眼科開業で失敗しない9個の重要ポイント|開業支援実績が多い税理士が詳細解説
眼科は、医院開業のケースが多い診療科目の1つです。
厚生労働省 の「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、全国の診療所で働く眼科医の人数は8,471人です。
これは全診療科目の7.9%を占めており、内科医に次いで診療所で働く医師が多い診療科目となっています。
実際、当社でも眼科の先生の開業支援を手がけることが多々あります。
また、眼科はコンタクトレンズの装用者の人口が多い、手術時間が短いなどの理由で、比較的安定的な高年収が期待できると言われます。
とはいえ、特に手術を行う場合は、内装や医療機器で開業資金が高くなりがちなので注意は必要です。
そこで、今回は眼科の開業で重要なポイントを詳しく解説します。
【ポイント①】開業コンセプト次第で必要な医療機器や内装、開業資金が異なる
どの診療科目でも、経営理念や開業コンセプトを明確にすることは重要ですが、眼科でも同様です。
眼科の場合、白内障やレーシック、ICLなどの手術を行うかどうかで、必要な医療機器、内装の作りが大きく違います。
手術は大きな収益源になる一方で、それなりの開業資金が必要となります。
例えば、手術に必要な医療機器を揃えるのであれば、設備費用だけで2,000~3,000万円程度開業資金が上乗せされます。
また、治療内容によって坪数は変わりますが、手術室が必要となる点も考慮しなければいけません。
眼科は比較的新しい技術や医療機器が生まれることが多いです。
その点を踏まえて、一度に医療機器を買い揃えるのではなく、リースなども検討して必要開業資金を検討しましょう。
【ポイント②】レーシックの専門クリニック開業は開業資金と需要に注意する
レーシックも日帰りでできる時短手術の1つなので、かつては高収益を想定できました。
しかし、今はレーシックの需要は減少しており、飽和傾向にあります。
※公益社団法人日本眼科医会第4回記者懇談会「屈折矯正手術の現状」 より抜粋
少し古いデータになりますが、レーシック手術は2008年の45万件をピークに、リーマンショックや感染症事件をきっかけに手術件数が激減しています。
近年は、角膜を削らないICLの需要が高まっています。
患者さんのニーズに合わせてレーシックとICLに対応できる眼科クリニックを開業するなど、開業コンセプトを十分検討する必要があるでしょう。
また、レーシックやICLの専門クリニック開業を考えている先生は、先ほどお伝えしたように、医療機器や内装、開業資金に注意しなければいけません。
毎日のようにレーシックやICLの手術を行う場合は、建物の坪数も変わってくるので、比較的開業資金が大きくなる傾向にあります。
【ポイント③】開業コンセプトに合った適切な立地・物件を選ぶ
どの診療科目でも言えるのですが、手術するのか、しないのかなど、開業コンセプトによって立地・物件が変わります。
眼科の場合は、治療内容で大きく患者さんの属性が変わります。
白内障手術をするのであれば、少なくとも高齢者が多く居住しているエリアにするのがいいでしょう。
さらに結膜炎の受診を想定しているなら、ファミリー層が多く住むエリアが適切と言えます。
多くの場合、高齢者やファミリー層が住むエリアがおすすめになりますが、レーシックやICTを中心に診療する場合は都市部の開業も検討の余地があります。
経営理念や開業コンセプト、治療方針を明確にしたうえで診療圏調査をしないと、集患に苦労する物件で開業することになりかねません。
単に「地元だから」「前に住んでいたから」「人口が多いから」という理由で物件を選ばないようにしましょう。
【ポイント④】バリアフリーに配慮したレイアウトにする
患者さんの属性にもよりますが、眼科開業の多くは、バリアフリーに配慮したレイアウトにする必要があります。
特に高齢者や、目が不自由な患者さんが多く来院する眼科クリニックでは必須といっていいでしょう。
段差やスロープ、患者さんの動線なども配慮してレイアウトを設計していく必要があります。
また、近年精神科や心療内科だけでなく、プライバシーに配慮したクリニックの来院を好む患者さんが増えています。
いずれにしても、眼科の患者さんやスタッフの動線は、他の診療科目より独特なところがあります。
バリアフリーに加えて、プライバシーを配慮した内装も検討し、眼科クリニックの内装経験の多い施工会社に相談しましょう。
【ポイント⑤】消毒や手洗いの必要数に配慮したレイアウトにする
眼科疾患の場合、ものもらいなど治療で消毒や手洗いが必要となることが多いです。
消毒や手洗い、鏡の設置などをよく検討して、レイアウトを設計する必要があります。
【ポイント⑥】地域の医療機関と連携する
眼科クリニックでも、他の診療科目との連携は重要になります。
眼科治療を機に糖尿病や高血圧などの疾患がわかることもありますし、内科疾患を機に眼の疾患を併発することもあります。
合併症のある患者さんは眼科では対応ができないこともあることを考えると、地域間の連携は必須となるでしょう。
結果として「この眼科さんに相談すれば大丈夫」という安心感に繋がり、患者さんに信用される眼科クリニックになります。
【ポイント⑦】眼鏡店と連携する
眼科クリニックの場合、眼鏡店との連携も重要です。
眼鏡店で視力検査やコンタクトレンズの処方を完結することは可能ですが、より正確な検査をするため眼科クリニックを受診したいという方は多いです。
また、眼鏡店の方から眼科クリニックの受診を勧められる場合もあります。
立地を探す際は、連携できそうな医療機関はもちろん、眼鏡店についてもチェックしておくといいでしょう。
【ポイント⑧】末永く働く視能訓練士を採用する
診療科目によっては医師や看護師だけでなく、他の有資格者の採用も必要ですが、眼科の場合は視能訓練士の採用がポイントとなります。
視能訓練士の合格者総数は、2019年現在16,199人(※)で、その後毎年800~1,000人程度の合格者がいます(※日本視能訓練士協会ホームページ より)。
すでに視能訓練士を引退している人も含まれるデータのため、この数は決して多いとは言えません。
視能訓練士と連携できれば、回転率の改善に繋がりますが、他の有資格者同様に採用は決して容易ではありません。
いわゆる売り手市場の状況にあるので、視能訓練士の採用と、採用後の定着率向上について考えておく必要があるでしょう。
【ポイント⑨】患者さんの属性に合わせて集患する
眼科は、開業コンセプトや治療方針によって患者さんの属性が変わるので、それに合わせた集患対策が必要です。
レーシック、ICT、コンタクトレンズ処方の患者さんの大半は、インターネットで検索して比較検討します。
患者さんの属性に合わせてホームページを作成して、SEO、MEO対策を施すようにしましょう。
一方、子どもの結膜炎、ものもらいや高齢者の治療をメインとする場合は、地域の口コミの重要度が高くなります。
ただ、レーシックやICTだからといって口コミが不要というわけではありません。
悪い口コミが広がれば集患に影響が出ますし、Googleやポータルサイトの口コミでも悪評が書き込まれます。
良い口コミが広がるように、患者満足度を高めて、口コミを書いてもらうような仕組みにする必要があります。
また、口コミの影響が大きい子どもや高齢者が主な患者さんの属性となる場合も、新規集患のためホームページは必要です。
実際、最近の親御さんや高齢者はインターネットで検索して眼科クリニックを探すことが少なくありません。 やはり、ホームページを作成したうえで、Googleの口コミを増やしていくような対策をすることが理想です。
【まとめ】開業コンセプトに合った医療機器や内装で開業する
眼科の医院・クリニック開業の重要ポイントについて解説しました。
眼科のクリニックは、内科に次いで開業医の先生の数が多く、また治療内容にもよりますが平均年収が高い傾向にあります。
ただ、開業コンセプトや治療内容によって、必要な医療機器や内装のレイアウトが大きく変わる点に注意が必要です。
治療方針によっては開業資金が莫大になることも考えられるので、資金を抑える工夫も必要となります。
なお、眼科の開業医・勤務医の年収や働き方については、以下の記事で詳しく解説しています。
税理士法人テラスでは、経験豊富な税理士、社労士、行政書士、物件などの専門家が結集してワンストップで医院開業支援を行っています。
税務・労務・法務すべてワンストップで開業準備を進めることができるので、ぜひご相談ください。
監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。