看護師など医療スタッフのモチベーションを上げる7つの秘訣

公開日:2020年3月26日
更新日:2024年6月24日

医院・クリニックの院長先生が日々悩まされる問題の1つが、勤務医、看護師、理学療法士、医療事務など働くスタッフのモチベーション維持です。

「みんなやる気ないな……」

「看護師のAさんが最近元気ないけど、どうしたのかな?」

「スタッフに辞めたいと言われてしまった……」

このような悩みをよく聞きます。

実際、スタッフのモチベーションが下がることで、離職率が下がったり、患者満足度が下がったりすることに繋がり、医院経営に悪影響を及ぼします。

モチベーションの高いクリニックモチベーションの低いクリニック
患者対応
患者満足度◯(高い)☓(低い)
患者の再診率◯(高い)☓(低い)
クレーム◯(少ない)☓(多い)
口コミ◯(良い)☓(悪い)
医業収入◯(上がる)☓(下がる)
スタッフ問題
労使間トラブル◯(少ない)☓(多い)
離職率◯(低い)☓(高い)
生産性◯(高い)☓(低い)
ストレス◯(低い)☓(高い)
人間関係◯(良い)☓(悪い)
チームワーク◯(良い)☓(悪い)
スタッフ採用◯(有利)☓(不利)

そこで今回は、看護師など医療スタッフのモチベーションを上げる秘訣についてお伝えします。

【秘訣①】自院に合わないスタッフを採用しない

スタッフのモチベーションや人間関係の問題を解決するために、一番確実で効果が高いのが、そもそも自院に合わないスタッフを採用しないことです。

モチベーションや人間関係というと、現存のスタッフにばかり目を向けがちですが、一番注意しないといけないのはスタッフ採用です。

最初からやる気のあるスタッフだけ採用していれば、モチベーション低下に悩んだり、退職や労使間トラブルに悩まされたりする確率は下がります。

自院に合ったスタッフを採用するには、まずは面接時や求人広告で給与や福利厚生の話から始めないことです。

給与や福利厚生も重要ですが、それだけで入職したスタッフは少しでも嫌なことがあるとすぐにやる気をなくして離職に繋がります。

また、少しでも待遇に不満を持つとトラブルを起こす可能性が高く、他のスタッフのモチベーションも下げてしまいます。

給与や福利厚生の話をする前に、クリニックの理念や方針を共有することの方が先です。

理念や方針に共感した人はやりがいを持って働いてくれますし、周りにも良い影響を与えてくれます。

もし、スタッフの定着率や、全体のモチベーションに問題を感じるようでしたら、まずは採用から見直すと良いでしょう。

【秘訣②】給与や賞与アップは慎重に行う

「もう少しスタッフの給与や賞与を上げた方がいいか」と相談される先生はかなり多いです。

例えば、現状の基本給に加えてインセンティブを設けて、スタッフのモチベーションを上げるなどです。

たしかに、最低限の給与水準を満たすことは重要です。

また、たしかに給与や賞与の水準を上げるというのは、スタッフのモチベーションを維持するうえでは効果が出ます。

実際に開業して経営が軌道に乗ってきたら、給与や賞与を見直してみるのはいいでしょう。

しかし、給与や賞与は基本的に不利益変更ができないので、一度上げてしまうと下げることができません。

また、給与を上げて、一時的にはやる気が上がったとしても、慣れてしまうと上げた給与を当たり前と感じるようになってしまいます。

長期的な観点で見た場合、本当に給与を上げることが適切かを考えた方がいいでしょう。

先ほどお伝えしたように、給与を目的としているスタッフより、給与以外で仕事のやりがいを見出しているスタッフの方が末長く働いてくれます。

給与や賞与は重要ですが、スタッフはお金だけをモチベーションに働いているわけではない点を踏まえて、慎重に検討しましょう。

【秘訣③】スタッフから業務上の悩みを相談されたら最後まで聞く

院長先生からスタッフに問題点を指摘するだけでなく、スタッフの方から業務上の悩みを打ち明けられることがあります。

単純に「○○について教えてください」と言う単純な質問もあれば、業務負担に関することや人間関係の悩みなど様々です。

「こうした方がいいのでは?」という業務改善提案などもあるでしょう。

日常業務にしても個人面談の場にしても、業務上の悩みを打ち明けられたら最後まで話を聞くことです。

回答を急ぐあまり、途中で話を遮る院長先生も多いですが、それではスタッフは「話を聞いてくれない」と不満を持ちますし、誤解が起きやすくなります。

特に業務内容や人間関係の悩みになると、悩みを打ち明けた本人だけでなく、他のスタッフも同じ悩みを持っている可能性があります。

もちろん悩みの内容にもよりますが、回答を急ぐのではなく、最後まで話を聞いて、じっくり解決策を考えるようにしましょう。

また、業務上の悩みについては、「どうしたらいいと思う?」とスタッフにも考えさせるようにもしましょう。

そうすることで、お互い納得のいく答えに近づきますし、スタッフの自主性を育むこともできます。

【秘訣④】経営状態をスタッフにわかりやすく情報開示する

医院・クリニックの経営状態をスタッフにわかりやすく情報開示すると、意見が対立した際にも納得してもらいやすくなります。

また、経営状態を共有することで、院長先生とスタッフが同じ方向性に進んでいくことができるので、著しく成長してくれます。

経営理念やビジョンを共有しているつもりでも、院長先生とスタッフで意見が対立することは珍しくありません。

院長先生など経営陣の最大の関心事はクリニックの利益ですが、スタッフの最大の関心事は給料などの人件費です。

上図から見てもわかるように、人件費は、院長先生から見たら支出です。

院長先生はクリニックの経営者の立場なので、支出を減らしたいと考えますが、スタッフは、「支出を増やせ」と言っているのです。

典型例は、院長先生が「給料分仕事してほしい」と思っても、スタッフは「もっと給料を上げてほしい」と考えていることです。

また、院長先生としては患者さんの来院数を増やしたいのに、スタッフから「これ以上増やしたら仕事が回らない」「スタッフも増やせ」と言われることもよくあります。

しかし、だからといって、「給料分仕事してから言え!」「今の状況で人を増やせるか!」と突き放してしまうと、スタッフは院長先生に不信感を抱くだけです。

何も解決策を示さない院長先生に不満を感じて、退職してしまうかもしれません。

1つの方法として、上図のような損益の状況をスタッフにも説明して、一緒に解決策を考えるといいでしょう。

税理士が見るような細かい決算書の数値まで把握しなくても問題ありません。

具体的には、上図のように売上を100として、各々の項目を数値化してみます。

そうすると、人件費をどれくらいにして、利益がどれくらい残っているか把握できます。

また、スタッフが最も気にする人件費については、労働分配率(=人件費÷粗利)という目安となる数値があります。

例えば、開業直後の医科歯科クリニックであれば30%までが目安となります。

つまり、開業直後のクリニックであれば、30%を超えていれば、これ以上人件費を増やすことは厳しいことがスタッフにも説明できます。

逆に、30%を大きく下回っていれば、給与が低いか、スタッフ数が少ないかいずれかです。

労働分配率が低ければ、スタッフの希望通りに人件費に投資する余地はあります。

それで利益が苦しくなるなら、変動費や他の固定費に無駄がある可能性が高いです。

この場合も、スタッフと一緒に改善案を考えてみるといいでしょう。

このように、スタッフにも経営状態をわかりやすく説明してみると、お互いの要望が反発することなく、着地点が見つかります。

お金の流れをまずは院長先生が理解して、スタッフにも共有するようにしましょう。

【秘訣⑤】個人面談前にアンケートを取る

スタッフと対話の機会を持つことは重要ですが、日々の忙しい診療のなかで、個人面談がないとなかなか難しいところがあります。

しかし、個人面談の場を設けても、お互い話すことがなければ、「何か問題ない?」「ないです」というように形だけで終わってしまうことも多いです。

本当に問題がなければいいのですが、問題点を抽出できていないか、言いづらいこと黙っているだけかもしれません。

特に人事評価制度などを取り入れていない場合は、形だけで終わってしまうことが少なくありません。

そこで、例えば以下の項目で、事前にアンケートを取ってもらうと、業務上の悩みなどを抽出しやすくなります。

・仕事にやりがいや自分自身の成長は感じているか

・仕事内容を他のスタッフからサポートしてもらっているか

・人間関係で悩みはないか

・業務負担が大きいなど、仕事内容で悩みはないか

・健康状態に不安はないか

記入方式にしてもいいですが、スタッフが負担に感じる場合は、5段階評価にして満足度を図ってもいいでしょう。

そうすることで、日常業務では声になっていないスタッフの本音を聞けることがあります。

【秘訣⑥】好敵手の存在がスタッフを成長させる

人間関係の悪いストレスフルなクリニックで、スタッフがやる気を持って働くことは不可能です。

それだけに、スタッフのモチベーション維持のためには安心・安全な職場であることが必須です。

しかし、安心・安全な職場であると同時に、「がんばろう」と思わせるような刺激も必要です。

そうでなければ、ただ安心・安全な職場に依存し、成長することなく伸び悩むスタッフが出てくるからです。

成長意欲がないので働くモチベーションの減退が進み、それがスタッフ全員に蔓延し、全員のやる気の低下に繋がります。

やる気の低下に繋がれば、人間関係も徐々に悪くなり、安心・安全な雰囲気も保てないでしょう。

では、スタッフ本院が「もっと成長したい」と思えるような、刺激のあるクリニックになるにはどうするか?

それが好敵手の存在です。

好敵手とは、試合や勝負事で力が同じくらいの、良いライバル関係にある人のことを言います。

マラソンでは、タイムが同じくらいの選手が競い合えば、どちらにとっても良いペースメーカーになるため、両方とも自己ベストを出しやすくなります。

これは仕事においても同じことが言えます。

・同じ力量のスタッフが互いに認め合い、しのぎを削るかのようにお互いに成長する。

・院長先生や先輩スタッフが言う前に、勝手にスタッフ同士で「こうしたら良いよ」「あーしたらどう?」みたいな議論も活発になる。

このようなスタッフが2人いれば、お互いの向上心を刺激して、非常にモチベーションの高い状態で仕事をすることができます。

そのため、敢えて2人1組で競わせるような仕組みを作るのも有効ですが、切磋琢磨することと、嫉妬や劣等感は紙一重である点です。

あくまでもお互いが認め合うことが重要なので、個人間の競争と同時に、組織力を高めないと逆効果になる可能性があります。

【秘訣⑦】先生や先輩スタッフに意見が言いやすい雰囲気を作る

スタッフのモチベーションが下がっていて、院内の雰囲気もギスギスしている場合、院長先生がボスマネジメントに陥っている可能性があります。

ボスマネジメントとは、「院長の言う通りに動いてくれれば良い」というトップダウン型のマネジメントです。

院長先生の方針を伝えることはとても重要ですが、意見を言い合える風通しの良さがないとモチベーションは維持できません。

ボスマネジメントは、指示待ち人間のようなスタッフには有効かもしれませんが、自主的に動くスタッフにとってはマイナス要因になります。

さらに立場を越えた意見交換ができない組織は、組織力の高いクリニックに比べ、突発的なトラブルに非常に弱くなります。

2008~2013年までサッカーの名古屋グランパスで監督をしていた、ドラガン・ストイコビッチ元監督は、選手と同じ立場でいようと努めたことで知られています。

監督と選手の間には、リスペクトがなければならない。

それは勝手に生まれるものではなく、日頃の触れあいが培う信頼や信用によってついてくる。

選手によって性格は違うから、接し方は変えなければならない。

選手からの意見はもちろん受け入れるし、質問に対する答えは相手を納得させられるものであるべきだ。

選手と私がお互いを理解していることが、このチームの力の源になっている

このストイコビッチ元監督の言葉は、監督⇒院長、選手⇒スタッフと言い換えれば、そのままクリニックに当てはまるでしょう。

今後クリニックが発展し続けるには、お互いを尊重し、何でも言い合える雰囲気があることが必須条件になります。

【まとめ】何でも言い合える風通しの良さと闘争本能をミックスしたクリニックづくり

以上、看護師などクリニックで働く医療スタッフのモチベーションを上げる方法をお伝えしました。

7つの秘訣のうち、1つでも改善できれば、看護師や勤務医の働くモチベーションが劇的に変わる可能性があります。

7つの秘訣のうち課題と感じるところがあれば、できるところから少しずつ実践して、スタッフのモチベーションの高いクリニックを作っていきましょう。

亀井 隆弘

広島大学法学部卒業。大手旅行代理店で16年勤務した後、社労士事務所に勤務しながら2013年紛争解決手続代理業務が可能な特定社会保険労務士となる。
笠浪代表と出会い、医療業界の今後の将来性を感じて入社。2017年より参画。関連会社である社会保険労務士法人テラス東京所長を務める。
以後、医科歯科クリニックに特化してスタッフ採用、就業規則の作成、労使間の問題対応、雇用関係の助成金申請などに従事。直接クリニックに訪問し、多くの院長が悩む労務問題の解決に努め、スタッフの満足度の向上を図っている。
「スタッフとのトラブル解決にはなくてはならない存在」として、クライアントから絶大な信頼を得る。
今後は働き方改革も踏まえ、クリニックが理想の医療を実現するために、より働きやすい職場となる仕組みを作っていくことを使命としている。

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