循環器内科の開業で失敗しないための8つのポイント|開業支援実績が多い税理士が詳細解説


高血圧症や不整脈、狭心症、大動脈瘤などの疾患を診療する循環器内科は、そこまで同診療科目の競合は多くありません。
厚生労働省の「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 」によると、全国の診療所で働く循環器内科の医師の数は2,324人で、全体の2.2%程度です。
実際、街を歩いていても、一般内科や小児科などに比べると、循環器内科のクリニックを見かけることは少ないです。
しかし、上記の疾患の診療は、一般内科とも競合する点は注意が必要です。
特に循環器内科はどんな疾患に対応しているかイメージしづらく、上記の疾患を持つ患者さんでも、一般内科に流れてしまう可能性があります。
そのため、循環器内科は立ち上がりに時間がかかる傾向がありますが、患者さんの定着率が高く、継続して来院してもらいやすいメリットがあります。
この点を踏まえて、循環器内科の開業で失敗しないポイントをお伝えします。
【循環器内科開業のポイント①】どんな疾患、症状に対応しているかを周知する

冒頭でお伝えしたとおり、循環器内科は何を診てもらえるかわかりにくい診療科目です。
動悸や息切れ、背中、胸の痛み、めまいなどで循環器内科に行こうと考える患者さんが少ないためです。
そのため、循環器内科のホームページでは、具体的にどんな疾患、症状に対応しているかを周知しておく必要があります。
「〇〇(動悸や息切れなど)の症状があったらご相談ください」といったことを意識して、専門用語をわかりやすく記載していきます。
その他、生活習慣病なども対応可能であれば、その旨もホームページに掲載しておくと良いでしょう。
また、高血圧症や不整脈、狭心症などの疾患を持つ人や、動悸や息切れ、胸痛などの症状を持つ人に医院・クリニックを見つけてもらう工夫も必要です。
例えば、「高血圧 病院」「動悸 内科」などでGoogle検索して患者さんに医院・クリニック見つけてもらうようにします。
「新宿 循環器内科」などで検索上位表示されることも必要ですが、先の理由で循環器系疾患の患者さんが循環器内科を思いつくとは限りません。
適切な検索キーワードの選定については、病院・クリニックのホームページ制作実績のある制作会社などに相談してください。
循環器内科の場合、「足のむくみ」「心臓 痛い」というキーワードが患者さんにヒットして、「胸痛」が意外とヒットしません。
先生が想像している検索キーワードと、実際の検索キーワードには乖離があるので、正しく分析した方が良いでしょう。
その他、ホームページの集患については以下の記事をご覧ください。
ホームページだけでなく、看板、チラシなども、対象となる疾患や症状名の記載を意識した方が良いです。
ただ、ホームページと違って、挿入できる文字数に制限があります。
無理に疾患や症状名を入れるなど内容を詰め込むと、視認性が悪くなり高齢者の患者さんには逆効果になります。
必要な情報の優先度を加味して検討する必要があります。
【循環器内科開業のポイント②】他の病院やクリニックとの連携を強化する

循環器内科の場合、他の病院やクリニックと連携しておくことも重要です。
通常息切れであれば呼吸器内科、腹痛であれば消化器内科や一般内科を受診する患者さんが多いです。
ただ、息切れや腹痛は、実は循環器内科の疾患であるといったことが珍しくありません。
例えば、腹痛で、消化器系の疾患だと思って一般内科に来院したが、実は上腸間膜動脈解離だったというケースです。
そういった場合、最初から他の病院やクリニックと連携しておくと、紹介してもらいやすくなります。
逆に、循環器系の疾患と思って来院したが、実は呼吸器や消化器系の疾患が疑われる患者さんについては、他院を紹介することもできます。
また、CT検査など、自院にはない設備で検査が必要になった場合も、他院を紹介できます。
他院と連携を強化しておき、適切な紹介ができるようになると患者さんから信頼されやすくなります。
医院物件を探す際は、競合医院だけでなく、連携できる医院・クリニックがあるかどうかも重要なポイントとなります。
また、近くに信頼できる病院・クリニックがあれば、開業前に挨拶に行くようにすることも有効です。
【循環器内科開業のポイント③】一般内科も標榜する

循環器内科は患者さんの認知度が低いので、一般内科を標榜しておくなど、間口を広げて集患するという手はあります。
開業コンセプトで判断は変わりますが、循環器内科は患者さんが定着するまで時間がかかる診療科目です。
そのため、開業直後は様々な患者さんに来院してもらうようにして、徐々に「特に循環器系の疾患が専門のクリニック」と認知拡大を図っていきます。
患者さんに認知されるようになっていけば、経営が軌道に乗る頃には、循環器系疾患の患者さんの来院が増えてきます。
なお、一般内科の開業については、以下の記事を参考にしてください。
【循環器内科開業のポイント④】循環器内科は比較的高齢者が多い

循環器内科の患者さんは、対象の疾患などを考えると、比較的若年層より高齢者の方が多くなります。
循環器内科に適した立地は、サラリーマンが多い都心のオフォス街や繁華街ではなく、住宅街の駅近物件やロードサイドなどが適していることが多いです。
精神科や泌尿器科のように人の目が気になる診療科目ではないので、視認性の良い大通りで開業することもおすすめです。
患者さんから認知されやすい医療ビルや医療モールも良いでしょう。
ロードサイドであれば駐車場は必須ですし、車いすの患者さんや、足が不自由な患者さんに配慮した内装の設計が必要となります。
看板については、なるべく視認性を意識した方が良く、ホームページだけでなくチラシやハガキなどで集患することも有効です。
内装については、クリニックの内装設計に詳しい業者に詳細を相談するようにしてください。
【循環器内科開業のポイント⑤】一般内科も競合医院として診療圏調査をする

冒頭でお伝えした通り、循環器内科自体は、そこまで競合が多くないものの、診療内容から一般内科とも競合しやすいです。
特に循環器内科に行ったことのない患者さんは、動悸や息切れなど循環器の疾患が疑われる症状でも一般内科に行く傾向があります。
そのため、一般内科も競合医院として考えて診療圏調査を行った方が良いでしょう。
そのうえで、自院が対応している疾患を明確に周知したり、他病院やクリニックと連携を図ったりして差別化を図っていきます。
診療圏調査については、以下の記事をご覧ください。
【循環器内科開業のポイント⑥】開業コンセプトをもとに開業資金を慎重に検討する

循環器内科は、治療方針や導入する医療設備によって開業資金が大きく変わるので、開業コンセプトを慎重に検討する必要があります。
循環器内科は、やや一般内科に比べて診療スペースが必要になることが多く、特に心臓リハビリテーションを行う場合は、施設基準で20㎡以上の面積を確保しなければいけません。
専用の機能訓練室(少なくとも、病院については、内法による測定で30平方メートル以上、診療所については、内法による測定で20平方メートル以上)を有していること。
※心大血管疾患リハビリテーション料 施設基準より抜粋
ただ、心臓リハビリテーションは、需要が高まっている割には実施している病院やクリニックがまだまだ少ないので、検討の余地は十分あります。
その他、X線装置やCR、エコー、心電図、ホルター心電図、心臓カルーテル検査など様々な設備が必要になります。
CT検査などの高度医療機器は、物件の条件や開業資金に大きな影響があります。
最初は、大がかりな医療機器は導入せず、他病院と連携して紹介することもできるので、無理に開業資金をかけないことがおすすめです。
高度医療機器は、経営に軌道に乗ってから導入することでほとんど問題はありません。
開業資金の基本的な考え方については、以下の記事を参考にしてください。
【循環器内科開業のポイント⑦】順調に集患できるようになったら広告費を減らす

循環器内科は、対応する疾患の特性から考えて、継続的な来院が見込める診療科目です。
そのため、開業当初はリスティング広告などで積極的に集患をしても良いですが、経営が軌道に乗りだしたら広告費は減らして良くなります。
新規の患者さんを集患することより、患者満足度を上げるように接遇力を上げるといったことが重要になってきます。
患者満足度が上がれば、患者さんはますます継続的に来院しますし、紹介で新規の患者さんが来院してくる好循環に繋がります。
患者満足度を高めるコツの詳細は、以下の記事を参考にしてください。
【循環器内科開業のポイント⑧】場合によっては心臓リハビリテーション指導士を採用する

循環器内科の人材採用については、主に看護師や医療事務などになるので、他の診療科目と大きくは変わりません。
しかし、心臓リハビリテーションを行う場合は、心臓リハビリテーション指導士の看護師や臨床検査技師を採用すると良いでしょう。
【まとめ】循環器内科は認知に時間はかかるが患者さんの定着率は高い
以上、循環器内科で失敗しないポイントについていくつかお伝えしました。
循環器内科は、どんな疾患に対応しているのかイメージしづらいことや、高齢の患者さんが多いことから、開業後の立ち上がりに時間がかかります。
ただ、一度地域の患者さんに認知されると、患者さんが定着して継続的に来院してくれます。
そのため、開業直後は、診療内容の周知を意識しながら認知拡大すると同時に、患者満足度の向上を図っていくと集患しやすくなります。
循環器内科を開業する場合は、この点を意識して開業準備していくと良いでしょう。

税理士法人テラス、テラスグループでは、経験豊富な税理士、社労士、行政書士、ファイナンシャルプランナー、事業用物件の専門家などが結集してワンストップで医院開業支援を行っています。
医院開業準備における税務・労務・法務業務のすべてをワンストップで進めることができますので、ぜひご相談ください。



監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。