慶應義塾大学医学部の特徴・カリキュラムと著名な卒業生(開業医)
はじめに
慶応義塾大学(以下慶応大学と記載します)医学部は北里大学の創設者である北里柴三郎氏を初代学長として1917年に開学しました。以降100年余りの長い歴史を歩んできた医学部は基礎医学と「臨床医学の一体化・医療の実現」を理想にしています。フィジシャン・サイエンティストという研究能力を備えた医師のことです。同時に深い知力と優れた人間性を有すること・また確固たる倫理観・信念に基づく総合的な判断力を持つこと・さらに生涯にわたって努力をし続けること・そして医学や医療を通して人類の福祉に貢献していく人材の育成をしていくことです。
住所
慶応義塾大学医学部の所在地は東京都新宿区信濃町35にあります。信濃町駅北口徒歩1分です。新宿にも近くアクセスは抜群です。基本的に2年時から6年次までは信濃町キャンパスで学びます。
なお1年次は横浜の日吉で学びます。信濃町から日吉だと電車で40分から45分くらいでしょうか。地元の方以外は新宿・渋谷付近に家を借りても良いのではないかと思われます。
入学金・学費
慶応義塾大学医学部の入学金や授業料は以下のようになります。
入学金
1,200,000円
授業料
18,240,000円
1年次から6年次まで各304万円。304万円×6年間=1824万円
施設設備費
210,000円
1年次から6年次まで各35万円。35万円×6年間=210万円
実験実習費
1,140,000円
1年次から6年次まで各19万円。19万円×6年間=114万円
在籍基本料
360,000円
1年次から6年次まで各6万円。6万円×6年間=36万円
その他の費用
19600円
6年間学費総額
22,059,600円
※その他寄付金などが他にかかります。ただ学費だけでみると他の次第医学部よりも安いです。6年間で3000万円以上するところがほとんどです。2200万円超というのはかなり良心的かもしれません。
また医学部の一般入学試験成績上位者10名程度に1年次から4年次までの各年度で1人当たり年間200万円・4年総額800万円ほどの大型の奨学金が支給されます。また2年時から6年次までの医学部生対象の各種奨学金があります。成績優秀者には多額の奨学金という形で報いるという形を採っています。学力に自信のある方は10番以内を目指していただきたいです。(奨学金の詳細は略します)
出典:慶応義塾大学HP・慶応義塾大学医学部HP
偏差値
72.5と私大医学部の中では当然ながらトップです。大学受験で最も実績と信頼のある河合塾の偏差値から算出しました。
出典:河合塾医進塾HP
医師国家試験合格率
慶応義塾大学医学部の医師国家試験合格率を年ごとに比較していきます。
2020年:全体95.7%(全国20位タイ)新卒99.1%(全国11位タイ)既卒50.0%(全国71位タイ)
2019年:全体94.8%(全国13位)新卒96.4%(全国16位タイ)既卒50.0%(全国54位タイ)
2018年:全体96.6%(全国5位)新卒100.0%(全国1位タイ)既卒33.3%(全国76位タイ)
2017年:全体95.6%(全国8位)新卒97.3%(全国6位タイ)既卒50.0%(全国45位タイ)
2016年:全体93.8%(全国27位タイ)新卒97.2%(全国14位タイ)既卒0.0%(全国78位タイ)
全体では全国平均の95%程度と優秀です。大半の方が新卒で1発合格します。
出典:医学部受験ラボHP
歴史
慶応義塾大学医学部の歴史・沿革を紹介します。
1858年:江戸築地に蘭学塾を創始
1873年:慶應義塾医学所を開設
1917年:北里柴三郎氏が学長になって慶應義塾大学部医学科開設
1918年:看護師の養成所を開設
1920年:大学令で医学部となる。北里柴三郎氏が院長で大学病院の開設
1929年:予防医学教室の竣工
1937年:北里記念医学図書館の開設
1945年:東京大空襲などで基礎医学教室などを焼失
1952年:新制度での大学の医学部を設置
1956年:新制度の大学院として医学研究科博士課程を開設
1957年:医学部東校舎竣工
1961年:医学部第二校舎竣工
1977年:月ヶ瀬リハビリテーションセンターが竣工
1988年:看護短期大学が開設
1994年:医学研究科修士課程を設置
2001年:総合医科学研究棟を竣工
2008年:臨床研究棟を竣工
特徴
慶應義塾大学医学部にはネットワークの多さ・未来への選択の多さ・世界を見据えた研究などが特色として挙がります。
ネットワーク
まず100年近い歴史がありますので医学のネットワークはとても多いです。先進的な医療現場である慶應義塾大学病院・また三四会などの多くのOBの存在・100以上の関連病院・35もの教育中核機関があります。医学部の教育はこれらの病院施設の協力を得て行われています。先進医療から地域のプライマリケアまでを学ぶことができます。
卒業後は大学病院と関連病院を行き来しながら実践的な技術を習得します。また研究分野においても最先端の学内研究機関・国内外の研究機関・さらに大学との連携を深めていきます。世界レベルの医師そして研究者に向かっての確実な未来が約束されています。
未来への選択の多さ
慶応の医学教育では研究マインドを持った医師の育成に力を入れていきます。6年間の教育で医師になるための学習をすることはもちろん、常に向上心と探求心を持って学問をし続けることのできる医師の育成を目指していきます。学生時代からMD-PhDコースに入って本格的な研究を行うこと・そして大学院に入って3年で博士号を取得することも可能です。一方で臨床医として活動中に研究に目覚めて大学院博士課程に入学、自分の疑問点を解決していく学生も多くいます。
慶應義塾大学医学部には世界的な研究者も多くいます。また多才な方も多いです。大学院博士課程では他大学の学生を多く受け入れてお互いの良いところを伸ばし合います。医学に関しても国立がん研究センターや国立国際医療研究センターなどとも連携をして学位の取得も可能にしています。医療や研究だけでなく行政や社会活動の中でも活躍できる人材を養成していけることが大きな強みになっています。
世界を見据えた研究
慶應義塾大学医学部では数多くの優秀な人材を輩出してきました。今後の医学の国際化を見据えて国際的に通用をする医師の育成を行っています。海外留学や国際交流を数多く行っています。全体の3割近い学生が海外での病院自習を自ら積極的に行っています。また海外の研究機関への研究留学・英国でのサマースクール・ラオス保健医療研修などの幅広い国際交流を行っています。また課外活動も積極的に行っています。
また大学院博士課程ではハーバード大学・北京大学・キングスカレッジ・ロンドンなどの海外の医療系大学との交流を行っていくことで国際的な研究者の育成に力を入れています。医療のグローバル化に対応できるような人材を作っていきます。
カリキュラム
慶應義塾大学医学部のカリキュラムは次のようになっています。
1年次
日吉キャンパスで数学・物理・化学・生物・語学・人文科学・社会科学・社会医学・医学基礎科目などを学びます。また夏季休暇中には老人医療施設・重症心身障害児施設・リハビリ施設などで介護者の見習いとしての実習を行います。
2年次
医学専門教育がスタートして解剖学・生理学・医化学などの基礎医学を学びます。
3年次
基礎や社会医学科目を学んでいきます。3学期からは内科学・外科学などの臨床医学も学んでいきます。
4年次
臨床医学と社会医学を学んでいきます。臨床実習の準備をしていきます。3学期からは臨床実習の前段階の診断学実習を行います。医師としての態度・技能を磨いていきます。また医学生と教員がマンツーマンで研究を行っていくユニークな取り組みも行っています。
5年次
慶應義塾大学医学部もしくは教育関連病院での臨床実習がスタートします。5年次の始まる直前に白衣式を行って医師になるための準備や覚悟などを示していきます。5年生から6年2学期までが臨床実習の期間で内科を中心に主要各科を一通り回って実習をします。
6年次
臨床実習の続きを行います。患者さんと接すること・自らが教員の指導を通して病名を診断することもあります。6年2学期に医師国家試験を受けて卒業になります。
研修制度
慶應義塾大学医学部の研修は初期研修と後期研修があります。初期研修は地域大学循環コース・大学一貫コース・小児科医産婦人科医育成コース・歯科口腔外科コースがあります。後期は専門医を目指すための専門医プログラム研修を行います。
初期研修
初期研修は地域大学循環コース・大学一貫コース・小児科医産婦人科医育成コース・歯科口腔外科コースを扱っています。内科を中心に自身の専門を希望する科などの研修を受けていきます。
地域大学循環コース
地域大学循環コースでは1年次で内科・救急科・外科小児産婦精神のうちの2科程度の研修を行います。2年次は外科小児産婦精神の残り2科程度と地域医療・麻酔科・自身の好きな分野を選択します。
大学一貫コース
大学一貫コースでは1年次で内科・救急+麻酔・外科小児産婦精神のうちの2科程度の研修を行います。2年次は外科小児産婦精神の残り2科程度と地域医療・麻酔科・自身の好きな分野を選択します。
小児科医産婦人科医育成コース
小児科医産婦人科医育成コースでは自身の希望する診療科・救急+麻酔・内科の研修を行います。2年次は地域医療・外科・精神科・交流・自身の希望する診療科・自身の好きな分野を選択します。
歯科口腔外科コース
歯科口腔外科コースでは1年次は歯科と口腔外科を3か月ごとに2サイクルします。2年次は歯科・口腔外科・麻酔科を4ヶ月ずつ行います。
後期研修
後期研修の専門医を目指すための専門医プログラム研修では患者中心のメディカルプロフェッショナルの実践・各診療領域の標準的でかつ先進的な専門知識や診断技術の習得・未来の医学を予想していく科学的思考と研究能力を有する専門医の育成を目指していきます。指導医・専門医・研修医が家族のように一体化して医学や医療の道を歩めるようにしていきます。出身大学とは関係なく慶應の同門として目的や目標を達成できるようにしていきます。
部活動
慶應義塾大学医学部の部活動を紹介します。運動部に相当する体育会と文化部・同好会に相当する独立団体に分かれます。体育会は医学部生の9割近い生徒が在籍しています。体力・精神力・忍耐力・上下関係などを学んでいきます。また学年を超えた信頼関係を結ぶことができます。文化系団体ではアフリカや南米などの医療途上国の応援をして国際交流などを行います。新団体を作って活動する方もいます。
運動部はアメフト部・スキー部・空手部・スケート部・弓道部・卓球部・競争部・ボート部・剣道部・軟式テニス部・硬式テニス部・馬術部・ゴルフ部・バスケットボール部・サッカー部・バトミントン部・山岳部・バレーボール部・信濃町ハンドボールクラブ・野球部・柔道部・ヨット部・水泳部などがあります。
独立団体はアフリカ医療研究会・生命科学研究会・医療振興会・東洋医学研究会・ウエルネス研究会・日韓医学生学術交流会・英語会・日中医学生交流協会・救命救急措置団体・ぬいぐるみ病院・管弦楽団・マッチング対策委員会・棋道部・ジャズ演奏同好会・公衆衛生学研究会・医師国家試験対策委員会・茶道会・国際医学研究会・四谷自治会・写真部・新聞研究会・四谷祭実行委員会・精神医学研究会・医学部卒業委員会などがあります。
連携病院
慶應義塾大学医学部の提携病院を紹介します。
- 北里大学研究所病院(東京都港区)
- 東京医療センター(東京都目黒区)
- 十仁病院(東京都中央区)
- 国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)
- 池袋病院(東京都豊島区)
- 荻窪病院(東京都杉並区)
- 東京都厚生会向島病院(東京都墨田区)
- 永寿総合病院(東京都台東区)
- 練馬総合病院(東京都練馬区)
- 江戸川病院(東京都江戸川区)
- 三鷹病院(東京都三鷹市)
- 武蔵野陽和会病院(東京都武蔵野市)
- 立川病院(東京都立川市)
- 南多摩病院(東京都八王子市)
- 日野市立病院(東京都日野市)
- 横浜市立市民病院(神奈川県横浜市)
- 川崎市立市民病院(神奈川県川崎市)
- 国立埼玉病院(埼玉県和光市)
- さいたま市立病院(埼玉県さいたま市)
- 東京歯科大学市川総合病院(千葉県市川市)
著名な卒業生
慶応大学医学部の主なOBを紹介します。
武田純三氏(慶応大学病院院長)
向井万起男氏(宇宙飛行士向井千秋さんのご主人・慶応大学病院病理診断部長)
監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。