在宅自己注射指導管理料の診療報酬点数と算定要件などを詳細解説


特定の診療行為や処置が必要な、在宅療養中の患者さんに対して指導管理を行った場合、在宅療養指導管理料という診療報酬を算定できることがあります。
在宅療養指導管理料には様々ありますが、その中の1つが在宅自己注射指導管理料です。
在宅自己注射指導管理料とは、簡単に言えば「患者さんご自身で注射ができるように指導する際に発生する診療報酬」です。
今回は、在宅自己注射指導管理料について詳しく解説するので、特に糖尿病内科の先生などは、最後までご覧ください。
在宅自己注射指導管理料とは?

在宅自己注射指導管理料とは、自分で注射する必要がある在宅療養中の患者さんに対して指導・管理を行った場合に、月に1回に限り算定できる診療報酬です。
ただし、厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射であることが条件となります。
⇒厚生労働省「在宅自己注射指導管理料の主な対象薬剤、注射頻度及び効果・効能等 」
以下に、在宅自己注射指導管理料の診療報酬点数や算定要件についてお伝えします。
在宅自己注射指導管理料の診療報酬点数
在宅自己注射指導管理料の診療報酬点数は、次の通りです。
【診療報酬点数(令和6年改定準拠)】
診療報酬点数 | オンライン診療の場合 | ||
1 | 複雑な場合 | 1,230点 | 1,070点 |
2(1以外の場合) | 月27回以下の場合 | 650点 | 566点 |
月28回以上の場合 | 750点 | 653点 |
【主な加算】
導入初期加算 | ①初回の指導を行った日の属する月から起算して3月以内の期間に当該指導管理を行った場合 ②処方の内容に変更があった場合には、①にかかわらず、当該指導を行った日の属する月から起算して1月を限度として、1回に限り導入初期加算を算定できる | 580点 |
バイオ後続品導入初期加算 | バイオ後続品に係る説明を行い、バイオ後続品を処方した場合 | 150点 |
※「診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 」令和6年 厚生労働省告示第57号別表第一 P152~153を元に作成
ここで、複雑な場合とは、間歇注入シリンジポンプを用いて在宅自己注射を行う患者に対して、ポンプの状態、投与量等について確認・調整等を行った場合を指します。
プログラムの変更に係る費用は所定点数に含まれます。
※参考:「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 」令和6年3月5日保医発0305第4 別添第一 P272
導入初期加算については、上記にあるように、処方の内容に変更があった場合には、通常の規定に加えて1プラスして加算することができます。
しかし、指定の薬剤に変更した場合に限ることに注意してください。
在宅自己注射指導管理料の算定要件
在宅自己注射指導管理料を算定するには、以下の算定要件を満たす必要があります。
ア 在宅自己注射に係る指導管理は、当該在宅自己注射指導管理料の算定の対象である注射薬の適応となる疾患の患者に対する診療を日常の診療において行っており、十分な経験を有する医師が行う。
イ 在宅自己注射の導入前には、入院又は週2回若しくは3回以上の外来、往診若しくは訪問診療により、医師による十分な教育期間を取り、十分な指導を行う。
ウ かかりつけ医師と異なる医師が在宅自己注射に係る指導管理を行う場合には、緊急時の対応等について当該かかりつけ医師とも十分な連携を図る。
エ 在宅自己注射の実施に伴う廃棄物の適切な処理方法等についても、併せて指導を行う。
※厚生労働省「在宅自己注射指導管理料について」より抜粋
上記の「十分な指導」とは、具体的には次のことが求められます。
口頭、実技で指導する | 入院または2回以上の外来、往診もしくは訪問診療により、医師による十分な教育期間をとり、十分な指導を行うこと。ただし、アドレナリン製剤については、この限りではない。 |
指導内容を文書で交付する | 自己注射の目的、実施方法、注意点を詳細に記載した文書を患者に交付すること。 |
※参考:「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 」令和6年3月5日保医発0305第4 別添第一 P272
なお、以下の薬剤については、在宅自己注射指導管理料の算定に条件があるので注意してください。
インターフェロンベータ製剤 | 多発性硬化症に対して用いた場合に限り算定する。 |
インターフェロンアルファ製剤 | C型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善(血中HCV RNA量が高い場合を除く。)を目的として単独投与に用いた場合、C型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善(セログループ1の血中HCV RNA量が高い場合を除く。)を目的として単独投与に用いた場合、HBe抗原陽性でかつDNAポリメラーゼ陽性のB型慢性活動性肝炎のウイルス血症の改善を目的として単独投与に用いた場合及びHTLV-1関連脊髄症(HAM)に対して用いた場合に限り算定する。なお、ペグインターフェロンアルファ製剤については算定できない。 |
グリチルリチン酸モノアンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩配合剤 | 慢性肝疾患における肝機能異常の改善に対して用い、在宅自己注射での静脈内投与について十分な経験を有する患者であって、医師により必要な指導を受けた場合に限り算定する。 |
顆粒球コロニー形成刺激因子製剤 | 再生不良性貧血及び先天性好中球減少症の患者に対して用いた場合に限り算定する。 |
アドレナリン製剤 | 蜂毒、食物及び毒物等に起因するアナフィラキシーの既往のある患者又はアナフィラキシーを発現する危険性の高い患者に対して、定量自動注射器を緊急補助的治療として用いた場合に限り算定する。 |
トシリズマブ製剤 | 皮下注射により用いた場合に限り算定する。 |
アバタセプト製剤 | 皮下注射により用いた場合に限り算定する。 |
ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム製剤 | 急性副腎皮質機能不全(副腎クリーゼ)の既往のある患者又は急性副腎皮質機能不全(副腎クリーゼ)を発症する危険性の高い患者に対して、筋肉内注射により用いた場合に限り算定する。 |
※参考:「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 」令和6年3月5日保医発0305第4 別添第一 P271~273
在宅自己注射指導管理料と一緒に算定できる5つの加算

在宅自己注射指導管理料を算定する際、一緒に算定できる次の加算があります。
⇒参考:「診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 」令和6年 厚生労働省告示第57号別表第一 P156~158
血糖自己測定器加算
インスリン治療中の糖尿病患者さんなどが、血糖自己測定器や穿刺器、穿刺器具、血糖試験紙などの費用を評価する加算です。
1 | 月20回以上測定 | 350点 |
2 | 月30回以上測定 | 465点 |
3 | 月40回以上測定 | 580点 |
4 | 月60回以上測定 | 830点 |
5 | 月90回以上測定 | 1,170点 |
6 | 月120回以上測定 | 1,490点 |
7 | 間歇スキャン式持続血糖測定器によるもの | 1,250点 |
【算定要件】
・1から4までについては、入院中の患者以外の患者であって次に掲げるものに対して、血糖自己測定値に基づく指導を行うため血糖自己測定器を使用した場合に、3月に3回に限り、第1款の所定点数に加算する。
イ インスリン製剤又はヒトソマトメジンC製剤の自己注射を1日に1回以上行っている患者(1型糖尿病の患者及び膵すい全摘後の患者を除く。)
ロ インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っている患者(1型糖尿病の患者又は膵すい全摘後の患者に限る。)
ハ 12歳未満の小児低血糖症の患者
ニ 妊娠中の糖尿病患者又は妊娠糖尿病の患者(別に厚生労働大臣が定める者に限る。)・5及び6については、入院中の患者以外の患者であって次に掲げるものに対して、血糖自己測定値に基づく指導を行うため、血糖自己測定器を使用した場合に、3月に3回に限り、第1款の所定点数に加算する。
イ インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っている患者(1型糖尿病の患者又は膵すい全摘後の患者に限る。)
ロ 12歳未満の小児低血糖症の患者
ハ 妊娠中の糖尿病患者又は妊娠糖尿病の患者(別に厚生労働大臣が定める者に限る。)・7については、インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っている入院中の患者以外の患者に対して、血糖自己測定値に基づく指導を行うため、間歇スキャン式持続血糖測定器を使用した場合に、3月に3回に限り、第1款の所定点数に加算する。
・SGLT2阻害薬を服用している1型糖尿病の患者に対して、血中ケトン体自己測定器を使用した場合は、血中ケトン体自己測定器加算として、3月に3回に限り、40点を更に第1款の所定点数に加算する。
注入器加算
注入器加算は、厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている在宅療養中の患者さんに対して、注入器を処方した場合に300点が加算されます。
間歇注入シリンジポンプ加算
厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている在宅療養中の患者さんに対して、間歇注入シリンジポンプを使用した場合に、2月に2回に限り次の点数を加算します。
1 | プログラム付きシリンジポンプ | 2,500点 |
2 | 1以外のシリンジポンプ | 1,500点 |
持続血糖測定器加算
持続血糖測定器加算とは、糖尿病患者が持続血糖測定器を使用して血糖値を測定する際に、一定の条件を満たした場合に算定できる診療報酬上の加算です。
間歇注入シリンジポンプと連動する持続血糖測定器を用いる場合 | |
イ 2個以下 | 1,320点 |
ロ 3個または4個 | 2,640点 |
ハ 5個以上 | 3,300点 |
間歇注入シリンジポンプと連動しない持続血糖測定器を用いる場合 | |
イ 2個以下 | 1,320点 |
ロ 3個または4個 | 2,640点 |
ハ 5個以上 | 3,300点 |
【算定要件】
・別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、別に厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている入院中の患者以外の患者に対して、持続血糖測定器を使用した場合に、2月に2回に限り、第1款の所定点数に加算する。
・当該患者に対して、プログラム付きシリンジポンプ又はプログラム付きシリンジポンプ以外のシリンジポンプを用いて、トランスミッターを使用した場合は、2月に2回に限り、第1款の所定点数にそれぞれ3,230点又は2,230点を加算する。ただし、この場合において、区分番号C152に掲げる間歇注入シリンジポンプ加算は算定できない。
注入器用注射針加算
注入器用注射針加算は、別に厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている在宅療養中の患者さんに対して、注入器用注射針を処方した場合に、次の点数が加算されます。
1 | 治療上の必要があって、1型糖尿病若しくは血友病の患者又はこれらの患者に準ずる状態にある患者に対して処方した場合 | 200点 |
2 | 1以外の場合 | 130点 |
【まとめ】糖尿病内科のクリニックは在宅自己注射指導管理料について押さえておく
在宅自己注射指導管理料についてお伝えしました。
在宅自己注射指導管理料は、在宅で自己注射をしている糖尿病などの患者さんに対して算定します。
糖尿病内科の先生であれば、算定する可能性が高いので、押さえておきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。


監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。