医師賠償責任保険(医賠責保険)とは?勤務医・開業医の必要性や主な種類

公開日:2025年3月10日
更新日:2025年3月12日

医師賠償責任保険(医賠責保険)は、医療事故等が原因で患者さんが死亡もしくは障害を持った場合に発生する損害賠償責任を補償する保険です。

自動車を持っている人の大半が任意保険に入るように、医師の大半は医師賠償責任保険に加入していると思います。

ただ、勤務医の先生と開業医の先生では医師賠償責任保険の必要性が変わってくるので、医院開業時は見直しが必要になることが大半です。

医師賠償責任保険の主な2つの機能

医師賠償責任保険については、主に次の2つの機能があり、別々で考える必要があります。

・医療事故で医師個人が訴えられた場合に備える補償

・開設者・管理者としての賠償責任に備える補償

具体的には、後者の「開設者・管理者としての賠償責任に備える補償」は勤務医の先生であれば不要ですが、開業医の先生には必要な補償となります。

以下、具体的にお伝えします。

【勤務医・開業医に必要】医療事故で医師個人が訴えられた場合に備える補償

医師賠償責任保険の1つ目の機能が、先生ご自身が万が一医療事故を起こして、患者さんが死亡したり障害を負ったりした際の損害賠償を補填することです。

この機能については、勤務医、開業医に関わらず、ほとんどの先生が、すでに加入済の医師賠償責任保険でカバーされているはずです。

特に医師会に加入している先生であれば、日本医師会医師賠償責任保険に強制加入となっています。

日本医師会医師賠償責任保険に加入していれば、100万円を超える損害賠償については補填の対象となります。

【開業医向け】開設者・管理者としての賠償責任に備える補償

勤務医の先生であれば、医療事故によって個人的に訴えられた場合に備えるだけで十分です。

しかし、開業医の先生であれば先生個人の医療事故だけでなく、開設者・管理者としての責任も負うことになります。

具体的には、自分が雇っている医師の医療事故や、建物や設備の不備が原因で患者さんに病気やケガを負わせてしまった場合です。

例えば、濡れた床で患者さんが滑って転んでケガをして訴えられた場合です。

医院開業したら、開設者・管理者としての賠償責任に備える必要が出てくるので、医師賠償責任保険の内容の見直しが必要となります。

なお、よく「労災給付の補填として医師賠償責任保険は使えないのか?」という質問がありますが、使うことはできません。

医師賠償責任保険はあくまで患者さんに被害が生じた場合に備える保険であるため、スタッフの被害には対応していないのです。

労災についての詳細は、以下の記事をご覧ください。

開業医の先生が最低限知りたい医師・看護師の労災の知識と事例

診療科目によりますが、開業医の先生にとって、労災という言葉は意外と身近なものでしょう。 労災によるケガや病気でやってきた患者さんの対応をすることがあるからです。…

医師賠償責任保険の種類

以上のことを踏まえて、医師賠償責任保険の主な種類について解説します。

勤務医の先生、開業医の先生で必要性が大きく変わる点に注意して選ぶようにしましょう。

【日本医師会加入者は原則加入】日本医師会医師賠償責任保険制度

先ほどもお伝えしたように、勤務医・開業医関係なく日本医師会加入者が原則的に強制加入となるのが、日本医師会医師賠償責任保険制度です。

対象となる事故医療行為によって生じた身体の障害につき100万円以上の損害賠償を請求された場合
支払限度額1事故1億円、保険期間中3億円
免責金額1事故100万円

【参考】日本医師会「日本医師会医師賠償責任保険制度 」

日本医師会医師賠償責任保険制度で注意したい点は、次の通りです。

・医師個人が損害賠償を請求された際の保険であり、開設者・管理者としての賠償責任に備える保険ではないこと
・100万円以下の賠償責任は、自分で負担しなければいけないこと
・美容を主たる目的とする医療行為には適用されないこと(※)
・名誉毀損や秘密漏洩に起因して生じた賠償責任には適用されないこと(※)
・海外での医療行為によって生じた賠償責任には適用されないこと(※)

「日本医師会 医師賠償責任保険制度 ハンドブック 」P14参照

特に開設者・管理者としての賠償責任に備えたい場合は、日医医賠責特約保険などの加入を検討した方が良いでしょう。

なお、日本医師会医師賠償責任保険制度は日本医師会に加入すれば、個人手続きなしで加入できます。

特に、病院・診療所の開設者、管理者及びそれに準ずる会員(A①会員)であれば、基本的に加入です。

A①会員以外の、A②(B)、A②(C)会員(研修医)に該当する方は、申請することで日本医師会医師賠償責任保険から除外可能です。

日本医師会Webサイト より抜粋

上記のように、医師賠償責任保険から除外すると、医師会の年会費はかなり安くなります。

【日本医師会加入の開業医向け】日医医賠責特約保険

開業医の先生は、日本医師会医師賠償責任保険制度だけでなく、任意加入となる日医医賠責特約保険も検討の余地があります。

具体的には、次の損害賠償に備えたい先生向きの保険となります。

・開設者・管理者としての賠償責任にも備えたい
・法人の責任部分にも備えたい(99床以下の法人立病院と法人立診療所)
・日本医師会医師賠償責任保険制度以上に高額賠償事例に備えたい(1事故3億円、保険期間中9億円まで)

詳細は、日本医師会のWebサイトを確認するようにしてください。

⇒⇒⇒日本医師会「日医医賠責特約保険の内容 」

地区医師会で加入できる保険

地区医師会によっては、日本医師会医師賠償責任保険制度の100万円の免責をカバーしたり、開設者・管理者責任による賠償請求に対応したりしています。 例えば東京都医師会では、次のような医療上の事故や、建物・設備の使用管理上の事故に対応しています。

東京都医師会「医師賠償責任保険のご案内 」より抜粋

さらに、情報漏えいリスクに加え、医療機関がサイバー攻撃等を受けたことによって負う関連先に対する賠償責任であるサイバー保険などにも対応しています。

保険制度の有無や制度内容は、地区医師会によって違うので、特に開業医の先生は各自で確認するようにしてください。

医師会未加入勤務医向けの医師賠償責任保険

最近は医師会未加入の先生も増えています。

医師会に未加入の勤務医の先生であれば、医師会以外の医師賠償責任保険の加入を考えておく必要があります。

民間の損害保険会社でも、勤務医向きの勤務医師賠償責任保険 があったりします。

職場内の個人的な医療事故はもちろん、直接指揮監督下にある看護師による医療事故や、出張診療中の医療事故にも対応しています。

また、学会によって勤務医向けの医師賠償責任保険を用意していることもあるので、所属学会に確認しておくのもいいでしょう。

医師会未加入開業医向けの医師賠償責任保険

医師会未加入の開業医の先生に向けた医師賠償責任保険も存在します。

民間の損害保険会社による、病院の開設者である医療法人または個人開業医の先生に向けた診療所・病院賠償責任保険商品があったりします。

個人的な医療事故に加えて、医療施設の不備などにより賠償責任にも対応しています。

また、学会や医師共同組合などが提供するような団体保険に加入するという手もあります。

勤務医賠償責任保険と同様、保険料や補償内容などはまちまちなので、詳しいことは医師賠償責任保険に詳しい専門家に聞いてみるのも良いでしょう。

特に勤務医を雇用している先生は、勤務医が起こした医療事故も補償の対象になるかどうかよく確認することが大切です。

【まとめ】医院開業した先生は医師賠償責任保険の見直しを

以上、医師賠償責任保険についてお伝えしました。

医師賠償責任保険については、勤務医の先生と開業医の先生で必要性が大きく変わってきます。

医院開業した先生は、医師賠償責任保険の見直しを検討することが必須となります。

また、医院開業すると、火災保険や団体信用生命保険など見直した方が良い保険も出てくるので、併せて検討した方が良いでしょう。

詳細は以下の記事をご覧ください。

最後までご覧いただきありがとうございました。

開業医が加入・見直ししたい7つの保険|リスクに備える

勤務医時代から生命保険や火災保険に加入している先生は多いですが、開業医になると見直しが必要になることが多いです。 開業医になると、勤務医時代にはなかった様々なリ…

笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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