【クリニックの口コミ対策】悪評の対処法や良い評価を集めるポイント・注意点を詳細解説
医院・クリニックのインターネット上の口コミは、集患対策や求人採用に大きく関わります。
例えば、集患対策でMEO対策(Google Mapsで上位表示させるための対策)を施して、Google Mapsの口コミを集めている医院・クリニックは多いでしょう。
良い評判を集める際は、医療広告規制に注意しながら、患者さんから自然と良い評価が集まるようにしていくことが大切です。
しかし、逆に患者さんや怨恨退職したスタッフから悪い口コミが書かれてしまい、集患対策や求人採用で悪影響が出てくることがあります。
そこで、本記事では悪評の対処法や、良い評価を集めるポイント・注意点について解説します。
クリニックの口コミ対策が気になっている先生は、最後までご覧ください。
クリニックの悪い口コミが書き込まれた場合の対処法
医院・クリニックに何らかの恨みを持った患者さんや退職したスタッフから、次のような媒体で様々な誹謗中傷の書き込みが行われるケースがあります。
怨念が強い患者さんや退職者ほど、様々な媒体に書き込みを行います。
・Google Maps
・EPARKなどのポータルサイト
・求人サイト
・2ちゃんねるなどの掲示板サイト
・医院・クリニックのSNSのコメント欄
・医院・クリニックのホームページやブログのコメント欄
・患者さんや退職者の個人アカウントによるSNSやブログ
上記のような媒体で悪行を書き込まれた際の対処法は、大きく分けて次の2点です。
悪い口コミを削除できなければ誠実な返信をする
上記の媒体のうち、医院アカウントによるSNSやホームページ、ブログを除けば、基本的には医院・クリニックが自ら書き込みを削除することはできません。
このなかで最も悪評を書き込まれやすいGoogle Mapsについても同様です。
MEO対策で上位表示している医院・クリニックほどGoogle検索すればすぐに見つかるので、怨念を持つ患者さんや退職者が悪評を書き込んできます。
一応、Googleに「不適切な口コミ」として報告し、削除依頼をすることはできますが、必ずしも該当する口コミが削除されるとは限りません。
Googleとしては、勝手な口コミ削除や偽装口コミの投稿など情報操作をされると信用に関わるため、ポリシー違反と判断されなければ削除されないのです。
ただし、Google Mapsの悪い口コミに対して院長先生自身で返信することはできます。
悪い口コミに対して誠実な返信をすることで、真摯に向き合っている医院・クリニックという良い印象をユーザーに与えることができます。
そうすれば、クリニックのイメージダウンを避けることは可能ですし、むしろ評価が上がる場合もあります。
悪い口コミがクリニック側の落ち度が原因である場合は、医院経営の改善に反映させて周知しましょう。
例えば「待ち時間が長い割には診察時間が短かった」という悪い口コミに対して、予約システムの改善に努めると言ったものです。
また、正しい主張であっても反論を書き込むことは避けましょう。 悪評を書き込んだ本人だけでなく、クリニックに関係のない第三者まで絡んできて炎上することがあります。
Google Mapsやポータルサイトに書き込まれた悪い口コミを保存する
悪い口コミに対して誠実な返信対応をする一方で、悪評のあるGoogle Mapsやポータルサイトの画面をプリントアウトするか、スクリーンショットで保存しましょう。
損害賠償の請求に備えるためです。
悪評が書き込まれた日時や内容は、悪評が書き込まれたサイトに削除依頼する際や、法的措置を取る際の事実証拠となります。
削除依頼の手続きは、各々のサイトに確認するようにしてください。
投稿削除の手続きがうまくできず、医院経営に悪影響が出そうであれば、インターネットの誹謗中傷に詳しい弁護士に相談しましょう。
事実無根の書き込みであれば、損害賠償を請求できるかもしれません。
悪評が広まり炎上が起きると収拾が付かない事態になることがあるので、早めに対応しておきましょう。
退職者による悪い口コミの書き込みを防ぐ4つの対策
患者さんの悪い口コミだけでなく、怨恨退職したスタッフの書き込みにも注意が必要です。
クリニックの内情に詳しい退職者の書き込みは、集患や求人採用、秘密情報の漏洩などに大きな影響を及ぼす厄介なケースが多いためです。
そこで、退職者による悪い口コミに対する防止策をいくつかお伝えします。
秘密保持契約書や誓約書を交わす
社内規程の整備によっても、退職者の悪評書き込みを防止することができます。
具体的には、スタッフの入職時に秘密保持契約書や誓約書を交わしておきましょう。
悪評によってクリニックの情報が漏洩した際、損害賠償を請求できる根拠にもなります。
円満退職を促す
退職者による悪い口コミを防ぐには、何と言っても円満退職を促すことが一番です。
悪評を書き込む退職者は、何か大きな不満を持っており怨念が強いケースが大半です。
問題スタッフに対しても気持ちよく円満退職してもらえば、悪評が書き込まれることはほとんどありません。
また、スタッフから退職を切り出された場合の対応次第でも、スタッフが円満に退職するか、怨念を抱くかが大きく変わります。
「経歴に傷が付くよ」と不安を煽ったり「お前はどこに行っても通用しない」と批判したりすると、悪い印象を持ったまま退職してしまいます。
引き止めるにしても、退職の理由をよく聞いて、スタッフが最適な選択ができるように努めてください。
スタッフが退職する判断をした場合は、感謝と応援の気持ちを込めて、気持ちよく送り出すようにしましょう。
院内全体でハラスメントを防止する
退職者のクリニックに対する悪評が増える背景には、セクハラ、パワハラ、マタハラなどのハラスメントが潜んでいることが多いです。
ハラスメントを解決しないまま被害を受けたスタッフが怨恨退職すると、ネット上の悪評だけでなく損害賠償を請求されるリスクがあります。
院長先生が気を付けても、他のベテランスタッフが若いスタッフにハラスメントを行っていることもあります。
セクハラ、パワハラ、マタハラともに、事業主に防止措置を講じることが義務づけられています。
離職率低減、労使間トラブルの防止の観点からも、ハラスメントについては、しっかり防止策を取っていきましょう。
残業代や賞与の未払いなど給与に関するトラブルを防ぐ
給与・福利厚生など待遇面の不満も、スタッフの怨恨退職の一因となります。
特に、残業代や賞与に関するトラブルは、比較的よく見られるケースなので、十分注意しましょう。
患者さんが医院・クリニックの良い口コミを投稿するのは医療広告規制上問題ないか?
Google Mapsやポータルサイトなどで、悪評を避けて患者さんから良い口コミを集めるには、日頃から患者満足度を上げることが一番です。
もちろん、後述するように患者さんに良い口コミを書いてもらうような施策も重要です。
しかし、その際は医療広告規制に注意する必要があります。 なお、医療広告規制の詳細については以下の記事を参考にしてください。
患者さんが自分の意思で良い口コミを投稿することはOK
患者さんが自分の意思で、Google Mapsやポータルサイト、SNSなどで良い口コミや体験談を投稿するのは問題ありません。
患者さんが自分で良い評価を投稿することは、医療広告規制上は何も問題がないためです。
【厚生労働省】医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 (医療広告ガイドライン、令和6年3月22日最終改正) では、「広告の定義」について、以下のように定めています。
①患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性)
②医業若しくは歯科医業を提供する者の使命若しくは名称または病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
①誘因性、もしくは②特定性が認められなければ、広告と定義されないため、医療広告規制の対象外となります。
このことを踏まえて、医療広告ガイドラインでは、「患者等が自ら掲載する体験談、手記等」は、医療に関する広告とは見なされないとされています。
自らや家族等からの伝聞により、実際の体験に基づいて、例えば、A病院を推薦する手記を個人Xが作成し、出版物やしおり等により公表した場合や口頭で評判を広める場合には、一見すると本指針第2の1に掲げた①及び②の要件を満たすが、この場合には、個人XがA病院を推薦したにすぎず、①の「誘引性」の要件を満たさないため広告とは見なさない。
本来、医療広告ガイドラインでは、医療広告で患者さんの体験談の記載することは禁止されています。
しかし、患者さんが自分の意思でクリニックの体験談を載せるのは、広告の要件を満たさないため問題ないということになります。
クリニックが謝礼を支払って良い口コミを書いてもらうのはNG
患者さんが自分の意思で良い口コミを書くのは問題ないのですが、クリニック側で謝礼を支払って良い口コミを書いてもらうことはNGです。
先に紹介した医療広告ガイドラインの記載には続きがあります。
ただし、A病院からの依頼に基づく手記であったり、A病院から金銭等の謝礼を受けている又はその約束がある場合には、①の「誘引性」を有するものとして扱うことが適当である。また、個人XがA病院の経営に関与する者の家族等である場合にも、病院の利益のためと認められる場合には、①の「誘引性」を有するものとして、扱うものであること。
つまり、クリニックが謝礼を支払って、口コミを書いてもらったり、SNS投稿を依頼したりすると、広告の要件を満たすことになります。
医療広告規制では体験談は禁止されているため、謝礼を支払い体験談に関することを書いてもらうことはできません。
これは、あらゆる媒体に該当します。
後述するように、患者さんに口コミを依頼することは問題ないのですが、謝礼を支払うようなことは避けましょう。
口コミや体験談を載せることを条件に、無料や格安モニターを募るようなケースも同様にNGです。
しかし、この場合も本来の治療費を差し引いた分は「報酬」とみなすことができるためです。
患者さんに良い口コミを書いてもらうための3つの対策
それでは、医療広告規制に注意するということを前提に、患者さんに良い口コミを書いてもらうための対策をお伝えします。
患者さんにGoogle Mapsやポータルサイトの存在を周知する
患者さんが自発的に口コミを投稿することは、医療広告規制上問題ありません。
ただ、Google Mapsやポータルサイトの存在を知らなければ、どんなに患者満足度が高くても口コミを書いてもらえません。
そのため、院内でGoogle Mapsやポータルサイトについて周知しておくといいでしょう。
具体的には、次のようにすると患者さんに口コミが投稿できる旨を周知できます。
・会計時などにGoogle MapsやポータルサイトのQRコードを送付する
・院内掲示でGoogle Mapsやポータルサイトの存在を周知する
・来院後に、LINEやSMSで口コミ投稿を依頼する
良い口コミにも悪い口コミにも誠実に返信する
悪い口コミが書き込まれた際と同様に、良い口コミが書き込まれた際も、なるべく感謝の気持ちを込めて返信対応しましょう。
口コミを書いた本人には「誠意ある対応をしてもらった」と受け取ってもらいますし、口コミを閲覧しているユーザーにも好印象です。
また、閲覧ユーザーは「このクリニックは口コミを書くと返信してもらえる」と感じるので、来院後に口コミを投稿してもらいやすくなります。
一方で、口コミに一つひとつ返信することで、患者さんや退職者の理不尽な口コミの抑止効果にも繋がります。
院長先生が口コミを読んでいることがわかっていると、悪意を持った口コミを書き込もうと思わなくなるためです。
本人がいないところで陰口を言う人は多いですが、本人の目の前で悪口を言ったり批判したりする人はあまりいないことと同じです。 常時Google Mapsやポータルサイトをチェックする必要はないですが、口コミの返信は行った方がいいでしょう。
日頃から患者満足度を高める
言うまでもないですが、日頃から患者満足度を高めていくことが一番です。
診療だけでなく、接遇態度や待ち時間、院内の雰囲気や掲示物も口コミに大きく関わります。
口コミはもちろんのこと、できれば患者さんにアンケートを書いてもらうようにして、患者さんの率直な感想を集めて、医院経営に反映していきましょう。
【まとめ】患者満足後が高く働きやすいクリニック作りが良い口コミを生む
以上、クリニックの口コミ対策についてお伝えしました。
・評価の良し悪しに関わらず口コミにはなるべく誠意ある返信する
・悪い口コミが書き込まれたら保存しておく
・悪い口コミの削除がなかなか進まない場合は最寄りの弁護士に相談する
・悪い評価は医院経営のヒントにする
・医療広告規制に注意しながら良い口コミが集まる仕組みを作る
・患者さんに口コミが投稿できる旨を周知する
・日頃から患者満足度を上げるように努める
当たり前ではあるものの、一番重要なことが日頃から患者満足度を上げて、スタッフにとって働きやすいクリニックを作ることです。
診療内容、患者さんへの接遇、待ち時間の対策、スタッフマネジメントなど医院経営の実態がそのまま口コミに反映されます。
患者さんが、自然と良い口コミを投稿したくなるようなクリニックを目指しましょう。
監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。