コロナで患者減を抑えるクリニックの集患対策とは!?
はじめに
新型コロナウィルスの影響と言っても、コロナ最前線で闘う医療機関と、コロナ最前線とは直接関係のない医院・クリニックでは事情がまるで違ってきます。
後者に該当する医院・クリニックは、整体院やエステサロンなどの店舗ビジネス同様、患者減によって売上が下がっているところが多いのが現状です。
また緊急事態宣言後、感染者が大きく減っているとはいえ、患者さんと接触する機会の多い先生やスタッフはしばらくナーバスな状態が続くでしょう。
一方で患者さんも同じようにナーバスになっており、緊急事態宣言が解除されたとしても、コロナを踏まえた集患対策は必要となるでしょう。
そこで今回は、コロナ対策に特化した集患で注意すべき点についてお伝えします。
今回お話した内容ですぐV字回復するとは限りませんが、長期的には先生のクリニックにとってプラスになり、患者減を抑えることが可能でしょう。
コロナ対策をホームページで掲載して患者に安心感を与える
ホームページでコロナ対策について掲載しておくのは、緊急事態宣言解除後もしばらく必要かと考えられます。
冒頭でお伝えしたとおり、テレビやインターネットなどの連日報道されている影響もあり、患者さんの不安はしばらく続くと考えられるためです。
ホームページに反映済のクリニックも多いとは思いますが、「これだけで患者さんに伝わるだろうか?」と不安になっている先生も多いのではないでしょうか?
そこで、ホームページのトップページで掲載した方が良い項目について、以下に簡単に紹介していきます。
診療科目によって要否は変わってきますが、該当するものを反映していくと良いでしょう。
コロナ対策に関する記事はブログ機能を使えば問題ないですが、トップページのヘッダー直下などにバナーかリンクを張って誘導すると良いでしょう。
患者さんはコロナ対策も踏まえて、通う医院・クリニックを慎重に選ぶことも考えられます。
患者さんに安心感を持ってもらい、なるべくホームページで情報を提示して流出を食い止めるようにしましょう。
電話診療やオンライン診療(遠隔診療)の導入の周知
言うまでもなく、電話診療やオンライン診療を導入したら、ホームページの告知は忘れないようにしましょう。
当然ホームページだけでなく、院内掲示でも目立つように周知したり、診察時に直接伝えるなど、来院した患者さんには必ず伝えるようにします。
ホームページには、目立つようにトップページのヘッダー直下に大きくバナーを貼っておいて誘導しておくと良いでしょう。
周知したほうが良い内容は、次の通りです。
- 電話・オンライン診療の対象となる患者さん(内科疾患、スマホ、クレジットカード対応等)
- 電話・オンライン診療時間
- 電話・オンライン診療の予約方法や期限
- 電話・オンライン診療の費用(保険診療にプラスされる部分等)
- 電話・オンライン診療の流れ
- その他電話・オンライン診療利用上の注意点
- 薬の処方について
新型コロナウィルス対策に伴う休業などの規定の周知
院長先生やスタッフの誰かが、万が一新型コロナウィルスに感染、もしくは感染が疑われる症状があった場合の規定があれば、ホームページで掲載します。
例えば、次のようなものです。先生のクリニックの休業規定に併せて掲載してください。
- スタッフのうち1人に発熱が確認された時点で休業とする旨
- スタッフの家族が感染したなど、濃厚接触者と指定された場合
- 保健所に連絡し、来院者情報の選定により濃厚接触者をリストアップする旨
- 保健所の指示に従い、濃厚接触者など関係者へ周知を行う旨
- 休業期間に関すること(保健所の指示に従う旨)
院内の感染対策に対する周知
おそらく大多数の医院・クリニックが院内の感染対策を徹底していると思われます。
院内の感染対策については、院長先生やスタッフと同様に患者さんも気にしています。なるべく詳細に書いて安心感を与えましょう。
例えば、次のような対策をしている場合は書いておきましょう。
できれば写真も掲載しておくと良いです。
- 来院時の検温を実施していること(簡単に終わる旨も書く)
- 患者さんのマスク着用を義務付けること
- スタッフが院内消毒をしていること
- 受付に消毒液が置いてあること
- 院内の空間除菌や換気を徹底していること
- ドアノブや待合室のイス、カーテン、診察室など手で触る可能性のある箇所の除菌を徹底していること
- スタッフ全員マスク着用し、手洗い、うがいを徹底していること
- 密集に対処するため、待合室の座る間隔を空けていること
- 完全予約制などで患者の密集を避けていること
- ネブライザー治療休止など、院内感染対策で休止している治療があること
診療時間の短縮に関する周知
もし、コロナ対策で診療時間を短縮するような場合は、上記の感染対策とは別に短縮した旨を周知するようにしましょう。
その際、電話診療やオンライン診療を実施しているのであれば、来院を控えたいと考えている患者さんに向けて周知しておきましょう。
コロナ感染者や感染が疑われる方は診察を控えてもらう旨の周知
コロナ感染者や感染を疑われる人を診察していないのであれば、その旨を記載します。
慎重かつ丁寧な表現が必要となりますが、「当院にはコロナ感染者は来院しない」という安心感を患者さんに与える必要があります。
コロナの診察とは直接関係のない治療や検診(健康診断や人間ドッグを含む)については、特に記載が必要となるでしょう。
- 診察を控えてもらう条件(発熱、風邪症状、周囲にコロナ感染が疑われる場合、海外から帰国して2週間以内等)
- 「帰国者・接触者相談センター」「保健所」に連絡すること(連絡先や受付時間も書いておくと親切)
- 電話やオンライン診療が可能であれば、その旨を記載
コロナ感染の検査(PCR検査)をしていない旨の周知
なお、発熱や風邪症状、味覚障害などでコロナ感染が疑われる人が間違って来院しないように、PCR検査をしていないクリニックは、その旨も伝えておくと良いでしょう。
その際は、上記同様に「帰国者・接触者相談センター」「保健所」に連絡するように誘導しましょう。
コロナ感染が疑われる人を診療拒否できるか?
先にホームページ等で「コロナ感染が疑われる人は診療を控えてもらう旨の周知をする」と書きました。
しかし、コロナ感染が疑われる人を診療拒否して大丈夫なのか? 応召義務違反に該当しないか疑問に感じた先生もいるでしょう。
特に内科の先生は気にするところではないかと思われます。
厚生労働省新型コロナウィルス感染症対策推進本部が発行している、「新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点について」では、次のように記載されています。
3.応招義務について
患者が発熱や上気道症状を有しているということのみを理由に、当該患者の診療を拒否することは、応招義務を定めた医師法(昭和 23 年法律第 201 号)第 19 条第1項及び歯科医師法(昭和 23 年法律第 202 号)第 19 条第1項における診療を拒否する「正当な事由」に該当しないため、診療が困難である場合は、少なくとも帰国者・接触者外来や新型コロナウイルス感染症患者を診療可能な医療機関への受診を適切に勧奨すること。※厚生労働省「新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点について」より抜粋
つまり、結論としては、単純に「診療できません」と診療拒否することはできません。
しかし、コロナ感染者に対する診療が困難な場合は、適切な医療機関への受診を勧奨したり、保健所の指示に従うように誘導すれば問題ないと考えられます。
コロナ対策に関して口コミで悪い評価が付いてしまったら?
先に書いたように、コロナウィルスに関するメディアの報道の影響もあり、患者さんはかなりナーバスになっている可能性があります。
そのため、医院・クリニックのコロナ対策に関する関心が非常に高く、Google Mapsなどの口コミにも影響することが考えられます。
「コロナの意識の低いクリニック」という評価が付かないように注意することが前提ですが、それでも悪い口コミが書かれてしまうこともあります。
しかし、Google Mapsの口コミは、削除することは容易ではありません。
そのため、悪い口コミが付いてしまったら、丁寧に謝罪の旨と今後の対策の徹底を伝えて返信するしかありません。
もし、明らかに誤解によるものであれば、「説明不足で申し訳ありません」という旨を書いて、誤解を解くようにしましょう。
少なくとも悪い口コミを放置したり、対抗心をむき出しにする返信を行ってはいけません。
丁寧に返信して、真摯に対応している姿勢を見せるようにすれば、悪い口コミによる患者数減は極力抑えられるでしょう。
コロナ対策に特化した接遇に関するスタッフ教育
ホームページや院内掲示などで周知したコロナ対策について、「実際に来たら対策してないじゃないか!」というわけにはいきません。
実際に、患者さんはコロナについてナーバスになっていることが多いので、コロナ対策について目を光らせている可能性が高いです。
そのため、コロナ対策に特化した接遇について、次のようにスタッフ教育を行うのも効果的です。
- 検温や消毒をお願いする際の患者さんとの接し方
- 待合室にスペースを多めに空けるのであれば、患者さんに丁寧に伝える旨
- マスクをしていない患者には、マスクをするようにお願いする
- コロナ対策に関するクレーム対応
【まとめ】誠実な対応でクリニックの信頼度を高めてアフターコロナに備える
以上、コロナ対策に特化した集患対策についてお伝えしました。
重要なことは、ホームページや院内掲示などで患者さんに安心感を与え、実際にコロナ対策を徹底するようにスタッフに周知・教育すること。
アフターコロナでは「本質的なサービスしか残らない」と言われていますが、これは医院・クリニックでも同じことが言えます。
丁寧で誠実な対応を行い患者満足度を高めていけば、患者減を食い止めるだけでなく、アフターコロナで患者さんが戻ってくるでしょう。
ただ最大限のコロナ対策をしても、現状売上が減っている医院・クリニックも多いでしょう。
そのため、コロナを理由に売上が減った医院・クリニックの給付金や融資措置に関する記事も、併せてご覧ください。
監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。