皮膚科の開業で失敗しない11個の重要ポイント|開業支援実績が多い税理士が詳細解説

公開日:2024年12月23日
更新日:2024年12月23日

皮膚科の開業医の先生の年収は、一般的には他の診療科目より低めと言われていますが、開業資金も低く抑えることができます。

他の診療科目より年収が低いといっても、勤務医の水準よりは高い傾向にあります。

また、子どもから高齢者までニーズが幅広く、皮膚科が途絶えることは考えにくいので集患が軌道に乗れば安定収入が期待できるでしょう。

本記事では、皮膚科の開業(美容皮膚科以外)で失敗しないための重要ポイントについて詳しく解説します。

【ポイント①】視認性が高い場所で開業する

皮膚科は、大がかりな検査がなく、レントゲン室や検査室が不要であることが多く、30坪程度で開業する先生が多いです(レーザー治療を行う場合は40~50坪程度)。

その分、開業資金や家賃を抑えやすいメリットはありますが、狭くなると視認性が悪く、人通りのない場所で開業すると集患が難しくなります。

特に保険診療メインの皮膚科の場合は、患者さんに多く来院してもらう必要があります。

開業コンセプトや患者さんの属性にもよりますが、小さな皮膚科ほど人通りや視認性をよく確認して立地を検討した方がいいでしょう。

【ポイント②】待合室や受付のスペースを広くする

皮膚科は、保険診療中心では診療単価が低いため、医業収入を得るには、多くの患者さんの対応をする必要があります。

また、レントゲン室や検査室が不要であることが多く、スペースに余裕を作りやすいです。

そのため、多くの患者さんの診療ができるように、待合室や受付は広めしておくといいでしょう。

【ポイント③】短い診療時間のなかでいかに良い診察ができるかを考える

診療単価が低い皮膚科では、保険診療をメインで考える場合は、多くの患者さんを診察しなければいけません。

ということは、1人あたりの診療時間が限られるということです。

診療時間が長ければ患者さんが喜ぶとは限りません。いかに短い診療時間で、適切な診療ができるかを考えておく必要があるでしょう。

そのためには、効率的に診療ができる仕組みを開業時から整えておく必要があります。

患者さんやスタッフの動線を最小限にできるようなレイアウトの設計も必要ですし、スタッフとの役割分担を明確にすることも重要です。

【ポイント④】患者さんの待ち時間のストレスをなくす仕組みを作る

受付や待合室を広く取ったとしても、患者さんの待ち時間が長ければクレームや悪い口コミの原因になります。

完全予約制の導入などで、患者さんがいつ頃来院すれば待ち時間が少なくなるか、事前に把握できる仕組みを作るといいでしょう。

来院患者数が多い場合は、いかに患者さんの待ち時間を少なくするかも重要です。

スムーズに受診できるようにすることが、患者満足度の向上に繋がります。

【ポイント⑤】開業後軌道に乗ってから自費診療を導入してもいい

経営理念や開業コンセプトにもよりますが、診療単価の低い保険診療だけでなく、自費診療の導入も検討の余地があります。

とはいえ、美容皮膚科ならともかく開業当初から無理して医療設備などを導入することはおすすめしません。

開業直後は必要最低限の医療設備の導入に留めて、患者さんのニーズを見極めながら少しずつ自費診療を導入していくといいでしょう。

【ポイント⑥】開業当初は患者さんの属性を絞ってみる

皮膚科と言っても、子どもから高齢者まで様々な患者さんの属性があり、様々な年齢層、性別の来院が期待できます。

しかし、あまり広い属性で集患しようとすると、特徴のわからない皮膚科となり、同診療圏の皮膚科に埋もれがちになります。

開業当初は患者さんの属性をある程度絞るのもありです。

どんな患者さんにどんな治療を提供していきたいか、経営理念や開業コンセプトを明確にする必要があるのは言うまでもありません。

どんな患者さんを診療することが好きなのか、ということをもとに患者さんの属性を考えてみるのもいいでしょう。

本記事では詳細を省いていますが、美容皮膚科も標榜して女性の来院者数を中心に診療するのもいいでしょう(自費診療中心となるので、皮膚科とは戦略が大きく違います)。

また、小児皮膚科は比較的数が少なく、アトピーなどの小児疾患に特化することで、立地次第では他の皮膚科と差別化できる可能性があります。

子どもが好きな方であれば、十分検討の余地があります。

開業して軌道に乗ってきたら、様々な属性の患者さんを診療するようにしていくのも1つの手です。

アトピーや湿疹などの皮膚疾患であれば、幅広い年齢や性別の患者さんを診療できます。

【ポイント⑦】患者さんの属性に合わせた集患をする

患者さんの属性を絞った場合、集患も患者さんに合わせていく必要があります。

わかりやすい例で言えば、美容皮膚科と小児皮膚科では治療内容も大きく違いますし、患者さんの属性も違います。

ホームページやチラシ、口コミ対策の違いがあるのはもちろん、適切な立地も変わります。

美容皮膚科であれば、比較的都市部に開業するケースが多く、集患方法はホームページなどインターネットが中心です。

集患の考え方は、美容外科に近いところがあります。

一方、小児皮膚科であれば、集患の考え方は小児科や小児歯科に近くなります。

適切な立地はファミリー層が多く住む住宅街になりますし、親御さんの口コミが集患に大きく影響します。

患者さんの層によって、集患方法だけでなく、立地や物件の考え方が大きく違う点は注意しましょう。

【ポイント⑧】皮膚疾患の患者さんに配慮した内装とする

皮膚科の場合、皮膚疾患の患者さんに配慮して、なるべく様々な備品に触れないように配慮した内装とすることがおすすめです。

・入口などは自動ドアにする

・スリッパではなく靴で入ることができる床にする

など、開業当初から検討しておいた方がいいこともあります。

皮膚科の開業経験のある施工会社によく相談しておくといいでしょう。

【ポイント⑨】患者さんのプライバシーに配慮する

皮膚科の場合、あまり人に聞かれたくないような疾患で来院する患者さんも少なくありません。

診療科目によっては、プライバシーに配慮してほしいと考える患者さんが多く来院しますが、皮膚科もその1つです。

例えば、水虫に悩む女性であれば、診察している様子を他の患者さんやスタッフに聞かれたくないでしょう。

仕切りを設けたり、防音対策を施したりする必要もあります。BGMを流すのもいいでしょう。

また、皮膚科に限った話ではないですが、診療の際は脱衣することがあるため、カーテンを付けるなどの配慮も求められます。

【ポイント⑩】労災保険指定医療機関の認定を受けておく

皮膚科を開業する際は、厚生労働省の「労災保険指定医療機関」の認定を受けておくといいでしょう。

労災保険指定医療機関の認定を受けておくと、患者さんが労災に遭った場合に、治療費を自己負担する必要がありません。

皮膚科の場合は、飲食店のスタッフが調理中にやけどするといったことも考えられます。

労災保険指定医療機関でなければ、患者さんは医療費をいったん自己負担しないといけません。

一方で、労災保険指定医療機関に認定されていれば、いったん自己負担する必要がなく、無償で治療を受けることができます。 労災に遭った患者さんは、積極的に労災保険指定医療機関を探しますから、認定を受けることで選ばれやすくなるでしょう。

【ポイント⑪】下肢創傷処置に関わる診療報酬を算定する

下肢創傷処置を扱う皮膚科の先生であれば、次の診療報酬点数を加算することができます。

下肢創傷処置(足部(踵を除く)の浅い潰瘍)135点
下肢創傷処置(足趾の深い潰瘍又は踵の浅い潰瘍)147点
下肢創傷処置(足部(踵を除く)の深い潰瘍又は踵の深い潰瘍)270点
下肢創傷処置管理料月500点

厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要 医療技術 」より抜粋

2022年の診療報酬改定で新規追加された項目ですが、該当する先生は詳細を確認しておくようにしましょう。

【まとめ】必要以上に開業資金をかけずに皮膚科を開業する

皮膚科の医院・クリニック開業のポイントについて解説しました。

皮膚科は、美容皮膚科など自費診療中心としている場合を除けば開業資金を抑えて開業することができます。

診療報酬は低めに設定されているので、多くの患者さんを効率的に診療できる仕組み作りが必要です。

無理に開業資金をかけることは禁物ですが、徐々に自費診療に力を入れていくのもいいでしょう。

一般的な皮膚科であれば、地域の信頼を得られることが、安定経営の一番の近道となります。

なお、皮膚科の開業医・勤務医の年収や働き方については、以下の記事で詳しく解説しています。

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笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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