条件であっても、医業収入に見合わない家賃設定では経営が苦しくなってしまいます。

一般的に、クリニックにおける医業収入に対する適正家賃の割合は6〜8%、多くても10%以内に抑えるのが理想とされています。

月間の医業収入が500万円を見込めるクリニックであれば、適正な家賃は30~40万円ということになります。

特に開業当初は患者さんが少なく収入が安定しないため、家賃の負担割合が一時的に高くなります。

そのため、開業前の事業計画の段階で、保守的に見積もった売上予測から逆算して、無理なく支払える家賃を算出しておくことが大切です。

開業資金や事業計画書の作成については、以下の記事をご覧ください。

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診療科目別の家賃や必要スペースの傾向

診療科目によって、適切な立地条件や坪数は変わることから、家賃相場も変わってきます。

あくまで目安ですが、科目別の一般的な家賃や必要スペースなど、物件選びの傾向をお伝えします。

内科

内科は地域住民のかかりつけ医となるケースが多いため、生活動線上の住宅街や駅前など、幅広い立地が候補になります。

レントゲンや処置室などの設備を含めると30〜40坪程度の広さが求められ、家賃総額は標準的な範囲に収まる傾向があります。

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小児科

小児科はベビーカーで来院する親子が多いうえ、感染対策も必要となることから、35〜45坪程度の少し広めのスペースが求められます。

駅前物件よりも、郊外の住宅地やロードサイド、駐車場が確保しやすい商業施設などが好まれ、坪単価を抑えつつ広さを確保する傾向にあります。

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皮膚科

皮膚科は比較的大きな医療機器を必要としないことが多く、25〜35坪程度のコンパクトな物件でも開業可能です。

駅近のテナントビルなど坪単価が高くても、坪数を抑えることで家賃総額を適正範囲内にコントロールしやすい診療科目です。

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眼科

眼科は、視力検査などのために十分な距離を確保する必要があり、また手術室を設けるかどうかで必要な面積が大きく変わります。

一般外来のみであれば30〜40坪程度ですが、手術を行う場合はより広いスペースが必要となり、家賃負担も増加します。

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耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科はネブライザーなどの機器が必要なことに加えて、特に子どもや高齢の患者さんが多く来院する場合は広めのスペースが求められます。

また、花粉症の時期など繁忙期には待合室が混雑するため、患者さんが快適に過ごせる広さを確保しておくことが重要です。

だいたい内科と同等の30~40坪くらいのスペースが必要になる傾向があります。

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産婦人科・婦人科

産婦人科は、分娩設備や入院病床を設ける場合は、郊外で土地を取得し、広く大きな建物を建築するケースが多くなります。

一方、婦人科外来のみのレディースクリニックであれば、プライバシーに配慮した駅近のビルテナントなどが選ばれ、利便性が重視されます。

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精神科・心療内科

精神科・心療内科は、患者さんが人目を気にせず通院できるよう、プライバシーへの配慮が最も重要視されます。

そのため、あえて1階を避け、ビルテナントの空中階の物件が選ばれる傾向にあります。

また、大型の検査機器を必要としないため、15〜25坪程度の省スペースで開業でき、駅前であっても家賃を抑えやすい特徴があります。

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美容外科・美容皮膚科

美容クリニックは自由診療が中心となるため、来院する患者さんが集まりやすいターミナル駅周辺や一等地が選ばれる傾向にあります。

また、内装にも高級感を持たせて、最新の医療機器を揃えることも多く、家賃だけでなく初期投資も高額になる傾向があります。

高い医業収入を見込むことができるビジネスモデルですが、無理に資金をかけて失敗するケースも増えているので注意しなければいけません。

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歯科

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そのため、視認性の高い1階の路面店や、駅前、商店街、商業施設などが選ばれる傾向がありますが、その分家賃は高くなります。

一方、患者さんの属性によっては住宅街やロードサイドの方が適していることもあるので、歯科医院のコンセプトをもとに詳細を検討しましょう。

ユニット数にもよりますが、歯科医院の広さは20〜30坪程度が目安になります。

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家賃が極端に安い場合の3つのリスク

クリニックを賃貸物件で開業する際は、家賃を適正な範囲に抑えることは大切ですが、次の点には注意が必要です。

家賃の安さにこだわるあまり、集患が難しくなったり、余計な費用がかかったりすると本末転倒になりかねません。

立地が悪くて患者さんが通いにくい

家賃の安い物件は、駅から遠い、大通りから一本入って目立たない、坂道が多いなど、患者さんが通いにくく集患上不利であることが多いです。

低い認知度をカバーするために、チラシやWeb広告に力を入れざるを得なくなり、広告宣伝費の負担がかかることも考えられます。

結果的に「もう少し家賃を払って良い立地を選んだ方が安上がりだった」ということになりかねません。

家賃の安さも大切ですが、来院患者数を見込める立地を選んだうえで、適正家賃を算出するようにしましょう。

診療圏調査で来院患者数を推計する方法は、以下の記事をご覧ください。

【医院開業物件選定】診療圏調査で患者数を推計する基本的方法や注意点を簡単解説

診療圏調査とは、ある場所で開業した場合に、1日あたりの来院患者数を統計的に推計するための調査です。 言うまでもなく、診療圏調査は物件選定の重要な参考データになり…

築年数が古くて内装や設備の改修でコストがかかる

古いビルなどの場合、家賃は安くても、クリニックとしての要件を満たすための改修に莫大な費用がかかることがあります。

診療科目にもよりますが、医院・クリニックでは、他の店舗や事務所とは異なる内装や電気設備、水回りが求められることが少なくありません。

例えば、医療機器などの電気容量が足りずキュービクルの増設が必要になったり、水回りの配管が古く大掛かりな工事が必要になったりします。

また、あまり古く清潔感が感じられない内装の場合は、集患に悪影響を及ぼすこともあります。

定期借家など賃貸借契約期間が短い

家賃が安い物件の中には、契約期間が「5年」「10年」などと定められ、更新ができない定期借家契約である場合があります。

もし退去を余儀なくされた場合、莫大な費用をかけて作った内装をすべて壊して原状回復し、新たな移転先で再び工事を行うことになります。

さらに、移転した後は再び認知度を上げていく必要があるので広告宣伝費もかかります。

また、将来医療法人化する際は、長期間の賃貸借契約の継続が求められることが多く、あまり短いと法人化できない可能性があるので注意してください。

【まとめ】家賃の安さだけではなく費用対効果で物件を選ぶこと

クリニックの家賃相場や、適正な家賃の考え方、極端に賃料が安い場合のリスクなどについてお伝えしました。

重要なことは、家賃の安さだけでなく、医業収入が十分見込める物件であることです。

高い医業収入を見込むことができれば、それだけ許容できる家賃の上限も上がります。

・自分の診療科目や開業のコンセプトに合っているか
・十分な集患が見込める物件か
・事業計画において家賃が適正な範囲に収まっているか

ということを、専門家の力を借りながら見極めて物件を選ぶことが大切です。

物件選びの詳細については、以下の記事をご覧ください。

都市部?郊外?テナント?建設? 医院・クリニックの開業物件選びで知っておくべきポイントとは?

医院・クリニック開業する際に、最初に決めるべきことで、しかも多くの先生が関心を寄せるのが物件の選定です。 実際に物件の選定は、もっともお金がかかり、気を付けるべ…

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笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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