院内処方と院外処方の違いやメリット・デメリットを詳細解説

公開日:2026年4月10日
更新日:2026年4月10日

新規開業する医院・クリニックの薬の処方方法を、院内処方にするか院外処方にするか迷っている先生も多いでしょう。

現在、多くの医院・クリニックでは調剤薬局で薬を受け取る院外処方を選択しており、昔に比べると院内処方は減っています。

しかし、なかには院内処方を選択している医院・クリニックも存在しています。

立地条件や、患者さんの属性によっても選択肢は変わるので、院外処方が主流と言っても、どちらが自院に有利かは検討した方がいいでしょう。

そこで、今回は院内処方と院外処方の違いやメリット・デメリットについてお伝えします。

院内処方と院外処方の違い

院内処方は、医師が診察した後に自院の中で薬剤を調剤し、患者さんに直接薬を手渡す方法です。

一方、院外処方は、医師が処方箋を発行し、患者さんはそれを持って外部の調剤薬局へ行き、薬剤師から薬を受け取る方法です。いわゆる医薬分業と言われるものです。

院内処方と院外処方の違いについては、以下のようになります。

院内処方院外処方
薬の受け渡し医院・クリニック内の窓口調剤薬局
医院の報酬薬価差益処方箋料
医院の支出薬剤購入費、薬剤師の人件費、調剤機器費、固定費など直接的なコストはほぼ不要
在庫リスクありなし
必要なスペース調剤室・薬剤保管スペースが必要不要
患者さんの自己負担額比較的安い比較的高い
医院・クリニックの割合20%程度80%程度

上表のように、院内処方と院外処方は、薬の受け渡しの方法だけでなく、収益構造に大きな違いがあります。

院内処方、院外処方の収益の計算式は、次の通りです。

院内処方の収益

=薬剤請求単価-薬剤購入費-(薬剤師の人件費+調剤機器費+その他固定費)
=薬価差益-(薬剤師の人件費+調剤機器費+その他固定費)

院外処方の収益
=処方箋料-院外処方にかかる事務コスト

収入面において、院内処方では、患者さんが支払う薬代と薬の仕入れ価格の差額となる薬価差益が大きな収入源となります。

一方、院外処方の場合は処方箋料が主な収入です。

診療報酬点数で見ると、院外処方における処方箋料の方が、院内処方における処方料より高く設定されています。

支出面では、院内処方は薬剤の仕入れが発生しますし、薬剤師の人件費、調剤関連機器の費用、必要な保管・調剤スペースによる固定費が発生します。

一方で、院外処方については、これらの支出が不要になります。

院外処方の医院・クリニックが多数を占める理由

※日本薬剤師会「医薬分業進捗状況(保険調剤の動向)」をもとに作成

かつては「薬は病院でもらうもの(院内処方)」が当たり前でしたが、現在は街中に調剤薬局が立ち並び、院外処方が主流となっています。

日本薬剤師会が公表している「医薬分業進捗状況(保険調剤の動向)」によれば、1986年の処方箋受取率は上図のように全体の9.7%でした。

つまり、院外処方は10院に1院程度で、残り9院は院内処方だったのです。

しかし、1997年に当時の厚生省(現・厚生労働省)が、37のモデル国立病院に対して「完全分業(院外処方箋受取率70%以上)」を指示したことで、院外処方が急速に増えました。

2024年時点では、国内の医療機関の82.4%が院外処方となっており、現在の主流となっています。

実際、収益の構造上、今は院外処方を選ぶメリットの方が大きくなっています。

昔は薬価差益が大きく、院内処方で薬を出せば出すほどクリニックの利益になっていました。

しかし、今は薬価の引き下げやジェネリック医薬品の普及により、薬価差益で利益を得ることが難しくなっています。

しかも、院内処方は薬剤の仕入れ費用だけでなく、人件費、機器代、在庫廃棄リスクなどのコストがのしかかります。

そうなると、院内処方で利益を残すことは難しいため、経営メリットが大きい院外処方へ移行するクリニックが多数を占めるようになりました。

それでも、現在も20%弱の医院・クリニックは院内処方を選択していることも事実です。

後述するように、院内処方にも患者さんにとって利便性が良く、患者満足度が高くなるというメリットがあるからです。

高齢者や体調の悪い患者さんにとって、診察後に別の薬局へ移動し、再び待ち時間を過ごして会計をするのは大きな負担となります。

特に調剤薬局が近くに少ない立地では、患者さんが遠くの薬局に行かないといけないことも想定されます。

そのため、院外処方が必ずしも良いというわけではなく、立地条件や患者さんの属性から判断することが大切になります。

院内処方のメリット・デメリット

現在では少数派になった院内処方ですが、次のようにデメリットだけでなくメリットもあります。

【メリット①】患者さん側の自己負担額が小さくなる

院内処方の方が、診療報酬点数が低いということは、患者さんにとっては自己負担額が少なくなるということになります。

同じ薬を処方されるにしても、患者さんにとっては自己負担額が少ない方が圧倒的にメリットは大きくなります。

【メリット②】患者さん側が薬局に行く手間が省ける

診察が終わった後、そのままクリニックの受付で薬を受け取って帰宅できます。

体調不良の患者さん、小さな子ども連れの親御さん、足元の悪い高齢の患者さんにとって、移動や二重の待ち時間が発生しないことは負担軽減になります。

自己負担額が少なく、移動や待ち時間が少ないのであれば、患者さんは院内処方のクリニックを選びたくなるでしょう。

【メリット③】医師・看護師と薬剤師が連携を取りやすい

院内処方の場合は、薬剤師が医師や看護師とすぐにコミュニケーションが取れるため、スムーズな連携ができます。

診察後、患者さんから「あの薬も追加してほしい」「やっぱり〇日分欲しい」などと要望された場合も、院内処方であればスムーズに対応できます。

【デメリット①】薬剤師の人件費や調剤関連機器のコストがかかる

先述の通り、院内処方に関する経営面での最大のデメリットはコストです。

薬剤師を雇用すれば人件費がかかり、調剤関連機器の導入・維持費も必要になります。

【デメリット②】医院・クリニック側が在庫リスクを負う

薬には使用期限があります。

在庫回転率の悪い薬が期限切れになってしまえば廃棄となり、そのままクリニックの損失となります。

過剰在庫による金銭的リスクを背負うことは避けられません。

逆に、在庫にないために患者さんに適切な薬を処方できないことも懸念されます。

こまめに在庫や使用期限の管理を行い、在庫リスクを抑えつつ適宜発注しなければいけません。

【デメリット③】調剤や薬剤保管のスペースが必要になる

新規開業クリニックの設計段階から、調剤室や薬剤を保管するための一定のスペースを確保しなければなりません。

調剤や薬剤保管のスペースを考慮した物件探しや内装の設計が必要となり、開業時の初期資金が増えたり、家賃が高くなったりすることになります。

都市部のテナント開業などで面積が限られている場合、待合室や診察室のスペースを削って調剤室を作らないといけないこともあります。

【デメリット④】薬の選択肢が限定されやすい

調剤薬局は、様々な医院・クリニックの処方箋に対応するため、先発・ジェネリック医薬品含めて薬の種類が豊富です。

調剤薬局に比べると、院内処方では、無数にある薬剤をすべて院内に在庫することはできません。

そのため、どうしても在庫が限られることになり、患者さんの希望通りに処方できない可能性があります。

院外処方のメリット・デメリット

次に、現在主流となっている院外処方のメリット・デメリットをお伝えします。

近くに調剤薬局が何軒もある場合は、基本的に院外処方を選択することで問題ないでしょう。

【メリット①】収支面で有利になる

院外処方は、薬剤の仕入れ費用、調剤に関する機器費用やスペース、そして薬剤師の人件費が不要になり、在庫リスクもありません。

診療報酬点数も院内処方より高めなので、収支面を考えたら院外処方の方が有利になります。

【メリット②】医師・薬剤師のダブルチェックでミスを防止しやすい

医薬分業の目的の1つは、医師が処方箋を発行し、外部の薬剤師がそれを確認して調剤することです。

「かかりつけ薬局」において薬歴管理を行うことにより、複数診療科受診による重複投薬、相互作用の有無の確認などができ、薬物療法の有効性・安全性が向上すること。

厚生労働省「医薬分業」より抜粋

たとえば、処方箋に用量の記載ミスや、他の医療機関で出されている薬との禁忌(飲み合わせの悪さ)があった場合、薬局の薬剤師がチェックすることができます。

院内処方ほど即座の連携は難しいかもしれませんが、ダブルチェック機能を通じて医療事故を防ぐことができます。

【メリット③】薬剤師による服薬指導を受けやすい

調剤薬局では、薬剤師が時間をかけて丁寧に薬の飲み方や注意点を説明してくれます。

そのため、患者さんの適切な服薬につながります。

【デメリット①】患者さん側の手間や自己負担額が増える

院内処方のメリットの裏返しとなりますが、患者さんは医院・クリニックと薬局の2ヶ所に足を運ぶ必要があり、待ち時間も2回発生します。

また、院外処方は院内処方より診療報酬点数が高いため、患者さんの経済的負担も増加します。

【デメリット②】調剤薬局と連携しやすい立地を選び関係構築する必要がある

院外処方を円滑に行うためには、クリニックの近くに調剤薬局が存在することが必須となります。

開業物件を探す際、近くに薬局を誘致できるか、あるいは既存の薬局と距離が近く、良好な連携が取れるかどうかを確認する必要があります。

院内処方と院外処方どちらを選択するべきか?

基本的に経営面で考えた場合、院内処方ではなく収支で有利になる院外処方を選択すべきケースが大半となります。

一方で、院内処方を絶対に選択してはいけないということでもありません。

たとえば、次の場合は、患者さんの利便性を第一に考えて院内処方の方が向いていることもあります。

・高齢者が極めて多い地域で医院開業する場合
・僻地など近くに調剤薬局を誘致できない立地で医院開業する場合
・多忙なビジネスマンが多いオフィス街で医院開業する場合

立地条件や患者さんの属性を踏まえ、医院開業に強い専門家によく相談するようにしましょう。

【Q&A】薬の処方方法でよくある質問

最後に、薬の処方方法でよくある質問についてお答えします。

院内処方と院外処方の併用は可能か?

原則として、同一の患者さんに対して、同じ日に院内処方と院外処方を併用することはできません。

Q1 同一日に同じ患者に対して、一部の薬剤を院内で、他の薬剤を処方せんで投薬することができるのか。
A1 原則として認められていません。ただし、緊急やむを得ない場合に限り、同一日の院内処方と院外処方の併用が認められています。
「緊急やむを得ない場合」とは下記のようなケースが考えられます。
(1)院外処方せんを交付した患者に対して、急性増悪等により緊急に投薬の必要性を認めて臨時に院内で投与した場合。
(2)院外処方せんを交付した患者が同一日に急病等で再度受診した時に、調剤薬局が営業時間外等であることから臨時に院内で投薬した場合。
ただし、この場合は処方せん料と院内投薬に係る薬剤料のみを算定し、処方料、調剤料及び調剤技術基本料は算定できません。
また、レセプトの摘要欄に、その日付と理由を記載する必要があります。

Q2 同一の患者であっても、同一診療日でなければ院内処方した日と院外処方せんを交付した日が混在してもよいのか。
A2 同じ患者であっても、診療日が違えば院外処方と院内処方が混在しても差し支えありません。

兵庫県保健医協会「保険請求Q&A」より抜粋

ただし、上記のように、緊急事態が起これば併用が認められることもありますが、処方料(院内処方)と処方箋料(院外処方)を二重算定することはできません。

レセプトの摘要欄に、日付と理由を記載するようにしてください。

なお、同一診療日でなければ、同じ患者さんに対して院内処方と院外処方が混在することは問題ありません。

院内処方で薬剤師がいなくても大丈夫か?

原則、薬剤師でなければ薬の調剤はできません。

しかし、医師自身が調剤を行う場合に限り、薬剤師がいなくても院内処方を行っても大丈夫です。

【薬剤師法第19条】
薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方箋により自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方箋により自ら調剤するときは、この限りでない。

医師が自らの責任のもとで直接調剤し、患者さんに投薬するのであれば問題ありません。

【まとめ】院外処方を選択することが大半だが院内処方が向いているケースもある

現在主流となっている院外処方は、院内処方に比べて収支で有利になりますし、医薬分業の考え方にも沿った方法です。

薬価差益が大きかった昔に比べれば、院内処方のメリットはかなり低く、現在は約80%の医院・クリニックが院外処方です。

しかし、近くに調剤薬局を誘致できない場合など、院内処方が適しているケースもあります。

新規医院開業の際は、基本的には院外処方をベースに考えつつ、立地条件や患者さんの属性で迷うことがあれば専門家に相談するようにしましょう。

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笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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