自由診療のオンライン診療の重要ポイントとは?
2020年の新型コロナウィルス感染拡大をきっかけにオンライン診療の存在が患者さんに認知されるようになり、ニーズが高まっています。
オンライン診療の指針について明文化されている「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は、保険診療だけでなく自由診療も対象です。
Q1. 本指針は、保険診療のみが対象ですか。
A1. 本指針は、保険診療に限らず自由診療におけるオンライン診療についても適用されます。引用元:「オンライン診療の適切な実施に関する指針」Q&Aより抜粋
かつてはオンライン診療といえば保険診療が多かったですが、現在は自由診療の割合の方が多くなっています。
これは、AGA治療や避妊目的のピル処方、美容診療などをはじめとして、自由診療の方がオンライン診療との相性がいいことが背景にあります。
そこで今回は、自由診療のオンライン診療の重要ポイントについて解説します。
オンライン診療の自由診療と保険診療の違い
オンライン診療でも対面診療でも、保険診療と自由診療の違いは特に変わりません。
言うまでもなく、保険診療が各々の疾患で診療報酬点数が決められていることに対して、自由診療は医療機関で自由に報酬を決められます。これはオンライン診療でも同様です。
日本のオンライン診療が浸透していない理由の1つが、診療報酬点数の低さですが、自由診療ではその影響は低いと考えていいでしょう(2022年の改定で診療報酬点数は上がっています)。
また、冒頭でもお伝えした通り、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は、保険診療だけでなく自由診療も対象となります。
自由診療に特化した記載があるわけでなく、基本的には保険診療も自由診療も同じように「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に準拠することになります。
オンライン診療の自由診療の適用範囲
オンライン診療の保険適用範囲については、厚生労働省が診療報酬に関するガイドラインの中でまとめています。
非常に数が多いので一部だけ紹介しますが、例えば以下の疾患です。
・がん、糖尿病、高血圧などの特定疾患療養
・認知症
・生活習慣病
・小児科療養
・てんかん
・パーキンソン病、ハンチントン病などの難病外来
・精神疾患
オンライン診療で保険適用されている疾患は、徐々に増えていますが、今でも対象疾患は限定的なところがあります。
また、2022年に診療報酬が大幅に改定されたものの、まだ対面診療よりは低いところがあります。保険診療のオンライン診療については、まだ普及まで時間がかかる可能性が否めません。
自由診療のオンライン診療は、例えば以下の疾患で普及が進んでいるところがあります。
・AGA治療
・ED治療
・避妊治療
・美容診療
・禁煙外来
・各疾患の予防etc……
先ほどもお伝えした通り、もともと対面診療でも自由診療の疾患については、治療費を医療機関で自由に設定できるので、導入しやすいところがあります。
特に、AGA、ED、避妊など来院に抵抗のある疾患は、オンライン診療との相性が良くなります。
一方で、対面診療では保険診療だがオンライン診療では保険適用外となる疾患も存在します。
この場合は、患者さんが治療費の負担を理由にオンライン診療を敬遠してしまいます。この点においては、まだオンライン診療の普及には時間がかかると考えられます。
自由診療でのオンライン診療の5つの重要ポイント
以上、対面では保険適用なのに、オンライン診療では保険適用外の疾患の場合はオンライン診療の導入は難しい側面があります。
一方で、もともと対面診療でも自由診療である疾患は、オンライン診療を導入しやすい特徴があります。
そこで、自由診療でのオンライン診療の重要ポイントについて解説します。
ホームページでオンライン診療の自由診療について詳しく説明する
自由診療のオンライン診療を導入している医院・クリニックは、ホームページなどでオンライン診療の導入について明記しましょう。
特にトップページに掲載したり、子ページに誘導するバナーを貼ったりして、患者さんがオンライン診療に関する情報を見つけやすいようにしてください。
先にもお伝えした通り、オンライン診療と相性の良い自由診療の疾患は次の特徴があります。
- 来院に心理的抵抗のある疾患が比較的多い
- 疾患よりも予防に特化した治療はオンラインでも十分なことがある
- 薬物の処方や対面の治療を必要としないカウンセリングなどはオンラインでも十分
特に患者さん側にとって大きなメリットになる一方で、クリニックにとっても受付業務の負担軽減、患者満足度の向上などを図ることができます。
しかし、当然ながら認知しなければ患者さんにはオンライン診療の導入は伝わりません。
そのため、オンライン診療を導入したことをホームページで知らせるために、オンライン診療のメニューをまとめたページを作るといいでしょう。
オンライン診療の受付手順や、対面診療が必要となる場合、メリット・デメリット、価格など、比較的詳しく記載するようにしてください。
なお、現在オンライン診療導入についてホームページに掲載しているクリニックは増えており、いくつか参考になる他院のホームページがあります。
詳しいことは、Web制作会社などに相談して、内容を詰めるようにしてください。
最初からホームページを作成するわけではなく、子ページの追加とバナー作成くらいであれば、大きな費用はかかりません。
院内掲示でもオンライン診療の導入を知らせる
オンライン診療の導入については、クリニック内の掲示板やディスプレイなどでも、その旨を通知するようにしましょう。
また、診療時でも患者さんの症状によっては「次回からオンライン診療にしませんか?」と声をかけるのもいいでしょう。
そうすることで、継続して来院している患者さんが、オンライン診療を希望する可能性があります。
引き続き対面診療を希望する患者さんもいるでしょうが、オンライン診療は患者さんの方がメリットは大きいです。
そのため、患者満足度の向上に繋がることもあります。
オンライン診療の価格設定
保険診療と違い、自由診療は価格が決まっていないので自由に決められますが、その分価格設定が悩みどころです。
これはオンライン診療でも変わらず、対面診療よりも参考価格となるものが少ないので、むしろ値付けが難しいくらいです。
考え方は対面診療と一緒で、以下のことを総合的に考えるしかありません。
・治療にかかる設備コスト
・自由診療にかかる時間
・自由診療にかかる人件費
・競合となるクリニックや治療内容の価格設定
・治療コンセプト
オンライン診療の場合、設備のコストや診療時間、人件費を軽減できることがあるので、対面診療より安価にできることもあるでしょう。
同じ診療内容でも、オンライン診療の方が安価であれば、患者さんにとってはメリットとなります。
対面診療と同様に、料金体系や治療内容の説明を十分行うようにしてください。
対面診療では、審美的治療などの場合はトラブルに至るケースが多くありますが、オンライン診療でもトラブルは十分起こり得ます。
治療内容やコンセプトに見合った価格設定にしたうえで、患者さんが十分納得できるような説明が必要です。
オンライン診療システム導入の検討
保険診療でも自由診療でも同じことが言えますが、オンライン診療のシステムの導入を検討しましょう。
ただ、対象となる疾患や治療方針によって相性のいいシステムは違うので、詳しいことは専門の業者に相談するようにしてください。
最近は、クリニックにとっても患者さんにとっても使いやすい安価、もしくは無料のオンライン診療システムが増えています。
電子カルテなども含めて検討するようにしてください。
初診でのオンライン診療が不適切とされる疾患がある
2022年の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の改定で、オンライン診療が条件付きで初診からできるようになりました。
しかし、一方で「オンライン診療の初診に適さない症状」が日本医学会連合によりまとめられており、このような症状は初診では原則対面診療となります。
初診のオンライン診療が不適切な例:ED治療
ED治療に関しては、「オンライン診療の適切な実施に関する指針 Q&A」で、基本的には初診は対面診療で行うことが明記されています。
EDなど、オンライン診療の初診が不適切な症状は先生は把握されているとは思いますが、患者さんは知らずに初診からオンライン診療を求めることがあります。
その場合、ホームページでも初診は対面診療であることを明記して、オンライン診療までの流れを説明するようにしましょう。
初診から問題なくオンライン診療が行える例:禁煙外来
なお、自由診療の禁煙外来については、初診から直接の対面診療を組み合わせないオンライン診療が可能であることが明記されています。
オンライン診療においては、初診は「かかりつけの医師」が行うこと、直接の対面診療を組み合わせることが原則であるが、以下の診療については、それぞれに記載する例外的な対応が許容され得る。
・禁煙外来については、定期的な健康診断等が行われる等により疾病を見落とすリスクが排除されている場合であって、治療によるリスクが極めて低いものとして、患者側の利益と不利益を十分に勘案した上で、直接の対面診療を組み合わせないオンライン診療を行うことが許容され得る。
引用元:「オンライン診療の適切な実施に関する指針」より抜粋
【まとめ】オンライン診療の導入は患者さんへの通知と説明を忘れずに
以上、自由診療のオンライン診療の重要ポイントについてお伝えしました。
もともと対面診療でも自由診療だった疾患については、オンライン診療が導入しやすく、また相性がいいところがあります。
疾患や患者さんの住まいによってはオンライン診療の方がメリットは大きく、対面診療と組み合わせることで患者満足度の向上が見込めます。
オンライン診療を導入する際は、患者さんにホームページや院内掲示で通知し、治療内容や価格、対面診療が必要な場合などを十分説明するようにしてください。
オンライン診療全般については、以下の記事もご覧ください。
監修者
笠浪 真
税理士法人テラス 代表税理士
税理士・行政書士
MBA | 慶應義塾大学大学院 医療マネジメント専攻 修士号
1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。
医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。
医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。