クリニックのリフォーム工事の費用相場や失敗しないポイント、税務処理の方法を詳細解説


クリニック開業から年月が経過し、内装の老朽化や手狭になった待合室、患者さんやスタッフの動線などが気になりだすことがあります。
開業当初から院内環境や患者さんのニーズ、社会情勢は変化するので、「リフォームが必要かな?」と考える開業医の先生もいらっしゃるでしょう。
しかし、クリニックのリフォームは壁紙の張り替えなど内装だけで済む場合と、建物の構造にまで踏み込む場合とで、費用相場や工期が大きく変わります。
また、クリニック施設特有の設計要素や、各種法令への対応も求められるため、一般的な住宅リフォームとは異なる専門的な視点が不可欠です。
本記事では、クリニックのリフォームの費用相場や工期、失敗しないポイント、税務処理の方法などをお伝えします。
クリニックのリフォームの費用相場や工期は?

クリニックのリフォームは、工事の規模によって大きく「部分リフォーム」と「全面リフォーム」に分けられます。
内装のみの簡単な改修にとどめるのか、レイアウト変更や建築部分まで踏み込むのかで、費用感と工期は大きく異なります。
部分リフォームの場合
部分リフォームは、待合室の壁紙張り替え、バリアフリー用スロープの設置など、特定エリアや設備のみをピンポイントで改修する工事です。
既存の建物や内装をそのまま活かすので、工期が数週間~3ヶ月程度と短く、費用もかなり抑えられます。
休診日や夜間を利用して工事を行うことで、診療への影響を最小限にすることができるでしょう。
診療科目や工事内容で大きく変わるので、あくまで目安ですが、部分リフォームの場合の費用感は次の通りです。
| 改修箇所 | 費用目安 | 主な工事内容 |
| 入口・受付 | 50~200万円 | カウンター改修、パーテーション設置、壁紙・床材張替、バリアフリー化など |
| 待合室 | 50~300万円 | スペースの増設、壁紙・床材張替、椅子やソファーの追加、家具の入替、キッズスペースの新設・撤去など |
| 診察室 | 100~400万円 | 壁紙・床材張替、医療機器の追加・変更による電気配線・配管工事など |
| 処置室 | 100~300万円 | 医療機器の追加・変更による電気配線・配管工事など |
| トイレ | 30~150万円 | 便器の変更、手洗い場の追加、バリアフリー化など |
| その他 | 50~150万円 | スタッフルームや更衣室の新設・撤去など |
このように、部分改修の規模にもよりますが、一般的には資金繰りを大きく圧迫するほどの費用にはなりません。
ただ、部分リフォームの場合は、改修が逆効果にならないように次の点に注意しましょう。
【部分リフォームの注意点】
- ・部分的な課題解決にとどまり、根本的なレイアウトや動線の改善にはつながらない可能性がある
- ・新しい部分と古い部分のデザインや質感の不一致が目立つことがある
- ・既存の電気配線や配管の状態によっては、想定外の追加工事費用がかかることがある
全面リフォームの場合
全面リフォームは、院内のレイアウトを根本から変更する大規模な改修や、電気配線・配管をすべて刷新する工事です。
既存の内装を一度すべて解体し、スケルトンにしてから作り直す工事も含まれます。
大まかな費用相場は、坪単価40~100万円程度で、総額で2,000~4,000万円程度になる傾向があります。
大幅な全面リフォームの場合は、必要性をよく検討し、的確な資金計画を立てたうえで実行するようにしましょう。
工期は3~6ヶ月程度になり、長期間の休診を見込んだ減収対策や休診中の患者さんへの対応も必要です。
ただ、全面リフォームは自由度が高いので、患者さんやスタッフの動線を根本から見直し、業務効率や院内の快適性を大幅に向上できることがあります。
最新の大型医療機器を導入する際や、内装の老朽化が大きく進んでいるような場合は十分検討の余地があります。
クリニックのリフォームで失敗しない6つのポイント

クリニックのリフォームは、部分改修であっても数百万円程度の投資になるので、失敗しないために事前準備が欠かせません。
そこで、クリニックのリフォームで失敗しないポイントについてお伝えします。
リフォームの目的を明確にすること
曖昧な理由でリフォームを進めると、不要な追加工事が増えて予算をオーバーしたり、本来解決すべき課題が放置されたりします。
それでは本末転倒になるので、必ずリフォームの目的や、解決すべき課題、どういうクリニックを作りたいかを明確にしましょう。
クリニックをリフォームする目的は、大まかに次の通りです。
- ✓内装の老朽化が進んでいる
- ✓患者さんが増えて待合室が手狭に、またスタッフも増えてきたので動線を見直したい
- ✓大型の設備投資を行うことに併せて内装も変更する必要がある
- ✓医療DX化を推進するための電気配線の改修や、業務効率化のため設備の入替をしたい
- ✓医療技術の進歩や社会情勢の変化、関係法令の改正、患者のニーズの変化に応えたい(例:感染症対策の強化、バリアフリー化の推進、プライバシー配慮など)
- ✓競合クリニックに負けないように、自院の強みやコンセプトを活かすための改修をしたい
リフォームによって解決したい課題を洗い出し、優先順位をつけて方向性を検討しましょう。
患者目線の内装・レイアウトを維持・向上すること
車椅子やベビーカーでも移動しやすい通路幅、受付から診察室までの分かりやすい動線など、患者さん目線の内装はリフォームでも意識しなければいけません。
リフォームによって、患者さんの視点に立ったレイアウトを損なわないように注意しましょう。
特に部分リフォームの際は注意が必要です。
スタッフの働きやすさ・業務効率を維持・向上すること
スタッフが効率的に動ける環境は、質の高い医療の提供に直結します。
患者さんとスタッフの動線が交差しないなど、リフォームによって内装設計の基本を損なわないようにしましょう。
この点を忘れてリフォームすると、「前の方がよかったね」ということになりかねません。
どんな目的でリフォームするにしても、患者さんの快適性とスタッフの業務効率は必ず頭の中に入れておきましょう。
クリニックの内装設計に詳しいリフォーム業者に相談すること
クリニックの内装・レイアウト設計は、一般的な住宅や店舗とはまったく異なります。
大型医療機器の搬入経路、電源容量の計算、X線室の鉛防護工事、水回りの特殊な配管など、医院・クリニック特有の専門的な設計要素が多数存在します。
クリニックのリフォーム実績が豊富で、専門的な設計要件を熟知している業者に依頼するようにしましょう。
詳しくは、以下の動画をご覧ください。
的確な資金計画を立てたうえでリフォームをする
特に全面リフォームの場合は、莫大な費用が必要となります。
また、解体後に予期せぬ設備の劣化が見つかるなど、想定外の追加工事によって費用が見積もりよりも膨らむことがあります。
工事期間中の休診に伴う減収分の運転資金も確保しておく必要があります。
自己資金と金融機関からの融資のバランスを考慮し、余裕を持った資金計画を立てましょう。
後述する税務上の減価償却の観点からも、リフォームの検討段階から医院・クリニックの税務に強い税理士に相談することをおすすめします。
法的な規制による影響がないか確認すること
クリニックの内装設計には、医療法をはじめ、建築基準法、消防法、バリアフリー法など、様々な法的な規制が密接に関わってきます。
例えば、診察室や待合室には医療法で定められた面積要件があります。
また、入居するビルの用途や面積によっては、建築基準法や消防法に基づく厳格な防火区画・排煙設備の設置が義務付けられます。
これらの基準を満たすために、リフォーム費用が変動することもあり得ます。
事前の設計段階で、リフォーム業者によく確認するようにしましょう。
クリニックのリフォーム費用の税務処理について

最後に、クリニックのリフォーム費用に関する税務処理についてお伝えします。
リフォーム費用は、全額をその年の経費として一括で落とせるわけではありません。
税務上、修繕費として一括計上できる場合と、資本的支出として資産計上して減価償却しなければならない場合に分かれます。
資本的支出については、建物の内装・構造部分と建物附属設備で分けて整理するといいでしょう。
修繕費と資本的支出の違い
修繕費は、建物の通常の維持管理や、壊れた部分を元の状態に戻すための支出です。
国税庁の通達によると、次の支出は、資本的支出ではなく修繕費として認められます。
- ・20万円未満の支出であること(法人税基本通達7-8-3)
- ・修理、改良等の周期が概ね3年未満の工事であること(法人税基本通達7-8-3)
- ・修繕費か資本的支出か不明な場合は、60万円の支出か前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下の支出であること(法人税基本通達7-8-4)
- ・被災資産の原状回復をするために支出した費用(法人税基本通達7-8-6)
例えば、次のようなものは、基本的に修繕費にあてはまります。
- ・経年劣化した待合室の壁紙の張替
- ・雨漏りの修理
- ・故障した蛍光灯の交換
一方で、資産の使用可能期間を延長させたり、資産価値を高めたりする部分の支出は資本的支出とされ、資産計上のうえ減価償却しなければいけません。
例えば、次のようなリフォーム内容は資本的支出となります。
- ・待合室を広げるための間取り、レイアウト変更
- ・完全バリアフリー化対応
- ・より高機能な換気システムの導入
修繕費と資本的支出の判定フローは次のようになります。

※国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定」より抜粋
クリニックのリフォーム工事は、現状の改善や機能向上を伴うことが多く、税務上は資本的支出としてみなされることが多い傾向にあります。
資本的支出(建物の内装・構造部分)の減価償却の考え方
壁、床、天井の仕上げ、固定された仕切りの追加など建物の構造を形成する部分は、建物に近い資産とみなされます。
戸建て物件など自己所有物件であれば、建物本体に含めて次のように耐用年数を考えます。
| 木造・合成樹脂造のもの | 17年 |
| 木骨モルタル造のもの | 15年 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの | 39年 |
| れんが造・石造・ブロック造のもの | 36年 |
| 金属造のもの | 4㎜超:29年3㎜~4㎜:24年3㎜以下:17年 |
※国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」をもとに作成
一方、賃貸物件であれば「他人の建物に対する造作」として合理的な耐用年数で処理する必要があります。
もし、定期借家契約で入居して、更新もできない場合は、賃借期間を耐用年数として償却できます。
法人が建物を賃借し、その建物に造作した場合には、自己が所有している建物に対して行った資本的支出とは異なりその造作を一の資産として、その造作した建物の耐用年数およびその造作の種類・用途・使用材質等を勘案して合理的に耐用年数を見積もることとされています。
また、建物附属設備に造作した場合には、その建物附属設備の耐用年数により、その造作を償却します。
ただし、その造作した建物について賃借期間の定めがあり、その賃借期間の更新ができないもので、かつ、有益費の請求または買取請求をすることができないものについては、その賃借期間を耐用年数として、これらの造作を償却することができます。
※国税庁「No.5406 他人の建物に対する造作の耐用年数」より抜粋
例えば、10年の定期借家契約であれば、耐用年数も10年になります。
資本的支出(建物附属設備)の減価償却の考え方
建物の構造を形成するものではない設備に対する資本的支出は、建物附属設備として耐用年数を適用します。
例えば、電気配線、照明、受配電設備、給排水・衛生設備・ガス設備などが該当しますが、いずれも耐用年数は15年となります(蓄電池電源設備は6年)。
なお、医療機器の耐用年数については、以下の記事を参考にしてください。
【まとめ】的確な資金計画と専門家のサポートで理想のリフォーム工事を実施する
クリニックのリフォームは、単なる老朽化対策ではなく、患者さんの満足度向上やスタッフの業務効率改善に向けた重要な投資でもあります。
リフォームの目的を明確にし、クリニック設計の実績が豊富な専門業者と相談して、理想的なリフォーム工事を実現しましょう。
また、リフォーム工事の資金計画や、税務面の詳細については、顧問税理士に相談しながら進めるようにしてください。
クリニックの内装・レイアウト設計の詳細なポイントについては、以下の記事を参考にしてください。
本記事を最後までご覧いただきありがとうございました。


監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。


