収入印紙で節税?開業時に印紙税を抑える3つの節税術!

公開日:2019年5月25日
更新日:2024年10月21日

はじめに

契約書や定款など医院開業時には多くの書類が必要となりますが、その多くは収入印紙が必要となる課税文書。

この課税文書に必要となる収入印紙は記載内容や金額により印紙税額が決まります。

少額だと200円、高額となると40万円を超す印紙があるため、印紙税の支払いには十分な注意が必要です。

ただ、この収入印紙は貼り損じ場合や収入印紙が不要にも関わらず貼ってしまった場合でも、対処できる方法があります。

印紙税に関する情報を把握することで損を軽減することもできるのです。

そこで今回は収入印紙の扱い方、誤って貼ってしまった場合の対処方法、更には収入印紙を使った節税方法についてご紹介します。

そもそもなぜ収入印紙は必要なのか?

国税の一種である印紙税は各種書類や資料など紙媒体でのやり取りに課される税金。

その税金額は、書類の種類や記載されている金額に応じて決まるため、印紙税を納める制度として収入印紙が用いられています。

収入印紙は原則として書類の作成者が「書類に所定金額の収入印紙を貼りつけて割印を押す」までを行う必要があり、この作業により納税が完結します。

印紙税の対象となる課税文書は多々ありますが、中でも使う機会が多いのが「領収書」「各種契約書」「約束手形または為替手形」。

収入印紙を貼り忘れなどがないよう、普段から「課税文書は税金」という意識の元、取り扱いには十分な注意が必要なのです。

印紙を貼り忘れてしまった場合

もし、税務調査等で印紙税の未納が発覚した場合には、納付すべき印紙税金額の3倍に相当する過怠税を納めないといけません。

では課税文書であるのに印紙税の対象外であると勘違いし、うっかり印紙を貼り忘れてしまった時にはどうすればよいのでしょうか?

貼り忘れの場合には、「印紙税不納付事実申出手続」という手続きによって、過怠税を軽減することが可能です。

これは印紙税を納付していないことを申し出る場合の手続きで、「印紙税不納付事実申出書」という書類を納税地の所轄税務署長宛に提出するもの。

そうすることで、納付を忘れていても調査前に自主的に不納付を申し出た場合には1.1倍に軽減されるケースもあります。

※詳細は次項の「印紙税還付の手続き方法」を参照

なお、「収入印紙をいつ貼ったかなんて、わからないのでは?」なんて感じてしまうことはありませんか?

税務署にチェックされる前ならいつ印紙を貼っても良いのでは…と思うかもしれませんが、実際には印紙を貼り付けた時期を後から確認することが可能なのです。

収入印紙の絵柄は定期的に変更されていることをご存知でしょうか?

実はこの絵柄の変更により、印紙納税の時期を調べることが可能なのです。

印紙税を調査する場合、調査官は過去の印紙絵柄を把握できる資料を持参し、課税文書の印紙と照合を行いながら納税漏れをチェックしています。

そのため、課税文書が発生した場合には必ず所定の収入印紙を貼っておくことを強くオススメします。

収入印紙を貼り間違えた場合

収入印紙を貼る際、間違えて適正金額以上を貼ってしまった、不課税文書に収入印紙を貼ってしまった…という事例は少なくありません。

税金扱いとなる収入印紙は、過剰に納付した税金を「過納金」、誤って納付した税金を「誤納金」と言い、「過誤納金」としてまとめられます。

そして、この過誤納金は、以下の還付対象内であれば還付が可能なのです。

<過誤納金の還付対象>

  1. 不課税文書
  2. 非課税文書に収入印紙を貼ってしまった場合
  3. 課税文書に貼りつけた収入印紙が本来の課税金額を超えた場合
  4. 損傷、汚染、書損その他の理由により使用する見込みがなくなった場合

ただし、還付対象であっても以下のケースでは認められないこともあります。

<還付が認められないケース>

  1. 破損等で原型をとどめていない場合
  2. 還付に関する書類の所轄税務署長提出後、5年以上経過した場合
  3. 国の各種手数料の納付に使用された収入印紙

全ての過誤納金に対して印紙税が還付されるわけではないので、収入印紙を貼る際には注意が必要です。

印紙税還付の手続き方法

印紙税を還付する際の手続きは以下のステップで進める必要があります。

  1. 印紙税過誤納確認申請書の記入
  2. 申請書と間違った印紙を貼った文書を税務署に提出(郵送でも可能)
  3. 指定の銀行口座または郵便局を通しての送金

「印紙税過誤納確認申請書」は税務署で入手できますが、国税局のホームページからダウンロードすることも可能です。

<印紙税過誤納確認申請書ダウンロードページ>

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/inshi/annai/kagono.htm

なお、申請書の記載については、下記サイトの「印紙税過誤納確認(充当)申請書」記載例を参考に記入ください。

<「印紙税過誤納確認申請書」の記入の仕方>
https://www.nta.go.jp/about/organization/kantoshinetsu/topics/inshizei/pdf/03.pdf

申請書と間違った印紙を貼った文書は、持参もしくは郵送にて税務署に提出し、税務署の確認後に申請書と還付請求対象の文書に税務署の確認印が押され返送されます。

その後、申請書に記入した口座へ還付金が振り込まれます。

もし、収入印紙を貼り損じてしまっても還付請求が可能であるため、慌てずに適正な納税を行いましょう。

印紙を使った節税方法

契約書を交わす度に必要となる収入印紙による印紙税。

開業されたばかりであれば、可能な限り節税して経費を抑えたいところ。

書面に必要となるため、印紙税の節税は困難と思われがちですが、場合によっては取引契約が同一でも、税額を約1/5に抑えることも可能です。

では、上手く節税しながら印紙税を支払うには、どのようなことに注意しながら収入印紙を購入すれば良いのでしょうか?

本項では即実践できる印紙税に関する節税術をお伝えいたします。

税抜金額表示による節税

取引で契約書を交わす場合には、金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。

契約書に適正な印紙が貼られているかどうかは必ずチェックされますが、実は金額表記を考慮することで合法的に節税が可能なのです。

それは記載を「税込」ではなく、「税抜」で記載するというもの。

たとえば、500万円の業務請負契約書の場合、契約書の記載方法としては下記のケースが考えられます。

  1. 請負金額500万円、消費税額40万円、合計540万円
  2. 請負金額540万円(消費税額40万円を含む)
  3. 請負金額540万円(税抜金額500万円、消費税額40万円)
  4. 請負金額540万円(税抜金額500万円)
  5. 請負金額540万円(消費税込)

(1)(2)(3)は消費税額が区分記載されており、(4)は税込価格と税抜価格の両方が記載されています。

これらの場合はいずれも、税抜価格の「500万円」を基準に収入印紙の額が決まり、貼るべき収入印紙は「2,000円」となります。

しかし、(5)の形式の場合、収入印紙の判定基準となる金額は「540万円」となるため、「10,000円」の収入印紙を貼らなければなりません。

契約内容が同じにもかかわらず、金額の記載方法が違うだけで、収入印紙の金額が5倍も変わります。

今回のように同じ取引であれば、消費税を区分して記載することで印紙税を節税することができるのです。

領収書分割による節税法

現在の法律では5万円未満の領収書に対して収入印紙を貼る必要がありません。

そのため、6万円の領収書であると1枚当たり200円の印紙税がかかりますが、3万円の領収書2枚にすれば印紙税を0円に抑えることができます。

5万円以上の領収書が発生する場合には枚数を分けることで節税できるのです。

電子データによる節税法

印紙税は紙の文書に係る税金であるため、契約書や電子定款などを紙媒体ではなく、FAXやメールでやり取りすることで印紙税を0円で済ませることができます。

なお、FAXやメール受け取ったものを印刷して保管することは、コピーと一緒であるために印紙税対象とはなりません。

更に開業医の先生にとって特にオススメするのが定款の電子データ化。

通常の紙で定款を申請する場合には印紙税が4万円と決まっていますが、電子化することによりこの印紙税を節税することが可能です。

また、電子化したところで契約書等の効力を失うことにはなりません。

契約書や定款をはじめ、領収書なども電子データ化することで節税できるのです。

まとめ

今回は収入印紙に関する以下の情報をお伝えしました。

  1. 収入印紙を貼り忘れた場合の対処法
  2. 収入印紙を貼り間違えた場合は所定の手続きで還付可能
  3. 金額を税抜表示とすることで印紙税を節税
  4. 領収書の分割により印紙税を節税
  5. 電子データ化することで印紙税を節税

MS法人設立時において、定款や他社との契約書など紙媒体の課税文書が多く発生しますが、やり方次第で印紙税を半分以下や、無料で済ませることが可能です。

ぜひ、今回お伝えした情報を1つでも取り入れていただき、医院経営に役立つことができればと思います。

笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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