患者さんの心を掴む!医療の接遇力を高める方法3つ

公開日:2019年5月25日
更新日:2024年2月27日

はじめに

先生は、医療の接遇と聞いて、どんなイメージをお持ちですか?

「あいさつや言葉遣い、話し方を丁寧にすること?」

「良いサービスを提供すること?」

と思われるのではないでしょうか。

医療もサービス業だと言われることもありますが、医療における接遇は、ホテルのようなサービスを提供することではないのです。

では一体、医療における接遇とは何をすることなのでしょうか?

今回は医療における接遇において、患者さんは何を求めているのかお伝えしていきたいと思います。

医療における接遇って?

先生は、医療における接遇とは一体、何をすることだと思いますか?

「接遇=サービスをする」

と思われがちですが、実は違います。

患者さんの気持ちを考えてみてください。

患者さんは、なぜ先生のクリニックに足を運んだのでしょうか?

先生からホテルで受けるようなハイレベルなサービスを受けたくて、先生のクリニックに訪れたのでしょうか・・・?

違いますよね。

先生もお気付きかと思いますが、患者さんは、ホテルのような上質なサービスを求めているのではなく、“症状を治してもらいたくて”先生のクリニックに足を運んでいるのです。

サービスが商品ではないので、ホテルのような上質なサービスでなくてよいのです。

しかし、世の中では「医療もサービス業だ」なんて言われることもしばしば。

では、患者さんが求めている医療の接遇とは、どのようなものなのでしょうか。

患者さんのアンケートでクリニックの不満を聞くと、「先生の対応がそっけないため、不安になる」というものがあります。

これはどういうことかというと、

患者さんがクリニックで診察を受けているときに、先生がパソコンばかり見ていて、まったく患者さんを見ようとしないような状況。

このような場合、患者さんは「先生の対応が素っ気ない」「ちゃんと診察してくれない」と不安に思うのです。

つまり、患者さんが求めていることとは、“傾聴力”です。

「自分の話をちゃんと聞いてほしい」

「ちゃんと診察をして、治してほしい」

「先生を信頼したい(だから私の話をきいてほしい)」

そう患者さんは感じています。

医療での接遇とは、

患者さんに「この先生なら信頼できる。また診てもらいたい」と思ってもらえるよう、患者さんの話に耳を傾け、共感し、気持ちを汲み取ることなのです。

傾聴力を高める方法3つ

では、具体的にクリニックでの接遇は何を行えばいいのでしょうか?

患者さんが話しかけてきたときに、“看護師さんが手を止めて、目を見て話をする“それだけで患者さんの満足度は高まります。

患者さんの話をきちんと聞き、受け止めることで、患者さんの不安を解消しやすくなるのです。

つまり、“傾聴力”を高めることが大切です。

傾聴力を鍛えれば、患者さんも「先生は私のことをきちんと診察してくれている」と感じます。

傾聴力を高める具体的な方法としては、3つあります。

  1. 患者さんの話を聞くときの態度
  2. 定期的なうなずきと相槌
  3. オウム返し

一つずつ説明しますね。

患者さんの話を聞くときの態度

先生はどのような姿勢で患者さんを診察していますか?

腕を組んだり、目線を合わせないのは良くありません。

実は、「少し前のめりになる」姿勢ですと、患者さんは、「自分のことを考えようとしてくれているのだな」と感じます。

・「患者さんのことを知りたい。」

・「患者さんと良い関係を築きたい。」

と思いながら診察すると、自然と体も患者さんの方に前のめりになり、

患者さんも、親身に診察してくれる先生だという印象になるのです。

うなずきと相槌 

よく「人の話を聞くときはうなずくことが大切」と言われますが、なぜでしょうか?

うなずきや相槌があることで、「この人は私の話を聞いてくれている」と話し手が安心するからなのです。

患者さんも、自分が話しているときに、先生が反応してくれなかったり、うなずきや相槌がないと「この先生は私の話を聞いてくれているのかな?」と不安になってしまいます。

そして、その不安が、「先生がきちんと診察してくれなかった。」「あそこのクリニックの先生は、不親切よ。」と言われてしまう原因になるのです。

患者さんが、「先生は話を聞いてくれているな。」と感じてもらうために、うなずきと相槌をぜひ意識的に取り入れてみてください。

オウム返し

オウム返しとは、「今日はとても晴れているね。」という相手の会話に対し、「そうだね。晴れているね。」とそのまま返す会話の手法です。

オウム返しをすることで、相手に、「この先生はきちんと私の話を聞いてくれている。」と思ってもらうだけでなく、「私の話を理解してくれている。」とも感じてもらえます。

オウム返しは、相手に自分があなたの話を理解しているよと伝えることができる方法なのです。

一つ例を出しましょう。

患者さんが診察に来た時に

「おなかが痛くて、辛いです。」と言われ、

「では少し診てみますね」と言うパターンと、

「おなかが痛くて、辛いです。」の返しが、

「そうなのですね。おなかが痛くてつらいのですね。では少し診てみますね。」

の返しをするパターン。

どちらの方が、より親身に、話を聞いてくれていると感じますでしょうか?

2つ目のパターンの方が、より親身に話を聞いてくれているように感じたと思います。

オウム返しを使って会話をした方が、先生が親身になって患者さんの話を聞いているということが伝わりやすく、患者さんも安心するのです。

日常生活で行える傾聴力アップの練習方法

ここまでで、医療における接遇の“傾聴力”について、大切なポイントをお話してきました。

しかし、ポイントを頭に入れ、いざ患者さんを前にしても、うっかり忘れてしまったり、うまくできないこともあるかと思います。

なので、上記でお話した傾聴力のポイントを身に着けるための練習法についてお話いたします。

ロールプレイをする

クリニックのスタッフに患者さん役をしてもらい、先生と患者さんで傾聴ロールプレイを行います。

ポイントは、先ほどお話した3つの方法

  1. 患者さんの話を聞くときの態度
  2. 定期的なうなずきと相槌
  3. オウム返し

を、全部一気に取り入れようとするのではなく、一つずつ取り組んでいくことが大切です。

例えば、

ロールプレイで、「まずは患者さんの話を聞くときの態度について気を付けよう」と決め、それをきちんと取り組んでみるのです。

すると、

  1. いつもの診察のときよりも、相手が笑顔で話してくれる
  2. なんだか安心してくれているようだ
  3. いつもより、症状について細かく教えてくれる

など、何かしら発見があることが多いです。

「自分が傾聴できるようになって、得たポイント」が明確にわかるため、「次もやってみよう!」という気持ちになります。

なので、一つずつ取り組み、「自分の得た結果、成長できた結果」を見て、「自分が成長している」と実感できてから一つずつ、階段を上ることが大切なのです。

傾聴する際の気持ちも大切

そして、患者さんにカウンセリングをする際、もちろんスキルも大切ですが、それ以上に大切なことがあります。

それは、「患者さんと良い関係を築きたい。患者さんを治してあげたい。」という気持ちを持つことです。

傾聴するときのポイントに気を付けるあまり、患者さんへの思いやりや、患者さんへの気持ちが薄れてしまうと、間違ったところでうなずいたり、必要のないオウム返しをしてしまうようになり、会話が噛み合わなくなります。

そうなると、患者さんは、「私の話、ちゃんと聞いているのかな」と逆に心配してしまいます。

もちろん、姿勢を正したり、うなずいたり、オウム返しをすることはとても大切なのですが、それ以上に、「目の前の患者さんが今どのような気持ちで来院してくれているのだろう」「この人の不安はなんだろう。原因はなんだろう。」と患者さんのことを考えることが一番大切です。

その気持ちが、傾聴トレーニングを積むことで、少しずつ、患者さんにも伝わるようになります。

是非、患者さんと向き合う心を忘れずに診察してください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、「医療における接遇とは何なのか。」についてお話いたしました。

  1. 医療における接遇とは、“傾聴力”である。
  2. 傾聴力を高めるには、「患者さんの話を聞くときの態度、定期的なうなずきと相槌、オウム返し」を意識する。
  3. 傾聴力を高めるトレーニングでは、ロールプレイをすることと、患者さんに対する気持ちも大切。

医療における接遇と聞くと、一体何をすればいいのだろう。と思いますが、傾聴力を高めるだけで、患者さんの満足度は高まります。

患者さんの「私の症状を先生にきちんと診てほしい」という気持ちを汲み取り、先生に「患者さんと良い関係を築いて、症状を治してあげたい」という気持ちがあれば、患者さんに先生の気持ちが伝わります。

是非、今回お話したことを参考に、今後の患者さんとのコミュニケーションに活かしてください。

笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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