増加する倒産|潰れそうなクリニックの特徴と対策10選


「最近、病院やクリニックの倒産が増えているらしい」
病院やクリニックの倒産・廃業については、一般の中小企業ほど目立っていないものの、年々増加傾向にあることがわかっています。
実際に、昨今の医療業界を取り巻く環境は、物価高騰、人手不足、競争激化など、厳しさを増しています。
本記事では、データに基づいた病院・クリニック倒産の背景や、潰れそうなクリニックの特徴と対策についてお伝えします。
本記事を最後までご覧いただき、今後の健全な医院経営のきっかけになれば幸いです。
増加する病院・クリニックの倒産|いったい何が原因なのか?

※東京商工リサーチの調査結果より抜粋
東京商工リサーチによれば、2025年の病院・クリニック倒産件数は41件となりました。これは過去20年間では、リーマンショック直後の2009年に次いで2番目に多い件数で、歴史的な高水準といえます。
病院・クリニックの倒産の背景には、次のようなことが複数絡み合っていると考えられます。
・医師や看護師の人材不足
・人材不足による給与水準の上昇
・院長、理事長、スタッフの高齢化、後継者不在
・医療器具、医薬品、検査試薬などの物価上昇
・建物や医療機器の老朽化
・医療業務のコストと診療報酬のバランスが崩れている
・ゼロゼロ融資(コロナ融資)の返済開始
人材不足や高齢化などの問題が顕在化し、さらに物価上昇や、老朽化した建物や設備の更新、コロナ時の融資制度の返済開始などで経営を圧迫しているのが現状です。
診療報酬の改定は2年に1回であるため、保険診療中心の病院・クリニックでは物価上昇などのコスト変動に対応できないのも大きいと考えられます。
倒産しそうなクリニックの特徴と対策10選

病院やクリニックの倒産件数は、一般的な中小企業に比べれば、まだ少ない方と言えます。
しかし、増える倒産の背景を見ると、決して他人事ではありません。
実際、潰れそうなクリニックには、次のようなヒト・モノ・カネ・情報の特徴が見られます。
必ずしもすぐに経営危機に陥るわけではありませんが、健全な医院経営のために課題になっている点は改善していくことが大切です。
明らかに患者さんの来院数が減少している
言うまでもなく、患者さんの来院数の減少はクリニックの収益に直結しますが、原因は様々です。
以前は来院患者数が多かったのに、ここ数年は減少しているなら、次のように何かしら原因を分析して対策を立てる必要があります。
①地域人口が減少してきている
②競合のクリニックが出現して患者さんが流れている
③都市開発などで患者さんが来院する動線が大きく変わった
④クリニックに求められるニーズが変わった
⑤医療や接遇の質の低下などで悪い口コミや評判が広がった
①②③であれば、集患対策を根本から見直す必要があるかもしれません。
④⑤であれば、診療内容だけでなく、接遇面の改善やWeb予約システムの導入など、患者満足度の向上を図ることになるでしょう。
少なくとも現状維持ではかなり厳しい状況なので、レセプト枚数や初診数、再診率、現在の診療圏の状況などから対策を考える必要があります。
スタッフの離職率が異常に高い
スタッフが定着しない職場は、業務が回らず、医療の質が下がっていくので医院経営が厳しくなります。
しかも、常に誰かを採用しないといけない状況なので、採用コストで経費を圧迫します。
離職者が増えると、残ったスタッフの業務負荷が大きくなり、退職連鎖や大量離職といった悪循環を引き起こしかねません。
医療業界の人材不足は長年続いており、売り手市場であることはしばらく変わらないと考えられます。
職場の人間関係やスタッフマネジメントの改善を早急に図り、離職率の低減に努めるようにしましょう。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
院長先生やスタッフの高齢化が進んでいる
院長先生ご自身はもちろん、スタッフが全員高齢化すると、組織の新陳代謝が止まってしまいます。
新しい医療技術や医療DXの導入が遅れ、時代に合わないクリニックとして、若年~中年層の患者さんを中心に離れていく可能性があります。
この場合、若手医師や看護師をバランスよく採用して新陳代謝を図り、院内改革に取り組む必要があるかもしれません。
さらに、トップダウン型のボスマネジメントではなく、様々なスタッフが意見を言い合える風通しの良い職場づくりも必要でしょう。
また、相続・承継問題の解決に動いていかないと、クリニックを存続することが難しくなります。
後継者不在の状態であれば、M&Aによる事業譲渡も視野に入れておきましょう。
医療技術の質が低下している
医院経営は、決して診療がすべてではありませんが、それでも医療技術の低下は致命的な問題になりかねません。
特に、今は専門的な治療を求める患者さんが増えてきており、医療技術の習得は必須です。
現在、保険診療の実務経験がない若手医師が美容外科に進む、いわゆる直美が問題になっています。
直美問題は、地域医療の人手不足が加速化するほか、美容クリニックの医療の質の低下が懸念されています。
安全性を欠いた治療を行えば、患者満足度の低下や競争力の低下はもちろん、医療訴訟のリスクもあります。
医療の質を担保するには、医師の採用のミスマッチを防ぐことはもちろん、技術研修を徹底したり、学会などに積極的に参加したりすることも必要です。
クリニックの悪い口コミや悪評が広がっている
Googleマップなどの口コミは、新患の来院動機に直結するため、思いのほか集患に響きます。
医師の技術や看護師のコミュニケーションはもちろん、「受付の態度が悪い」「待ち時間が長い」「待合室が汚い」といった、診療に直接関係ないことでも悪評につながります。
口コミを定期的に確認して、些細なことでも悪評が事実であれば真摯に返信して、改善を図ることが大切です。
集患への影響度が大きいため、口コミ対策を図る医院・クリニックは多いです。
しかし、報酬を与えたり、治療費を割り引いたりして患者さんに口コミを依頼して、宣伝であることを隠すことは、ステマ(ステルスマーケティング)に相当します。
ステマは、2023年10月以降景品表示法違反になっているので注意しましょう。
上記の通り、実際にステマで景品表示法違反になった歯科医院の実例があるので注意してください。
なお、Googleやポータルサイトの口コミで、理不尽な悪評を書き込まれることがあります。
その際、運営元に削除依頼をしても、削除されるとは限りません。
悪い口コミを保存して、インターネットの誹謗中傷に詳しい弁護士に相談するようにしてください。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
自院に合っていない立地で開業してしまった
様々な開業準備のタスクのなかで、物件の選定は基本的にやり直しができないので、慎重に選ぶ必要があります。
どこにクリニックを開業するかといったことは、どうしても集患に大きく影響します。
しかし、駅前やロードサイドなどの好立地であればいいとは限りません。
診療科目や患者さんの属性が、立地とミスマッチしている場合は、一般的な好立地であっても集患に苦労します。
診療圏調査や、今後の再開発の有無、連携できる医療機関の有無などを確認して、総合的に自院に合った物件選びをしましょう。
物件選びや診療圏調査についての詳細は、以下の記事をご覧ください。
物価や人件費の高騰などで資金繰りが悪化している
電気代や医療材料費、人件費の高騰に対して、保険診療の改定は2年に1度しか行われないので、価格転嫁が難しいのが現実です。
さらに、老朽化した建物や設備の更新、コロナ禍の頃に受けた融資の返済開始などで、資金繰りが苦しくなっている病院・クリニックが増えています。
顧問税理士と相談して、資金繰りについて確認したり、経費の無駄を徹底的に排除したりしましょう。
なお、様々な経費のうち、人件費の適正化を図るポイントについては、以下の記事をご覧ください。
広告宣伝費の費用対効果が悪い
美容外科など、競争が激しい自由診療では広告宣伝費の過剰投資が、経営を圧迫するケースもあります。
医療脱毛クリニックのアカシアクリニックが倒産したのも、急速な事業拡大と過剰な広告宣伝費の投資によるものと言われています。
自由診療になると、医療広告ガイドラインを遵守したうえで、ある程度広告費にお金をかける必要はあります。
しかし、どんぶり勘定ではなく、しっかりと費用対効果を測定しないと、思うように集患ができず経営を逼迫しかねません。
また、患者満足度の向上による再診の患者さんで新患依存度を減らして、広告費を削減していきましょう。
同時に、SEOやMEO対策、口コミ対策など広告費が必要ない施策にも力を入れていくことが大切です。
事業計画が曖昧である
開業前の資金調達の際に、事業計画書の作成は必須ですが、決して融資のためだけのものではありません。
事業計画書は、医院・クリニックの未来予想図であり、開業後、計画通りに経営できているかどうかを確認することも大切です。
曖昧な事業計画では、例え資金調達ができたとしても計画通りの収支とならず、資金がショートすることも考えられます。
具体的に事業計画書を作成して、作成後は収支をしっかり確認するようにしながら、健全な経営を行いましょう。
事業計画書の作成についての詳細は、以下の記事をご覧ください。
必要以上の設備投資をしている
必要以上に、最新の高額医療機器や豪華な内装に投資してしまうと、導入後に資金繰りが苦しくなります。
特に開業時は、必要最低限の医療機器に留めて、黒字経営が続いたら余剰資金で設備投資することが望ましいです。
また、設備投資を行う際は、患者さんのニーズを見極めてどのくらいの期間で回収できるかシミュレーションしましょう。
場合によっては、中古の医療機器やリースなどで、初期費用を抑えるという手もあります。
税金対策にも大きく関わるので、顧問税理士と相談のうえ、よく検討しましょう。
【まとめ】ヒト・モノ・カネ・情報の悩みを解決する
クリニックの倒産を防ぎ、健全な医院経営を続けるためには、以下の4つのポイントを意識することが不可欠です。
・ヒト: 採用、教育、マネジメント(労務環境の整備)
・モノ: 物件、内外装、医療機器(投資対効果の最大化)
・カネ: 資金繰り、資金調達、税金(財務体質の強化)
・情報: 集患、マーケティング(戦略的な経営)
ヒト・モノ・カネ・情報の悩みが解決されれば、医院経営のストレスから解放されて、先生は診療に集中できるようになります。
税理士法人テラスでは、開業医の先生(個人開業のクリニック、医療法人)や開業予定の先生に向けて、「開業医の経営塾」を開催しています。
ヒト・モノ・カネ・情報のポイントから、医院経営が軌道に乗る秘訣を体系的に学ぶことができます。
開業医の経営塾は毎年7月頃からの開催となります。募集期間前に事前エントリーすることも可能ですので、ご興味がおありの先生は、是非お気軽にお問い合わせください。
最後までご覧いただきありがとうございました。


監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。


