婦人科の開業資金や重要ポイントは? 開業医・勤務医の年収についても解説

公開日:2019年4月17日
更新日:2024年3月18日

婦人科で開業しようと考えている先生に向けて、開業医・勤務医の年収、開業資金の目安、開業の重要ポイント、開業事例について解説します。

婦人科に近い診療科目の産婦人科と比較すると、病院では産婦人科の割合が多いのですが、レディースクリニックなどの診療科では婦人科の割合が比較的多くなります。

「2018年医師・歯科医師・薬剤師統計」によれば、産婦人科、産科、婦人科の合計に対する婦人科の割合は、病院では10.6%ですが、診療所では20.8%です。女性医師の割合も、診療所になると産婦人科(26.4%)よりも婦人科(39.7%)の方が多くなります。

婦人科は出産前後の検診やお産の対応はないものの、女性特有の疾患、不妊治療、人工中絶など治療方針に多様な選択肢があります。

その点は、産婦人科の開業の考え方に近いところがありますが、本記事では婦人科の開業について詳しくお伝えします。

出産前後の検診や、お産対応有無の選択肢がある産婦人科の開業については、別記事で詳しくお伝えします。

※本記事で出している年収額や開業資金などの金額は、あくまで目安として参考値として捉えてください。

婦人科の勤務医の年収

独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(2012年)では、産婦人科(産科・婦人科)の年収が公表されており、その額は1,466.3万円です。

同調査では、脳神経外科の1,480.3万円に次ぐ高水準ですが、これは産科や産婦人科と合わせた平均年収です。

あくまでも予測ですが、勤務医の場合、分娩対応などで時間外労働が発生やすい産科や産婦人科の方が年収は高くなると思われます。

分娩対応のない婦人科の場合は、時間外労働がないぶん、給与は若干低いと考えられます。

給与が低くなる一方で、その分ワークライフバランスは維持しやすいところはあるでしょう。

婦人科の開業医の年収

冒頭でお伝えした通り、病院では婦人科単独の科は少なく、産婦人科を兼ねていることが多いですが、開業する際は婦人科単独でレディースクリニックを開業する先生も増えています。

婦人科については、開業医の年収に関しても産婦人科と違って公的なデータはありません。

ただ、開業医となると年収には天井がなくなるので、産婦人科よりも収入の高い先生も多いのではないかと考えられます。

多くの婦人科の開業医の先生の年収は、だいたい2,500~3,000万円と、他の開業医の先生とは大きく変わらないのではないかと考えられます。

ただ、婦人科も産婦人科も、医師数の割には今後の需要が十分見込める科なので、将来性という点では開業の余地は十分あるでしょう。

婦人科の開業資金の目安

冒頭でお伝えしたように、婦人科の開業資金については、女性特有の疾患、不妊治療、人工中絶などをどこまで対応するかによって大きく変わってきます。

これは産婦人科も同じような傾向ですが、当然ながら産科がないので、出産前後の検診や分娩対応の有無の検討が不要です。

とはいえ、最低でも他の診療科目と同じくらいの開業資金4,000~5,000万円に加え、損益分岐点までの運転資金は用意しておく必要があるでしょう。

さらに不妊治療などで最新の医療機器を導入することになれば、上乗せして開業資金がかかります。

産婦人科同様に、不妊治療、人工中絶など、どこまで扱うかを開業前に十分検討しておく必要があります。

そして、無駄なコストがかからないように準備し、必要額だけ投資するようにしましょう。

これまで産婦人科を経験してきた先生は、産婦人科での開業と産科、婦人科単独の開業など、様々な選択肢があります。

ご自身の開業コンセプトや治療方針をじっくり考えてから開業準備をするようにしましょう。

婦人科開業の重要ポイント

婦人科開業の重要ポイントについても、ほとんど産婦人科とは変わりません。

ただ、産婦人科のように分娩対応という選択肢がない分、コンパクトな開業も可能なケースもあります。

女性医師の開業の場合は十分周知する

女性が抵抗なく安心して通いやすいという点では、婦人科や産婦人科の開業は、女性医師には有利に働く可能性があります。

そのため、女性医師が婦人科を開業する際は、ホームページや看板、チラシなどで女性が院長であることを周知するようにしましょう。

ただ、冒頭でお伝えしたように、婦人科は女性医師の割合が39.7%とかなり多いため、女性医師というだけで集患効果があるとは限らない点は注意してください。

また、男性の院長先生でも、女性の勤務医を雇用している場合は十分周知し、看護師など女性スタッフもホームページで紹介するようにしましょう。

女性スタッフが多い点を周知したり、女性の患者さんが安心できたりするような院内の雰囲気づくりを心がければ、男性の院長先生が不利になることはありません。

物件の選定は治療方針を明確にしてから

産婦人科ほど選択肢が多岐に渡るわけではないですが、婦人科も治療方針によって適切な物件は変わってきます。

人工中絶の対応など、有床のクリニックが必要な場合は、面積や階層などに十分注意してください。

面積が大きければそれだけ土地・建物、テナント開業としても賃料や内装費が多くかかりますし、階層制限にも注意しないといけません。

大きな医療機器を導入する場合は搬入経路や耐荷重の確認も必要になってきますので、十分面積は検討するようにしましょう。

医療機器の選定も慎重に

婦人科では、内科以上にエコー(超音波診断装置)やX線関連など、内科に比べると特殊な医療機器が必要となるケースが多くなります。

また、不妊治療に力を入れる場合は、最新の医療機器が必要になったり、研究用の設備が必要になったりすることもあるでしょう。

この点は産婦人科の開業と大きく変わりませんが、開業資金やランニングコストに大きく影響しますので、慎重な検討が必要です。

不妊治療専門とする場合は様々な選択肢を用意しておく

不妊治療専門で開業したいという産婦人科、婦人科の先生も多くいらっしゃいますが、不妊治療も幅広く、複数の方法があります

最初から高度で専門的な不妊治療を行うとなると、開業資金が多くなり、開業直後の集患やスタッフ採用の難易度も上がります。

そのため、最初は一般的な不妊治療として、経営が軌道に乗って損益分岐点を超えてきたら専門性の高い高度な不妊治療を導入するという方法もあります。

最初から高度な不妊治療を行おうとすると開業資金がかかりますし、ランニングコストもかかります。

これは先生の治療方針に委ねられますが、幅広く診療するような場合は、一般的な不妊治療から開始してもいいでしょう。

婦人科開業事例

今では産婦人科の開業だけでなく、婦人科単独の開業も増えています。

弊社では、産婦人科ではなく婦人科単独の開業事例もありますので、ぜひ参考にしていただくと幸いです。

さくらレディースクリニック 西平 正之 先生

横浜市瀬谷区の閑静な住宅街に開業したのが「さくらレディースクリニック」です。

婦人科というデリケートな診療を行ううえで、患者さんのプライバシーと気持ちを優先し、安心して受診してほしいという思いで開業されています。

院長の西平先生は、20年間産婦人科で勤務したのち婦人科を開業されています。

産婦人科ではなく婦人科を開業した理由は、勤務医時代に出産前・出産後の検診の方と、女性特有の疾患の方が待合室で長時間待たされているという状況を見てきたからです。

このような状況を解消したいと思い、産科の婦人科クリニックを開業されています。

さくらレディースクリニックの開業事例は、以下をご覧ください。税務調査に関するエピソードもあります。

【関連記事】さくらレディースクリニック 西平 正之 先生

みやぎしレディースクリニック 宮岸 玲子 先生

宮岸先生は、子育てをしながら生活圏内で婦人科を開業しています。

開業する前は、非常勤として臨床経験を積んでいましたが職場が遠かったので、自分やお子さんの心身の負担を軽減しようと思ったのがきっかけだそうです。

そのため、開業物件の選択肢は自然と自宅から近いところになりました。

婦人科に限らず、開業を検討している女性医師の先生はぜひご覧ください。

【関連記事】みやぎしレディースクリニック 宮岸 玲子 先生

【まとめ】開業コンセプトや治療方針を明確にしてから物件を決める

以上、婦人科の勤務医・開業医の年収と開業資金の目安やポイント、開業事例についてもお伝えしました。

婦人科の開業は、先に紹介したさくらレディースクリニックの西平先生のように、女性特有の疾患に絞ることで、じっくりと治療に向き合えるメリットもあります。

産婦人科や婦人科では、どういった治療を中心に行うのか決めておくことが重要です。

産婦人科の開業や年収の目安については、以下の記事も参考にしてください。

【関連記事】産婦人科の開業資金や重要ポイントは? 開業医・勤務医の年収についても解説

産婦人科、産科、婦人科の開業については、弊社でもノウハウが蓄積されていますので、開業をお考えの先生はぜひご相談ください。

笠浪 真

1978年生まれ。京都府出身。藤沢市在住。大学卒業後、大手会計事務所・法律事務所等にて10年勤務。税務・法務・労務の知識とノウハウを習得して、平成23年に独立開業。
現在、総勢52人(令和3年10月1日現在)のスタッフを抱え、クライアント数は法人・個人を含め約300社。
息子が交通事故に遭遇した際に、医師のおかげで一命をとりとめたことをきっかけに、今度は自分が医療業界へ恩返ししたいという思いに至る。

医院開業・医院経営・スタッフ採用・医療法人化・税務調査・事業承継などこれまでの相談件数は2,000件を超える。その豊富な事例とノウハウを問題解決パターンごとに分類し、クライアントに提供するだけでなく、オウンドメディア『開業医の教科書®︎』にて一般にも公開する。

医院の売上を増やすだけでなく、節税、労務などあらゆる経営課題を解決する。全てをワンストップで一任できる安心感から、医師からの紹介が絶えない。病院で息子の命を助けてもらったからこそ「ひとつでも多くの医院を永続的に繁栄させること」を使命とし、開業医の院長の経営参謀として活動している。

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